chevron_left

メインカテゴリーを選択しなおす

cancel
prisoner
フォロー
住所
東京都
出身
東京都
ブログ村参加

2006/01/22

arrow_drop_down
  • 「せきれいの曲」

    相当にびっくりさせられた。昭和の初め、山村聰の作曲家が轟夕起子と結婚してものすごくモダンなホテルで新婚生活を始めたと思ったらすぐ他に女がいることがわかるのだが、女の姿は見せず山村と足先だけの芝居で見せた後、気づいた轟になじられると山村が開き直るというか居直るというか芸術家的なエゴイズムというか、それらを超越してあまりに堂々とした押し出しで押し切ってしまうのにびっくり。ホテルの朝食が「カリオストロの城」ばりに卵立てにおそらく半熟の卵を立てていたり、公園の建物がすごくモダンだったりする。コンサートの客席が奥まで全部埋まってたり、繰り返すけれどこれ昭和26年の作ですよ。昭和初期の芸術家のあり方ってこういうものだったのかとあまり時間が経っていなかった分、ありえたともとちょっと思う。轟が山村と別れた後、有馬稲子を産...「せきれいの曲」

  • 「新幹線大爆破」(Netflix版)

    意外だったのはオリジナルの75年版の事件と因果関係があることで、まっさらのリブートというわけではない。オリジナルには爆破シーンはイメージ・シーンしかないが、ここではこってりたっぷりVFXを駆使した派手な爆破やものすごいスピード感のある新幹線の疾走シーンは見もの。新幹線がどういうルートで走るかどう作戦を練るかを綿密に描いているのは樋口真嗣監督としては「シン・ゴジラ」、またそれ以前の怪獣映画平成ガメラ三部作に連なるところだろう。犯人は「椿三十郎」ではないが、とんでもないところにいる。思ったのはオリジナルの犯人役の高倉健はのちのように国民的スターになるちょっと前で、もともとヤクザ役でスターになったわけだが、考えてみるとヤクザというのは犯罪者なわけで、今の認識では当然のことだが、当時の認識だと同情すべき犯罪者とい...「新幹線大爆破」(Netflix版)

  • 2025年4月に読んだ本

    4月の読書メーター読んだ本の数:11読んだページ数:3263ナイス数:0映画監督ドン・シーゲル:ノワールを遠く離れて読了日:04月30日著者:吉田広明格闘技が紅白に勝った日2003年大晦日興行戦争の記録読了日:04月27日著者:細田昌志地球へ…[カラーイラスト完全版デジタルエディション]3巻読了日:04月22日著者:竹宮惠子地球へ…[カラーイラスト完全版デジタルエディション]2巻読了日:04月21日著者:竹宮惠子地球へ…[カラーイラスト完全版デジタルエディション]1巻読了日:04月21日著者:竹宮惠子ぼくは翻訳についてこう考えています-柴田元幸の意見100-読了日:04月15日著者:柴田元幸日本経済の死角――収奪的システムを解き明かす(ちくま新書1840)読了日:04月09日著者:河野龍太郎イルカと否定神...2025年4月に読んだ本

  • 引っ越します

    gooブログのサービス終了にあたって以下のはてなブログに引っ越します。今後ともよろしくお願いします。小暮宏の映画ブログ引っ越します

  • 「アマチュア」

    オリジナルのジョン・サベージ主演版だと妻を殺すのに処刑スタイルで頭を撃っていたと記憶する。リメイクされるまでの間に色々センシティブにならざるを得なくなったと想像する。「アマチュア」-公式サイト「アマチュア」-映画.comTheAmateur-IMDbnote創作-YouTube「アマチュア」

  • 「ゴーストキラー」

    格闘を得意とする殺し屋の幽霊がとりついたもので女子大生がものすごい身のこなしのアクションができるようになる、というセントラルアイデアがいい。高石あかりが単独主演し「ベイビーわるきゅーれ」シリーズで磨いてきたアクションスキルで女だと思ってナメてくるゲス男どもをぶっ倒すのが痛快。就活生という設定だけどあまりそれっぽくないが、現在実年齢22歳。殺し屋の幽霊の三元雅芸と手を握れば高石にとりつけたり、成仏するには誰が三元を殺したのか知る必要があるという約束ごとをきっちり押さえている。アクションを演じる間に高石と三元の姿が入れ替わっても混乱しない。ときどきやや不自然なフラッシュバックがはさまったり、ワルが成敗されるのが殺すところまで行ったのかどうか曖昧だったりややひっかかるところはあるが、まずは快作。「ゴーストキラー...「ゴーストキラー」

  • 「HERE 時を越えて」

    定点観測という点でいったらこれくらい徹底して定点観測で通した映画もない。市川準監督の「病院で死ぬということ」をちょっと思い出した。忍耐を要求する作りかと思うとラストでどっと泣かせるのも共通している。家の特定の部屋にカメラを固定して撮っているのかと予告編から推測していたのだが、空間だけではない。ネタバレは避けるが「時をこえて」と邦題のサブタイトルで明かしてしまっている。マルチスクリーン風に一部切り取った画像で徐々に内容を変えていく技法はなんでもないようにやっているが相当に手がかかっただろう。タイミング合わせるのを想像しただけで気が遠くなる。エンドタイトルでAIと頭についたスタッフが何十人も並ぶ。ロバート・ゼメキスという監督は「抱きしめたい」の昔からこういうハード先行の発想の画面作りをする人だったなと思う。「...「HERE時を越えて」

  • 「サイレントナイト」

    ギャングの抗争の巻き添えで幼い息子を殺された父親(ジョエル・キナマン)が復讐する、という単純な話なのだけれど、ちょっとづつひっかかる。すごい勢いで父親がギャングを走って追いかけているシーンから始まるのだが、息子が目の前で撃たれたらギャングを追うより先にまず病院に連れて行かないか。喉を撃たれて声を失うにせよ、その場でついでにキナマンが撃たれた方が手数が省略できたと思う。走るところをつかみにしたかったにせよ、あまり上手くいっていない。ギャングに撃たれて入院している夫を妻が見舞うのだが、なんだか妻は息子より夫に気を取られているようにすら見える。終盤、妻の出番がどういうわけかあまりなくなった頃、ギャングのヤク中の情婦がラスボスの前くらいに銃を持って出てくるのだが、この情婦が長い黒髪など妻にちょっと似ているものでヤ...「サイレントナイト」

  • 「プロフェッショナル」

    原題はIntheLandofSaintsandSinners(聖者と罪人の国にて)。監督はクリント・イーストウッド主演の「人生の特等席」でデビューし、リーアム・ニーソンとは「マークスマン」でも組んだロバート・ロレンツ。ロレンツはイーストウッドとは10本以上の作品で製作を担当し、当然イーストウッド組と目されるが(撮影のトム・スターンもイーストウッド組)、簡潔なタッチ、たとえば車のトランクが開いたと思うより早く男が暴れだすのを一瞬に見せたり、あるいはIRAの一味があわてて車を暴走させてぶつけた標識の破片を初めの方で見せてずっと後で車体の傷跡を見せることで説明抜きで何があったか、乗っていたのは誰かわからせるなど、語り口が経済的なことドン・シーゲルをちょっと思わせる。ニーソンも還暦すぎてアクションスターになるとは...「プロフェッショナル」

  • 「風と共に散る」

    オープニングがまことに快調、石油を掘る油井がずらっと並ぶ前をロバート・スタックがウィスキーをラッパ飲みしながらカスタムカーを飛ばして乗りつけた屋敷から銃声が聞こえたところで、カレンダーがめくれていき日付が過去に戻り、そうなった経緯を語りだす。石油で大成功しすぎた父親にスポイルされた息子スタックと娘ドロシー・マローンの幼なじみの尻拭い役をものすごく端正なマスクのロック・ハドソンがやっているのがどこか逆に歪んだ関係をうかがわせ、ハドソンが見染めたローレン・バコールにスタックが目をつけて強引にカネにあかせて結婚してしまうのもイヤな予感しかしない。金があるのにスタックがわざわざ出入りする安酒場のバーテンをやっているのが「天国の日々」でTheFarmForeman(農場監督)役をやっていたロバート・ウィルケ。鏡を使...「風と共に散る」

  • 「デーヴァラ」

    エンドマークの代わりにDEVARA2と出るのに目が点になった。「ウィキッド」がPART1まで公開してあとは「tobecontinue」のは知っていたが、これまた三時間もある長尺作にまだ続きがあるとは思わなかったぞ。Intermissinと出るのに休憩は入らない。頭でCMと予告編がえんえんとつくのだからトイレ休憩くらい入れてほしいな。NTR・Jr.が伝説の英雄デーヴァラと息子ヴァラを1人2役で演じるわけだが、「バーフバリ」をはじめ長尺作にこういう親子の関係を作劇に据えたパターン多いな。「デーヴァラ」-公式サイト「デーヴァラ」-映画.comDevara:Part1-IMDbnote創作-YouTube「デーヴァラ」

  • 「アンジェントルメン」

    第二次世界大戦の裏話ということで一応史実だというが、はみ出し者チームが危機に見舞われることがあまりなく、割とすいすい調子よくいってしまう。連合国側が勝ったのだから上手くいったには違いないのだろうが。イアン・フレミングがかなり大きな役で、演じているのがフレディ・フォックス。なんと「ジャッカルの日」のエドワード・フォックスの息子。この映画の主人公であるガス・マーチ=フィリップスがジェームズ・ボンドのモデルということらしい。チャーチル役のロリー・キニアも007シリーズは「慰めの報酬」「スカイフォール」「スペクター」とMの部下ビル・タナー役で連続して出ている。かなり流血描写が目立つけれど編集がスピーディなもので生理的不快感はあまりない。原作とプロデューサーのひとりでもあるデミアン・ルイスってドラマの「ホームランド...「アンジェントルメン」

  • 「黄昏の湖」(加藤健一事務所)

    映画版の「黄昏」1981の方を先に見ていて、主演のヘンリー・フォンダ、キャサリン・ヘップバーン、助演のダブニー・コールマンが亡くなっているので老いと死というモチーフのフィルターを通して見る格好になった。前半、かなりはっきりと加藤健一扮するノーマンが認知症なのを示していて、映画化だとシリアスに感じられる箇所が役者と観客が直接リアクションを交わす芝居で見ると風通しがよくなって笑えるようになる傾向というのはあると思う。かなり娘(加藤忍)のチェルシーの登場が遅くて、ヘンリーの実際の娘でもあるジェーン・フォンダがこの舞台を見て自らと父との関係をだぶらせたところから映画化を思い立ったと伝えられるが、そちらの方は意外にかなり引っ込んだ印象。登場人物は六人とコンパクト。タイトルになっている黄金の湖は実際には舞台面には現れ...「黄昏の湖」(加藤健一事務所)

