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藤平 司
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2006/09/19

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  • 記事一覧

    記事一覧です。(6月7日更新) 思い出 夏の夜話 犬 前編

  • 絶望という名の病 後編

    一週間後、同じ病院に行ってみると、この前診察してくれた医者はいなかった。その代わり比較的若い医者が診察していた。 「3日前からお見えにならないんです。どうしたのかこちらもわからない状態で」 彼は顔をしかめ、ため息をついた。 「あなたの検査結果ですが、どうにも見当たりません。木村先生、この前検査した先生ですが、その先生がおそらく検査結果を持っていったんだと思います。 おもしろいことがわかっ…

  • 絶望という名の病 中編

    「希望病」が見つかって一年ほどが経った日、一人の男が首を吊った。 その男は伝染病を地上に広めた新聞記者だった。 その後、自殺者が激増する。希望にまみれたマスコミ各社も取り上げざるを得なかったが、締めの論調は「一時的なものですぐによくなる」といったものだった。 実情は僕の学校と同じ。自殺者は増える一方だった。 自殺の原因の多くは確実に「希望病」だった。 自殺者の体内から不活性のウイルスが…

  • 絶望という名の病 前編

    薄暗い教室にまた花が咲いた。 それは教室に集う生徒たちが鑑賞して、心を落ち着かせるためのものではない。絶世の美女を指したり、誰かの心の清らかさを暗喩したりするものでもない。 「今度は彼?」 ゆっくり花瓶に花を挿す佐々木に向けて言った。 「うん」 彼は花に視線を注いだまま答えた。 机の上に咲いた花は死者への手向け。息苦しいほど満開の花が皮肉に見えた。 僕の隣の席の女の子も先週死んだ。…

  • 家庭

    がちゃん、と音を立てて、皿が数枚落ちた。 落ち方が良かったのか、どうやら割れていない。 落とした張本人であるユウジはほっとした表情を浮かべた。 皿を流しに入れたあと、こぼれたスープを布巾で拭き始めた。 皿を落とした音に反応したアキマサは、ユウジのほうを見やった。ユウジが自分で掃除する姿を確認すると、アキマサはすぐに目の前の食事に再び視線を戻した。 食べ残しがなかったことが幸いして、汚れ…

  • 酔う

    「ユウコ、もう少し優しくなでてくれないか?」 「はいはい」 私がヒロの背中をさすると、ヒロは4度目の嘔吐をした。洗面所の酸っぱい匂いが強まった。 「こんなところで私、何やってんだろ」 「うるさい、静かにして……うっ……」 これで5度目。 女に振られたからって、いくらなんでも飲み過ぎだ。 やけ酒に付き合ってくれ、と呼ばれて、ヒロの家に来た私も私だけど、こんな世話までさせないでほしい。…

  • ダンス

    音楽とともに男と女は目を醒ました。そして、二人だけの踊りが始まった。 「何年ぶりかしら、こんな風にあなたとこうして踊れるなんて」 ステップを踏みながら、女は目の前の男にささやいた。 「そんなこと、どうでもいいじゃないか。どれだけ言葉を交わしても、僕らは踊ることでしか、互いを支えられないんだから」 男は女の手を取り、軽やかに踊り続ける。そして、女に身を委ねさせた。 緩やかに始まった音楽は…

  • ツノ

    「よお、久しぶり!」 「うわっ!脅かすなよ。まったく、遅いじゃ……ねえ……か」 「ん、どうした?」 「お前、頭どうしたんだ?」 「ああ、アフロにしたんだ。カッコいいだろ?結構手入れが大変なんだぞ。でも、こうやって触ってるだけで気持ちいいんだ」 「いや、そうじゃなくて、頭のそれ」 「どれだよ?」 「てっぺんについてるそれだよ」 「どれ?」 「それだよ」 「指さしたって、鏡がなき…

  • 泥棒

    最近めっきり寒くなった。酒でも飲んで帰りたいところだが、妻からの小遣いだけではそれは無理な話だ。 まっすぐ自宅に帰り、明日からのためのコートを押入れから引っ張り出した。見ると、コートは虫に食われ小さな穴が開いている。今持っているコートはこの一着だけなのに、これでは着られない。 妻にお願いしてコート代ぐらいもらおうと思ったが、全く聞き入れてもらえなかった。そんな穴ぐらい縫ったらいいじゃない、と…

  • 生える

    目覚ましが枕元で鳴った。けたたましさで起きるのか、目覚まし時計が鳴ると条件反射で起きるのか、いつもよくわからないが、とにかく起きた。 起きたとしても、体はまだ睡眠をほしがっているわけで、目覚まし時計に手を伸ばし、騒がしい音を止めにかかった。 そこで、手に何か付いているのが見えた。 小指の付け根の脇からもう一本、指が生えていた。大きさは小指より少し小さいぐらいだ。 これは夢かなと思って、一…

  • あとがき

    前編や後編をそれぞれ一話と換算すると、「電話」でやっと十話分になりました。 そこで、一話ごとのあとがきを書いてみます。話の終わりにも少し書いていますが、いい加減なものばかりなので、改めて書くのも良いかと思います。 あと個人的にあとがきを読むのが好きなので、書いてみたくなったという理由もあります。 ネタばれを含むのでお気をつけて。

  • 電話

    僕がある携帯電話を見つけたのは一月前のことだった。 バイトの帰り道に、自動車などの騒音に負けてひっそりと鳴っているところを見つけた。 携帯電話を落として困った持ち主がどこかからかけて、助けを求めているのだろうと思って、何気なく僕は電話に出た。 最初は何の返事もなかった。風の音のようなざわつく雑音が聞こえていた。 少しして声がした。ほとんど聞き取れないくらい小さな声だった。相手は名前を名乗…

  • 一枚の枯葉がこれまで身を寄せていた木から離れた。 木、周りの葉、そして大きく広がる空との別れを惜しむように、枯葉はひらひらと舞いながら落ちていく。 やがて辿り着いた場所は開かれた本の上。 僕は公園のベンチに座り、その本を膝に乗せていた。読み進めようとするが、何度も同じ箇所を読み返していた。 母親が娘を亡くして慟哭し憤り自らを責める場面だった。 思わず枯葉を本に乗せたままページを閉じた。…

  • 彼の地 後編

    「彼の地 前編」 「彼の地 中編」を先にご覧ください。 存在するもの全てに悲痛に嘆きかけてくるあの声が、確実にこの街から聞こえていた。 声は凄まじい轟音となり辺りの物を震わせていたが、ノーセは依然として無感動だった。 街…

  • 彼の地 中編

    先に「彼の地 前編」をどうぞ。 男の名はノーセと言った。 荒廃した砂漠の街で、あの声に耐えられる数少ない若者だった。 そのため、彼は街を自由に闊歩できた。なぜ自分は耐えることができるのかわからなかったが、彼にとってはどうでもいいことだった。 ノーセは成長すると、自分と同じ耐性を持った若者と徒党を組んだ…

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