24度目のキャンプを終えた福留孝介は、年齢なんかに負けるタマじゃない
2月はとにかく宇多田ヒカルのニューアルバム『BADモード』をよく聴いた一ヶ月間だった。この20年間でCDからサブスクへと音楽の聴き方は大きく変わったが、この人の才能は衰えるどころかますます磨きがかかっているようにも感じる。 「気分じゃないの (Not In The Mood)」の気だるい感じを出せるのは日本のアーティストだと宇多田ヒカルただ一人だと思うし、いわゆる売れ線とは程遠い音楽性ながらこれだけのクオリティを叩き出してくるあたりが天才の天才たるゆえんだろう。 邦楽の歴史を塗り替えた衝撃のデビューシングル『Automatic/time will tell』のリリースが1998年冬のこと。同じ…
これぞファンが心待ちにしていた光景だ。今季オープン戦のチーム第一号は、石川昂弥の逆転2ラン。投手陣が打ち込まれて試合こそ負けたものの、このホームランだけで “撮れ高OK” といっても過言ではない。2試合続けて7番サードでの出場となった石川が、また一歩開幕スタメンへ近づいた格好だ。 打った瞬間だった。高々と舞い上がった打球の行方を追うこともなく、背番号2は自然色のバットを天高く掲げながら、満面の笑みで一塁ベンチを見やった。視線の先にいたのは立浪監督か、もしくは師匠である中村紀洋コーチか。あまりに石川が嬉しそうにするものだから、自然とベンチにも笑みがこぼれる。スコアだけでなく、雰囲気をもガラッと変…
「内容よりも結果」〜大野雄大の有言実行ピッチで立浪ドラゴンズ白星発進!
〇2-1阪神(オープン戦:北谷) まるで公式戦のような緊張感、と言うのは大袈裟だろうか。いや、そんな事はない。同じリーグの阪神戦、両軍共にそのまま開幕戦のオーダーだと言っても不自然ではないほどの “ガチメンバー” で臨んだ本日の一戦。オープン戦初戦は、若手の期待枠が先発投手を務めるのが慣例となっているが、今年はあきらかに様相が違う。何しろ真っ新なマウンドに上がったのは背番号22、エース大野雄大なのだ。 「勝ちにこだわってやっていきたい」という立浪監督の言葉に呼応するかのように、大野も「オープン戦でとにかく勝ちたい」と、目下9年連続で5割以下に甘んじているオープン戦での健闘を兼々公言してきた。監…
MVPは根尾! 朝から晩まで練習練習……立浪監督も認めた努力量
大人になれば分かってくることが色々とある。人生は思っているよりもずっと短いこと、綺麗ごとでは世界平和は実現しないこと、お金はとても大切だということ……。そして「努力は必ずしも報われない」というのも、大人になると思い知らされる真理の一つだ。 26日のオープン戦初戦を控え、立浪監督が指揮官としての初キャンプを「無事にこうやってこられたので100点」(サンスポ)と総括した。立浪監督が「100点」を出すのは秋季キャンプの総括、春季キャンプ初日に続いて3度目。ここまで大きな怪我人もなく厳しい練習を乗り越えたことに、手応えを感じているようだ。 一方で若手の突き上げに関しては明暗分かれた印象がある。非凡な打…
セカンド高橋、サード石川! 立浪監督のサプライズ起用宣言にミスター・ドラゴンズの意地を見た
大きなニュースが飛び込んできた。あさって26日に予定されているオープン戦初戦の対阪神で、セカンド高橋周平、サード石川昂弥という布陣を敷くことを立浪監督が発表したというのだ(CBCラジオ『ドラ魂キング』より)。 これは率直に言って驚いた。現状、両者を併用するには石川を慣れないセカンドで使うしか選択肢はなく、石川のサード起用に踏み切るのは、高橋が昨季のように不振に陥り、にっちもさっちも行かなくなった時だろうと。少なくとも私はそう考えていたからだ。 石川を使いたい気持ちは山々ながら、高橋の実績と、10年選手のプライドを蔑ろにするわけにもいかない。多くの歴代監督が悩み、時には解任の要因にもなるジレンマ…
ブルペンリーダーは任せたぞ!田島慎二の元気な姿が目に留まった祭日の昼下がり
年に一度あるかどうかの水曜祭日とあってネット上では「水曜休み最強説」がトレンドになるほどの賑わいを見せた。一部企業では週休3日制を導入する動きもあるようだが、定着すればプロ野球の観客動員も劇的に上向くに違いない。 球団収益の増加は選手年俸の還元に繋がるし、余ったマネーで衰えた大物メジャーリーガーを獲得するのがブームになれば、プロ野球全体のレベル向上が望めるだろう。週休3日制はNPBにとって良いことづくめ。カープ贔屓の岸田内閣は、本腰を入れて導入を後押しすべきではないだろうか。 という雑なイントロで始まった本日の「ちうにちを考える」。御多分に漏れず私も貴重な水曜休みをダラダラ、ぐだぐだと使い潰し…
