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財部剣人の館(旧:アヴァンの物語の館) https://blog.goo.ne.jp/avantgarde-october

「マーメイド クロニクルズ〜第三部配信中!」「第一部 神々がダイスを振る刻」幻冬舎より出版中!

財部剣人
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2010/03/19

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  • 第一部 最終章−7 アルゴス登場

    その時、急ブレーキの音が響いた。クライスラーのジープに乗ったビルがようやく駆けつけてきた。「すまん。さっき、留守電を聞いた!」「おそすぎ!」ナオミが、絞り出すような声で言う。「孔明、まだ生きてるか?オムニポーテントの俺様にまかしとけ」うめき声だけだが、どうやら孔明もまだ生きているらしい。「ビル、ゾンビどもをなんとかして!」「ノー・プロブレム!本邦初公開、これがアルゴスだ」えっ、これが?ナオミがそう思うのも無理はなかった。図体ばかり大きくて不格好なまるで逆立ちしたカバにしか見えない代物だった。「ファイン・シェイプだろ?トロイから帰ったオデュッセウスをご主人様と見破った忠犬から取った名前だぜ」ナオミは思った。(エッ、でもその後、忠犬アルゴスは喜びのあまり死んだというオチがつくんだじゃなかったっけ)ゴーグルを着けたビ...第一部最終章−7アルゴス登場

  • 第一部 最終章−6 悪夢の行方

    ナオミは次々とゾンビたちを倒していった。しかし、生体エネルギーを相手に打ち込むには多量のエネルギーを消費した。いくらゾンビたちを救済しようと思っていても、すでに思考や判断能力を失った彼らの攻撃が止むことはなかった。負のエネルギーをはじき飛ばされたゾンビはもう再生しなかったが、ナオミと孔明はすでに多くのゾンビを作り過ぎていた。アクアソードが切れ味を失い始め、真珠の戦闘服もだんだん攻撃をはじき返せなくなってきた。戦闘服はあくまで思念が形を持っただけであり、アクアソードも水を思念によって刀の形状にしただけで気力と体力が衰えれば戦闘能力は衰えてしまう。ナオミは武器をあきらめて正拳突きと蹴りに生体エネルギーを込めてゾンビに直接打ち込み始めた。だが、ゾンビたちの攻撃をだんだんとかわせなくなってくる。ケネスの、体力勝負は不利...第一部最終章−6悪夢の行方

  • 第一部 最終章−5 ラウンドスリー

    闇夜に輝きが走った。真珠の戦闘服に身を包んだ姿になると海神界親衛隊員時代の記憶が戻ってきた。人間界に来てから黒髪だった髪がマーメイド時代の栗色の巻き毛に戻っていた。右手を高く差し出すと雨でアクアソードができた。“ラウンド・スリー”!戦闘準備完了だ。「ついに目覚めたわね、ナオミ」マクミラがつぶやいた。心眼で何でも見ることが出来る彼女だが、火の玉を打ち上げた時には半径五十メートルで起こっていることなら波動のチェックによって状況を知ることができた。コウモリには飛びながら発した超音波が物にぶつかり跳ね返って来る音によって、距離や形、大きさを把握するエコーローケーションという能力がある。盲目のヴァンパイアであるマクミラも、同様の能力を発達させていたのかも知れない。「そうこなくては。相手が弱過ぎるゲームなど価値がない。さっ...第一部最終章−5ラウンドスリー

  • 第一部 最終章−4 ビビリ

    だが、ゾンビたちは腕だけではなく足も進化させていた。折られた方の膝で地面をロケットのように蹴り出すと孔明を飛び越えてナオミに襲いかかった。振り返った孔明は甲殻類の手を持ったゾンビが腕を車に突き刺すのを見た。ナオミィー!わけのわからない叫び声を上げながら孔明はゾンビに向かって行った。彼らは、龍の逆鱗に触れたのだ。自動車電話を掴んだ瞬間、カニばさみが上から降ってきてナオミは泣き出しそうになった。次に、孔明に蹴り飛ばされたゾンビが前方に飛んでいくのが見えた。ダメ、こんなところでビビってちゃ。気を取り直して短縮ダイヤリストを見て#2を押した。その時、かかってきたこともないのに#1に自分の名が書いてあるのに気づいた。なぜと思ったが、電話はすでにビルを呼び出し始めていた。五回ほどダイヤル音がして相手が出た。「はい、こちらは...第一部最終章−4ビビリ

