中原中也ファンのブログです。
およそ80年前の東京の街を孤独な魂は歩いた。その日の魂に見合う詩(うた)を探して…。その歌は2013年の今、数々の文庫として書店の棚にある。ポケットに歌を! さあ、中原中也の魂と会いに出かけよう!
ここに来るまで、何人もの家族兄弟を失ってなお、懸命に生きようとする少年少女や老人や青年男女との対話のプロセスを経てきた観客、そして映画の作り手には、希望が捕まえられているのである。
そして人生はつづく1992イランアッバス・キアロスタミ監督。渋滞する幹線道路を、父と子が行く。目指すは、コケル村。父は、前作「友だちのうちはどこ?」の監督、コケルはそのロケ地である。1990年、イランを襲った大地震で、コケル村も壊滅的被害を蒙(こうむ)った。映画に出演してもらった少年アハマッドや...
夜遅く、マハマッドは、夕飯を食べる気持ちになれない。ノートをネマツアデに届けられなかったことに、胸が痛むのである。
友だちのうちはどこ?1987イランアッバス・キアロスタミ監督。小学校の授業風景にはじまり、授業風景で終わる物語。ラストシーンの授業風景では、じわじわーっと感動のようなものが立ち上ってきて、いつまでもいつまでもその感動が反芻されるような作品だ。成長経済下のイランの山村コケル。隣村のボシュテは、山...
目を閉じてしまうのか? あの世から見に来たいほど、美しい世界なのに、あんたはあの世に行きたいのか。もう1度、泉の水を飲みたくはないかね?泉の水で顔を洗いたくないかね?
桜桃の味1997イランアッバス・キアロスタミ監督。自殺に関しての、長い長い映画である。昨年末、NHKの番組で長谷川肇久さんが、引き合いにしていたのを聞いて、見よう見ようと思っていたのを、ようやく見た。舞台は、テヘラン郊外の丘陵地。というより、主人公バディの運転する車の中が大半である。自殺を決意...
ロリータ1997年アメリカエイドリアン・ライン監督、ウラジミール・ナボコフ原作。ジェレミー・アイアンズ、ドミニク・スウェイン、メラニー・グリフィス、フランク・ランジェラ。1962年製作のスタンリー・キューブリック監督作品の日本公開は、いつだったのか。スー・リオンという名を鮮烈に覚えているのは、映...
ブルックリン最終出口1989西ドイツ&アメリカウリ・エデル監督、ヒューバート・セルビーJr原作、デズモンド・ナカノ脚本、ステファン・チャブスキー撮影。ジェニファー・ジェイソン・リー、スティーブン・ラング、バート・ヤング、ジェリー・オーバック、ピーター・ドブソン1953年のブルックリン。6カ月もの...
その一瞬、二人は目を合わせる。ボニーは、クライドは、何を、その一瞬、お互いの眼差しの中に見たであろうか。
俺たちに明日はない1967年アメリカ製作:ウォーレン・ベイテイ、監督:アーサー・ペン、脚本:デビッド・ニューマン、ロバート・ベントン、撮影:バーネット・ガフィ、音楽:チャールズ・ストラウス。出演:ウォーレン・ベイテイ、フェイ・ダナウェイ、ジーン・ハックマン、エステル・パーソンズ、マイケル・J・ポラ...
映像であるゆえに、個人の心理の深みだけでなく、複数の心理関係が同時的にとらえられ、脚本も見事というほかになく、この関係を表現した
鳩の翼1997イギリスイアン・ソフトリー監督、ヘンリー・ジェームス原作、ホセイン・アミニ脚本、エド・シアーマー音楽。ヘレナ・ボナム・カーター、ライナス・ローチ、アリソン・エリオット、シャーロット・ランプリングヘンリー・ジェームスの原作がもつ心理描写、というより心理関係描写が、見事に、映像に生かさ...