  • 「ウィキッド ふたりの魔女」

    3時間かけてパート1が終わりなのであって、文字通り話半分。あとはパート2を待てというわけ。ただし歌=音楽の盛り上がりがすごくて満足感は十分。tobecontinue(続く)とラストに大きく出るのに合わせたわけでもないのだろうが、2ndunitとエンドタイトルに出たあとにcontinueと出る。毎度のことながら、とにかくスタッフの数が多いのなんのって。シンシア・エリボが顔を緑色に塗っているのだが、合成するときに困らないかな。それとも緑色そのものが後処理なのか。アリアナ・グランデがエリボに対しほぼすべての点で恵まれていて、それでいてエリボがひねこびずグランデが優越感に浸らず身分や格差を超えて友情を結ぶのが新鮮。-YouTube「ウィキッドふたりの魔女」-公式サイト「ウィキッドふたりの魔女」-映画.comWic...「ウィキッドふたりの魔女」

  • 「アンジーのBARで逢いましょう」

    アンジーというのはエンジェル=天使にかけているのではないかな。実際、衣装からしてふわっとした雰囲気で、地上からちょっと浮かんでいるみたい。西部劇みたいにどこからともなく現れ、どこへともなく去っていくというイメージ。現地の人間たちを感化するが当人は変わらない触媒みたい。「アンジーのBARで逢いましょう」-公式サイト「アンジーのBARで逢いましょう」-映画.comアンジーのBARで逢いましょう-IMDbnote創作-YouTube「アンジーのBARで逢いましょう」

  • 「エミリア・ペレス」

    マフィアのガスコン=男とエミリア・ペレス=女とが同じ役者(カルラ・ソフィア・ガスコン)がやっているというのにびっくりすると共に、あまりに見かけが違うのでキャラクターがつながらず、釈然としない気分になった。釈然としないといったら、マフィアが罪を逃れるために姿形を変えたのかというとそうではないらしい。ヤボか知らないけれど、麻薬取引に関わった犯罪者のはずが痛めつけられたりする場面が多いもので犠牲者がかって見える。ミュージカルという現実から浮遊する形式をとったのはいいけれど、ちょっと現実ばかりか倫理離れしているみたい。「エミリア・ペレス」-公式サイト「エミリア・ペレス」-映画.comEmiliaPérez-IMDbnote創作-YouTube「エミリア・ペレス」

  • 「ミッキー17」

    ポン・ジュノは格差社会というモチーフは手放しませんねえ。現実にいよいよ拡大しているのだから当然ではありますが。CGクリーチャーの造形がグロテスクにデフォルメされているようで気味の悪いリアリティが張り付いているという点で「グムエル」「オクジャ」「スノーピアサー」などと共通している。早い話、巨大なダンゴムシが大量に発生しているのだから気持ち悪さに拍車がかかっている。それにしてもCGのぬるっとした質感はピーター・ジャクソン版の「キング・コング」の巨大な虫もそうだったがホントに気持ち悪い。原作が「ミッキー7」なのを「ミッキー17」にしたのは思春期の歳に合わせたからというポン・ジュノのインタビューに納得。まるで同じに見えたロバート・パティンソンに次第に違いが出てくるのは成長期にあるからか。キャストに黒人、東洋人が適...「ミッキー17」

  • 「教皇選挙」

    前教皇が亡くなる冒頭で遺体を入れる袋のチャックが閉められ、ロウで作った封印が施され、コンクラーベが絶対的に外との交流を遮断しているのを象徴的に見せる。煙という合図で投票の結果を外に見せるのは有名だが、しかし否応なく外の空気は入ってくる。野心家で性格に問題のある者ほど押しが強くて票を集めがちで、穏当な性格の者ほど慎重になりがちなのも他の世界と通じる。人事というのはまったくのひとごとであっても興味をそそるものがある。表立った投票の裏の数々の工作で見せる札と伏せる札との使い分けが上手い。肌の黒い枢機卿がかなりいるが、どういう経緯でカソリックに入り組織内を歩んできたのかと思わせる。ずいぶんややこしい法王庁内の役職の名前が出てくるが、訳に監修とかつかなかったのだろうか。枢機卿たちが赤の法衣をまとっていて、尼僧たちの...「教皇選挙」

  • 「レイブンズ」

    オール日本人キャストだがエンドタイトルを見ていたら、日本のほかフランス、ベルギー、スペインの合作で、他にもいくつかの国名が見えた。ニューヨークを除いてすべて日本のシーンで、セットの考証、質感、光の感じなど申し分なくリアリティを出している。タイトルのレイブンRaven=鴉と聞いてエドガー・アラン・ポーの詩「大鴉」の原題を思わないわけにはいかず、実際窓から入ってくるなど、通じるところはある。あまりあからさまに象徴的にならないように留意しているくらい。ちなみに鴉は英語をしゃべります。ポーの詩は死んだ恋人をうたっているのだが、実際写真家・深瀬昌久にとってモデルの洋子(瀧内公美)はミューズだったということか。その一方で鴉は昌久に刺さった棘である父親の助造(古舘寛治)の象徴でもある。浅野忠信が父親ゆずりのアル中でタバ...「レイブンズ」

  • 「BAUS 映画から船出した映画館」

    バウスシアターという実在した映画館をモチーフにしてはいるのだが、ところどころに出てくる古い映画館の設備がバウスに見立てているのか、本格的に再現したのか、なんだか中途半端。こちらも中途半端にバウスには何回か行った覚えがあるだけにモヤモヤする。ライブ演奏するシーンでPA機器を見かけた記憶が蘇る。実のところ、劇場が主役というわけでもないらしく、支配人三代の方がエンドタイトルでフューチャーされたりする。井の頭公園で楽器を持って隊列を組んで行進したり、かなりシュールな表現が出てきて、都会の中で緑がある箇所という立地にマッチしていた。「BAUS映画から船出した映画館」-公式サイト「BAUS映画から船出した映画館」-映画.comnote創作-YouTube「BAUS映画から船出した映画館」

  • 「ノー・アザー・ランド 故郷は他にない」

    かなり見るのが遅れて、四人の監督のひとりのハムダン・バラールがイスラエル人入植者に暴行されたが命には別状なく戻ったというニュースの後になった。それだけに入植者が軍隊と変わるところがない暴力的な侵略者(イスラエル軍は女でも徴兵の対象にしている)という目で見ることになった。入植と軍事力=暴力がセットになってぺらぺらの小学校すらブルドーザーで強引に蹴散らし,井戸にコンクリートを流し込む。最近のガザ侵攻は記録されていないのだが、もはや人でなしの所業という他ない。洞窟の中に避難した村人が太陽光パネルで発電した電気でテレビを見てスマートフォンに充電している。まともな住居もないのに電化製品だけ揃っているという歪な状態。ただそのスマホやビデオカメラで記録した映像がこうやって送り届けられているのだから一応の意義がないことは...「ノー・アザー・ランド故郷は他にない」

  • 「ベイビーガール」

    キッドマンが夫とのセックスの後、感じている風だったのが夫のいない部屋のパソコンに直行し、床の上でうつぶせになってエロ動画見ながらオナニーするのにびっくり。キッドマンが相手かまわず吠える犬を飼っている若い男ハリス・ディキンソンを街角の雑踏で見かけてくわえ込むあたり、見事に整ったオフィス環境と取り澄ました顔の隙のなさのコントラスト。キッドマンがちりめんみたいな皺はさすがに増えたが「アイズ・ワイド・シャット」の頃とスタイルがほぼ変わっていない。地位の高い女性の押し隠している欲望と破滅・破壊願望のようなものはジャンヌ・モロー主演の「マドモアゼル」をちょっと思わせる。ニコール・キッドマンがCEOなのはわかったが夫のアントニオ・バンデラスが何をしているのか解説を読むまでよくわからなかった(演出家だと)。セクシーなのが...「ベイビーガール」

  • 「35年目のラブレター」

    主人公夫婦が出会った頃の1970年くらいの寿司一貫がうなぎで65円。映画は雪が降ってくるところから始まり、若い時と歳くった時で暖房がブルーフレーム(石油ストーブのブランド)と電気ストーブと種類を変えている。笑福亭鶴瓶と原田知世が夫婦役で、重岡大毅と上白石萌音がその若い時を演じる。四人がずらっと並ぶ画は夫婦が過ごしてきた時の厚さを見せたと思う。-YouTube「35年目のラブレター」-公式サイト「35年目のラブレター」-映画.com「35年目のラブレター」-IMDb「35年目のラブレター」

  • 「黒部の太陽」

    昭和の映画だなあ、と思う。内容も映画の作りそのものも「プロジェクトX」そのまんま、というよりこちらの方が元祖なのだった。黒四ダムが完成したのが1963年、映画が公開されたのが1968年だから映画化まであまり間を置いていない。これだけ当時としては新しい素材に着目しプロダクションをあげ五社協定を越えて協力したスター二人(三船敏郎、石原裕次郎)の勇気と人を巻き込んで動かした力は賞賛に値すると思う。その後の五社体制のなし崩し的な崩壊を経て今しも丸の内東映のラストショーとしてスクリーンにかかることになった。トンネルのセットが壮大。録音(安田哲夫・紅谷愃一)が破砕帯が軋む音といった静寂の中で耳を傾けるのを要求する小さな音と大音響との対比をよく生かした。でかい画面で見られるのを待っていてよかった。撮影もいかにも「実写」...「黒部の太陽」

  • 2025年3月に読んだ本

    3月の読書メーター読んだ本の数:18読んだページ数:4168ナイス数:4ホームレス消滅(幻冬舎新書)読了日:03月31日著者:村田らむファイト・クラブ〔新版〕(ハヤカワ文庫NV)読了日:03月29日著者:チャック・パラニュークイラク水滸伝読了日:03月24日著者:高野秀行夜空はいつでも最高密度の青色だ読了日:03月23日著者:最果タヒぼくは勉強ができない(新潮文庫)読了日:03月19日著者:山田詠美ゴルゴ13(B6)2272025年4/13号[雑誌]:ビッグコミック増刊の感想さいとう・たかを先生が亡くなってかなり経つが、シナリオの質は落ちてない。ただ画の方はGペンでカリカリ描きこんだ例のタッチは言ってもはじまらないが再現できない。画の構成・演出が弱いとシナリオも十分生きないというと言い過ぎだろうが、物足り...2025年3月に読んだ本