  • 第一部 最終章−3 死への旅路の終わり

    ゾンビたちはちぎられた腕や折られた膝や頭から泡を出しながら怪異な変容を遂げつつあった。最初に倒されたゾンビがバネ仕掛けのおもちゃのように立ち上った。甲虫類のようなハサミがついた左腕が復活したのみならず首がふた回りも太くなっている。他のゾンビたちも続々立ち上がる。イカのようなぬるぬるした鞭のようにしなる手が復活したゾンビや剛毛に覆われた熊のような爪を持ったゾンビなど、さしずめ悪夢の展覧会場になりつつある。だが、次の光景はナオミと孔明を真に震撼させた。ゾンビたちのちぎられた腕がピクピクと動いて再生を始めていたのだ。「そんな、ドール・バナナって、メイド・イン・ハワイのボケかましてる場合じゃないわね。こいつらまるでひとつ首を切り落とすと双頭の首が生えてくる冥界のヒュードラじゃない」“ラウンド・ツー”の開始である。「宴は...第一部最終章−3死への旅路の終わり

  • 第一部 最終章−2 雨中の闘い

    ナオミは、前方に太さ五、六メートルはありそうな銀杏の木があるのを確認するとゾンビに向かって走り出した。ボロボロになった相手の緑色の顔を見ると逃げ出したい気分になったが勇気を奮ってスピードを上げていく。ワン、ツー、スリー!かけ声をかけて飛び上がる。ゾンビの肩をジャンプ台にはるか先まで飛ぶ。銀杏の幹で両足を一度縮めてから伸ばした右足を三角跳びの要領でゾンビにかます。後頭部にまともに入ったはずだが、ゾンビはまるでハエでも止まったような表情をしている。次の瞬間、ゾンビの右手にレザーパンツの左足首をガッチリ掴まれた。にやっ、とゾンビが笑った。思いっきり身体をひねって左足でゾンビの顔を蹴り飛ばす。ボキッ。イヤな音がして首が不自然にねじれる。それでも離れないゾンビの右手が軽々とナオミの身体を振り回す。一回、二回、三回、四回、...第一部最終章−2雨中の闘い

  • 第一部 最終章−1 マクミラのナオミとの邂逅

    「だけど大道芸なら時間と場所を間違えてるんじゃない?」「昼は美容のため睡眠を取ることにしてるの。わたしの実の父はヴラド・ツェペシュ。冥界の大将軍よ。人間たちは吸血鬼ドラキュラとかふざけたあだ名をつけているようだけど」ジャグリングを続けながらマクミラが言った。「父親がドラキュラなら母親はサーカス団出身かしら。でも、いいの?初対面の相手に秘密を漏らしてしまって」「堂々と名乗り会ってから戦いたかったしお礼もしなければと思ってね」「お礼?」「わたしの母はサラマンダーの女王。あなたと出会うまで封印されていた能力が目覚めつつある。あなたもマーメイドの力を感じているはず。ついにその時が来たわ。あなたにも目覚めさせていただくわ。もっともあなたが生き残れたらの話だけど」「ナオミ、引っ込んでろ!化け物の相手は、俺がする」回りの空気...第一部最終章−1マクミラのナオミとの邂逅

  • 第一部 序章〜第8章のバックナンバー

    財部剣人です!おかげさまで第一部の再配信も来週からの最終章とエピローグを残すのみです。さらに第三部の完結に向けてがんばっていきますので、どうか乞うご期待。「マーメイドクロニクルズ」第一部神々がダイスを振る刻篇あらすじ深い海の底。海主ネプチュヌスの城では、地球を汚し滅亡させかねない人類絶滅を主張する天主ユピテルと、不干渉を主張する冥主プルートゥの議論が続いていた。今にも議論を打ち切って、神界大戦を始めかねない二人を調停するために、ネプチュヌスは「神々のゲーム」を提案する。マーメイドの娘ナオミがよき人間たちを助けて、地球の運命を救えればよし。悪しき人間たちが勝つようなら、人類は絶滅させられ、すべてはカオスに戻る。しかし、プルートゥの追加提案によって、悪しき人間たちの側にはドラキュラの娘で冥界の神官マクミラがつき、ナ...第一部序章〜第8章のバックナンバー

  • 第一部 第8章−8 最悪の悪夢

    孔明の声で、ナオミは我に返った。「いったいどうした。ゾンビみたいな奴が明日の会場に現れるって言うのか?まさか・・・・・・」そう言いながら孔明も今まで感じていた不安の正体に行き当たってショックを受ける。「ねえ、会場に急いで。イヤな予感がする」深夜のローデン・オーデトリアムの周囲はひっそりと静まりかえっていた。卒業生で国際的な演奏家ジョナサン・ローデンの寄付によって七十一年前建てられたオーデトリアムは演劇やコンサートやまれに講演会に使われるロココ調の建物で、キャンパスで最も大学の伝統を感じさせる場所の一つだった。オーデトリアムに着くと孔明が止める間もなくナオミは傘もささずに雨中に飛び出した。ドアにはもちろん厳重に鍵がかかっていた。辺りを見回すが、誰もいない。だが、雨中でとぎすまされたマーメイドの感覚が何かが近くにい...第一部第8章−8最悪の悪夢

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