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2010/04/07

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  • EPISODE 2 ドーマン伝説の村(11)

    まあ、ワガハイの努力が功を奏したというか、何が功なんだかはよく分からんが、ともあれ尾路血先生、付け髭をセロテープでくっつけ、ドーマンさんの作務衣を着込んで、しげしげと鏡を見ていた。 ――どうかな、本当に似てるかな? ――そっくりよ、パパ。でも、口をきいちゃダメよ。 ――何でだ。 ――イントネーションでわかっちゃうのよ。さっきだって、電話ですぐにここの人じゃないってバレたぐらいだもの。話は私がするわ。 そう言いながら晴香が居間へと向かい、少したってから尾路血先生が重々しい動作で居間に現れる。 部屋の真中に三人の男女が座っていた。 真ん中に枯れ木のような老人、その..

  • EPISODE 2 ドーマン伝説の村(10)

    社務所に戻って、帰り支度をしていると、台所に置いてある有線電話が鳴った。 ――久坂さんかな? 晴香が出ると、年老いた老婆の声が聞こえてきた。 ――今日の午後、御祈祷を頼んじょりました、武邑ですが……。実は、お爺さんの具合が急に悪うなりましたんで、朝一番に変えてもらわれへんか思て、電話しましたんじゃ。 ――はあ、それがこちら、今とても立て込んでまして、とてもそのような時間が取れそうもない状態なんです。 ――あれれれれ、妙な喋り方やね。あんた、美希ちゃん違うん? ――はあ、その、従姉妹の晴香と言いますが、東京から遊びに来てるんです。 晴香はとっさに嘘をつい..

  • EPISODE 2 ドーマン伝説の村(9)

    翌朝、猛獣のような唸り声を聞いて、尾路血先生はバネ仕掛けの人形のように飛び起きた。 手近にあった布団を頭からかぶり、隣の台所に避難して居間の様子を伺う。 久坂もさすがに眼をこすりながら起きた。 ――おいっ、久坂くん……危ないぞ。どうやら 部屋の中に猛獣がいるらしい。 ――猛獣?……ですか? 慌てもせずに周りを見回してから、アッと叫んだ。 ――ドーマンさん、ドーマンさん、大丈夫ですか。 ウーン、ウーンとひどく唸りながら、半覚醒状態でドーマンさんが上半身を起こす。 鼻が赤い。まるでサーカスのピエロが使う付け鼻のように真っ赤である。 オモチャかと思ったがそう..

  • EPISODE 2 ドーマン伝説の村(8)

    ――これはこれは、ようおいでんさった。とりあえずこちらに参られよ。 そう言われても、何やら妙な具合だ。 まるで、楽屋裏で突然スターの私生活を覗き見してしまったような居心地の悪さがある。 それでも、言われるままにちゃぶ台の前に3人で正座した。 ――いやはや、びっくりした。兄さんが来たかと思いましたわい。 ――兄弟がおいでになるんですか。 久坂が訊くと、 ――いや何、そんなものはおりゃあせん。本当にいたら、間違えるところだったという話じゃ。 どうも話が噛みあっていない。 ――これは裏山で採ったキノコの雑炊じゃ。腹がへっておったら、少しぐらい喰ってもいい..

  • EPISODE 2 ドーマン伝説の村(7)

    早めの夕食を終えた、尾路血先生たちは神社に向かっていた。 さすがに一日寝ていた先生はいつもの元気を取り戻していたな。 ――わははははは。ドーマンさんって言ったって、要は人間だろ。あんまり緊張しすぎるのはドーマン?……なんてな。 妙にはしゃいでいるのだ。 ――ねえ、そんなバカなことばかり言ってると、バチがあたるわよ。 尾路血先生、急にぎょっとしたような顔であたりを見回したな。 そこは駐車場から神社の境内へと続く長い石段で、周囲は鬱蒼とした森に包まれている。 どこからかホーホーとフクロウの啼き声が聞こえる。 梢の隙間から見える空も青から濃紺へ、そして燃えるような紫に..