  • 「悪い夏」

    生活保護担当の役人・北村匠海が竹原ピストルの虚偽申請を弾ききれないてぐずぐずしているうちに、どんどん周辺の貧困ビジネスを利用する側される側ともに増殖していく。どの程度本物の貧困層がいるのかわからない中、それとは関係なくここでの窪田正孝みたいな職業的ワルが入っているとそれに引っ張られて多少まともな河合優実も娘を人質にとられた格好になり、その他のキャラクターも力学的に惨劇に至る。一蓮托生というか、演技アンサンブルの質が高い。ところどころ場面がとんでいてイメージシーンだったのかと思ったら現実に悪いことが起こっているというつなぎ方がいくつかある。これが現実の桐生市の担当みたいに「割り切って」本物の貧困層を切り捨てて仕事していても末路は似たようなものになったわけね。竹原がガラケーを使っている。貧乏しているように見せ...「悪い夏」

  • 「劇場版モノノ怪 第二章 火鼠」

    人物と背景が分離しておらずどの画面もびっしり描きこまれているが、和紙を模したマチエールと極彩色なのだがどぎつくない色彩のせいか、過剰に重くなっていない。時に人物の顔が極端に脇に寄せた構図をとったり、CGで主観ショットを模したりとアンバランスな画を投げ込んでくる。上映時間が短いのでさっと見通せる。薬売りの顔がはっきりわかるようになったのが新しい展開ということになるか。当然、第三部に続く。-YouTube「劇場版モノノ怪」-公式サイト「劇場版モノノ怪第二章火鼠」-映画.com「劇場版モノノ怪第二章火鼠」

  • 「白雪姫」

    1937年のオリジナルは宮崎駿が「アホ娘ですよ」なんて呼んでるのだが、まあちょっと今見ると目が点になるくらい価値観が違う。宮崎みたいに強くて意志的な女性が好きな人からすれば、美人というだけでまるっきり人任せにしていればいつか王子様が来て幸せが転がりこんでくるというのは虫がいいのにも程があるだろう。世界発の長編アニメという映画史的な価値と技術的達成度からして名作には違いないが、九十年近く前の価値観の下の製作だから単純に今の価値観にアップデートすればいいのかというと、今しもポリコレに反発する勢力がトランプ政権誕生に合わせてか、反発がトランプを押し上げたのか、とにかく浮上してきたものだからややこしい。雑音が多すぎる。白雪姫は前の王と王妃の正式な娘で、王妃が死んだあと王は悪役の魔女と再婚したので魔女が白雪姫の継母...「白雪姫」

  • 「ピアノ・レッスン」

    ピューリッツァー賞を受賞したオーガスト・ウィルソンの同名戯曲は上演を見たことはないが読んだことはあって、ピアノのボディの木に掘られた彫刻が一種呪術的な効果を狙ったトーテムみたいに描いているのかなと想像していたら、ほぼ想像通り。アメリカ黒人のルーツがアフリカにあると同時に南部の農場にある二重底みたいな構造になっている。ジェーン・カンピオン脚本監督の同タイトルの映画は原題はThePIanoであって、ウィルソン作の方が書かれたのは先なのでやむを得ず変えたのを邦題では思い通りに「ピアノ・レッスン」とつけられたと来日して語っていた。長セリフをナレーションのように扱って、舞台の枠に風通しを良くする形で映像化しているわけだが、クライマックスのオカルト的描写はほとんど「エクソシスト」、それも「2」の方。-YouTube「...「ピアノ・レッスン」

  • 「ジェリーの災難」

    「長年アメリカで暮らしてきた69歳の中国人男性ジェリーは、妻と離婚して定年退職を迎え、3人の息子たちとも離れて独り暮らしを送っていた。ある日、彼のもとに中国警察から電話が掛かってきて、自分が国際的なマネーロンダリング事件の第一容疑者になっていると告げられる。ジェリーがフロリダに持つ銀行口座を通して、128万ドルが違法に移動されているというのだ。逮捕して中国に強制送還すると言われたジェリーは、中国警察のスパイとして捜査に協力することに。」と聞くと、ああこりゃ詐欺だなと傍からは一発でわかる。このジェリーという役をジェリー自身が演じているのがキモなのだが、ジェリー役をジェリーがやっているという設定自体が実はウソだったとしたら、という疑問が入り込む余地はある。少なくとも映画という形でフィクショナイズしてはいる。い...「ジェリーの災難」

  • 「ロングレッグス」

    エンドタイトルが上から下に降りてくるというのは「THX1138」「セブン」「進撃の巨人(実写版)」とあったけれど、これもそう。現在の場面をスコープサイズ、過去の場面をスタンダード・サイズと使い分けている。ヒロインの母親役のアリシア・ウィットはデヴィッド・リンチ版「砂の惑星」のこの女の子ですね。栴檀は双葉より芳しというか、またこういう恍惚とした危険な表情を見せます。一家皆殺しという惨劇が直接関係のない人間の間で「伝染」していくのが「CURE」みたいで、ニコラス・ケイジが魔女みたいにも見えるすごいメイクで演じているのだけれど、一種の伝道師(「CURE」の仮題)みたいでもある。-YouTube「ロングレッグス」-公式サイト「ロングレッグス」-映画.comLonglegs-IMDb「ロングレッグス」

  • 「Flow」

    いや凄かった。陳腐な言い方だが、現実よりリアルなアニメーションと言っておこうか。視点が絶えず細かく移動し続けて、ブレているようでもあり、素早くパンしたりで、しかも全画面、下草のひとつひとつにまでピントが合っている。カメラで撮っているわけではないのだからピントが合っているというのはおかしいのだが、とにかく画面のすみずみまでくっきり鮮明に見える。そんな現実的な描写の中でいきなりとっぴな出来事が起こる。クジラの登場など典型で、ああいうヒレが余分についているみたいなクジラ、実在したかどうか。してるともしてないとも言い切れない。さまざまな種類の動物が一艘の舟に同居してるのはノアの箱舟のようでもあり、クジラが出てくるのは聖書的とも思えるが一概にそれと決めつけられない。人間はまったく出てこないが大掛かりな建築は出てくる...「Flow」

  • 「アドレセンス」

    まず物凄い長回し演出にびっくりする。ワンシーンワンカットどころかワンエピソードワンカットを平然、という調子でやってのけている。重いカメラに10分ぶんのフィルムしか詰められなかった「ロープ」の頃のヒッチコックが見たらどう思うだろう、と想像を巡らしたり、「映画の表現は理論では変わらないが、機材の変化で決定的に変わる」という実相寺昭雄の言を思い出したりした。こういう作りはカメラのデジタル化と軽量化なしにはありえなかった。第一話は少年が殺人で逮捕され父親とともに無罪を主張し続けるがあにはからんや犯人であることがわかる(引いたサイズの長回しのモニター画面ではっきり写らないのにそれとわかる)。第二話はその少年が通っている学校に刑事たちが行き聞き込みをするのを大勢の生徒たちの芝居をものすごいヴォリュームでわしづかみにし...「アドレセンス」

  • 「知らないカノジョ」

    映画初出演のmiletはエンドタイトルによると演技コーチがついたらしい。メガネをかけている時の愛くるしさと外してむっとしている時のメリハリが効いている。美人ですねえ。2021年のフランス・ベルギー合作映画「ラブ・セカンド・サイトはじまりは初恋のおわりから」を原作だというが、未見。配信はされている。miletのライブを横浜アリーナで一度やってから大学のホールに会場を移してまたやるのは二度手間に思える。中島健人が創作小説をノートにつけてからパソコンで打つというのは二度手間のようで案外やっていそう。-YouTube「知らないカノジョ」-公式サイト「知らないカノジョ」-映画.com「知らないカノジョ」-IMDb「知らないカノジョ」

  • 「喜劇 家族同盟」

    1983年作。横浜を流れる中村川を男女デュオのダ・カーポが歌いながら舟で下ってくるところから始まり、浮草的というか、寄る辺ない感じで全編を貫く。舟に自転車が山積みになっているほか、ずいぶん当時の横浜、とくに寿町近辺というのはスラムっぽかったのだなあと思う。今はドヤを改築したホテルに外国人バックパッカーがよく来ている。ドヤが並んでいる実写の情景が写る。中村雅俊はそういうところで生まれて中学三年で父親を亡くした設定。高台に建っている小さな家が主な舞台になるわけだが、玄関から入るとすぐ急な下り階段になっているという妙な高低差がある。安い借家である程度の広さを出す工夫だろうか。中村雅俊が山下公園で有島一郎に声をかけられ、戦争でなくした妻と息子の代わりを探していて、息子になってくれと頼まれる。懐には三百万円ある。コ...「喜劇家族同盟」

  • 「TATAMI」

    舞台をジョージアの首都トビリシに設定しているが、モデルになった試合は東京の日本武道館だという。監督と脚本はイスラエル、テルアビブ生まれのガイ・ナッティヴと、イラン、テヘラン生まれのザーラ・アミールの共同で、ザーラは作中の柔道チームの監督役で出演もしている。作中のイランの最高指導者が支配下にあるイランの柔道のメダル候補にイスラエルの柔道チームに棄権するよう指示、いや命令する。イスラエルとイランの関係に監督同士の関係がだぶる。あくまで正当な勝負にこだわる選手と理不尽な要求をしてくる権力者側の関係は非対称で、試合の主催者が公正な態度を通しているけれど、こう秩序感覚が世界的におかしくなっているとぐらつきはしないかと不安になる。-YouTube「TATAMI」-公式サイト「TATAMI」-映画.com「TATAMI...「TATAMI」

  • 「早乙女カナコの場合は」

    早稲田松竹が登場するところは、「ママと娼婦」「サンタクロースの目は青い」などジャン・ユスターシュ監督作のタイトルがセリフで引用されたりするのと通じるオシャレで映画が流行っていた時代の匂いがする。場内は出てこないのは「月の満ち欠け」みたいに昔の設定なのに場内がリニューアルされているとまずいからか。橋本愛の役も早稲田ではなく架空の大学。神田川のロケは雰囲気あり。原作者の柚木麻子は早稲田出身なのかなと思ったら立教でした。監督矢崎仁司というタイトルがキャストのすぐ後に、助監督らの名と一緒に出るのにあれまと思う。監督名を大々的に出すのに遠慮があるということかな。最近では「いきてかへらぬ」の根岸吉太郎や「はたらく細胞」の武内英樹の名前がエンドタイトルの最後にぴたりと止まったくらいで、あとは流れていくことが多い。流すか...「早乙女カナコの場合は」

  • 「名もなき者 A COMPLETE UNKNOWN」

    タイトルに調子を合わせるわけではないが、ディランが無名の時、つまり上昇している時は自然と肩入れできるのが、有名になってしまうとブレーキがかかる。これは技術の問題ではなく、見る側の肩入れからそうなるわけで、「アラビアのロレンス」クラスの作品でも後半は前半に比べると弛緩気味になる。そこで、というかディランがいったん聴衆の反感を買うような真似をやらかしてどうなることかとハラハラさせるところをクライマックスに据えたと見た。もろに女性相手に二股かけているところで、反感買いそうなところは織り込み済の感じ。ウディ・ガスリーが精神病院に入院したまま亡くなった(ハンチントン病とははっきり告げられていない)とは漠然としか知らなかった。ティモシー・シャラメがとにかくタバコを途切れなく喫っているのが今や時代色になっている。バイク...「名もなき者ACOMPLETEUNKNOWN」

