chevron_left

メインカテゴリーを選択しなおす

cancel
米米米 こどもべやのうさぎ 米米米 https://blog.goo.ne.jp/usagiusagiusagiusagi/

ストーカーに苦しみながらも明るく前向きな女の子のお話です。一緒に考え悩み笑っていただければ幸いです。

褒めると気を好くして図に乗るタイプなので お叱りのレスはご遠慮願います。 社交辞令・お世辞・甘言は大好物です。 甘やかして太らせてからお召し上がり下さい。

いちたすには
フォロー
住所
未設定
出身
未設定
ブログ村参加

2009/04/15

arrow_drop_down
  • ■鉄の匂い171■

    もしかしたら目的は姉妹であって、所長は巻き添えだったのかもしれない。だとしたら犯人がまた襲ってくるかもしれないこの家での生活は危険だ。次女と長女は暫くの間、長男の所に身を寄せることになった。姉妹は殺人犯に怯えているが、長男は犯人を知っている。長男は犯人を姉妹に告げるだろうか。いや、告げまい。警察が嗅ぎ付けない限りは『僕』を売らないと約束したのだ。知らない体で姉妹を匿うのだろう。姉妹はだからもう集配所には来ない。集配所は最年長の集配員が取り仕切ることになった。葬儀の翌日の朝礼で新体制が発布され若干手際は悪くなったが作業は再開された。『僕』は長男との約束があるので、暫くはこの集配所での仕事を辞めることは出来ない。暫くとは果たしてどれくらいを言うのか。長男から指示があるまでか。長男から指示はあるのか。不自然でない辞め...■鉄の匂い171■

  • ■鉄の匂い170■

    翌日葬儀の日。集配所は休みだったが、配達員は近隣の集配所に派遣されていつも通りに配達をした。『僕』も他の2人と3人で一番近い集配所に派遣された。が、次女の分も任されるし他の2人は地理に明るくないしで、配達は大幅に遅れてしまった。派遣先の配達員も手伝うと申し出てくれたが、上手く指示が出せず思う様には捗(はかど)らない。それでも団地の入り口まで牛乳を運んでくれたので、積みに戻る分の時間は節約できて助かった。配り終わる頃には心労も重なってくたくたで汗だくになった。臨時の集配所に戻ると、所長の奥さんが朝ご飯を用意して待っていた。今日初めて会った人たちと初めて行った集配所で初めての味付けの食卓を囲む。受入先の所長の奥さんは細かい気配りで『僕』たちを持て成してはくれたが、『僕』たちも『僕』たちなりに緊張してて、味がまったく...■鉄の匂い170■

  • ■鉄の匂い169■

    「通夜に来てくれてありがとな。儀礼としてだが言っておくよ。その上で質問だ」男性は敵意に満ちた目で礼を言った。「お前」『僕』より背が高いのに下から『僕』の顏を覗きこむ。「お前、堅気じゃないよな?普通じゃない匂いがぷんぷんする。かといってチンピラでもない。お前一体何者(なにもん)なんだ?」通行人には聞こえない、しかし低くよく通る声で尋ねる男性。「悪(わり)ぃ悪(わり)ぃ。他人(ひと)に名を問うならまず自分が名乗らないとな。俺は美織と〇〇(長女の名前)の兄で〇〇(長男の名前)ってんだ。アレとは折り合いが悪くてよ。実(じつ)ぁ10年ばかし会ってなかったんだ。それが今回こんな形での再会になっちまって。再会っても、空の棺だから、遺影となんだけどな」この時に長男は名乗り長女の名前も口にしたのだが、極度の緊張からか『僕』は聴き...■鉄の匂い169■

