米米米 こどもべやのうさぎ 米米米
住所
出身
ハンドル名
いちたすにはさん
ブログタイトル
米米米 こどもべやのうさぎ 米米米
ブログURL
https://blog.goo.ne.jp/usagiusagiusagiusagi/
ブログ紹介文
ストーカーに苦しみながらも明るく前向きな女の子のお話です。一緒に考え悩み笑っていただければ幸いです。
自由文
褒めると気を好くして図に乗るタイプなので お叱りのレスはご遠慮願います。 社交辞令・お世辞・甘言は大好物です。 甘やかして太らせてからお召し上がり下さい。
更新頻度(1年)

255回 / 275日(平均6.5回/週)

ブログ村参加:2009/04/15

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いちたすにはさんのブログ記事

  • ■鉄の匂い276■

    盛んに燃えている様に見えるが火が出ているのは灯油と着火剤だけで、肝心の旦那の死体は表面が炭化してるだけ。中からは水分がじゅるじゅると噴き出し、火に油ならぬ水を注ぐ図で、炎の勢いを削ぐこと度々だ。それでも灯油を注ぎ着火剤を投げ込むと、旦那の死骸は黒い木乃伊となって強制的に焼き上がった。火の粉が舞う中、重機のバケットで潰して遺体を砕く笠木さん。特に感情を昂らせるでもなく、熟(こな)れた手順で火葬体を潰して砕く。薪の燼(もえさし)と瓦礫と亡骸は掻き回されて混ざっていった。器用にバケットで攪拌された骸は、腐葉土と化して土地に馴染んだ。「お風呂に入りに行きましょ。近くに行き付けのスーパー銭湯があるんです」埋葬箇所は、完全に平らに均されて来た時と変わらない残土置き場に戻っていた。「人が焼ける匂いって、染み付くんですよね。何...■鉄の匂い276■

  • ■鉄の匂い275■

    掘れば掘る程、腐敗臭がキツくなる。良く言えばアンチョビと炊き立てご飯、悪く言えば臭魚(くさや)の干物と屁だ。雨が降る中を飛び交う様々な大きさの蠅。悪臭で目も開けていられない。深さ2メートルの人型の穴が掘り上がると、笠木さんはバックホーから降りる。辺りは真っ暗だったが、目が慣れてくると亜鉛鍍金の鉄板の山稜が見えて来た。隔壁まで遮る物のない更地の資材置き場は球場程度の広さで、あちこちに掘り返した時に積んだと思われる残土の小山があるだけで、建築資材や作業工具などは一切なかった。無言の笠木さんの指示で、ワンボックスの荷室からビニールシートを引き摺り下ろし、毛布を捲って旦那の遺体を転がす。地面は、細かい砂利と焚火の後の煤の様な木っ端で覆われていて、最近掘ってないだろう箇所には背の低い雑草が生えていた。黙って指差す笠木さん...■鉄の匂い275■

  • ■鉄の匂い274■

    お握り3個をコーヒーで流し込むと、笠木さんは食休みも取らずにシートベルトを締めた。コンビニを出ると道はいよいよ暗くなり、バックミラーで見えるサイン以外に明かりはひとつもなくなった。たまに思い出した様に灯る街灯以外に道を知らしめるのは車のライトで白く光る歩道との境界線だけ。その白線すらも雑草やひび割れで途切れ途切れになっていて、相当に先を予想して走らないと車は田んぼに突っ込むことに。右に左に緩やかなカーブが続く、元畦道の県道を暫く行くと星がひとつも見えない曇天にうっすらと稜線が浮かび上がった。山が近いのだ。死体は山に埋めるんだな。楠木くんと2人で、クラスメイト2人を埋めたことを思い出す。あれは山というより丘陵で、人里程近い公園の散策路の脇だった。車でなければ来れない僻地ではなかったのは、『僕』達が免許も車もない小...■鉄の匂い274■

  • ■鉄の匂い273■

    軽トラの後部座席を倒してフラットにした処に、毛布とブルーシートで包んだ旦那を詰めた段ボール箱を滑り込ませる。その横の隙間に段ボール箱に立て掛ける様にして、畳んだ台車を押し込んだ。斜めに積まれた台車はアスファルトの継ぎ目を踏む度に跳ね回ってカタカタと鳴った。お揃いの作業服で助手席に座る『僕』は、用意されていた宅配コスプレが2着だったことから、いろんなパターンを想像していた。笠木さんは、台車や段ボール箱やブルーシートの購入時には殺害を決意していたこと。相当の期間、殺意が継続していたことは想像に難くないが、レンタカーは実行日が決まってからしか借りられない。その実行日は、月に数日しかない旦那が帰ってくる日で確実なのは給料日の一日だけである。なのにレンタカーは今朝から来客用駐車スペースに停まっていた。だとしたら、今日の今...■鉄の匂い273■

