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酔生夢死浪人日記 https://blog.goo.ne.jp/ck1956/

 映画、音楽、書物、スポーツ、政治に至るまで、日々思いついたことを記していきます。

ck1956
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2005/08/24

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  • 母の死去で心潤む日々

    今年に入って母が入居していた老人ホームから、体調不良を伝える電話を何度も受けた。そして27日朝、死去の知らせが届く。鬱血性心不全と診断されたが、広い意味で老衰といえるだろう。取るものも取りあえず京都に向かった。小規模の家族葬で、住職である従兄がサポートしてくれたので、葬儀の流れはスムーズだった。母は享年97で、意識的に人生をクローズした感があった。亡くなっている姉2人、母方の祖母も同様で、耳が遠かった母は補聴器着用を頑として拒絶し、携帯も聞こえないからと解約した。コロナで施設が入館禁止になるなど面会する機会は減ったが、手紙のやりとりで交流出来た。母は膨大な言葉を綴り、自身の思いを遺書代わりに伝えてくれた。俺は親不孝で、若い頃から母に心配をかけ続けた。定職に就かずフラフラしていた頃、母は新聞を読むのが怖かっ...母の死去で心潤む日々

  • 「パチンコ」~壮大な叙事詩が絆を謳う

    ミン・ジン・リー著「パチンコ」(池田真紀子訳、文春文庫)を読了する。上下巻750㌻の壮大な叙事詩で、全米図書賞最終候補にノミネートされた。日韓併合の1910年を起点に、リーが着想を得た1989年までの在日コリアン4世代の生き様が綴られる。在米韓国人であるリー自身は本作をライフワークと評していた。<歴史が私たちを見捨てようと、関係ない>……。この書き出しが、歴史に翻弄されながら抗っていく登場人物たちの強い意志を示している。最初の舞台は釜山沖の影島だ。下宿屋を営む夫婦の娘キム・ソンジャが、海産物仲買人ハンスの子供を妊娠する。大阪で妻子と暮らすハンスと結婚出来ないソンジャを救ったのが寄宿していた牧師のイサクだ。生まれてくる子の父親になることを提案し、次兄ヨゼブが住む大阪の鶴橋に渡ることになる。本作には切り口が多...「パチンコ」~壮大な叙事詩が絆を謳う

  • 「型破りな教室」~スクリーンではじけるデルベスの情熱と信念

    西山朋佳女流三冠が挑んだ棋士編入試験第5局は柵木幹太四段が勝ち、2勝3敗になった西山のプロ棋士入りはならなかった。西山は終局後、「勝敗が成績に残らないのに、真摯に指してくれた5人の試験官に感謝している」と語っている。俺は将棋界の不文律<相手にとって重要な一局を勝ちにいく>を思い出していた。柵木は現在フリークラスでC級2組に向けて苦しんでいる。ましてその背中を、将棋に身を賭しつつ夢破れて去った者たちが見つめている。柵木にとっても〝存在証明〟といえる一局だったのだ。向いている仕事は皆無で、教師など適性ゼロと言い切れるが、それでも、教師や学校に焦点を定めた映画を見ないわけではない。新宿武蔵野館で先日、メキシコ映画「型破りな教室」(2023年、クリストファー・ザラ監督)を観賞した。実話に基づく作品で、舞台はアメリ...「型破りな教室」~スクリーンではじけるデルベスの情熱と信念

  • 小山田浩子著「工場」~精緻なリアリティーから寓話に達する

    徒歩20分ほどの隣駅近くの本屋に行くたび、店員のセンスを感じる。冊数はそれほど多くないが、売れ線かどうかは関係なく、文庫コーナーではお薦めの本が平台に並べられている。年明け早々に訪れた時、目に留まったのは「工場」(小山田浩子、新潮文庫)で、<この工場何かがおかしい目的のわからない作業奇妙な同僚たち>の帯につられて購入した。小山田は芥川賞を受賞しており、デビュー作の表題作に加え、「ディスカス忌」と「いこぼれのむし」が収録されている。俺は当ブログで日本の女流作家たちを多く紹介してきた。小山田は初めて読む作家だったが、読了して彼女たちと遜色ない力量に感嘆する。「工場」について<労働者文学>とか<カフカとの近似性>が論じられていた。微に入り細を穿つ描写で、とことんリアリティーを追求しながら、背景は曖昧になって寓話...小山田浩子著「工場」~精緻なリアリティーから寓話に達する

  • 「はたらく細胞」~アイデアに溢れた教訓エンターテインメント

    今年になって初めて見た映画はWOWOWで録画しておいた「ピクニックatハンギング・ロック」(日本公開1986年、ピーター・ウィアー監督)だった。オーストラリア固有種が息づく壮大な景色に、美少女3人が忽然と姿を消すミステリアスな作品である。40年近く前に解けなかった謎に挑んだが跳ね返された。「刑事ジョン・ブック目撃者」ではアーミッシュを、「モスキート・コースト」では文明社会への嫌悪を描いたウィアー監督の原点といえるかもしれない。初めて映画館で見たのは「はたらく細胞」(2014年、武内英樹監督)だった。清水茜によるベストセラーコミック(同名)とスピンオフ作品「はたらく細胞BLACK」を原作に、父娘のドラマとそれぞれの体内で蠢く細胞たちの活躍が同時進行していく。アイデアに溢れる原作と実写化に際しての緻密な構成力...「はたらく細胞」~アイデアに溢れた教訓エンターテインメント

  • 「薔薇の名前」~積読本からはじけ飛ぶカタストロフィー

    新聞業界の不況が囲碁界に続き将棋界にも波及した。王将戦は来期から毎日新聞とスポニチが主催の座を下り、将棋連盟の単独主催となる。タイトル戦としての存続も危うくなりそうだが、藤井聡太七冠の地元であるトヨタや名鉄グループが名乗りを上げるかもしれない。現体制で行われる最後の王将戦にも注目している。30年ほど積読状態だった「薔薇の名前」(ウンベルト・エーコ著、河島英昭訳/東京創元社)を手に取ったのは先月20日。老い先短いゆえ今を逃すと読まないまま召されるかもしれないと考えたからだ。上下800㌻超(訳者解説含め)で、迷宮を彷徨しているような感覚を味わいながら読み進めた。読了したことに満足するしかなく、何か掴めたかと問われれば返す言葉もない。俺なりの低レベルの感想を以下に記したい。記号学者として知られたイタリア人のエー...「薔薇の名前」~積読本からはじけ飛ぶカタストロフィー

  • ハラリ、ジョン&ヨーコ、そして成長神話の虚実~三が日に考えたこと

    あけましておめでとうございます。三が日に外出したのは2日だけで、鈴本演芸場の初席第3部に足を運んだ。立ち見も出るほどの盛況で、手練れの演者が次々に高座に現れたが、初めて聞く五街道雲助の「勘定板」が印象に残った。江戸時代の厠(トイレ)をテーマとしたブラックな噺が飄々とした雲助にマッチしていた。少しでも有意義に過ごそうと、年末年始にNHK・BSで録画しておいたNHKスペシャル3本を見ながら、今年がどんな年になるか考えた。まずは「情報は人類を滅ぼすか~ユヴァル・ノア・ハラリ現代を読みとく」から。ハラリはイスラエル人の歴史家で、敷居が高そうな「サピエンス全史」は漫画版(上下)で読んだ。同番組は3月に日本で発刊される新作「NEXUS情報の人類史」プロモーションの一環かもしれない。進行役はCG化されたレオナルド・ダ・...ハラリ、ジョン&ヨーコ、そして成長神話の虚実~三が日に考えたこと

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