ifの未来を知る由は永久に無い。もし長嶋茂雄が南海ホークスに入っていたら? もし蔭山和夫が急死していなかったら? もし清原和博が巨人に指名されていたら? プロ野球も創設86年ともなれば、誰もが見てみたいと思える “ifの世界線” が数多く存在する。 ドラゴンズ文脈でいえば2003年オフ、何人かの新監督候補の中から落合博満が選ばれない世界線は、やはり興味がある。その中でも最有力と謳われ、一旦は水面下で監督就任が決定したとも言われる故・高木守道さんが、翌年落合監督の胴上げを解説席から眺めながら「私ならこんなチームは作れなかった」と呟いたのは印象的な一幕だった。 また10.8決戦で、今中慎二の次に山…
ドラフト2位ルーキー、鵜飼航丞が対外試合で結果を残している。持ち前の長打力だけでなく器用さも持ち合わせた打撃も見せており、おそらくこのまま1軍キャンプを完走するだろう。ぜひともこの後に続くオープン戦でも結果を残し、開幕1軍、そして開幕スタメンの座を掴み取り、中日に新しい風を巻き起こして欲しい。 さて、鵜飼が活躍すればするほど、もう1つ楽しみになってくることがある。それが守備固めに入る外野手だ。大学時代のほとんどを指名打者として過ごし、パワフルな打撃でドラフト2位という好順位を掴んだ一方で、守備に関してはまだまだ脆い部分を見せることもある。ただしこれは将来への投資として考えるべきであり、鵜飼本人…
『中日ドラゴンズ共通テスト』を解いてみたら、絶妙な出題バランスで最高に楽しかった
先日ネット上でおもしろいモノに遭遇した。『中日ドラゴンズ共通テスト』と銘打たれたそれは、いわゆる中日ファン向けの知識を問うカルトクイズなのだが、驚くべきはその内容である。大問6までの全33問、マークシート方式という構成は、現実の大学入学共通テストそのもの。 それだけではなく、大問1に登場する読んでも読まなくても解答には差し障りのない男女の不自然な会話文など、細部に至るまで実際の試験かと見紛うほどの再現性で、作成者の旺盛なパロディ精神がうかがえる作りになっている。 出題範囲は球団黎明期から現在に至るまで幅広く、記録や球団史に基づいた問題が中心になっている。各時代から満遍なく出題されており、ある程…
選手名鑑、あなたのお気に入りは? ドラゴンズ界隈を観察してみよう
2月も下旬に差し掛かり、沖縄からは練習試合の中継や記事が届けられる。いよいよ実戦モードに入ってきたなと感じるこの時期、さらにシーズンに向けてスイッチを入れてくれるものがある。そう、選手名鑑だ。 今年も多くの出版社から選手名鑑が刊行され、各社それぞれ特徴を持つ。そこで今回は私の選手名鑑の買い方、読み方を記したいと思う。 週ベ名鑑号で球春を感じる まずは野球雑誌の定番・週刊ベースボール選手名鑑号から。「どこよりも早い!」を謳い文句に2月10日前後(大体第2水曜or木曜)に発売される。他の名鑑は約1週間後に発売されるため、この名鑑号を最初に手に入れて楽しむ人は多いのではないか。かく言う私もそのひとり…
●1-4阪神(練習試合) 打席の結果が9割方 “見える” 場面というのがある。この打者は今から間違いなく三振を喫するとか、なんとなく打つ気がするとか。もっとも中日の場合、後者はほとんど皆無に近いわけだが……。 別に予知能力なんてオカルトじみたモノではなく、長年の野球観戦で養われた経験則による勘が働いているに過ぎないのだが、ある程度は当たるからおもしろい。 この日の試合でも、久々に “見えた” と思える場面に出くわした。2回2死二塁、鵜飼航丞を迎えたところだ。阪神の先発は青柳晃洋。泣く子も黙る昨季の最多勝投手にしてみれば、荒削りのルーキーを抑える事なんぞ赤子の手を捻るようなもの。絶滅危惧種ともい…
○2-1DeNA(練習試合) 圧巻の45球だった。兼ねてからの予告どおり先発マウンドに上がったのは高橋宏斗。先日の紅白戦では最速152キロ、2回無失点と抜群の投球を披露した高橋だが、今季初の対外試合となった本日はそれを更に上回る内容でド肝を抜いてきた。 「これはすごい投手が出てきた」「久々にこういう球を見た」 テレビ中継の解説を務めた川崎憲次郎氏も、見惚れるように感嘆の声を漏らすしかなかった。背番号19の指先から離れたボールが、唸りをあげてキャッチャーのミットに吸い込まれる。精密にコントロールされたボールは、内外角のいわゆる「ビタビタ」と形容されるコースに決まる。気持ちいいほどの制球力。そして…
