フィリップ 僕は「許して」などと言う言葉は聞いていないよ。聞いたのは、悪筆だよ。床の上 でこれを見つけたんだ。 (彼はミラー氏にアスピリンの瓶を手渡す。相手は頷いて、それを ポケットに滑り込ませ
敢えて親世代に対して注文をつけ、辛口の批評やボヤキを縷々(るる)書き綴ろうとおもっています。
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2024年5月
フィリップ 僕は「許して」などと言う言葉は聞いていないよ。聞いたのは、悪筆だよ。床の上 でこれを見つけたんだ。 (彼はミラー氏にアスピリンの瓶を手渡す。相手は頷いて、それを ポケットに滑り込ませ
草深み 蟋蟀(こほろぎ)多(さわ)に 鳴く屋前(やど)の 萩見に君は 何時(いつ)か來まさむ (― 草が深々と繁っているのでコオロギが沢山鳴く私の家の庭先の萩を見に、あなたは何時お いでになられますか)
今回はテレンス・ラティガン(1911―1977)の最高傑作である The Deep Blue Sea を 熟読玩味するために翻訳してみようと思います。この作品は理想的な愛情を求めながら、その愛 情が得られず絶望のあ
戀ひつつも 稲葉かき分け 家居(を)れば 乏しくもあらず 秋の夕風(― 家人を恋しく思い ながらも、稲葉をかき分けて田のほとりの小屋にいると、秋の夕風がしきりに吹いてくる) 萩の花 咲きたる野邉に
(彼等は笑う。ロッキーはボトルとグラスをヒューゴに押しやる。パールとマギーの声が、酔っ ぱらいの悲鳴のように聞こえる。一同は皆、二人がドアーから姿を現すと、顔を向ける。二人は 酔っ払い、髪はボサボ
ラリー (心を取り乱して哀願する)行け、キリストの愛を求めて、お前、キチガイの自虐男、お 前自身の為だ。 (ヒューゴがこれで目を覚ました。彼は頭を上げて、無意識にラリーをのぞ き見たが、ラリーも
妹が袖 巻來(まきき)の山の 朝露に にほふ黄葉(もみぢ)の 散らまく惜しも(― 愛しい妻 の袖を慈しみ巻く、それではないが、巻来の山の朝露に色づいている黄葉が散ったら惜しいこと だ) 黄葉(もみ
ホープ (最初は同じような防御的な冷淡さで、ヒッキーを見ずに)誰が気にするよ、(次に突然 ヒッキーを見て、彼の表情には異常な変化が、顔は紅潮し、あたかも彼の精神に近づいてくる希 望でもあるかのごと
(ヒッキーの話の続き)そして俺は彼女に誓っていたんだ、もう二度と過ちを犯さないと。それ で、またもや同じことをエブリンに宣誓したんだよ、今度が本当に最後だって。俺には分かった んだ、彼女の眼が憎悪
秋萩の 戀も盡きねば さ男鹿の 聲い継ぎい継ぎ 聲こそ益(まさ)れ(― 秋萩に対する恋心 もまだ満たされないのに、男鹿が次々に鳴き立てて、妻への恋慕の情が益々募って来るよ) 山近く 家や居(を)るべ
(ヒッキーの話の続き)俺が好きだった唯一の場所は所謂溜まり場だった、そこではタバコを吸う ことも、ビールを飲むことも出来た、自分は途轍もなくおしゃれな男なんだなぞと思いながら。 町には一軒の帆船シ
春されば 霞隠(かすみがく)りて 見えざりし 秋萩咲きぬ 折りて挿頭(かざ)さむ(― 春に なると霞に隠れて見えなかった秋萩が咲いた。折ってかざそうよ) 紗額田(さぬかた)の 野邉の秋萩 時なれば
(ヒッキーの言葉の続き)(非難するように周囲を見回して)言葉にできないが、君等石頭連中じゃ ないからなああ。(惨めに、言葉を発する)地獄だ、君らは俺と一緒にこんなふうに行動するべき じゃないのだよ。
コーラ (無感情に哀願する)確かに、待っていたのよ、全て準備出来てるわ。ここよ。(彼女は 肩越しに手にしていた札束を、相手の顔を見ないで、手渡した。チャックは黙ってそれを受け取 り、疑わしそうな目
第 四 幕 場面 第一幕と同じ。裏部屋でカーテンでバーと仕切られている。翌日の朝、一時半頃、裏部屋 のテーブルの列は新しく整えられている。左のそれは前に出ていて、中庭に面した窓の前は前場 と同様
2024年5月
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フィリップ 僕は「許して」などと言う言葉は聞いていないよ。聞いたのは、悪筆だよ。床の上 でこれを見つけたんだ。 (彼はミラー氏にアスピリンの瓶を手渡す。相手は頷いて、それを ポケットに滑り込ませ
