銀河連邦だのワームホールだののある遠未来の宇宙時代。辺境の惑星イドラで生きる人々の物語。
オリジナルSF小説『神隠しの惑星』第一部です。
その夜のその後の記憶がない。俺の右手を両手で握って、サクヤは"助けて"と言った。怒りに任せてサクヤの腕を掴んで、布団に引き倒したところまでは覚えている。気がつくと朝で、サクヤは昏睡状態だった。身体中から血が引いた。声をかけても揺すっても起きない。こんな風に深い眠りに落ちたサクヤを見るのは初めてではなかった。時には半月近く目覚めないこともあって、もちろん心配はするが慣れっこでもあった。しかし今回は、確実に自分が原因なのだ。動揺が声に出てたのだろう。電話口の母が、すぐ豆腐屋の主人に変われと言った。そしてテキパキ手筈を決めて、あっという間に迎えに来て、あっという間に住吉にサクヤを連れ帰った。かかりつけ医の円山先生がいつものように往診してくれて、いつものように"安静に。好きなだけ寝かせてやりなさい"と暢気なことを言って...ピエタ(その4)
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