  • 「ANORA アノーラ」

    成人指定のアカデミー作品賞作品なんてあったかいな。とはいえ、マイキー・マディソンが堂々たる肉体美をさらして見せるもので、からりと明るい。序破急に喩えたくなるくらいはっきり三部に分かれていて、ストリップダンサーのアニー(アノーラ)がロシアの金持ち階級の青年イヴァンと仲良くなって結婚してしまうまでと、イヴァンの両親が派遣した御目付役三人が結婚したのに驚いて猛反対するのをドタバタ混じりに描き、どさくさ紛れにあろうことかイヴァンが逃げ出してしまいアノーラ+三人が追いかけて捕まえるまで、イヴァンの両親が乗り出してきて息子とアニーとの仲を裂くより先にアニーの方がてんで親の前ではだらしないイヴァンに愛想をつかして別れて他と結ばれるまで。結ばれるといってもあくまで肉体的にであって、それがかえってはかない悲しさを出す。序盤...「ANORAアノーラ」

  • 「フライト・リスク」

    スタッフ・キャストの中で一番違和感があるのは監督メル・ギブソンのクレジットで、「ブレイブハート」「パッション」「アポカリプト」「ハクソー・リッジ」など暴力色が強いスター俳優兼作家監督のイメージがあり、新作は「ワイルドバンチ」のリメイクと伝えられたこともあった(コロナでぽしゃったか)のも無理からぬところと思えたのだが、どういう事情でこういうコックピットに閉じこもった職人的な作りを要求する小品を作ることになったのだろう。つまらなくはないのだが、脚本演出とも隙間風が吹き込んでいて、たとえば、操縦席のミシェル・ドッカリーとトファー・グレイスが機体後方で拘束されているウォルバーグに背中を向けていて、ウォルバーグがかなり堂々と拘束を解こうとしているのに気づかない。背中に目がついているわけではないし、自動車と違ってバッ...「フライト・リスク」

  • 「プレゼンス 存在」

    Jホラーの方法の議論の中で幽霊の主観というのはありえないというのがあったが、その幽霊の主観で全編通したのがこれ。幽霊の姿は写るか写らないかわからないのと、主観だから当然写らないのを併用しているという理屈だろう。滑らかな移動撮影がふわふわ幽霊が宙に浮いているような感触だが、主観と長回しにこだわりすぎてメリハリが効かず、ときどきウトウトする。時間が短いので助かった。-YouTube「プレゼンス存在」-公式サイト「プレゼンス存在」-映画.comPresence-IMDb「プレゼンス存在」

  • 「デュオ 1/2のピアニスト」

    キャストを見ると、カミーユ・ラザが双子の姉のクレール、映画初出演のメラニー・ロベールが妹ジャンヌを演じたとある。姓が違うから本物の双子ではないらしいが、どう見ても同じ顔をしている。「ソーシャル・ネットワーク」に出てきた双子は一人の俳優を二人分合成して増やしたのではなく、ひとりの俳優の顔をもうひとりの俳優にマスクよろしくデジタル合成で被せて作ったというが、その伝だろうか。ときどきどっちがどっちなのかわからなくなる。監督のフレデリック・ポティエとバランタン・ポティエは父子だという。父親が星一徹ばりに自分が水泳で達成できなかった世界のトップクラスに娘たちがピアノで達するのを要求するというのは、父親がピアノに挑戦していて挫折したわけでないから期待のかけ方がずれている気がするし、割とあっさり引き下がるのもモヤモヤす...「デュオ1/2のピアニスト」

  • 「Unloved」

    仲村トオルが起業家で、市役所に勤める森口瑶子が作った資料の質の高さに注目して自分のところで働かないかと誘うが、森口は今の身の丈の暮らしで満足していると断る。あきらめずに口説く仲村だが、森口のアパートの下の階に引っ越してきた貧乏人の松岡俊介の方に行ってしまう。このあたりの「謎」が物語上の伏せ札のテクニックでなく、視線を合わさない人物配置、正面から対立するのではなく斜め上にロジックが展開していくような構造のダイアローグのサスペンスとして機能している。ほぼ三人による会話劇で、おそらく16ミリフィルムによるカラー撮影(芦澤明子)。ミニマムな作り。松岡俊介は2009年以降芸能関係の仕事をやめて、コロナ下で仙人のような生活をしていると伝えられた。森口瑶子は「相棒」の小料理屋の女将役でレギュラー。20年以上経つといろい...「Unloved」

  • 「プロジェクト・サイレンス」

    タイトルになっているプロジェクトというのはテロ対策に特化して訓練された犬たちのことで、途中から計画そのものが破棄されたという設定。この犬が危険なシーンを演技しているところを見るとトレーナーが訓練して操っているのはありえずCGなのは見当がつくが、すごくリアル。メイキングを見ると犬の役をブルーの扮装をした人間が演じているのが相当に可笑しい。レッカー運転手役のチュ・ジフンは脱色したロン毛にしているのが棚橋弘至みたい。主人公の韓国の国家安保室の行政官というのはどんな立場なのかよくわからないが、はじめ国の側に立場を置いていたのが大統領がプロジェクトにゴーサインを出していたのを知って裏切られたのを知る。もうひとりの行政官は知っていたというのは、後で考えると相当にご都合主義だが見ている間は気にならない。娘が留学するはず...「プロジェクト・サイレンス」

  • 「バッドランズ」

    テレビ放映でたしか二回、ビデオで一回見ているのだが、今回スクリーンで上映されたのはまるで別物。前に見たときの感想はこちら。テレンス・マリック作品の常で撮影が素晴らしく、冒頭でわざわざゴミ収集車にマーティン・シーンが乗っているあたりはむさくるしいリアリズム寄りだが、シーンがウォーレン・オーツを殺すあたりから描かれる内容が血腥くなるのと反比例して画面と描写のタッチは美的かつ詩的になる。後半のがらんとした平らな草原の一応緑に覆われ、動植物や天体にも彩られているが豊かな自然というには頼りない感じは、他ではあまり類を見ない。そのシーンがオーツを殺す場面のあっけなさ、はマリックの次作「天国の日々」でリチャード・ギアがサム・シェパードの胸にまるで意思とは関係ないようにドライバーを刺してしまう一瞬につながる。音楽センスが...「バッドランズ」

  • 「ジュ・テーム、ジュ・テーム」

    実験動物のモルモットが出てくるのでアラン・レネ作品としては「アメリカの伯父さん」とどっちが先かと思ったら、こちらは1968年、「アメリカ」は1980年と一回り違ってました。増村保造「盲獣」みたいなマット状の柔らかく起伏のある素材で作られているかなり変わったデザインのタイムマシンを使ってタイムリープを試みるのだが、これが作られた頃は字幕でいうタイムリープって言葉は一般的になっていたろうか。特定の時点に被験者を送り込む仕掛けをしてあって、何度も何度も繰り返し似たような、しかし微妙に違う出来事がループする。それが必ずしも比較対応したりしているわけでなく、タイムマシンの造形そのままに構造がぐにゃぐにゃしている。「去年マリエンバードで」がものすごく造形的な大理石製みたいな画面で組み立てられているのとは対照的というか...「ジュ・テーム、ジュ・テーム」

  • 「ひき逃げ」

    1966年製作とあって、交通量も運転の乱暴さも今では考えられないくらい。横断歩道で旗を出しているのに自動車が止まりませんからね。息子をひき逃げされた貧乏人の母親高峰秀子が、ひき逃げした金持ちの司葉子のところに家政婦の紹介所を介して勤務する(今だったらすぐ身元がバレるだろう)。復讐を考えていたらしいのが途中から息子と年恰好が近い男の子に情が移ってしまうのが、意外と甘くなく描かれる。松山善三のオリジナル脚本は太い幹から話を広げていくより「野獣狩り」ばりに人物それぞれに細かい展開を施していくといった趣。成瀬巳喜男の演出はオーソドックスな画作りにときどきハイキーな明かりを当てたりカメラを斜めにしたりとケレンを入れてくるのが、意外な感じもする。「天国と地獄」でも大会社の重役のしょぼくれた運転手をやっていた佐田豊が、...「ひき逃げ」

  • 「ゆきてかへらぬ」

    中原中也と小林秀雄と長谷川泰子の三角関係を扱ったドラマ。といっても長谷川泰子という女優は寡聞にして知らなかったし、小林秀雄が登場するのはかなり遅いしで、いわゆる有名人の三角関係というわけでは必ずしもない。男ふたりが女ひとりをはさむ関係というのは実際にはともかくフィクションだと「冒険者たち」「明日に向って撃て!」みたいに爽やか寄りになるが、これも二人の男は互いの文学的才能には敬意を表している。厳密にいうと詩人と評論家なのだからもっと対立してよさそうだけれど、そうはなっていない。実名を使っているのは映画.comのインタビューで根岸吉太郎監督も語っているが、昭和初期(映画でいうとサイレント期)は半ば時代劇という認識かららしい。最近でいうと「シンペイ~歌こそすべて~」みたいに楷書体の演出向きということになる。脚本...「ゆきてかへらぬ」

  • 「シンパシー・フォー・ザ・デビル」

    登場人物はニコラス・ケイジとジョエル・キナマンのほとんどふたりだけで、ケイジがキレ散らかしている芝居とキナマンの耐える芝居で通していて、プロットにも一応ひねりもあるのだけれど、一応もいいところでそれも割と簡単に見当がつく。映像もサウンドトラックもかなりスタイリッシュなのはいい。それにしてもケイジも借金は返したらしいけれど、仕事のペースは戻ったかと思うとまた変になったりで、他人事ながらはらはらする。-YouTube「シンパシー・フォー・ザ・デビル」-公式サイト「シンパシー・フォー・ザ・デビル」-映画.comSympathyfortheDevil-IMDb「シンパシー・フォー・ザ・デビル」

  • 「セプテンバー5」

    描かれる範囲をスポーツ番組のクルーにかなり絞っていて、実在の政治家はSONYのテレビのブラウン管を通して描いている。テレビ中継という設定をうまく生かした。まだ国際的テレビ中継に良くも悪くも慣れていない時代色が出ていたと思う。場面とキャラクターを絞っているだけに、直接警察が押しかけてくるくだりが短いが相当な圧迫感をもつことになった。オリンピックとテロとのトラウマはミュンヘン以後定着して、最初の北京五輪からはテレビ中継にディレイ(遅延)技術を導入してテロがあっても時間差で切り替え、ごまかし通せるようになったという。その切り替える技術の萌芽をここで見せている。先日「あの歌を憶えている」で見たばかりのピーター・サースガードが実在の人物の再現という全然違う役作りのアプローチを見せていた。-YouTube「セプテンバ...「セプテンバー5」