  • ■鉄の匂い272■

    時間にして、ものの3分だった。ピンポン鳴らさず自分の鍵で入ってくる旦那を、目を合わさず迎え入れる笠木さん。まっすぐテーブルに歩み寄り黙って封筒を引っ掴むと、流れる様に封を切って金額を確認。洩れ落ちる小銭には目も呉れず、札だけポケットに捻じ込むと封筒を粗雑に投げ捨て、笠木さんを椅子毎押し倒した。慣れた手付きでブラウスのボタンを外し、おそらくルーティンなのだろうスカートを乱暴に手繰(たく)し上げる。毎度のことらしく、笠木さんも脱がせ易い様にと腰を浮かせたり両手を万歳したり協力する。しかしその表情は硬く、拒絶はしないが抵抗もしないレベルの共同作業だ。『僕』はスタンガンを構え脱衣所のカーテンを開けて旦那の背中に近付く。旦那は右手で笠木さんの乳を鷲掴みしながら、空いた左手でズボンを下ろしていた。ピチャピチャと旦那が笠木さ...■鉄の匂い272■

  • ■鉄の匂い271■

    「私のパート先は旦那の紹介なので旦那とはツーカーの仲です。だからパート先に行けば面倒なく私のパート代を没収できるんです。でも一度私を経由しないと申告だか税制で面倒が起きるらしく、だから搾取に一手間掛けてここに盗りに来るんです。」笠木さんのパート先はスーパーとかではないらしい。「だから必ず、今日来ます。私はいつもの様にテーブルにパート代の入った封筒を置いて待ちます。玄関の脇の脱衣所に隠れてて、旦那が金を掴んだその時に後ろからこれで、」笠木さんが『僕』に手渡したのは、ホチキスの刃の様な形をした握りのスタンガンだった。銃握(じゅうは)の上下に放電部があり、接触させればメーカー表記120万ボルトで相手の筋肉を弛緩させ動きを封じることができる、護身の域を超えた防犯グッズだ。「一般に市販されているスタンガンの電圧は100万...■鉄の匂い271■

  • ■鉄の匂い270■

    笠木さんは、楽しそうに笑った。「そんな驚ろかないでくださいよ。そんな驚かれたことに驚いちゃいますよ。」でも目は笑っていなかった。「なんて、驚くと思いました?驚かないです。全部想像出来てたので。」一度退いた笠木さんは『僕』の頬に唇が触れる位に距離を詰めてきた。「私、分かるんです。誰かが誰かを殺そうとしてるとか、既に誰かを殺してるとか、が。お連れさん、もう殺したんですか?それともこれから?」笠木さんの前歯が『僕』の耳朶(みみたぶ)を噛んだ。「私、もうすぐ殺されるんです。旦那ロリコンで、私が幼児体型だから今まで生かされてきたけど、娘が6歳になるから私、もう用無しなんです。」耳朶(みみたぶ)を舐める舌先が笠木さんと別の生き物の様に『僕』を這う。「私、まだ生きていたい。だから旦那を殺したいんです。私一人じゃ無理だから手伝...■鉄の匂い270■

  • ■鉄の匂い269■

    「私、16で出産したんです。後(のち)の旦那の半分強姦で。」スプーンを咥えたまま遠くを見やる笠木さん。若く見えたが見えた通り若く、6歳の女の子の母でありながら未だ24だった。「旦那は暴力的で自分勝手で強引で、思い通りにならないとすぐ殴ったり蹴ったりする人でした。」訊いてもないのに語りだす笠木さん。「別れたかった。何度も逃げ出したけど、毎回捕まって連れ戻された。家族や親戚も、最初は匿ってくれたけど、根負けというか巻き添えを恐れて、遠退いていった。暴力も『愛情表現のひとつだから』って。なんなら『体許しといて今さら』とか下衆いことも言われた。悔しかった。」半分残っていたプリンはスプーンで掻き回されてぐちゃぐちゃになっていた。「子供が出来たんだから籍を入れろって。結婚したんだから問題は2人で解決なさいって。迷惑だから実...■鉄の匂い269■