草深み 蟋蟀(こほろぎ)多(さわ)に 鳴く屋前(やど)の 萩見に君は 何時(いつ)か來まさむ (― 草が深々と繁っているのでコオロギが沢山鳴く私の家の庭先の萩を見に、あなたは何時お いでになられますか)
今回はテレンス・ラティガン(1911―1977)の最高傑作である The Deep Blue Sea を 熟読玩味するために翻訳してみようと思います。この作品は理想的な愛情を求めながら、その愛 情が得られず絶望のあ
戀ひつつも 稲葉かき分け 家居(を)れば 乏しくもあらず 秋の夕風(― 家人を恋しく思い ながらも、稲葉をかき分けて田のほとりの小屋にいると、秋の夕風がしきりに吹いてくる) 萩の花 咲きたる野邉に
(彼等は笑う。ロッキーはボトルとグラスをヒューゴに押しやる。パールとマギーの声が、酔っ ぱらいの悲鳴のように聞こえる。一同は皆、二人がドアーから姿を現すと、顔を向ける。二人は 酔っ払い、髪はボサボ
ラリー (心を取り乱して哀願する)行け、キリストの愛を求めて、お前、キチガイの自虐男、お 前自身の為だ。 (ヒューゴがこれで目を覚ました。彼は頭を上げて、無意識にラリーをのぞ き見たが、ラリーも
妹が袖 巻來(まきき)の山の 朝露に にほふ黄葉(もみぢ)の 散らまく惜しも(― 愛しい妻 の袖を慈しみ巻く、それではないが、巻来の山の朝露に色づいている黄葉が散ったら惜しいこと だ) 黄葉(もみ
ホープ (最初は同じような防御的な冷淡さで、ヒッキーを見ずに)誰が気にするよ、(次に突然 ヒッキーを見て、彼の表情には異常な変化が、顔は紅潮し、あたかも彼の精神に近づいてくる希 望でもあるかのごと
(ヒッキーの話の続き)そして俺は彼女に誓っていたんだ、もう二度と過ちを犯さないと。それ で、またもや同じことをエブリンに宣誓したんだよ、今度が本当に最後だって。俺には分かった んだ、彼女の眼が憎悪
秋萩の 戀も盡きねば さ男鹿の 聲い継ぎい継ぎ 聲こそ益(まさ)れ(― 秋萩に対する恋心 もまだ満たされないのに、男鹿が次々に鳴き立てて、妻への恋慕の情が益々募って来るよ) 山近く 家や居(を)るべ
(ヒッキーの話の続き)俺が好きだった唯一の場所は所謂溜まり場だった、そこではタバコを吸う ことも、ビールを飲むことも出来た、自分は途轍もなくおしゃれな男なんだなぞと思いながら。 町には一軒の帆船シ
春されば 霞隠(かすみがく)りて 見えざりし 秋萩咲きぬ 折りて挿頭(かざ)さむ(― 春に なると霞に隠れて見えなかった秋萩が咲いた。折ってかざそうよ) 紗額田(さぬかた)の 野邉の秋萩 時なれば
(ヒッキーの言葉の続き)(非難するように周囲を見回して)言葉にできないが、君等石頭連中じゃ ないからなああ。(惨めに、言葉を発する)地獄だ、君らは俺と一緒にこんなふうに行動するべき じゃないのだよ。
コーラ (無感情に哀願する)確かに、待っていたのよ、全て準備出来てるわ。ここよ。(彼女は 肩越しに手にしていた札束を、相手の顔を見ないで、手渡した。チャックは黙ってそれを受け取 り、疑わしそうな目
第 四 幕 場面 第一幕と同じ。裏部屋でカーテンでバーと仕切られている。翌日の朝、一時半頃、裏部屋 のテーブルの列は新しく整えられている。左のそれは前に出ていて、中庭に面した窓の前は前場 と同様
ホープ (のろくさく)幸運を祈るよ、ウイリー。 (ウイリーは外に出て、右に折れる、そう している間にジミーは、病的な興奮状態で、バーに静かに近づき、こっそりとラリーのウイスキ ーグラスに手を伸ば
マクゴロイン 彼は嘘つきだ、マック。君は俺が会いたかった正にその人なのだよ。君のケース を俺が取り扱うとすれば、別れる前に話し合いをしなければいけない。 マクグロイン (侮辱するように)話さないだ
ロッキー そう、この大馬鹿野郎。お前をからかっているだけだよ。 ウエットジョーエン (怒って)そりゃあ嘘だ。今朝俺が仕事を手にするのを見るだろう、俺はそ れを薄のろライミー紳士とあの嘘つきヒッキー
ジョー (昼食用のカウンターの背後で、迷信担ぎの様に考え込んで)君はただしいよ、ラリー。 悪運がヒッキーが来た時にドアから入ってきたんだよ、俺は賭博師だから感覚で悪運は分かるん だ。(それから反抗
ロッキー (考えの続きに戻るように)そうだよ、もし彼女が自殺したとしたら、君はヒッキーに 謝らなければいけないだろう、彼がガラクタ商売をして此処でキチガイ沙汰の振る舞いを演じて いるのを理解できる