ピアノ・レッスン1993オーストラリアジェーン・カンピオン監督・脚本、マイケル・ナイマン音楽。ホリー・ハンター、ハーベイ・カイテル、サム・ニール、アンナ・パキンジェーン・カンピオンは、後に「ある貴婦人の肖像」(1995)でもそうするように、ここでも主人公の女性に2人の対照的な男性を配置する。女を...
ある貴婦人の肖像1996イギリスジェーン・カンピオン監督、ヘンリー・ジェームス原作。ニコール・キッドマン、ジョン・マルコビッチ、バーバラ・ハーシー苦しみは深い。でも、いつか消える。今も薄れている。愛は残る。苦しみのわけがいつかわかる――臨終のベッドできれぎれに、ラルフがイザベルに語る。自分で選び...
こんな風に男が女を愛しても、女は穏やかな微笑(みしょう)を湛(たた)えているばかりである。
フランス軍中尉の女1981年イギリスカレル・ライス監督、ジョン・ファウルズ原作、ハロルド・ピンター脚本。メリル・ストリープ、ジェレミー・アイアンズ映像表現うんぬんではなく、メリル・ストリープという女優の不可思議な魅力に、映画の中のジェレミー・アイアンズと同じようにとりこになってしまった。こんな風...
アンナ・カレーニナ1997アメリカ&イギリスバーナード・ローズ監督・脚本、レオ・トルストイ原作、ダリン・オカダ撮影。ソフィー・マルソー、ショーン・ビーン、アルフレッド・モリーナ、ミア・カーシュナー、ジェームズ・フォックスアンナを自殺に追いやったものは何か。自殺までしなくてもよかったのではないか。...
嵐が丘1992イギリスピーター・コズミンスキー監督、エミリ・ブロンテ原作、アン・デブリン脚本、坂本龍一音楽。ジュリエット・ビノシュ、ラルフ・ファインズ、ジャネット・マクティア、サイモン・シェパード、ソフィ・ウォードヒースクリフの暴力はいつ終わりを告げるのか。いつまで続けられるのか。ヒースクリフが...
晴れがましい怒り――アンガー・ジェネレーションは、やがて世界に広がっていく
土曜の夜と日曜の朝1960イギリストニー・リチャードソン製作、カレル・ライス監督、アラン・シリトー原作・脚本、フレディ・フランシス撮影。アルバート・フィニー、シャーリー・アン・フィールド、レイチェル・ロバートなんとも爽やかな怒り――。アンガー・ジェネレーションはやがてビートルズに継承され、フラン...
汚れた血1986フランスレオス・カラックス監督・脚本、ジャン=イヴ・エスコフィエ撮影。ドニ・ラヴァン、ジュリエット・ビノシュ、ミシェル・ピコリ、ハンス・メイヤー、ジュリー・デルビー。「自然に出る。すべての舗石を愛撫する。階段の一段一段に感謝する。もしも生き延びればだ。駄目だったら怒り狂うぞ。俺の...
ドキュメント(裁判記録)に埋没している史的ジャンヌ・ダルクは、解釈の眼差しを通過するのである。
ジャンヌ・ダルク裁判1962年フランス監督・ロベール・ブレッソン、脚本・ロベール・ブレッソン出演・フロランス・カレ、ジャン=クロード・フルノー、ロジェ・オーラカンヌ国際映画祭(1962年)グランプリ(審査員特別賞)ロベール・ブレッソン「ジャンヌ・ダルク裁判」は1962年作品で、「スリ」(1959...
その2 過剰な技法を抑制し、センセーショナルといえるシーンのひとつもない、内省に満ちた反戦映画がつくられるまでには、ルイ・マルといえども時間を要した。
さよなら子供もたち1987フランス監督・脚本・制作 ルイ・マル音楽 シューベルト、サン=サーンス撮影 レナート・ベルタ編集 エマニュエル・カストロ出演 ガスパール・マネッス、ラファエル・フェジト、フランシーヌ・ラセットボネ、ネギュス、デュプレは、アウシュビッツで死んだ。ジャン神父はアウトハウゼン...