  • ■鉄の匂い268■

    ケーキを買った時に結ばれていたリボンで縛られた札束が4つに、髪留めに挟まれた札が数十枚。束が100枚なら全部で450万くらいか。『僕』がイラストの仕事を受ける様になってからは生活に余裕が出来たと言っていたが、この金額は貯蓄できないだろうから、大半はそれ以前に節約して貯めてきたものだろう。手紙は『僕』宛てだったが読まずに置いて出てしまった。着替えも持たず、金だけをコンビニ袋に入れて、靴を履くのも擬(もど)かしく、転がる様に玄関から飛び出した。鍵を掛けてから、隙間より中の匂いを嗅ぐ。もし異臭が漏れる様なら、逃走時間を稼ぐ為にも脱臭だか消臭だかを施さなければならないから。扉のポストの蓋を開けて中を覗いていると、後ろに人の気配を感じた。同じ階の並びの部屋に住むシングルマザーの笠木さんだった。『僕』が共用廊下に這い蹲って...■鉄の匂い268■

  • ■鉄の匂い267■

    手に捲いた紐で、親指と人差し指の間が擦りむけて血が滲んいた。女子学生の首から紐を外し、手を引いて引き摺り布団の上に身体を転がす。眉に怒りの表情はなく、目の白目は赤を通り越して黒くなっていた。口からガムテープを剥がし、手足を縛ったビニールテープを落ちていたカッターで切った。粘着物を一纏めにして部屋の隅に放(ほう)る。吐瀉物と脱糞と失禁で、部屋は悪臭で居られなかった。ベランダに出て深呼吸をする。50メートル程離れた向かいのマンションの共用廊下を子供連れの母親が歩いていた。たまにスーパーで会う母娘で、子供は会うたび『僕』に異様に纏わり付く。きっと親の愛情が足りてないのだろう。見下ろすと、階下の主婦が犬の散歩に出た処が見えた。ペットを飼ってはいけないマンションなので、キャリーバッグに入れて公園まで泥棒の様に忍んでいくの...■鉄の匂い267■

  • ■鉄の匂い266■

    手でそっと押し戻されて、『僕』は少し後ろに下がった。隠し持っていたガムテープに女子学生が気付き後退る。なんでこうなっちゃったんだろう。何も破綻要素はなかったのに。公園で鳩を追い詰める様に両手を広げ女子学生を隅に誘導する。ガムテープで口を塞ぐまでは大声を上げない様に落ち着かせて。何処まで計算していたのかな。証拠を突き付ければ観念すると思ったのかな。興奮させない様に穏やかな顏で、じりじりと女子高生に迫る。声を出す間を与えない様に右手首を掴んで引寄せると素早く口にガムテを叩きつけた。貼るつもりが勢い余って殴る勢いになった為、女子学生は首ごと持っていかれ脳震盪を起して膝から落ちる。体育座りになった処を、足首を捕まえてビニールテープでグルグル巻きに。目に焼ける様な痛みを感じて払い除けると、息を吹き返した女子学生が両手を振...■鉄の匂い266■

  • ■鉄の匂い265■

    「ここまでで何か意見、あるかしら。」女子学生は、手紙を一枚一枚広げ紙の角を丁寧に揃えた。「そしてこれが、疑いが確信に変わったその証拠」束となった紙を微妙に斜めにスライドすると、本の側面に描かれた小口絵の様に一箇所だけ筋状のインク汚れが見て取れた。「一枚一枚を見たのではわからないけど、こうして見ると全ての紙が同じ癖のあるプリンターで印刷されたことがわかるのよね。」女子学生は、これまで自分がプリントアウトした紙も同様にスライドさせて小口を見せた。そこにはストーカーからの手紙と同じ位置に筋状の汚れが付いていた。「私のプリンターで印刷した紙と一致するわ。つまりストーカーはうちのプリンターで嫌がらせ手紙を印刷していたってこと。」もしかしたら。ストーカーがうちに忍び込んでプリントしたのかもしれない。しかし手紙がその都度知り...■鉄の匂い265■