  • 「マミー」

    正直、オープニングのドローンショットとか、いくつかの点で技巧的な演出=作り物くささを入れたことでリアリティを損なうところがあったと思う。林眞須美の冤罪を訴える内容なのかと先入観を持ってみたのも良くなかったかもしれないが、当然ながらそういう無実の立証がされたわけではなく、疑わしきは罰せずの原則に立って当然に無罪になるべきという、言うのは簡単だが世論も裁判の流れも流されてしまう怖さと無責任さに断固として踏みとどまる必要はある。ただしそれをシステムとして保障する歯止めは事実上存在していない。-YouTube「マミー」-公式サイト「マミー」-映画.comMommy-IMDb「マミー」

  • 「愛を耕すひと」

    エコ系かと思わせる邦題に比して相当に野蛮で残酷な描写がある。マッツ・ミケルセンは「ハンニバル」もやっていたもので、暴力性を紳士的な裏で張り付かせていたのをさらに裏返して騎士としての顔を表に出す。未開の原野を開拓していくのを映像化するのというのは、相当に手がかかったのではないか。ミケルセンが疑似家族を作っていくまでのプロセスを簡単に済まさないで描き込んでいるのが見応えあり。-YouTube「愛を耕すひと」-公式サイト「愛を耕すひと」-映画.comBastarden-IMDb「愛を耕すひと」

  • 「あの歌を憶えている」

    ジェシカ・チャステインが自分にストーキングしてくる男ピータ・サースガードが表でぶっ倒れてびしょ濡れになっているのを何かそばにいても遠巻きにしているような微妙な距離感で表現していて、男がアルコール依存で断酒中というのを断酒が失敗したといったわかりやすい形でなくなんともいえない、実際にこういう表現が「正しい」のかわからない微妙な手つきで描いている。チャスティンの部屋の扉の戸締りをいちいち丁寧に描いていたり女の修理人の頼んだのに男が来たのに不満を言うかと思ったら抑えたり、ディテールの齟齬感が細かい。あたまからチャステインが反感や恐怖を表に出してもおかしくない-YouTube「あの歌を覚えている」-公式サイト「あの歌を覚えている」-映画.comMemory-IMDb「あの歌を憶えている」

  • 「ブルータリスト」

    オープニングのさかさまになった自由の女神像(このアイロニー!)から斜めに構えたエンドタイトルデザインに至るまでデザイン感覚で全編が貫徹している。実在の人物の伝記かと思ったら、架空のキャラクターでしかも伝記的リアリズムというよりデザイン的センスで統一されている感がある。フェリシティー・ジョーンズの妻の登場がかなり遅くてナラティブな構成だったらこうはしなかったろう。大金持ち役がガイ・ピアースで最初に傲慢で嫌な感じで出てきたと思ったら案外寛容なのかなと思わせて、という展開が意外性狙いにとどまらない飛躍を見せる。-YouTube「ブルータリスト」-公式サイト「ブルータリスト」-映画.comTheBrutalist-IMDb「ブルータリスト」

  • 「どうすればよかったか」

    ほかにつけようもないタイトル、ということになる。テレビの型はひとつの時代の変化の目安になると思うが(「寅さん」だと少し古い型のテレビを置いたという)、ここではかなり長いこと同じ型のテレビが置きっぱなしになっている。二十年以上の歳月をなんなら空費したとも言えるかもしれないが、これを評しにくくしているのは作り手が患者(診断を受けたわけではないからそう言うのは本当は変だが)の肉親というところから来る倫理的問題、というよりデリケートの問題に触れたくない観客の側の警戒感に訴えたと思うのは考えすぎだろうか。-YouTube-公式サイト-映画.com-IMDb「どうすればよかったか」

  • 2025年2月に読んだ本

    2月の読書メーター読んだ本の数:19読んだページ数:5146ナイス数:0にっぽんダークサイド見聞録(わたしの旅ブックス)読了日:02月28日著者:村田らむ水谷豊自伝読了日:02月27日著者:水谷豊,松田美智子他なる映画と2読了日:02月23日著者:濱口竜介お別れホスピタル(3)(BIGSPIRITSCOMICS)読了日:02月22日著者:沖田×華お別れホスピタル(2)(BIGSPIRITSCOMICS)読了日:02月22日著者:沖田×華お別れホスピタル(1)(BIGSPIRITSCOMICS)読了日:02月22日著者:沖田×華山谷をめぐる旅読了日:02月20日著者:織田忍あちらにいる鬼(朝日文庫)読了日:02月19日著者:井上荒野琉球共和国―汝、花を武器とせよ!(ちくま文庫)読了日:02月15日著者:竹中...2025年2月に読んだ本

  • 「聖なるイチジクの種」

    夫婦と娘ふたりの四人しかいない家の中で、父親に国から護身用に渡された拳銃が消える。外部に犯人などありえないのだが、妻はともかく娘たちは頑固に否定する。この頑固さにぶつかりムキになった父親の意識と行動がエスカレートして、それまでのゴ体裁が剥がれ権力側の正体を見せていくのが怖い。犯人の割り方とその後の展開にミステリ的なひねりを効かせた技巧を使っていて、説明抜きで見ればわかるように作ってあるのが上手い。娘たちが二人とも母親似だが、俳優には血のつながりはないみたい。姉は直毛で妹は縮れ毛と一目で見分けがつく。妹の方が世界一版権にうるさい会社のキャラクターをプリントしたシャツを着ているのだが、いいのかな。脱線するが、竹田青嗣「陽水の快楽」に井上陽水の歌詞が引用されてるのだが、例の©️がついていない。どうなっているのか...「聖なるイチジクの種」

  • 「阿修羅のごとく」(Netflix版)

    向田邦子のオリジナルのテレビドラマ版に比べて70年代を表現するのにあたって、ディテールの意識的な再現が細かい。広瀬すずと同棲しているボクサーの本棚に「風と木の詩」「ローティーンブルース」の単行本が並んでいたり、「あしたのジョー」の単行本を尾野真千子の息子が読んでいるといった具合。オリジナルの製作時には時代色の再現という意識は働かなかっただろう。灰皿が至る所に置かれているとか、新聞(宅配の!)の挿絵の絵柄、東京の電話番号の03の後が今みたいに四桁でなく三桁になっているのが芸が細かい。本木雅弘が浮気相手と間違えて家の電話にかけてしまって浮気がバレるなど、携帯が普及した今ではありそうにない。四姉妹の名前に綱子・巻子・滝子・咲子と~子とつくのが、昭和だなあと思う。乾いてヒビが入ったた餅を見て母親のかかとを思いだす...「阿修羅のごとく」(Netflix版)

  • 「野生の島のロズ」

    今のところ吹き替え版しか見ていないのでもともとロッサムという言葉が使われているのかどうかわからないが、ロボットという言葉を初めに作ったカレル・チャペックの戯曲「ロッサム万能ロボット会社」Rossumoviuniverzálnírobotiからと考えていいと思う。もともと「ロボット」の語源は、1920年、劇作家カレル・チャペックがチェコ語の強制労働「ロボータ」と、スロバキア語の労働者「ロボトニーク」を合わせてつくった言葉で、人間の代わりに働かせるという含意がある。「ロッサム万能ロボット会社」は青空文庫で読めるが、ここでのロボットは金属の人形というよりけっこうレプリカント寄りだったりする。綾瀬はるかのちょっと作り物っぽい声が合っていた。ロボットのデザインが宮崎駿のラピュタと似ているなあと思ったら、まあ誰でもそ...「野生の島のロズ」

  • 「ザ・ルーム・ネクスト・ドア」

    たしか単にAlmodovarFilmとタイトルには出て、PedroAlmodovarFilmとは出なかったと思う。名前を省略するのはたとえば黒澤作品と一般名詞化するようなものか。色彩がいつものアルモドバル作品よりは抑え気味。マーサの娘役がティルダ・スウィントンそっくり。作家役のジュリアン・ムーアは今まで意識したことなかったけど、左利きなのね、サイン会で左手でペンを持っていた。アルモドバル初の長編英語作品っていうけれど、短編だがティルダ・スウィントン主演の「ヒューマン・ボイス」は英語でしたね。末期ガンに侵されたスウィントンが肉親より親しいとも言いにくい関係のムーアに看取りを頼むというのもわからないではない。ムーアの行為が、どう判断されどう裁かれるのかという点の描き方は、アルモドバルの出身地スペインでは安楽死...「ザ・ルーム・ネクスト・ドア」

  • 「キャプテン・アメリカ ブレイブ・ニュー・ワールド」

    平岳大が出てることもあって「SHUGUN将軍」以降の日本像にはなっているとは思うけれど、昔とは違う意味でトンデモな日本像を描いているという気もしますね。ああも堂々とアメリカにモノ申せる首相って、ホメ殺しって感じ。中国出すわけにもいかないし。ハリソン・フォードみたいにヒーロー像そのものみたいなアイコンをアカくするというのが相当に当惑させられます。正直、こちらの記憶が欠落していることを差し引いてもMCUの全体像を把握するのは相当に難しい。端的に言ってこうも配信を含めてシリーズものが並び立っていると時間がないのよ。「意味の枯渇」とファンダムのゆくえ:映画『キャプテン・アメリカ/ブレイブ・ニュー・ワールド』が映す時代精神-Wired「キャプテン・アメリカブレイブ・ニュー・ワールド」-公式サイト「キャプテン・アメリ...「キャプテン・アメリカブレイブ・ニュー・ワールド」

  • 「第五胸椎」

    主役がカビ、というのに興味を惹かれて見たのだけれど、まぁワケのわからん映画でした。生まれてから☓日というタイトルが出るのだけれど、ヤボか知らんがカビに意識があったらそういうカウントの仕方するかな。というか、カビが主役というのも解説がそうなっているだけで、そうなのかどうかなんだかモヤモヤしている。画面もしばしばモヤモヤしてそれに混ざってドビュッシー「月の光」がシンセで流れたりする。冨田勲?62分という上映時間はさぞ見辛い代わりに短くしたのかと思ったら、案外普通の作りなのに、逆に拍子抜けした。-YouTube「第五胸椎」-公式サイト「第五胸椎」-映画.comTheFifthThoracicVertebra-IMDb「第五胸椎」

