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財部剣人の館(旧:アヴァンの物語の館) https://blog.goo.ne.jp/avantgarde-october

「マーメイド クロニクルズ〜第三部配信中!」「第一部 神々がダイスを振る刻」幻冬舎より出版中!

財部剣人
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2010/03/19

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  • 第一部 第5章−3 マウスピークス

    一九九一年一月の最終金曜日。ハイスクール最終学年になってもナオミはアイデンティティギャップに悩み続けていた。身長一六六センチ体重四十九キロと体格こそすくすくと育っていたが、人とマーメイドとしての精神の発達はいまだアンバランスだった。頭の中にあったのは考えても答えのでない疑問の数々。人間であるとはいったいどういうこと?生きるって何のため?わたしのマーメイドの心は何のため?こうした疑問は成長するにつれて膨らむばかりだった。さらに、率直な物言いをするアメリカ人の中で暮らしいてさえ「言語」というシステムには苦労させられた。人が言うことと思うことの間には違いがあると知るまで物議をかもし出したのは一度や二度ではなかった。テレパスの存在を確認してみたいならば自殺者リストを調べてみるとよい。悪意に満ちた内面とお愛想の差違にさら...第一部第5章−3マウスピークス

  • 第一部 第5章−2 神海魚ナオミ

    「おやおや、深海魚ならめずらしくないが。神界魚(ルビ)のご訪問とはね」「おばあ様・・・・・・」「こんな近くにまで来られるほど大きくなったんだね。でもマーメイドはやたらに涙を流すもんじゃないよ。別れはつらいかもしれないけれど新しい出会いのためさ。それに夏海とお前たちの運命はちゃんとつながってる。しばらくしたら、どこかでちゃんと絡み合うことになってる。さあ、ケネスが心配するよ。ゆっくりお上がり」そうか、また夏海とはどこかで会えるのか。安心したナオミはゆっくり上を目指して行った。その時、トーミは夏海をこの先待ち受けているのがやっかいごとであり、ナオミがそのトラブルに引き寄せられていくために再会出来るとは伝えなかった。その代わり独り言の思念を発した。ナオミや、お前は困っているみんなを助けてやるんだろ。儂には何もできない...第一部第5章−2神海魚ナオミ

  • 第一部 第5章−1 残されし者たち

    強がりながらも夏海を失って、ケネスはすべてにどうでもよくなってしまった。何をするわけでもなく飲んだくれているケネスにナオミが言った。「ねえ、海に連れてって」「うるせえ。そんなに行きたきゃ一人で勝手に行け。どうせクソ野郎に拾われたことを後悔してるんだろ。とっとと海の底に戻っちまえ!」下を向いているナオミにケネスが言った。「おい、自分でも口が悪いのはわかってるんだが、今のは言い過ぎた」「違う・・・・・・」「違うって何だ?」「ナオミはね、ケネスを、元気づけられなくて悲しいんだよ」今度はケネスがうつむく番だった。「ねえ」「何だ?」「ナオミを拾って後悔してる?」不安を隠せない風に言った。「バカ言ってんじゃねえ。こんないい子が他のどこにいるってんだ」ケネスは照れ隠しにナオミの髪をクシャクシャにした。「ウッキッキー!海に行こ...第一部第5章−1残されし者たち

  • 第一部 序章と第1〜4章のバックナンバー

    財部剣人です!第三部の完結に向けてがんばっていきますので、どうか乞うご期待!「マーメイドクロニクルズ」第一部神々がダイスを振る刻篇あらすじ深い海の底。海主ネプチュヌスの城では、地球を汚し滅亡させかねない人類絶滅を主張する天主ユピテルと、不干渉を主張する冥主プルートゥの議論が続いていた。今にも議論を打ち切って、神界大戦を始めかねない二人を調停するために、ネプチュヌスは「神々のゲーム」を提案する。マーメイドの娘ナオミがよき人間たちを助けて、地球の運命を救えればよし。悪しき人間たちが勝つようなら、人類は絶滅させられ、すべてはカオスに戻る。しかし、プルートゥの追加提案によって、悪しき人間たちの側にはドラキュラの娘で冥界の神官マクミラがつき、ナオミの助太刀には天使たちがつくことになる。人間界に送り込まれたナオミは、一人の...第一部序章と第1〜4章のバックナンバー