  • ■鉄の匂い264■

    「やっぱり警察に言いましょう。それで分かることもあるでしょうし。」買い物袋を両手に下げた女子学生が言った。袋の中で箱菓子や菓子パンが揺れている。「じゃあ明日、証拠を整理して持って行こうか。」冷凍食品や根菜が詰まったお買い物バッグを抱えた『僕』の提案に、女子学生は肯定も否定もしなかった。もう何回か、警察には相談に行っていた。被害届も提出していた。証拠となる手紙もコピーを渡したし、保管したくない汚物は写メを撮って見せた。今更改めて何を警察に言いに行くのか。家についても女子学生は集合ポストを覗かなかった。玄関ポストも確認しないで、室内を警戒することなくキッチンに入って行った。そのまま夕食の支度を始め、シラケたムードの中での晩餐となった。一言も喋らない女子学生。スプーンが皿に当たる音だけが響く食卓。食事が終わって洗い物...■鉄の匂い264■

  • ■鉄の匂い263■

    審査の厳しいオートロックのマンション。住人に妙な性癖を持つ物は居ないし、他所から簡単に侵入できる構造でもない。なのに、ポストは仕方ないとしてもゴミを漁られたり玄関前をうろつかれたりで、女子学生はすっかり憔悴してしまった。逃げたくとも此処よりも安全な場所が思いつかない。戦おうにも敵の顏は疎か素性が全く判らない。記録を付け証拠を集め保存するのが関の山。いずれ相見(あいまみ)えるかもしれないストーカーに備えて、常に防具を携帯し周囲を警戒する。しかし賢い女子学生はただ怯えているだけではなく、少ない情報から犯人像にかなり迫ってもいた。ストーキングは『僕』と付き合い出してから始まった。ストーカーは『僕』が居ない時に限って現れる。ストーカーは住人以外は入れないマンション内も闊歩している。気配は覚らせるが顏は見せない。承認欲求...■鉄の匂い263■

  • ■鉄の匂い262■

    一日勉強机に向かう女子学生と、終日仕事机に向かうしかやることがない『僕』。だから本当に一日中2人は一緒だった。結果試験に受かれば良い女子学生と特に期限なく出来高払いの『僕』は、起床も就寝も休憩も食事も互いに自由なので。わざわざずらす必要も意味みない。一心同体。買い物も散歩も行動は全て2人で。しかし、暫くすると胸焼けする様な甘い生活は満帆ではなくなった。こう書くと、すぐ倦怠期による浮気かと下種な諸兄はほくそ笑むだろう。どちらかが飽きて不貞行為を働いたとか。少なくとも互いが互いを好きな気持ちは変わっていない。ただ、隙を付け狙う邪魔というか、油断に付け込む難事というか、女子学生に問題が発生したのだ。それは、『僕』が部屋を出た僅かな時間や、『僕』がトイレに入った寸暇に、女子学生が怖い思いをさせられたのだ。『僕』が朝のゴ...■鉄の匂い262■

  • ■鉄の匂い261■

    『僕』には意外な才能が眠っていた。まるで擦(なぞ)る様に立体を二次元に写し取れるのだ。出来ない人間には巧く伝わらないと思うが、出来る『僕』からすると言葉通りの技だ。尤も、写し取る技術と、それを説明する能力は正比例する訳ではない。『僕』の絵が金を払うに相応しいという評価を得たのだから、それが事実だ。とにかく、女子学生への依頼は倍増した。納品が飛躍的に早まったから。次から次へと口コミで舞い込む依頼の希望を的確に引き出し『僕』に伝えることができる女子学生と、下書きもせず描き散らかしても顧客を満足させる絵を提供できる『僕』。溜まっていた注文は瞬く間に捌けて、収入も鰻登り。『僕』は不思議でならなかった。『僕』が適当に描く絵が何故求められるのか。その時の気分で流しているだけなのに。女ス学生は注文を取るだけになったので時間に...■鉄の匂い261■

  • ■鉄の匂い260■

    女子学生は、何かの資格を取る為に勉強していた。当時にいろいろ聞いたのだが、学校や塾や予備校に通うのではなく、自宅で励む通信制ということしか記憶にない。だから自宅に居ることが多く、『僕』の動向を見聞きしていたのだった。それにしても詳し過ぎる。『僕』はある想像をもって女子学生と接していた。悍ましい裏と表をもって。さておき、生活の拠点を定めた『僕』は、翌日から近隣の探検に出掛けた。競艇場から黒人のパチモン倉庫、女子学生が2階に住む殺された男のアパートを経て『僕』の新居までは、偶然なのか直線で結べた。いや、偶然ではない。拉致されかけた場所から少しでも離れたい狼狽が拠点を最短の移動で遠のかせたのだ。同時に、木を隠すなら森の中で、まっすぐ逃げながらもその距離は短かかった。あるいて往復できない範囲ではない。競艇場から逃げた時...■鉄の匂い260■