あの緊張感もいまは昔ーーせめて開幕投手は当日その瞬間に知りたい
「今年の開幕投手は光成。光成が開幕戦で勝てるようにみんなでバックアップしよう」(日刊スポーツ) 西武が他球団に先駆けて開幕投手を発表したという。近年は開幕前日のイベントで先発投手どころかスタメンオーダーまで発表する文化が定着したため、当日を待つドキドキ感は昔に比べてすっかり薄れてしまった。落合監督の退任を待っていたかのように予告先発制度がセ・リーグに導入されて10年が経った。普段の試合はともかく、開幕戦くらいは独特の緊張感を味わわせて欲しい。そう考えるのは私だけだろうか。 「ドラゴンズのピッチャーは、川崎」ーーあの時の地鳴りのようなどよめきを生で体感した身としては、開幕投手の名前だけはウグイス…
FCスペシャルゲームは“ニックネーム”で! 歴代ドラ戦士のニックネームを振り返る
「あいつは昔からヤンチャでしたけど、礼儀はちゃんとした可愛いヤツでしたよ!」 最近、仕事でたまたま知り合った習志野高野球部OBによる山下斐紹評である。山下とは先輩後輩の関係で、同じ目標に向かって切磋琢磨した日々を懐かしんでいた。かつては常勝ソフトバンクの開幕マスクを任された経験を持つ山下だが、立浪監督の「バッティング一本で勝負していけ」の言葉に一念発起。慣れ親しんだ捕手への未練を捨て、今年は「打者・山下」として勝負を懸けるようだ。 その山下の名前は「アヤツグ」と読む。初見ではなかなかに難読だが、近ごろチームでは「アヤタカ」というあだ名で呼ばれているという。由来は同名のお茶飲料だと思われる。ひょ…
対外試合初勝利、主役は鵜飼だけじゃなかった! マスター阿部も健在ぶりをアピール
○7-4日本ハム(練習試合) 新庄ビッグボス率いる日本ハムを北谷に迎えての練習試合は勝利。この日が “初陣” の立浪和義監督にとっては幸先の良いスタートとなった。 ともに若手主体のメンバーらしく、両軍合わせて19安打11得点、4失策。三者凡退は両軍ともわずか1回ずつ。個性が爆発する場面と、一つひとつのプレーの粗さが見て取れた。 ルーキー鵜飼がいきなりポテンシャル発揮 1試合4本塁打。 ドラゴンズファンには新鮮、そして甘美に感じられる響き。「らしくない」と言われればそうだが、昨季までの貧打ぶりを思うと、小躍りしてしまいそうである。 堂々主役を張ったのは、ドラフト2位ルーキーの鵜飼航丞。3番・レフ…
2月17日発売『日本バッティングセンター考』は、歴史とドラマに溢れた熱い野球本だ!
近所のバッティングセンターが今月いっぱいで閉業するという。店先の貼り紙によると、老朽化によるやむを得ずの決断であり、今後は建売住宅として生まれ変わるそうだ。何度か息子を連れて行ったこともあるし、町から金属バットの打球音と、独特の風情が失われるのは何とも言えず寂しい思いがする。 大衆浴場と並び、バッティングセンターは昭和の名残をとどめる貴重な文化遺産であると思う。だが、意外なほどその「歴史」に想いを馳せる機会は少なく、また全国に点在するバッティングセンターを経営するのがどのような人達かなんて、考えたことさえも無かった。 今月17日に双葉社より発刊となる『日本バッティングセンター考』は、おそらく日…
それでも鵜飼が見たいんだ!質素な現実よりも、とびっきりの願望に夢を馳せる
早いものでキャンプも気付けば後半戦に突入。ここまで最も目立っている選手といえば、ルーキー鵜飼航丞を置いて他にはいないだろう。 初日のフリー打撃柵越え14発に始まり、5日には場外弾2発を含む55スイング中13本の柵越えを記録。あの井端弘和氏をして「弾道は岡本和真、村上宗隆よりも上くらいに感じる」と言わしめるほどの長打力は、長距離砲を見慣れていないドラゴンズファンのハートをあっという間に掴んでしまった。 この手のタイプは練習では気持ちよく飛ばしていても、実戦になると途端にバットにかすりもしなくなるパターンがお決まりだが、紅白戦での2試合連続安打によってその心配も払拭してみせた。 それでも「泳ぎまし…
人生すごろく〜達人シュート直伝で「進む」どころか「跳ねて」欲しい山本拓実!