  • 第一部 第4章−10 夏海の置き手紙

    次の日、喪服のような服を着て夏海は出て行った。以前出演したホノルルの舞台が評判になり自分目当ての客が増えたのを夏海はよろこんでいた。だが、数ヶ月前から、君には才能がある、チャンスをあげるからニューヨークに来ないかとある劇団に誘われて気持ちが揺れていた。仕事から帰ったケネスは、置き手紙を見つけた。ケネスへいままでありがとう。大きなあなたの愛に包まれてこのまま自分のしたいことが出来なくなってしまうことが怖いの。ゴメンナサイ。劇団に誘われてチャンスだと思いました。どうしても自分の可能性を試したい。心が動いたのは、昔の恋人がニューヨークにいると聞いたこともあります。さびしい時に出会ってやさしくしてもらったくせになんて女と思います。でも自分を偽りながら暮らせない。あなたは何も悪くない。私がわがままなだけ。ナオミを置いてい...第一部第4章−10夏海の置き手紙

  • 第一部 第4章−9 チョイス・イズ・トラジック

    ナオミは、何ごとか考えている様子で言った。「おもしろい?」「はぁ?」夏海は間の抜けた声を出した。「何をしたらいいか決めるのって、おもしろいかって聞いてるの」「チョイス・イズ・トラジックってわかる?」夏海は思わず微笑んだ。「チョイス・イズ・チョラジック?」「選択はいつも悲劇的と言うことよ」「難し過ぎる。わかんない」「ひとつのことを選べば別のことは選べなくなるという意味よ。ケーキをお昼のデザートに食べてしまえば三時のおやつにそのケーキは食べられないでしょう」「トラジディーだ」「トラジディーね。人は生きる限り決定を迫られる。そんな時、はっきりした答えを出すのは難しいわ。せいぜい出来るのは、やってみるメリットと失われるデメリットを比べてみること。天秤の使い方はもう習ったでしょう。ディベートを知っているのは心の天秤がある...第一部第4章−9チョイス・イズ・トラジック

  • 第一部 第4章−8 なぜ、なぜ、なぜ

    プライマリースクール時代に、ナオミはどんな科目でも言われた通りに勉強する優等生たちの気持ちが理解出来なかった。なぜそうなるのか?なぜ別の考えをしてはいけないの?なぜ答えが複数あってはいけないの?なぜ、なぜ、なぜ?教師がいやがる質問ばかりをしては皆のからかいの対象になった。マクベスに登場する魔女たちなら「いいは悪いで、悪いはいい」と言うところだ。だが、「好きは好きで、嫌いは嫌い」を信条とするナオミは思ったことをそのまま口にしては周りを唖然とさせた。「正しいことは正しい」はずだが、世の常はそうでなかった。「天使の無垢さ」、「悪魔の狡猾さ」という言葉はあっても「マーメイドの正直さ」という表現は人の語彙にないようだった。まるで、よい部分や悪い部分は想像上の存在に任せるくせに、普通に行動するのは自分に任せろと勘違いしてい...第一部第4章−8なぜ、なぜ、なぜ

  • 第一部 第4章−7 ビッグ・パイル・オブ・ブルシュガー

    「おい、六本指のシュリンプ!」月曜日にナオミが学校に行くと、いつものようにオーエンがちよっかいを出してきた。ナオミは振り返った。「なにか用?女にしか威張れないウィンプ(注、口語でwimpは弱虫の意味)」そう言ってナオミは足払いをかけた。転んだオーエンには何が起こったかわからなかった。次に、尾てい骨に激痛を感じて大声で泣き出した。マークとジムは親分がやられてどうしていいかわからないようだった。しばらくすると、なさけない顔をしているオーエンを置き去りにして一目散に逃げ出してしまった。いままではやり返したらどれだけ気持ちがいいかと思っていたけど・・・・・・くだらない相手をやっつけるのって山盛りのウンチになった気分だわ。帰宅するとケネスが待っていた。「その顔色だと性根の腐ったクズ野郎には勝ったらしいな。どうだ気分は?」...第一部第4章−7ビッグ・パイル・オブ・ブルシュガー

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