  • EPISODE 2 ドーマン伝説の村(6)

    久坂が現れてから2時間ばかり過ぎた頃、皆は湯気の立つ鍋を囲んでいた。 日が暮れるとひしひしと寒さが押し寄せる季節である。 ――先生、さっきは失礼しました。とりあえず一杯いきましょうや。 ――いやあ、実はそっちの方はからきしダメな方でして……。 ――ええっ、先生ともあろうお方が、全然呑まれんのですか? 祖父に言われて、尾路血先生、恥ずかしそうに頭を掻いたな。 ご存知のように先生、顔に似あわず右党で、酒の方はからっきしダメな口だ。 ――何言ってんのよ、パパ。せっかくだから乾杯ぐらいしなさいよ。 そんな姿をじっと見ていた、田舎饅頭ならぬ久坂の祖母が、 ―..

  • EPISODE 2 ドーマン伝説の村(5)

    ――先生、こちらへ。 ――うむ。 何だか妙な具合になってきたが、促されるままに三段重ねの座布団の上に座った尾路血先生。さすがにバランスが悪く、グラグラしている。 チャンチャカスチャラカ、スッチャンチャン……てな音楽が聞こえてきそうな雰囲気の中で、老夫婦は正座しゆっくりと頭をさげた。 尾路血先生はバランスを取るのに一所懸命である。 晴香はなんだか置き去りにされたような気分で、老夫婦の後ろに座った。 柱時計がコチコチと音をたてている。ぎごちない時間が刻々と流れていく。 と、祖父が頭をあげて、申し訳なさそうに言った。 ――先生、そろそろよろしゅうお願いいたします。..

  • EPISODE 2 ドーマン伝説の村(4)

    久坂の祖父の家は通りに面した古い屋敷だった。 薄暗い土間がずっと奥まで続いている。声をかけてみたが反応はない。 ――誰もいないのかしら。 ――そんなことはないだろう。今日着くことは連絡してあるはずだぞ。 久坂はドーマン様の娘に逢うために、車に乗ってそのまま診療所に行ってしまったのだ。 ――とりあえず、入ってみようじゃないか。さあ、ワシは後からついていくから。 ――ええっ。私が先に? ――そりゃあそうだ。久坂くんのお爺さんたちはかなり高齢だからね。まあ心根は優しいが、見かけはゴツいワシがいきなり現れたら、むこうはどう思うだろう? 晴香はふくれっ面をした..

  • EPISODE 2 ドーマン伝説の村(3)

    ――それより、芦屋道満の末裔がいるって話を聞いたんだが、知ってるか。 ――ドーマンさんか……。 文成は泣き笑いのような変な表情を浮かべた。 ――まあ、評判にはなってるな。変な話やが、今や我々の最大のライバルみたいなもんや。神無木山の中腹の神社おるらしいが、病人がぎょうさん押し寄せてるらしいで。最近、患者がうちに来んようになって、どうしたんか訪ねてみると、大概あっちに行っとるわけや。 ――でも、病院と神社じゃ目的というか、意味合いが大分違うんじゃない。 晴香が訊いた。 ――そりゃあ、理屈ではそうやが、ここいらでは通用せんな。薬よりもお札(ふだ)、診療よりも祈祷..

  • EPISODE 2 ドーマン伝説の村(2)

    山陰線春日井駅前は秋の日差しの中に閑散としていた。 日差しは強いが、風は冷たい。ワガハイはいつものウェストポーチに潜んでいた。 バスを待っているのだが、すでにかなり長い間ここにいる。久坂は晴香と一緒いるだけで嬉しいらしいが、尾路血先生はずっと苦虫を噛み潰したような顔をしている。 三人で駅前のベンチに座っていると、背の低い童顔の男がニコニコと笑いながら近づいてきた。 ――久坂やないか。久しぶりやな。こんなところで何しとんのや? ――おお、文成。相変わらず元気そうだな。 ――もしかして、じい様のところか。 ――うん、バスを待ってるんだが、まだ三十分ばかりある。しか..