  • ■鉄の匂い168■

    柩が空なことや坊主がいないこと、遺族から死因を聞かされないことなどで、所長の死が尋常ではないことは既に知れていた。手伝うでもない眼光鋭い男が数人うろついていること、2階には警戒線が貼られ立ち入れないことなどで、所長が2階で殺害されたことも皆には知れていた。犯行が短時間で行われたこと、犯行現場まで迷いなく侵入していること、正面から一撃で刺殺されているのに抵抗が少なかったことまで、何処で聞いたのか犯人と警察しか知り得ない情報までが飛び交っていた。犯人は『僕』で、『僕』は何も漏らしていないのだから、情報源は警察なのだろう。配達員が盗み聞きしたのか、様子を見ようと警察がわざと流したのか。いずれにしても全く興味を示さないのも不自然なので、適当な相槌を打ちながら推理に加わった。30分もいたのでもう良かろうと立ち上がると、廊...■鉄の匂い168■

  • ■鉄の匂い167■

    結局。通夜には着替えないで学生服のまま参列した。もし咎められても、必要なら手伝おうと思って様子を見に行ったと言うウソも用意。様子を見に行ったのは、ウソではないので。袱紗を左胸内ポケットに入れ、集配所に向かう。時刻は6時を少し過ぎていた。集配所の周りに特段の人だかりはなく、訪問者も疎らで読経も聞こえてはこなかった。運動会でよく見るテントが設置された受付には、先輩の配達員とその奥さん、もう1人見たことがない男性が立っていた。あれは多分刑事だ。眼光鋭く会葬者ひとりひとりの顏をチェックしている。公にはされていないが、故人は殺害されており殺人犯はまだ捕まっていない。自分で言うのもなんだが、殺害は実に短時間で迷いなく行われた。犯人は集配所に人が居ない時間帯やこの家の間取り、更には所長の習慣にまで精通していた。ならば疑われる...■鉄の匂い167■

  • ■鉄の匂い166■

    翌朝。集配所前は大騒ぎだった。まだ暗い時間だったのに、その喧しさに近隣からもパジャマの住人が集まっていた。所長の死が確認されたのは、午前3時だった。トラックが着いたのに降りてこない所長を姉妹が起こしに行って発覚したのだ。長女の指示でいつも通りに配達は出発したが、病死では考えられない台数のパトカーに配達員は皆、動揺した。配達から戻ると、隣接する地域を担当する集配所から応援が駆けつけていた。作業場は鑑識課員により立ち入り禁止テープが貼られた為、空き瓶の洗浄作業が出来なかったが、これもまた長女の指示で空き瓶は応援に来てくれた近隣の集配所に分散されていった。空き瓶洗浄作業が無くなったのですることがなくなった。雑然としてて朝飯どころの話でもないので、『僕』も他の配達員と一緒に集配所を抜け出た。駅までの道すがらも、配達員の...■鉄の匂い166■

  • ■鉄の匂い165■

    考えが纏まったので、踵を返し集配所に戻った。戻ったといっても目的は尾行なので、集配所が見える物陰までだが。所長は、なかなか出てこなかった。昼くらいまで張っていたが一向に出て来る気配がないので、痺れを切らし建物に近寄った。駐車場からゴミ置き場を通り裏の小さな庭に廻る。開いてる窓から2階の気配を伺うと、階上から所長のだらしない高鼾(たかいびき)が聞こえてきた。仕事を終えた長女を労うことなく肉欲のままに抱いて満足し、心地良い疲れを堪能しながら昼寝をしているのだ。それも今日が初めてではなくこれが日常。『僕』は頭に血が上った。世の中には悪い奴がいくらでも居る。悪い奴が悪い奴を騙したり殺したりするのは大歓迎だ。しかし、良い人が悪い奴の餌食になったり犠牲になったり搾取されるのは許せない。法律を守っている人が法律を侵す輩(やか...■鉄の匂い165■