その1 瞬間の、このかすかな肉体の表情によって、人は人を殺しているのに、人はそれを自覚していない(動物はこんなことを決してしない)。作品は、その瞬間をとらえる。ジュリアンの表情を通じて……。
さよなら子どもたち1987フランスルイ・マル監督の1987年作品「さよなら子どもたち」は、「死刑台のエレベーター」「地下鉄のザジ」「鬼火」「ルシアンの青春」「ダメージ」などの他作品に比べて、抜きん出たものがある。実に見事な作品である。他の作品が見事なものであっても、もっともっと見事だ、と言いたいほ...
自分もまた、タジオのような少年、ロリータのような少女に会うことができるだろうか、と孤老の身に置き換えて見てしまう
ベニスに死す1971イタリアルキノ・ヴィスコンティ監督・脚本、トーマス・マン原作、ニコラ・バダルッコ脚本、パスカリーノ・デ・サンチェス撮影。ダーク・ボガード、ビヨルン・アンドレセン、シルバーナ・マンガーノ老残の身に秋風が沁みるように、若い人々の命はまぶしい。焦がれるような恋慕の情が湧き起っても、...
ドストエフスキーの純愛作品を幻想的にデザインしたヴィスコンティ作品
白夜1957イタリアルキノ・ヴィスコンティ監督、スーゾ・チェッキ・ダミーゴ脚本、ニノ・ロータ音楽。ベネチア映画祭銀獅子賞。ドストエフスキーとヴィスコンティというアンバランスに興味をもって見る。小説を読みはじめた矢先、ビデオ・レンタル店で見つけ、先に映画作品を見てしまった鑑賞記である。ペテルスブ...
その2 フラガーノの留守中に、初めて会った二人は、すでに肉体のつながりを持っていたが、ここでさらに結ばれるのである。その仕掛けが、夜に鳴く猫であり、それは求愛する動物の声である。
郵便配達は二度ベルを鳴らす1942イタリア ルキノ・ヴィスコンティ監督、ジェームズ・M・ケイン原作、ジュゼッペ・ロサーティ音楽。クララ・カラマイ、マッシモ・ジロッティ、ジュアン・デ・ランダルキノ・ヴィスコンティ「郵便配達は二度ベルを鳴らす」は1942年の映画だ。半世紀以上前の作品が、輝いている。...
その1 一瞬のうちに結びついた男女の愛が、一瞬にして滅び去る
郵便配達は二度ベルを鳴らす1942イタリアルキノ・ヴィスコンティ監督、ジェームズ・M・ケイン原作、ジュゼッペ・ロサーティ音楽。クララ・カラマイ、マッシモ・ジロッティ、ジュアン・デ・ランダ意に沿わぬ結婚をして、本心、夫フラガーノに触れられるのもいやなのだが、仕方なく抱かれる熟年の女ジョバンナが、風...
若者たちの列に取り囲まれながら、沸々(ふつふつ)と湧いてくる悦びに似た心の揺れを、しっかりと胸に抱きしめている。
カビリアの夜1957イタリア「カビリアの夜」は、1957年作だから、フェデリコ・フェリーニ初期の作品といってよいだろう。1920年生まれのフェリーニは、出生作「道」を54年に、「甘い生活」を60年、「8・1/2」を63年と、40歳前後のこのころ、約3年に1本のペースで作品を世に問うた。「道」がそう...
この作品に瞬間的に現われた笑いの要素は、チャップリンやジャック・タチを連想させるものがあった、と見るのはピント外れなのだろうか。
大きな鳥と小さな鳥1965-66年イタリア製作: アルフレード・ビーニ脚本・監督: ピエル・パオロ・パゾリーニ撮影監督: トニーノ・デッリ・コッリ、マリオ・ベルナルド美術: ルイジ・スカッチャノーチェ音楽: エンニオ・モリコーネ編集: ニーノ・バラッリ出演: トト、ニネット・ダヴォリ、フェミ・ベヌ...