  • EPISODE 2 ドーマン伝説の村(1)

    久坂が久しぶりに尾路血事務所に顔を出した。 晩秋のやたらと寒い日で、雪でも降り出しそうな曇天だったな。 あんまり寒いので、ワガハイも机に上にあった先生のニットキャップに潜り込んでおった。 ――全く、ついこないだまでうだるような暑さだと思ったら、もうこの様だ。全く天気の神様は何を考えとるんだか。こういうのをノー天気というのかな。 柚子ゆべしを口に放りこみながら、尾路血先生が文句をいう。 ゆべしは久坂が土産に持ってきたものだ。 ――先生。東京はそれでもまだ暖かい方ですよ。 ――しかし、キミは確か岡山に行っとったんじゃないか。むこうはポカポカ陽気だろう。 ――それ..

  • EPISODE 1 あとがき

    「ワガハイは鼠である」をお読みいただきありがとうございます。 この小説は以前書いた小説の続編となるものです。 初めに書いたものは普通のパロディ小説でしたが、少し込み入ったストーリーで、あまり読みやすいものとはいえませんでした。 そこで、今回思い切ってバッサリと枝葉をカットし、ケータイ小説風に新たに書き起こしてみました。 と言っても、自分ではケータイ小説を読んだことはなく、書くのも初めてです。 果たして、こんなモノを読む人がいるんだろうか??? という感じで始めましたが、予想を超えるアクセス数に驚いています。(有名ブログに比べれば微々たるものですが……) 嬉しいと共に、ちょっと身..

  • EPISODE 1 太平洋デパートの亡靈(最終回)

    数日後、尾路血先生は久坂と一緒に田園調布を歩いていた。 さすがにこのままでは礼を失する……と思ったわけではないようだ。 晴香にボロクソに言われた挙句、ようやく説得されてシブシブここまで来たのである。 ――先生、このあたりが高級住宅地と言われる場所ですよ。創作者としては、一度は実物を目にしたい場所ですよね。 久坂という男、さすがに先生との付き合いが長いので扱いがうまい。 高級住宅が立ち並ぶ中で、さすがに太平邸が際立って大きいわけではないが、長いアプローチを通って玄関前に立つと、その大きさに圧倒される。 家政婦が出てきて、クラッシクな高級家具で埋め尽くされた客間に案内される..

  • EPISODE 1 太平洋デパートの亡靈(13)

    ――おお、ここだ。久坂くん。ここに……。 反射的に手を上げて立ち上がろうとしたのはいいが、尾路血先生、そこがテーブルに下だということをすっかり忘れていたのだな。 ――グワッ。 頭頂部をイヤというほど強打し、半回転して仰向けに倒れ込んだ。 しばし頭を抱えてウンウン唸っていたが、今はこんなことをしてる場合ではない。 とにかく立ち上がろうと上を見たら、暗がりの中でテーブルのヘリが仄かに光って見える。 何事かと目をこらすと、そのヘリから白いものが顔を出した。 ……赤ちゃん幽霊。 そいつがいきなり先生めがけてジャンプしてきた。 尾路血先生、白目を剥き、泡を吹いたな。 ..

  • EPISODE 1 太平洋デパートの亡靈(12)

    初めに血痕をみつけたのはナカジだった。 4Fを探索する前にトイレに入った時のことである。 女子トイレの前に血痕があり、それは点々とフロアの中心部に向かって続いていた。 ――誰の血でしょうか? 鴨志田君の問いに社長はクビを捻った。 ――とにかく急いで探そう。 ――社長、それなんですが、こうして一緒に歩いていても効率が悪いですよね。 鴨志田君が提案し、とりあえず相手に気づかれないよう懐中電灯の明かりを消し、横一列になって歩くことになった。 それぞれ5メートルほどの距離をあけ、誰かが何かを見つけたら、その人間が光を2度点滅させる。他の人間はその光の前方を取り囲むよ..

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