  • ■鉄の匂い164■

    もう犯人が『僕』とバレてもいいのだが、それでも出来れば大きな事件にはしたくない。全国区でニュースに顔が出れば、日本じゅうの人から憎悪を買うことになる。テレビニュースで『僕』の真意が伝わる訳もなく、また伝わったとしても許される行為ではない。多くの人が知ればそれだけ多くの嫌悪が集まる。その頃には『僕』は留置所内だから直接なにかをされることはない。しかし、テレビでは煽る様な音楽に乗せて興味本位に報道されれば、知らない処でとはいえ沢山の人に悪く言われる。霊的な攻撃の存在は信じていないが、怨恨が募れば神掛かった奇異な損害を齎されてしまうかも。てことは、結局心霊現象を認めてることになるのかな。心霊と怨念は別物というのは苦し過ぎる言い訳か。いずれにしても出来れば惜しまれながら去りたい『僕』としては、不要に怨毒を増やしたくなか...■鉄の匂い164■

  • ■鉄の匂い163■

    やっぱり所長は殺そう。それが最良で代案はない。誰にでも出来る作業ではないが、幸い『僕』にはノウハウがある。そしてこの時初めて具体的に体感した。『僕』はもう捕まりたがっているということを。『僕』はもう死にたがっているということを。何時、警察が訪ねてくるか。訪ねてきた時に『僕』は観念するのか。逮捕後の『僕』の処遇はどうなるのか。留置の環境に『僕』は耐えられるのか。勿論だが、できることならそりゃ捕まりたくはない。このまま捕まらず生き長られたい、という意味ではない。捕まる前に自ら手仕舞いしたい、という意味だ。暴かれて生き恥を晒すくらいなら、命を対価にプライドを守りたい。贖罪を生き恥と感じる時点でもう『僕』は生きている価値がないのだが、それでも叶うならこれまでの罪歴を消し去りたい。普通に朝起きて、普通に朝ご飯を食べて、普...■鉄の匂い163■

  • ■鉄の匂い162■

    「余計なことはしないでね」次女が休憩室まで『僕』を追ってきた。「それなりに修羅場潜ってきたから、わかるんだよね。ミルミルが、怖いこと考えてるってのが」2階から所長の歓心から洩れる長大息が聞こえてきた。「出ていくまでは普通に暮らしたいし、出ていく時も普通に出ていきたい。出られた後の普通の暮らしも、誰にも邪魔されたくないの」裸の肉体を叩く音と嫌がってすすり泣く長女の声。「今、この時を暴力で凌いでも、後でもっと酷い暴力の報復を受けるだけ。陳腐すぎて口からご飯噴き出しちゃうけど、暴力は何も生まないの」次女はすぐ後ろにまで来ていた。「こんな目に遭わされて。辛くない筈がない。その、辛い私たちからのお願いなの。暴力は振るわないで、ね」肩に次女の手が掛かり耳に次女の息が掛かる。「明日もちゃんと時間に来てね。そしてご飯を食べてっ...■鉄の匂い162■

  • ■鉄の匂い161■

    2階から長女の押し殺した喘ぎ声が漏れ聞こえた。いたたまれなくなり『僕』は次女から目を逸らして食堂を出た。この集配所は、鉄骨の柱をコンクリートプレートの壁で覆った2階建てで、1階には大通りに面した三和土の作業場と一段上がった休憩室を兼ねた事務所、廊下を介して食堂とトイレとシャワー室があった。トイレとシャワー室と食堂は1階にしかなく、全ては家族と配達員が共用していた。年頃の娘2人は共に牛乳配達や事務の仕事をしていたので、『僕』等は家族と配達員という隔ては薄れていた。2階へも、特に扉があるでなく誰でも上がれるので、私生活もプライバシーも守られない。『僕』がお世話になる前は、悪戯目的で2階に潜んだ配達員もいたらしい。それくらいセキュリティが甘い2階で今、実の父親が二十歳(はたち)の娘を犯している。そしてその現実を目の当...■鉄の匂い161■

arrow_drop_down

ブログリーダー」を活用して、いちたすにはさんをフォローしませんか?

ハンドル名
いちたすにはさん
ブログタイトル
米米米 こどもべやのうさぎ 米米米
フォロー
米米米 こどもべやのうさぎ 米米米

にほんブログ村 カテゴリー一覧

商用