1年前の同時期に比べて立ち位置はどう変わっているか? 世の労働者は多かれ少なかれこうした評価に晒されているものだ。「常に進む」ことを求められる資本主義という名の人生すごろくにおいて、「停滞」は「後退」と同一視され、進めなかった者は容赦なく弾き出される。 いわんや超実力主義のプロ野球界では1年ごとに立場がめまぐるしく変わり、3年も停滞が続けば期待値の最後尾に追いやられる事もめずらしくない。 ではこの選手の場合はどうだろうか。背番号59、ただ今シュート習得の真っ最中、山本拓実である。13日の紅白戦ではさっそくこの新球を実戦投入。 「シュートはゴロを打たせたいボールなので、髙松選手に投げたのが一番良…
「良き指導者との出会いは、その後の野球人生を大きく左右すると言っても過言ではない」と唱えるのは、みんな大好き張本勲である。歴代の大打者たちには大抵、駆け出し時代の指導者との切磋琢磨の日々にまつわる逸話が残っているものだ。王貞治と荒川博、大杉勝男と飯島滋弥、古田敦也と野村克也、松井秀喜と長嶋茂雄……と、例を挙げ始めれば枚挙にいとまがない。 中日でいえば、杉下茂と天知俊一の特別な絆が真っ先に思いつくところか。また立浪和義と星野仙一の関係性も “師弟” と呼ぶに値するものだろう。 親と上司は選べない、とはよく言ったものだが、プロ野球選手にとっては指導者との相性もまた「運」の要素が強く、人生を左右しか…
圧巻の高橋宏斗! 不満残る梅津晃大。マウンド捌きを学ぶべき人物は身近にいる
本日おこなわれた紅白戦は、立浪政権初の実戦という事もあり、大きな注目を集めた。若手中心オーダーの中で高橋周平や木下拓哉といったレギュラー格も出場。若手にとっては単なる調整に留まらず、貴重なアピールの場となる。 その中で大きく存在感を見せつけたのが、紅組の先発投手を務めた高橋宏斗だ。先日の「ストライクテスト」で優秀な結果を収めて勝ち取ったこの日の先発マウンド。ただでさえ飛躍が期待される若手の一人ではあるが、みごとに想像を絶する “圧巻” と呼ぶにふさわしい投球を見せてくれた。 2回無安打パーフェクトという結果もさることながら、威力のある直球、制球力、そしてキレッキレの変化球と、内容も申し分なし。…
ストライクの先に~満遍なく「9.5点」をマークする岡野祐一郎はこのまま埋もれてしまうのか?