  • 「ファイアーブランド ヘンリー8世最後の妻」

    残されている歴史とは男の戦争の歴史である、といった字幕が最初に出て、では残されていない歴史に想像を広げてみましたという作り。ヘンリー八世の六人の妻のうちドラマで取り上げられるのは、ヘンリーに斬首刑に処されたのと、のちのエリザベス一世の母親になるので二番目の妻のアン・ブーリン(「1000日のアン」「ブーリン家の姉妹」)が多いと思うが、これは6番目、つまり最後の妻のキャサリン・パーを取り上げている。困ったのは、脇役でアンという名前のキャラクターが出てきたことで、後で調べたらAnneAskewアン・アスキューというプロテスタントの説教者で作家で詩人だという。実在の、それもかなり重要人物だから仕方ないが、混乱した。もともとヘンリーがアン・ブーリンと結婚するために離婚を禁じたカソリックから離脱して自ら英国教会の首長...「ファイアーブランドヘンリー8世最後の妻」

  • 「ファーストキス 1ST KISS」

    時間旅行を扱った宮部みゆき「蒲生邸事件」ではどういう風に過去に介入しても結果はさほど変わらないという認識を示していたけれど、これも似たところがあって、なんとか決定的に悲劇的な結末を避けようとするのだが、なかなか変えることができない。時間がループする映画というのは、コメディ「恋はデジャヴ」、ホラー(「ハッピー・デス・デイ」)SFでは「オール・ユー・ニード・イズ・キル」とあったが、といろいろあるが、どう変わるかを積み重ねて見せるのがふつうだが、喪失感を抱えることになる不安と闘うモチーフでまとめている。松たか子がや設定では45歳だが、実年齢は47歳。若い時の姿が本当に若く見えるが、デジタルメイクでもしたかどうか、あまり違わないあたりに抑えている。-YouTube「ファーストキス1STKISS」-公式サイト「ファ...「ファーストキス1STKISS」

  • 「誰よりもつよく抱きしめて」

    脚本がイ・ナウォンという韓国名なのにあれと思って調べたら、幼稚園から小学3年まで筑波で過ごしていて、芸大大学院では坂元裕二に師事していたとのこと。久保史緒里がファン・チャンソンが忘れていったスマートフォンを見つけるのだがそこに女の名前から電話がかかってきて久保がそれに出ちゃうけど、ほとんど初対面の男のところに誰ともしれない女からかかってきた電話に出るかぁ?三山凌輝が手をやたらと洗うのをはじめ手袋をずっとしていたりビニールで家具を覆ったり、ゴボウやネギを「洗剤で」洗ったりと病名は何と言うのかうろ覚えだがいわゆる強迫神経症的で、他人に接触することができない。同棲している久保とも接触できず、抱き合うこともキスすることもできない。それでなんで同棲してるのかと思わないでもないが、そこがドラマなのだろう。水たまりに三...「誰よりもつよく抱きしめて」

  • 「ブラックバード、ブラックベリー、私は私。」

    主演女優のエカ・チャブレイシュビリが実際には舞台で活躍していたプロだというのにアマチュアのリアリティを併せ持っているのが見もの。言うとなんだけれど、体形もまるまるとしているし、女優っぽくない。-YouTube「ブラックバード、ブラックベリー、私は私。」-映画.comShashvishashvimaq'vali-IMDb「ブラックバード、ブラックベリー、私は私。」

  • 「TOUCH タッチ」

    なんで日本人キャストが混ざっているのだろうと思ったら、日本でないといけない理由はあるのだね。やや拍子抜けではあったが。本木雅弘がロンドンにいるという設定は現に当人がロンドン在住なのだからそのまんま。主演のミコ(美子)役のKōkiって誰だろうと思ったら木村拓哉と工藤静香の娘っていうのでびっくり。知らんのか、と怒られそうだが。若い時のミコの恋人役のパルミ・コルマウクルは監督バルタザール・コルマウクルの息子だというが、業界っぽくすれた感じではない。歳取った時のミコをやっているのは、この映画そのもののキャスティングディレクターでもある奈良橋陽子。-YouTube「TOUCHタッチ」-公式サイト「TOUCHタッチ」-映画.comSnerting-IMDb「TOUCHタッチ」

  • 「テロ,ライブ」

    リメイク版の「ショウタイム・セブン」の固定カメラで阿部寛のアップとスタジオいっぱいに引いたカットをつないでメリハリを利かせた画面作りに対して、こちらはドキュメンタリー調の手持ちを多用したカメラワーク。リメイクが夜の七時からのリアルタイムの中継なのに対し、こちらは午前九時からと昼間のできごと。こちらでは政府の偉いさんが乗り込んでくるし、上役も容赦なく圧力をかけてくる。おしなべて描写が直接的で白昼テロの被害がエスカレートするのに対して「ショウタイム」では夜の闇に沈めて話が重層化する。阿部寛が相当にしたたかに自分にふりかかった危機を逆手にとってスターキャスターへの返り咲きを果たすのに対し、ハ・ジョンウはかなり良心的に振る舞う。後半、かなり物理的なアクションシーンが多くなるのも心理劇的なリメイクとは対照的。-Yo...「テロ,ライブ」

  • 「ショウタイムセブン」

    現在進行形でフジテレビが問題になっている時期に公開がかちあうとは予想できなかったろう。元スターテレビキャスターで、今はラジオのDJでお茶を濁している阿部寛が突然降って湧いたテロ事件を利用してスターキャスターの座に返り咲きを狙うと共に、その前になんで左遷されたのかという興味でも話をつなぐ。舞台劇式に限られた場所と時間につぎつぎと新しい人物が現れ事件が起こり、そのたびにくるりくるりと新しく話が進展する。ただ小林信彦が同じテレビ界を扱った「ネットワーク」評で、「わくわくするくらい面白い設定、ツイスト(ひねり)を積み重ねて、最後の一発で嘘くさくなってしまったケースである。惜しい作品だ」と評したほどではないが、器械体操で十分高得点を期待させながらフィニッシュでちょっと不満が出る、みたいな、ちょっとだから大目に見よう...「ショウタイムセブン」

  • 「リアル・ペイン 心の旅」

    祖母の遺言でダークツーリズムに行くことになるまるで性格の違ういとこ同士のふたりの旅を描く。ポーランドの旅に合わせてか、音楽にショパンを採用しているのが、必ずしも画面自体には合っておらず、適度な違和感と共に一緒に旅しているみたい。-YouTube「リアル・ペイン心の旅」-公式サイト「リアル・ペイン心の旅」-映画.comARealPain-IMDb「リアル・ペイン心の旅」

  • 「映画をつくる女性たち」

    東京国際女性映画祭第15回の記念作品。女性監督第1号は、戦前の坂根田鶴子(さかね・たづこ)で、さかねた・つること読んでいたので気づかなかったことがある。つまり、村上もとかのコミック「龍RON」に「たづ」という女性キャラクターが出てくるのだが、彼女は満州映画協会で監督デビューする設定なのです貧しい生まれ育ちだったたづを女学校に進学させてくれた恩人であり愛する人でもあった押小路龍を主演に監督作品を作るという、村上もとからしい虚実ないまぜた(もちろん満映理事長の甘粕正彦も大々的に絡む)根も葉もあるウソ。坂根田鶴子は劇映画の演出は「初姿」一本だけで、満映ではドキュメンタリーを演出していた。国際女性映画祭が始まった1985年は日本に劇映画の監督はひとりもいなかった。だものだから、羽田澄子監督のドキュメンタリー「AK...「映画をつくる女性たち」

  • 「226」

    オープニングからしばらくの青年将校たちの決起は緊迫感が続くが途中からダレてくる。笠原和夫脚本とすると「日本暗殺秘録」の一部で試みたようにファナティシズムで貫徹できればしたいところだったかもしれないが、長編をそれで通すのはムリ。天皇をゴドーみたいに一切出さずに将校たちがその“大御心”に一方的に期待あるいはすがっているもので、決起を諌めるビラが撒かれ、ラジオで天皇の御心を伝える放送が流れると何を信じていいのかわからなくなり混乱する。青年将校たちの行動と心情にほぼ絞っているわけだけど、なんでまた途中から女たちとの思い出に逸れちゃうのですかね?本木雅弘はシブがき隊を抜けて間もない頃だったはずだが、「坂の上の雲」を経て初めから青年将校だったのではないかと思えるはまりっぷり。すごいような豪華キャストで、人数は多いは階...「226」

  • 「 ブラザー 富都(プドゥ)のふたり」

    マレーシアのクアラルンプールのスラムとそれを睥睨するような超高層ビルの対照。貧富の差特に富のいびつな集中は国の違いを問わない。主役の義兄弟の兄が聴力障害者で手話を使うのに日本語字幕がつくのだが、マレーシア語の手話に日本語字幕をつけたということになるのだろうか。チェックはどういうプロセスで行われたのだろう。世話するNPOの女性を殺してしまうというのは、「どですかでん」「赤ひげ」の不幸すぎる人間が親切を拒絶する心理みたいなものだろうか。マレーシアの刑務所の食事というのがタイ米に薄いスープ数種類を一枚のプレートに盛り付けたものでスプーンもついていない。実際はどうなのか知らないが当たらずといえども遠からずだろう。ゆで卵を互いの頭にぶつけて割るのが貧しさと親しさを共に表現している。-YouTube「ブラザー富都(プ...「ブラザー富都(プドゥ)のふたり」

  • 「地面師たち」

    小池栄子がいろいろあってスキンヘッドになるところは見事なメイク(だと思う、全然わからない)。まああちらでは「タクシードライバー」のモヒカン頭も「ラストエンペラー」の辮髪もメイクですからね。ピエール瀧が堂々と顔を出しているのが妙な感じ。まあロバート・ダウニーJr.だって映画に出てます。資本といい、倫理規定といい、配信という黒船が来航したとまざまざと感じさせる。地面師たちは集団で詐欺を働くのだが、チームワークとか精神的な結びつき、一体感はまったくない。どころか、隙あらば、というか隙を探して殺そうとしている。豊川悦司が「ダイ・ハード」のアラン・リックマンに絡めたエピソードを刑事のリリー・フランキーにとくとくと語るセリフは原作にはない。リリーに相棒の池田イライザを絡めたのは善玉の側にも女を配した方がいいと判断して...「地面師たち」