  • ■鉄の匂い259■

    今切ったばかりの千切りキャベツの上に作り置きのハンバーグを半分にして載せ、4個食べようとしていたらしいプチトマトを2個づつに。部屋の中は、本棚と机とファンシーケースがひとつづつの、女子学生の城としては殺風景だった。本棚には難しい本が並び、漫画やファッション雑誌は一冊もない。ファンシーケースは、スチールパイプの骨組みに厚手のビニールを被せた衣裳箪笥だ。使い込まれたケースは、角は擦り切れ正面は陽に焼けて黄ばんでいた。年頃の娘の必需品である姿見は無く、化粧品も並んではいない。しかし掃除は行き届いており清潔な部屋だった。同じ間取りでもこうも違うのかとついジロジロ見入ってしまい窘められる。女子学生は終始ご機嫌だった。自分の身の上から将来の夢まで、実に楽しそうに語り続けた。ドライブも快諾し、誘われたことを喜んだ。帰り際には...■鉄の匂い259■

  • ■鉄の匂い258■

    もっと早く気付けば良かった。そのチャンスはいくらでもあったのに。気付いていれば『僕』の未来の選択肢はもう少しあったかも今となってはもう、手紙の内容を知る術はない。手紙は封も切らず処分してしまったし、書いた本人も内容を語ることはできないから。『僕』は、女子学生をドライブに誘った。引っ越しを手伝ってくれたお礼に。運転の練習のお手伝いを頼みに。『僕』は運転が下手だった。アパートへの路地も何回も切り替えしをしなければ通れなかったし、右左折の度にウインカーを出すのに間誤付いた。『僕』は運転の経験が殆どなかった。浚渫船で働いていた時に、河川敷で屋根を切り捨てたワンボックスで遊んだくらいだ。そもそも免許を取得していない。今ある免許は、黒人から買った身分にオマケで付いてきた代物だ。つまり殺された男が試験に受かり交付された免許証...■鉄の匂い258■

  • ■鉄の匂い257■

    変な学生だ。馴れ馴れしいを通り越して、危機管理能力が皆無だ。女子学生は、『僕』が買った個人情報の所有者と面識があったのだろうか。でなければ、引っ越しの一件は説明が付かない。が、交友があったのは『僕』自身だった。『僕』が個人情報の所有者の住居に入ってすぐの頃に、粗大ゴミを出したり引っ込めたりしている『僕』を、女子学生は2階から見ていたのだった。それだけなら一方通行の目撃だ。ゴミ置き場に一度は出したものの持ってってもらえないのではと思い直し、一度持ち帰った金属パイプの健康器具。裏庭で、パイプカッターを使い燃えないゴミサイズに刻んでいるのを、これまた2階のベランダから見下ろしていたらしい。その後しばらくして、2階への外階段に投げ捨てられた自転車をどかそうとしている女子学生に出くわした。その自転車は、何度か階段に打ち捨...■鉄の匂い257■

  • ■鉄の匂い256■

    怪しい黒人に世話された他人の顏を被った生活が始まったのは、紅葉が色付く頃だった。肌寒くなった街で生活必需品を買い揃る。新居はそれまでの居住地から徒歩で10分程の3階建てマンションの2階の端。園子が暮らしていたマンションに似た外観で、内覧の時に上下両隣の住人の面(つら)は確認済み。ベランダに出ると、遠くにそれまでの職場のビルが望めた。知ってる人に遭う危険を考えれば、もっと遠くに越すべきなのは解っている。しかし、この街に潜もうと思った初心と園子が囚われていた部屋が近いのとが、『僕』をこの街に拘らせた。知ってる人と言っても、もともと人付き合いのなかった人間な訳で、『僕』が入れ替わってからは殆ど顔を合わせてはいない訳で、気にし過ぎるのは挙動の不審に繋がるかも。という訳で、雑多で騒がしいが寂れて活気がないこの街に落ち着く...■鉄の匂い256■