奇跡の丘1964イタリアアルフレード・ビーニ製作、 ピエル・パオロ・パゾリーニ脚本・監督、 トニーノ・デッリ・コッリ撮影監督、 ルイジ・スカッチャノーチェ美術、 ルイス・エンリケス・バカロフ音楽、 ニーノ・バラッリ編集出演: エンリケ・イラソキ、マルゲリータ・カルーゾ、スザンナ・パゾリーニ、マル...
パゾリーニこそ、60・70年代的才能だったことが明らかになるであろう。 ――パゾリーニ「アポロンの地獄」への助走その2
ピエロ・パオロ・パゾリーニは、1960年代末から70年代前半という時代――というのは「われわれ」の青春期――に、「奇跡の丘」「アポロンの地獄」「王女メディア」「テオレマ」「豚小屋」(など)によって登場した。いまや本人は死亡し、古典となった作品群は、2002年の青春にも支持され、甦っているようである。...
アポロンの地獄1967イタリアパゾリーニ「アポロンの地獄」をもう1度見直した。これで、通算3度見たことになる。1度目は、今から30年以上も前のことで、ほとんど記憶にないことは、昨日付けで記したが、記憶とはつねに不思議なもので、甦(よみがえ)ってくることもあるのである。2度目に甦らず、3度目に甦る...
この映画は、結婚にあたって処女でないことが罪であり、その(処女でなくした)相手を殺すことが家族・兄弟の名誉の問題である「村」(=マチズモ)の話なのである。
予告された殺人の記録1987イタリア・フランスフランチェスコ・ロージ監督、ガブリエル・ガルシア・マルケス原作、トニーノ・グエッラ脚本、パスファリーノ・デ・サンティス撮影、ピエロ・ピッチョーニ音楽。ルパート・エヴェレット、オルネラ・ムーティ、ジャン・マリア・ヴォロンテ。アンソニー・ドロン、アラン・キ...
スサーナ1950メキシコセルビオ・コーガン製作、ルイス・ブニュエル監督・脚本、ホセ・オルディス・ラモス撮影。ロシータ・キンタナ、フェルバンド・ソレール、ビクトル・マヌエル・メンドーサ、ルイス・ロペス・リモサ。脱獄して辿り着いた農場で、スサーナはなにを企んだのか、というとなにも企んではいない。た...
アントニオーニ的な絶望感というより、誤解を恐れずに言って、一種、爽快感があるのである。
パリ、テキサス1984年ドイツ監督:ヴィム・ヴェンダース、製作:クリス・ジーヴァニッヒ、アナトール・ドーマン、脚本:サム・シェパード、撮影:ロビー・ミューラー、音楽:ライ・クーダー。キャスト:ハリー・ディーン・スタントン、ディーン・ストックウェル、ナスターシャ・キンスキー、ハンダー・カーソン。「...
ドイツ映画「橋」で、前線に取り残されてしまった少年兵たちが、最初に戦争を体験するのは、轟音とともにやってくる空爆である。静寂な、人気のない村の橋上に、いきなり米軍機の爆音にさらされるのである。空爆で、ジーキという最少年の同僚が死ぬ。泣き叫ぶ少年兵たちの耳に、次に、聞こえてくる不思議な音。それは、次...
「橋」(ベルンハルト・ヴィッキ監督、1959年、ドイツ)は、不思議な作品である。名作の多くが、見る度にそれまで腑(ふ)に落ちなかった謎を解いていき、2度、3度と見返す度に、また新たな謎を生んでいくように、この映画も、新たな謎を生みつづける。そのため、何度も見ようという気を起こさせる。そういう不思議さ...
その1 この後に続く、戦闘場面、とりわけ米軍の戦車に少年兵たちが襲われるシーンの無機質な死のイメージに比べ、人間の会話の熱さが浮き上がります。
ドイツの映画監督ベルンハルト・ヴィッキ作品「橋」(1959年)の1シーン=7人の少年兵が橋の上で参戦の決意に巻き込まれてゆく会話を交わす=から、会話の部分をひろっておきます。7人は、固有名をもった少年たちですが、ここでは、発言のそれぞれに、その名を記しません。映画では、1分ほどのシーンですが、この後...
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