  • 「ドリーミン・ワイルド 名もなき家族のうた」

    昔アルバムを自主制作して売り出した兄弟のところにそのLPを聴いたというプロデューサーから再発売したいと申し入れがある。音楽メディアがLPだからずいぶん昔のことになる。兄弟のところではスマートフォンもパソコンもインターネットも使っていない。親夫婦も同様。再発に合わせてツアーをやるが、弟ドニーには久しぶりに再会した兄ジョーのドラムスがトロく聴こえて仕方ない。LP自体、新しく生み出したわけでもなく遺産で食べるようなものだし、聴衆もむしろ昔の歌の方を喜ぶのだが、弟は苛立って停滞するのを嫌う。明らかに芸術家気質の持ち主であり、才能は兄も父も認めている。弟もそれがわかるだけになお苛立つ。フラッシュバックで父親が倒れるところが挟まるが、前もって父親が現在無事なところを見せているから安心はできる。心労で倒れるのがわかるの...「ドリーミン・ワイルド名もなき家族のうた」

  • 「型破りな教室」

    「いまを生きる」みたいな型破り教師の役かなと思ったし、現にロビン・ウィリアムスみたいに机の上に(靴を抜いで)上がるシーンがあったりする。ただアメリカのエリート校が舞台だった「いまを生きる」とは違ってメキシコの最底辺の、近くではドラッグが蔓延している、校内でも成績を上げるため堂々と公的カンニングが行われていたり、パソコンを買う補助金がピンハネされていたりと、ちょっととんでもなく酷い環境の学校が舞台。型破りのフアレス教師役は「コーダあいのうた」の音楽教師役でも注目を集めたエウヘニオ・デルベスで、才能のある子に奨学金を申請するのを勧めるのも一緒。原題はRADICALで、革新的という意味と共に根源的という意味もある。物体の比重を考えていく過程で、では人体みたいな複雑な形の物体の容積を測るにはどうするかということに...「型破りな教室」

  • 「遺書、公開。」

    なじみのない若手俳優が大勢出てくるので、見分けがつくかどうか不安だったが、この点はほぼクリアしていた。「ベイビーわるきゅーれ」の髙石あかりはおなじみだったが(朝ドラの主役の放映が始まったら日本中でおなじみになるだろう)、それを見越したのかどうか、序列で一番になったのに自殺した子の花瓶が置かれたすぐ後ろの席にピンクの上着を羽織って座っているので目立ちます。どういうわけかD組の生徒(と担任教師)に序列がつけられ、その全員に女生徒の遺書が配られて、その遺書をそれぞれが朗読していくなんて、なんでそんな手間ヒマと時間かけなくちゃならんのだ(一日では終わらず何日もかかるのですよ)としか言いようがないし、序列のビリとかブービーはどうなっているのか、底辺の方が圧力キツそうだがそのあたりもはっきりせず、スクールカーストの上...「遺書、公開。」

  • 「勇敢な市民」

    元ボクシングのチャンピオンの教師が、非正規雇用ゆえに親の権威をかさに着てやりたい放題の生徒をやむを得ず見て見ぬふりをしていたが、堪忍袋の緒が切れてネコのマスクをかぶって試合を挑むというお話。ネコのマスクって、タイガーマスクのパロディか何かか?原作はマンガらしい。ボクサーが踵落としするというのも、相当無理矢理で、総合格闘技がごっちゃになった。観客がネコのマスクかぶっているのが女だとわからないというのもマンガっぽい。-YouTube「勇敢な市民」-公式サイト「勇敢な市民」-映画.comBraveCitizen-IMDb「勇敢な市民」

  • 「室町無頼」

    体格からいっても堤真一が立役で、大泉洋は本来の万能カードとしてのジョーカー的立ち位置。アナーキズム的な新作映画が「十一人の賊軍」に続いて出てきたともいえるけれど、集団抗争時代劇の時代だと撮影所というシステムが機能していたから逆にアナーキーになれたともいえるので、今みたいにバラバラになっているとわざわざアナーキーにするまでもない感じ。だから大泉洋の軽みがふさわしいということか。ちょっと音楽がマカロニウエスタンっぽい。京の都が碁盤目状に道が縦横に走っているのは有名だが、その地形を山場で生かした。-YouTube「室町無頼」-公式サイト「室町無頼」-映画.com室町無頼-IMDb「室町無頼」

  • 「雪の花 ともに在りて」

    小泉堯史というとまず黒澤明の弟子としての印象が強いが、強いて自己主張するのではなく今でもスタッフの一員としてあり、とにかく丁寧な仕事ぶりを彼らから引き出すというか、言われなくても丁寧な仕事をするスタッフの集団に中にいる印象。日本の美、風景美、建築美、衣装美ほか掛け軸ひとつにも神経が行き届いている。疱瘡を生で見せずに絵で代用しているのは良くも悪くもグロを避けたということか。チンピラたちを叩き伏せたり、「赤ひげ」のパロディめいたところがある。世の関節が外れているのだといった「ハムレット」っぽいセリフは「蜘蛛巣城」「乱」といったシェイクスピアの翻案への連想を誘う。「赤ひげ」でいうとまず加山雄三が三船敏郎の赤ひげに反抗してから次第に心服していくのがドラマになるのだが、初めから心服しているみたい。セリフが聞き取りや...「雪の花ともに在りて」

  • 「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦」

    九龍城砦の壮大緻密なセットが目を奪う。上下方向にも立体的に伸びているのだから、迷路のようというのも足りない。しかしおそらく実在した建築物なのだから今はない幻想を想像させてやまない。主人公陳洛軍が城砦で見つけた三人の仲間はとっぴな連想か知らないが三国志を思わせたりする。気功を操る敵とはいえ一人の敵に四人がかりでよってたかってというのは「プロジェクトA」のクライマックスが敵ひとりに三人がかりだったのと通じて、不思議と卑怯と思わせないのは、それだけ敵が強いせいもあるが、カオスそのものが相手という趣があるからかもしれない。『トワイライト・ウォリアーズ決戦!九龍城砦』公開記念第2弾!アクション監督谷垣健治氏インタビュー②-映画.com-YouTube「トワイライト・ウォリアーズ決戦!九龍城砦」-公式サイト「トワイラ...「トワイライト・ウォリアーズ決戦!九龍城砦」

  • 「嗤う蟲」

    街から村に越してきた夫婦が村人たちに囲い込まれて夫もだんだん洗脳されていき妻が孤立していく、ちょっと「ローズマリーの赤ちゃん」みたいではあるけれど、赤ちゃんがふつうの人間な分、まだしもではあります。ただ田舎ホラーとなるとアメリカのデカさには及ばない。ホラーで回想を使うというのはあまりそぐわない気がする。現在進行形で次どうなるかわからないのが怖いという面はあるから。村で麻を温室で栽培していると思しいのだが、この映画そのものの撮影にあたって大麻取締法にどう対応しているのだろう。-YouTube「嗤う蟲」-公式サイト「嗤う蟲」-映画.com「嗤う蟲」

  • 2025年1月に読んだ本

    1月の読書メーター読んだ本の数:18読んだページ数:4274ナイス数:0必殺シリーズ始末最後の大仕事(立東舎)読了日:01月03日著者:高鳥都イアラ読了日:01月09日著者:楳図かずお月収5万エジプト在住まあ死なんやろ日記(コミックエッセイ)読了日:01月10日著者:オカリナ講師のジャスティン「近代の超克」論(講談社学術文庫900)読了日:01月11日著者:廣松渉月日の残像(新潮文庫)読了日:01月11日著者:山田太一ルポアフリカに進出する日本の新宗教読了日:01月20日著者:上野庸平SNOOPYCOMICSELECTION90's(角川文庫)読了日:01月20日著者:チャールズ・M・シュルツこち亀10's2010ベスト(ジャンプコミックスDIGITAL)読了日:01月21日著者:秋本治映画をめぐるディア...2025年1月に読んだ本

  • 「366日」

    大きくSONYのタイトルが出たかと思うと、ポータブルMD(ミニディスク)プレイヤーのアップになる。もちろんSONY製。MDとは珍しいと思ったら、なんと全編出てくるポータブルプレイヤーはすべてMD方式。MD以外の、ウォークマンとかiPodとかは一切出てこない。ずいぶん不思議な世界観があったもので、不思議といったらイヤホンで聞いている当の音楽がどんなものなのか、具体的な曲はほぼ出てこない。最後の方でかかるまでとっておいてあったらしい。カット割りはトレンディドラマ風にふたり並べて離して撮ってから、両者のアップの切り返しの繰り返しが基本。こうも律儀にルールを決めているのも珍しい。なんだか、赤楚衛二と中島裕翔の顔がほぼ同じに見える。上白石萌歌と上白石萌音と同じくらい同じに見える。髪型くらい変化をつけてもよさそうなも...「366日」

  • 「ゴールドフィンガー 巨大金融詐欺事件」

    トニー・レオンとアンディ・ラウの共演作となると、「インファナル・アフェア」以来だろうが、善人顔のトニーが自分では手を下さない悪人で、強面のアンディが刑事という取り合わせ。1980年代の香港が舞台とあって、株式市場がまだ人海戦術の場立ちでやっているのが見もの。アナログの方が画になりますね。裁判官をイギリス人がやっているのが香港がイギリス領だった名残で、裁判官もトニーの陰謀で裁く資格自体をなくしてしまうのがイギリスの没落ひいては香港市場の中国本国の興隆による相対的な没落となっている。イギリスに逃げた囚人が証言をアンディに求められ香港行きの飛行機に乗る前に消されると怯えるあたり、合法的な手続きを踏まなくてはいけない警察と踏まなくていい黒社会との違いを端的に見せる。-YouTube「ゴールドフィンガー巨大金融詐欺...「ゴールドフィンガー巨大金融詐欺事件」

  • 「アプレンティス ドナルド・トランプの創り方」

    ロイ・コーンが弟子(Apprentice)にあたるドナルド・トランプに勝つための三つのルールを伝授する。つまり1攻撃、攻撃、攻撃2非を絶対に認めるな3勝利を主張し続けろというもの。負けたと言わなければ負けたことにはならないという屁理屈は確かに「効果」があるといえばあるので、要するに性善説の上にフェア・プレイが行われているという一応の前提・約束事をひっくり返しているわけで、いったん横紙破り、ルール違反をされるとそこから後はなんでもありになってしまう。今の日本でもしばしば見受けられる、悪目立ちであろうがなんだろうがやったもの勝ち、勝てば総取り、負けたら負けた側も共倒れで、結局そうすると全体とすると目減りして切り捨てられるのは余力のない方ということになる。トランプの兄の依存症に悩まされるあたりも描かれるのだが、...「アプレンティスドナルド・トランプの創り方」

  • 「敵」

    繰り返される悪夢的な場面展開にハイコントラストな白黒画面が効いている。白黒だと抽象化されるので現実なのか夢なのか幻想なのか境目なく行き来できる。儀介はMac(というちょっとハイブロウ?な機器を使っている)に送られてくるスパム類を初めは捨てているのだが、うっかり?クリックしてしまうと、画面が意味不明の記号の洪水の中に難民移民といった意味が部分的に通じるフレーズが混じる状態になるのがたとえばコンピューターウィルス感染を思わせるし、昨今の難民移民を時には妄想混じりで敵視する傾向を逆に照射しているようでもある。歳のわりにIT機器に慣れてる感じだが、これから後、Macは電源を落として手書きの文字で遺書をしたためるようになる。器用に料理をこなしているのは大学の専門が仏文というのと関係しているのか、IHクッキングヒータ...「敵」