  • ■鉄の匂い255■

    永久に若く健康に過ごせるなら、人魚の一匹如き犠牲にしても構わない。面白可笑しく楽に暮らせるなら、労働者が幾ら喘ごうが気にはならない。自分が儲かりさえすれば、他人がどれだけ貧乏くじをを引こうが何処吹く風。自分の利益の為ならば他人の不幸は蜜の味。利己的な話に思えるが、命を長らえる為に他者を犠牲にするのは当たり前の話だ。干ばつに見舞われれば弱い個体を見殺す。自分の子孫以外は母親諸共群れから追放。仏教でいう業。生きとし生ける物は全て、食物連鎖のひとつ下の段に生きる物を殺めなければ生きてはいけない。少しでも長く生きたい。死ぬまで健康でいたい。丈夫な子孫を残したい。繁殖期の雄共が若く健康な雌を奪い合い結果強い雄の子孫だけが保存される。『僕』は牧ちゃんのお姉さんを犯したかった。でも牧ちゃんのお姉さんに『僕』の子を産ませたかっ...■鉄の匂い255■

  • ■鉄の匂い254■

    『僕』は異性を金として見ている人間を軽蔑する。『僕』は人を物として見てその命を奪ってきたのに。『僕』は産業革命以降の資本主義を経済体制として認めない。『僕』は商品として提供できる程の労働力も持ち合わせていないのに。結局『僕』はこの世の全てが気に入らないのだ。他人が構築してきたシステムに馴染めないのだ。愛だの情だのの単語の存在自体にイラつくのだ。社会が標準とする価値観に見合う能力を持っていないから。一人前と認めて貰うに足る努力をしてこなかったから。『僕』のこの後ろ向きな憤りは、怪しい新興宗教に嵌る高学歴低伝達能力者の思考に似ている。幸か不幸か、『僕』には訝しい団体から声が掛かる程の学歴がない。何処にも引っ掛からず吹き溜まったマイナスのエネルギー負のオーラ。今日の『僕』は自分に厳しい。ある程度の余白を残しながらも。...■鉄の匂い254■

  • ■鉄の匂い253■

    泥棒にも三分の理、とはよく言ったものだ。どんなに人の道を外れても、犯罪者は身勝手な酌量の余地を主張する。社会が悪い。政治が悪い。もし、自分が悪いとするならば、こんな自分に育てた親が悪い。そして『僕』は、『僕』の付き纏い行為が金が介在する性商売の一環ではないことを挙げ、自身の犯罪に自ら酌量を付した。『僕』は逢瀬を金で買ったりはしない。支払われた対価としての笑顔には騙されない。読み出し専用光ディスクを大量に買うのはキャバクラでシャンパンタワーを建てるのと一緒だ。食事に連れ出せないし恋愛対象になり得ないのに金を注ぎこんでいる分、愚かで不毛で気持ち悪いが。だから『僕』のストーカー行為は、アイドルとの疑似恋愛に溺れる社会不適合者とは違う。セックスはさせないのに握手をしただけで繋ぎ留められてしまう恋愛童貞猿と一緒にはされた...■鉄の匂い253■

  • ■鉄の匂い252■

    ストーカーとは。辞書には「つきまといをする人」とある。stalkという動詞がその語源で、他者に忍び寄り危害を加えることを指している。erという接尾語を付くとその行為をする人を指す。だからニュースなどで聞くストーカー行為というのは「付き纏いをする人の行為」ということになる。無神経な重複なのか知った上での強調なのか、日本固有の独特の経緯で定着した島国的な発想による表現だ。危害をどう定義するかでも、ストーカーの範囲は変わってくる。双方が快楽として享受しているなら、それはしたいされたいが一致した変態プレイの一環だ。二者の組み合わせは合致しているので、提訴されたり被害届が出されたりする心配のない娯楽行為だ。しかし、同じ趣味を持っていても互いが好みのタイプでなければ成立はしない。したい人とされたい人であっても、したい人はさ...■鉄の匂い252■

  • ■鉄の匂い251■

    信頼により得られる利益を少しでも多く長く享受し、裏切られる寸前で損切りをする。そんな下らない処世術が身に付いていた。そんな詰まらない価値観が染み付いていた。そうだと思ってはいても、他人から指摘されると話は別だ。言われたくはなかったし言われて心に響く程に素直でもなかった。ここで反省して改めていれば、或いは更生という未来もあったのかもしれない。でも反省はしなかった。それが事実で現実。かもしれない未来を妄想するのは過去を懐かしむより尚空しい。『僕』は反省しなかった。『僕』は更生できなかった。『僕』は未来をひとつ潰してしまった。小さなプライドに拘って大局を見逃してしまった。傍から見ればバカな選択に猪突な『僕』は妄進してしまった。だが当人からすれば当然の結果。窮地は其処ら中にありしかし好転の時宜(じぎ)は少なく見過ごしや...■鉄の匂い251■