北京五輪に沸く日本列島。平野歩夢の美技に酔いしれ、高梨沙羅とともに悔し涙を流した1週間があっという間に過ぎようとしている。 2022年=冬季五輪イヤーということは、すなわちサッカーW杯が開催される年でもある。W杯が開幕する11月は、日本サッカーが世界の扉を開いてから丁度四半世紀。“ジョホールバルの歓喜” と称される大一番で、日本代表を勝利に導いたのが “野人” こと岡野雅行だ。しかし岡野は決勝点を決める直前まで決定的なチャンスを外し続け、その度に日本のサッカーファンは頭を抱えた。そんな昔話も今では良い思い出だ。 背水の陣 サッカーの祭典で盛り上がるのはまだ先の話。その間はドラゴンズに限る。本日…
新庄剛志「BIGBOSS」が連日キャンプの話題を独占している。初の対外試合となった2月8日には奇抜な打順、普段とは違う守備位置で組んだスタメンに度肝を抜かれた方も多かったのではないだろうか。 試合後の取材では、BIGBOSSははっきりとした意図は特に名言せず「面白かった」「楽しかった」というポジティブな表現に終始したようだが、やはり守備位置や打順に関する深い意図は知りたかった。そこで、私なりに考えた意図をここに記したいと思う。 中日版奇抜オーダー(例) 例えば中日が対外試合を組んだときに、以下のオーダーだったら皆はどう感じるだろうか。 1. 高橋周平 レフト2. 石川昂弥 ライト3. 京田陽太…
絶えず挑戦を続けることの尊さに胸が熱くなった。フィギュアスケート・羽生結弦の話である。 先日おこなわれたSPでは、先に滑った選手が付けた「穴」に足を取られる不運もあり、まさかの8位と厳しい発進となった。ここから大逆転3連覇を成し遂げるには今日のフリーで前人未到の超大技「クワッドアクセル」を世界で初めて決めるほか道はなく、その挑戦に注目が集まっていた。 もちろん失敗すれば、その時点で金メダルはおろかメダル獲得自体が夢と散るため、無理せずに銀あるいは銅狙いに切り替えるという現実的な路線も残されてはいた。そりゃそうだ、何しろ練習を含めてこれまでの成功率0%。ほとんど無謀ともいえる挑戦を、よりによって…
プロ野球の歴史は、記憶にも記録にも残らない「ある日」の積み重ねで出来ている。 年間140試合のうち10年後も思い出せる試合は幾つあるだろうか。何の変哲もない日常はやがて記憶の彼方へと埋もれてゆく。 しかし、忘れ去られた「ある日」もたまに引っ張り出してみれば案外懐かしかったり、楽しめるものである。今回紹介するのは1989年2月のある日の出来事。入団2年目の立浪和義が最大のピンチに陥った話をお聞きいただこう。 限界を超えた右肩 「去年、何のために宇野を二塁に回してまで立浪にショートをあげたんだ。野球をナメとる」 星野監督が特定の選手に対してここまで怒りを露わにするのはめずらしい。闘将とはあくまでグ…
かつて立浪も通った道ーー根尾昂が歩むフォーム改造の終わりなき旅
「人の世に道は一つということはない。道は百も千も万もある」と説いたのは幕末の土佐藩士・坂本龍馬である。近江屋で殺害されたのが満31歳のときなので、今日において「名言」として伝わる言葉の多くは、20代のときに遺したものであろう。 凡庸な想像を巡らせるなら、龍馬自身も「人の世に道は一つということはない」という結論に至るまでには幾度もの挫折に衝突したに違いない。 さて、ここで根尾昂である。入団4年目を迎えた人気者が今年も壁にぶち当たっているようだ。7日のシート打撃では “直球オンリー” の縛りがある中でも快音は響かず、3打数無安打に終わった。 今季は入団以来抱き続けてきた遊撃へのこだわりを一旦は封印…
決めろ、ジャイアントキリング!石川昂弥の描く放物線が天敵菅野を打ち砕く!?
元中日の近藤真市さんが、岐阜聖徳学園大野球部の新監督に就任したというニュースが伝わってきた。今年はスカウト布陣から外れる事が先に発表されており、少し心配もしていただけにホッとした。 長くドラゴンズに尽力した近藤氏は人格者としても知られる。引退後にスコアラー、コーチ、スカウトを歴任した豊富な経験だけでなく、きっとそうした面も評価されてのオファーだったのだろうと想像できる。 今回近藤さんが就任する岐阜聖徳学園大野球部のスローガンは「ジャイアントキリング」ーーすなわち格上の相手から勝利をもぎ取る「大物食い」をモットーとし、日本一を目指す途上にある。昨年同チームは19年ぶりに東海大会を制し、全国の舞台…
第2クール2日目、北谷球場に大物ゲストが来訪した。見慣れないスーツ姿にマスクを付けていても、その人懐っこい目元を見れば一目瞭然。ご存じ「平成の怪物」こと松坂大輔である。 昨年限りで引退し、評論家として新たなスタートを切った松坂は、所属するスポニチ、テレ朝「報道ステーション」の取材で各球団のキャンプ地を精力的に視察している。その6球団目に訪れたのが古巣・ドラゴンズがキャンプを張る北谷だった。 松坂がグラウンドに姿を現すと、次々と選手が挨拶に出向く様子がキャンプ中継や各報道機関のSNS等を通じて伝わってきた。一様に緊張というよりは笑顔で「先輩」の来訪に接しているあたりに松坂という人物の人柄が表れて…
梅津の「226」事件!今季に懸ける想いが伝わった異例の長時間ブルペン
「逆境も心の持ちよう一つで、これを転じて順境たらしめることもできる」 時の蔵相・高橋是清が皇道派に影響を受けた陸軍青年将校の凶弾に倒れた、いわゆる「二・二六事件」。その発生は今より86年前の雪の日のことだった。中日ドラゴンズの前身たる名古屋軍の創立からわずか一ヶ月後のことである。 ふくよかな見た目と温和な性格から「ダルマ」と称された高橋是清は、幼少期より幾度もの逆境に晒されながらも「自分にはいつか良い運が転換してくるものだと」(『高橋是清自伝(上)』)信じ込み、その元来のポジティブ思考によって未来を切り拓いた人物としても知られる。 さて、実際に事件が起きた26日を待たずして氏の格言を引用したの…
ある日のドラゴンズ⑯ナゴヤ初見参!ルーキー立浪はやっぱり只者じゃなかった!