暇(いとま)無み 來(こ)ざりし君に 霍公鳥(ほととぎす) われ斯(か)く戀ふと 行きて告げ こそ(― 暇がないので、訪ねて来なかった方に、ホトトギスよ、私がこんなに恋していると、 行って告げておくれ)
何しかも ここだく戀ふる 霍公鳥 鳴く聲聞けば 戀こそまされ(― どうしてホトトギス をこんなに恋しく思うのだろう。その声を聞けば、一層恋心が募ってくると言うのに) 獨(ひと)り居て もの思うふ
波の上(うへ)ゆ 見ゆる小島の 雲隠(かく)り あな息(いき)づかし 相別れなば(― 波の上から見える小島が雲に隠れるように、あなたが遠く別れて見えなくなって溜息がでること しょう。別れてしまっ
百濟野の 萩の古枝(ふるえ)に 春待つと 居(を)りし鶯 鳴きにけむかも(― 百済の 古い枝で春と待つとてじっとしていた鴬は、もう鳴いたであろうか) わが背子が 見らむ佐保道(さほぢ)の 青柳
福(さきはひ)の いかなる人か 黒髪の 白くなるまで 妹が聲を聞く(― どんな大きな 幸せの人なのか、黒い髪が白くなるまでも、妻の声を聞くとは。私は妻を早く亡くしてしまった と言うのに) わ
大船に 眞楫(まかじ)繁(しじ)貫(ぬ)き 漕ぎ出(で)なば 沖は深けむ 潮は干( ひ)ぬとも(― 大船に両舷の櫓を多く備えて漕ぎ出してしまった上は、沖の方はきっと深いこ ととであろう。たとい潮は
明日香川(あすかがは) 七瀬(ななせ)の淀に 住む鳥も 心あれこそ 波立てざらめ(― わがままなあなたへ、明日香川の多くの淀のある七瀬の淀に浮かんで住んでいる鳥も、心がある からこそ波を立てずに
わが情(こころ) ゆたにたゆたに 浮(うき)ぬなは邉(へ)にも 奥(おき)にも 寄りか つましじ(― 私の心は浮いているジュンサイの如るくにゆらゆらして定まらないので、この恋 を進めるとも進めない
冬ごもり 春の大野(おほの)を 焼く人は 焼き足らぬかも わが情(こころ)焼く(― 春の大野を焼く人はまだ焼き足りないからだろうか、私の心を焼き恋の心で焦がれさせること だ) 葛城(かづら
河内女(かふちめ)の 手染(てぞめ)の絲を くり反(かへ)し 片絲にあれど 絶えむと 思へや(― 弱い片糸ではあるけれども、頼りない片思いではあるけれども、切れようとは思わ ないことだ) 海
今つくる 斑(まだらの)衣 面影(おもかげ)に われに思ほゆ いまだ着ねども(― 今作 っているまだら染めの衣は、眼前にありありと出来栄えが目に見える。まだ着てはいないけれど も) 紅(くれ
梓弓(あづさゆみ) 引津邊(ひきつべ)にある 莫告藻(なのりそ)の 花採(つ)むまでに 逢はざらめやも 莫告藻(なのりそ)の花(― 福岡県のひきつの辺りに有るナノリソ・ほんだ わら の花よ。その
兒らが手を 巻向山(まきむくやま)は 常にあれど 過ぎにし人に 行き纏(ま)かめやも (― 巻向山は常に変わらずにあるけれども、去ってしまった人の所に行って、再び手を巻くこ とは出来ない。つまり、
君がため 浮沼(うきぬ)の池の 菱(ひし)採(と)ると わが染(し)めし袖 濡れにけ るかも(― あなたの為に泥深い沼で、菱の実を採ろうとして、私が自分で染めた袖を、濡らし てしまった事です)
静けくも 岸には波は 寄せけるか この家通(とほ)し 聞きつつ居(を)れば(― 静か に波は寄せているのだなあ。この家を通して外の様子をじっと耳を澄まして聞いていると) 高島の阿戸(あと) 白
磯に立ち 沖邊を見れば 海藻刈舟(めかりぶね) 海人(あま)漕ぎ出(つ)らし 鴨(か も)翔(かけ)る見ゆ(― 磯に立って沖の方を見やると、藻刈り舟を海人が漕ぎ出したらしい い。鴨が空高く飛ぶのが
大葉山 霞たなびき さ夜深(ふ)けて わが船泊(は)てむ 泊(とまり)知らずも(― 大 葉山に霞が棚引いていて、夜は更けていくが、私の舟の停泊する場所がまだ分からずに、頼りな い気持であるよ)
紀の國の 雜賀(さひか)の浦に 出で見れば 海人(あま)の燈火(ともしび) 波の間ゆ 見ゆ(― 和歌山市の雑賀の浦に出て見遣ると、海人の灯火が波の間から見えるよ) 麻衣(ころも) 着ればなつか
吾妹子(わぎもこ)に わが戀ひ行かば 羨(とも)しくも 並び居(を)るかも 妹と背の 山(― 吾妹子を慕いつつ行くと、羨ましくも妹山と背の山とが仲良く並んでいることだ) 妹(いも)があたり 今
印南野(いなみの)は 行き過ぎぬらし 天(あま)づたふ 日笠(ひかさ)の浦に 波立てり 見ゆ(― 印南野はもう通り過ぎたらしい。日笠の浦で波立っている様子が見える) 家にして われは戀ひむな