  • ■鉄の匂い250■

    『僕』が歩を詰めるとその分だけ牧ちゃんのお姉さんは後退りした。「これだけ言っても響かないのか。そんなにアタシを犯したいのか。久しぶりの再会の感動よりも性欲か」『僕』を掌で牽制し距離を保つ牧ちゃんのお姉さん。「いつか制裁が下るよオマエと同類の輩から。その前に今日アタシが言ったことを思い出せ。オマエの周りはろくでなしばかりじゃなかった筈だ。絶対良い人も居た筈だ。その人に申し訳ないと思わないのか」牧ちゃんのお姉さんはもう全力疾走だった。走り去るお姉さんの背中を見送り、『僕』はまだ追い付けば犯せるかもと算段していた。当時の『僕』には、お姉さんの言葉は全く刺さらなかったが今。監禁され、もしかしたら殺されるかも知れないこの環境にあって、初めてお姉さんの言葉が胸に深々と刺さった。いつか『僕』は『僕』の同類から制裁を受ける。か...■鉄の匂い250■

  • ■鉄の匂い249■

    「あの時は、アタシもまだ子供だったから、可哀そうに思いながらもオマエを助けてやることはできなかった。今なら、大人になったアタシなら、あの時苦しんでたオマエくらいなら救ってやれるのに。オマエは自分を大切にしない処か、他人の気遣いにまで無頓着に育ち、アタシが手を差し伸べても届かないくらいに堕ちてしまった」歩道の真ん中に立ちはだかり、通行人を避けさせる牧ちゃんのお姉さん。「残念だ。とても残念だ。アタシは再会をとても楽しみしていたのに。虐げられてもオマエならきっと術を見い出して、多少の迂回はあっても真っ当な道に立ち戻っていると信じていたのに。なのにオマエはどうだ」『僕』には霊感も超能力もないが、その時の牧ちゃんのお姉さんからはオーラが見えた。「アタシの期待を裏切り、アタシがこんなにオマエを想って話してる最中にも、なんと...■鉄の匂い249■

  • ■鉄の匂い248■

    繁華街でわざと半グレに絡まれて、カツアゲをやり返す。ワイシャツの裾が出て革靴も片っぽ脱げた様な無防備の給与所得者の胸ポケット破る勢いで財布を奪う。園子に集(たか)っていたチンピラみたいな連中に難癖を付け路地裏に引き込まれた体を装い暗がりで逆に恐喝。財布の中身は、会社員よりも女子高生の方が多かった。性的サービスを仄めかすJKは雑居ビルの非常階段で素っ裸にして制服を階下に放り投げてやった。バタフライで凄む愚連隊気取りのガキンチョには、モリブデンバナジウムの柳葉包丁を太腿に刺してやった。ションベンの匂いがする浮浪者がコインロッカーの返金口を漁っている。豊齢線にファンデが溜まった女が電柱に凭れだらしなく指を3本立てる。油塗れでギトギトのアスファルトの上を子猫サイズのドブネズミが走る。汚い物不潔な人汚らわしい奴哀れな女。...■鉄の匂い248■

  • ■鉄の匂い247■

    ここから暫く、また記憶が曖昧になる。曖昧というか、どの記憶がどの日のものか、区別がつかないのだ。毎日が同じようなことの繰り返しだったり、唐突に非現実的な出来事に見舞われたり。奇異な経緯で得た日常は実感が伴わない。日々のルーティンが分からなかった。何をしても目立つ気がして、だけど何もしない社会人は目立った。定職に就きたいが、殺された誰かの身分で表の職に就くのは不安だ。かといって裏の仕事は、有賀さんやナンバーに見つかるのが恐い。黒人は、皆に『僕』を追うなと通達したが、皆がそれに従うかどうかは分からないし、皆の範囲も分からない。競艇場で『僕』を拉致しようとした3人組も、偶然『僕』を見つけただけで普段は別の仕事に就いているのかいないのか。賞金稼ぎの様に追われてる者を捜しだして拿捕して突き出すのがメインなのかサブなのか。...■鉄の匂い247■