  • 「エストニアの聖なるカンフーマスター」

    タイトルそのまんまの内容。ぶっとんでいるには違いないが、なんだか素朴手作り感もある。ただし肝腎のカンフーがショボい。ポップカルチャーが禁じられたソ連占領下のエストニアを舞台にしていて、バカにでかいラジカセでブラックサバスを聞くのと、出てくる大半が聖職者たちというのがカオス気味。-YouTube「エストニアの聖なるカンフーマスター」-公式サイト「エストニアの聖なるカンフーマスター」-映画.comNähtamatuvõitlus-IMDb「エストニアの聖なるカンフーマスター」

  • 「ディックス!! ザ・ミュージカル」

    まあお下品な映画。生き別れになっていた双子が家族が欲しくて両親を復縁させようとするのだが、親に関してはうまくいかなかったものの、目をむくような方法で彼ら自身が家族になってしまう。トランプ政権が発足して間もないもので結果として挑発する格好になっている。神はホモ(faggot)だと自称するのだから。主役ふたりが本物の双子かと思ったら、他人(ジョシュ・シャープとアーロン・ジャクソン)だという。エンドタイトルの半ばメイキングを見ると、下水道ボーイズという二体のクリーチャーの操演する部分をグリーンに塗っていた。ミュージカルというのは上映時間が長くなりがちなのだが86分とコンパクト。最近の映画の中では一番短い。-YouTube「ディックス!!ザ・ミュージカル」-公式サイト「ディックス!!ザ・ミュージカル」-映画.co...「ディックス!!ザ・ミュージカル」

  • 「満ち足りた家族」

    弁護士の兄と医者の弟というのは社会的ステータスからいけば最高位同志みたいなもので、実際定期的に会食しているレストランは一目で高級とわかる。ただし両者のバランスは崩してあって、弁護士の兄は死亡事故を起こした運転手をそうとうにアコギな弁論で運転手自身をすら丸め込んでしまい、弟の方にボランティア的に老母の世話を負わせている。では弟が自己犠牲気味なのを納得しているのかと思うと思わぬところで(実は予想がつく形で)噴出する。どことなくカインとアベルを思わせるが、もっといびつ。ふたりの子供たちがもっといびつなのだが、毎度のことながらの韓国の猛烈な学歴社会ぶりとそこからの逸脱との葛藤が背後にある。製作国を転々と変えてのこれが四度目のリメイクらしいが、前の三回はほぼ未公開。-YouTube「満ち足りた家族」-公式サイト「満...「満ち足りた家族」

  • 「サンセット・サンライズ」

    竹原ピストルの居酒屋にたむろしている井上真央をマドンナ扱いして互いに牽制しあっている四人の独身男の設定がコミカルだが、よく考えてみるとかなりシリアス。嫁不足だから空き家の斡旋で地方創生して人を呼び込もうという基本的設定につながってくる。河原に主なキャラクターが集まってピクニックみたいになるあたりが山田太一ドラマの大団円っぽいが何も解決していないラストみたいで、これで終わるのかと早とちりしたら後がかなり長い。少なくとも、菅田将暉が東京にいったん戻るのは二度手間。最初の方で井上真央が空き家にカメラを向けたら小さな子供がふたりファインダーの中を幻影みたいにぱたぱたと駆け抜けていくのだが、何ですか、あれ。劇中の絵(ちなみに菅田将暉本人が描いたものらしい)に前にはいなかったふたりの子供が描き加えられているところがラ...「サンセット・サンライズ」

  • 「港に灯がともる」

    富田望生のヒロインは阪神淡路大震災の被災者で、在日コリアンの帰化問題を抱え、コロナ禍にみまわれ、家庭内の不和にも悩ませられているという具合にドラマチックな要素には事欠かないが、それらをやたらと並べ立てないで順々に後からわからせていく。まず単なる?不眠症なのか鬱病なのか、とにかく眠れない症状の描写から入り、そこから恢復していって職につき人心地つきある程度余裕が出てから徐々に各モチーフに移る。いきなりテーマを正面から押し立てないで、いわば小文字で綴っていく。富田望生が父親の甲本雅裕との口論のあと、風呂場に閉じこもってすりガラスに影も映らない状態が続いてからドアを開けて出てくるまでの、誰も映っていない長い長い間には息がつまった。ずいぶん大胆な演出で、終盤の父親相手の「家族らしい」つまりこまごまとした語り合いが欠...「港に灯がともる」

  • 「FPU 若き勇者たち」

    「戦狼ウルフ・オブ・ウォー」同様アフリカの架空の国が舞台で、国連に出向している中国警察の部隊が、民間人虐殺の証人の女性を独裁者の手から守る一編。女性と子供を守り切れるかというごく基本的な設定に徹していて、プロパガンダ臭は抑え気味だが、いかに中国がアフリカに大勢の人員を割いているかラストの字幕で自慢するもので、日本だって出してるけれどいちいちアピールしないぞと思う(それはそれで問題あるけれど)。敵役が白人黒人混ざっていて漠然と傭兵の最大公約数っぽいイメージ。いわゆるテロリストとかゲリラのイメージは避けている。「インファナル・アフェア」シリーズの監督アンドリュー・ラウが製作総指揮にまわり、アクションシーンは大掛かりなんだがいかんせん大味。余談になるが、以前「スター・ウォーズ」計画ばりに映画から名前をとった中国...「FPU若き勇者たち」

  • 「アンデッド 愛しき者の不在」

    生きていると思っていた人間がじりじりと腐敗か乾燥していく。生者と死者とがあまりはっきり分かれておらず、説明的な描写を切り捨てているので、なおわかりにくい。モノトーンに近い色彩、間と沈黙を重視した演出で、音楽と併せて画面の運びも無調みたいで正直たびたび睡魔に襲われた。エンドロールの最後に「この映画の製作中に動物は殺していません」と表示が出るのに、いささかほっとする。-YouTube「アンデッド愛しき者の不在」-公式サイト「アンデッド愛しき者の不在」-映画.comHåndteringavudøde-IMDb「アンデッド愛しき者の不在」

  • 「美徳のよろめき」

    脚色(新藤兼人)が三島由紀夫原作の抜粋をナレーションで流すといった最近は流行らない文芸映画調。自意識過剰なところを強調した感じ。西村晃の按摩がヒロイン月丘夢路の身体を揉んで、恋をしていますねとか、おめでたでございますねと目が見えないのに言い当てるところで、サングラスの表面に光を反射させるところに中平康の才気を見せる。-YouTube「美徳のよろめき」-映画.com「美徳のよろめき」-IMDb「美徳のよろめき」

  • 「愛の渇き」

    鮮烈な映像感覚などというとチンプになるが、一見前後の脈絡なくヘリコプターショットが登場したかと思うとそれがいつの間にか屋敷の敷地の広大さの表現になだれこんだり、坂道のえんえんたる移動を路面を傘が飛ばされるクイックカットにつなげたり、白黒画面に赤一色のカラー画面をワンカットだけ投げ込んだりと惜しげもなくエキセントリックなくらい感覚的な表現を繰り出してくる。篠田正浩監督の「あかね雲」が同じような白黒画面に雲だけ赤くカラーで染めたカットを挿入する処理をしていたので調べたら、こちらの蔵原惟繕監督作は1967年の2月18日公開、「あかね雲」は同じ年の9月30日公開。影響というには時間がなさ過ぎるし、あちらは松竹=表現社(第一作)で、こちらは日活。感覚的な演出を得意とする同志が半ば偶然だぶったか。三島由紀夫のヒロイン...「愛の渇き」

  • 「劇映画 孤独のグルメ」

    エピソードとエピソードのつなぎ方がしりとりみたいで、食映画の先輩「タンポポ」にならったとも言えるし、さらにさかのぼるとルイス・ブニュエル「自由の幻想」に行き着く(伊丹十三その人がそう言っている)。もっとも「自由の幻想」およびその姉妹編みたいな「ブルジョワジーの秘かな愉しみ」は食のモチーフの取り上げ方が「孤独のグルメ」とは真反対で、食卓の椅子がトイレの洋便器になったり、食べたくても食べられない状況がなぜか続いたり、欲望に逆らってばかりいる。テレビドラマ版だと井之頭五郎はとにかく幾皿も幾皿もすごい量を食べるが、劇場版では特に前半は食べてもオニオンスープとビーフシチューの二皿だけで、ことによると一日に一食くらいしか食べてないのではないか。その分、こちらもおなかがすきます。空腹は最良のソース。遭難したからとはいえ...「劇映画孤独のグルメ」

  • 「グランメゾン・パリ」

    パリのロケと料理の数々は目に楽しく贅沢な気分に浸る。こちらとは縁のない世界ではあるが。はじめのうち日本のルーツを無視してフランス料理の伝統に忠実であるべしなんて言うけれど、そんなことできるわけないので日本に回帰するだろうと思ったら案の定。フランスが人種文化の多様性を保持しているかというと、実際問題そうでもないでしょ。-YouTube「グランメゾン・パリ」-公式サイト「グランメゾン・パリ」-映画.com「グランメゾン・パリ」-IMDb「グランメゾン・パリ」

  • 「シンペイ 歌こそすべて」

    音楽映画としてはどれも聞き覚えのある曲で、あ、この曲も中山晋平作曲なのと何度も思った。メロディが親しみやすく列車内の「ゴンドラの唄」のくだりにせよあたまからメロディを押し出さず、徐々にドラマを組み込むように処理している。割と史実に忠実っぽい。なんだか見覚えのある顔立ちの俳優ばかりだが、それもそのはずで中村橋之助、三浦貴大、渡辺大、緒形直人、真由子と二世あるいはそれ以上の俳優総出演。どういう製作体制で作られたのかわからないが、美術装置の質感がロケセットらしいがかなり厚みがある。室内に置かれた古ぼけたオルガンが後年立派なピアノになるのを似た構図で繰り返して見せるのがわかりやすい。借金を返すのをいちいち律儀に描いている。ラスト近くで戦時色が濃くなってくるありがちな展開は重くなる前に躱した感。-YouTube「シ...「シンペイ歌こそすべて」

arrow_drop_down

ブログリーダー」を活用して、prisonerさんをフォローしませんか?

ハンドル名
prisonerさん
ブログタイトル
prisoner's BLOG
フォロー
prisoner's BLOG

にほんブログ村 カテゴリー一覧

商用