プロ野球の歴史は、記憶にも記録にも残らない「ある日」の積み重ねで出来ている。 年間140試合のうち10年後も思い出せる試合は幾つあるだろうか。何の変哲もない日常はやがて記憶の彼方へと埋もれてゆく。 しかし、忘れ去られた「ある日」もたまに引っ張り出してみれば案外懐かしかったり、楽しめるものである。一部界隈から好評の当ブログ名物コーナー「ある日のドラゴンズ」、性懲りもなく今年も埃だらけのアルバムをめくってみるとしよう。 1988年3月13日 vs日ハム(オープン戦) 「ある日」と言うには恣意的に選んだのは否めない。ただ、ほとんど語られる事のない日付であるのは間違いない。1988年3月13日ーーこの…
のびしろ~直近15年間のオープン戦順位、貯金・借金数は公式戦との相関性はあるのか?
球春到来。2月に入って各球団が春季キャンプを開始し、ドラゴンズも初日から精力的に活動している。ここにきて、立浪和義監督の新型コロナ陽性が判明したものの、無症状なのは不幸中の幸いか。東京では2万人以上が陽性判定を受ける昨今、コロナにかかるのはもはや仕方がない。気をつけていてもなるときはなるもの。今は陽性者の回復を祈りつつ、無事にキャンプを乗り越えてほしい気持ちでいっぱいだ。 気になった大野の発言 先日球団公式You Tubeにアップされた初日ダイジェストの中で、気になるところがあった。 「対外試合入っていったら、勝ちにこだわっていってほしいなと思います。ドラゴンズ、オープン戦とか勝つの弱いし」「…
前代未聞の「ストライクテスト」実施!衝撃の結果に落合英二コーチの厳しさを垣間見た
「コントロールは投手の命である」 巨人の投手コーチを務める桑田真澄は、解説者時代から事あるごとにコントロールの重要性を説いてきた。速さはいらない、あくまで大切なのはコントロールなのだと。 また昭和の鉄腕・稲尾和久は駆け出しの新人時代、中西太、豊田泰光らを相手に打撃投手を務める中でコントロールを磨き、不世出の大投手としての礎を築いたとされる。 そうは言ってもプロの投手ならストライクゾーンに投げられるのは当たり前。変化球や打者との駆け引きの中で際どいゾーンにコントロールするのが難しいのだと、私のような素人は半ば常識として捉えてきた節がある。 だが、実際にはそうではなかった。キャンプ3日目、落合英二…
立浪監督も注目⁉︎ 長身イケメン「まつきひら」が有望株の仲間入り
推定年俸300万円。プロ野球選手の「格」が年俸の額で決まるとすれば、松木平優太はその最後尾に位置する存在だといえる。高卒の育成契約という条件では致し方ない面もあるが、そこらのサラリーマンよりも安い収入では野球選手らしい派手な生活など夢のまた夢。 その松木平に声がかかったのは1月上旬の事だった。「俺のところへ来い」ーーまるでプロポーズのようなセリフの主は、昨季の二冠王・柳裕也だった。練習メニューについて相談したつもりが、思わぬ形で宮崎・都城市での自主トレに同行できることになった。 柳といえば泣く子も黙る1億円プレーヤーである。松木平から見れば、まさしく雲上人。憧れの先輩なんて生半可なものではなく…
いよいよ始動した立浪ドラゴンズ。異例の「補強なし」が波紋を呼び、巷では「ぶっちぎりの最下位最有力」というありがたくない称号を授かっている。ボードレールの詩集ばりに陰鬱としたファンのテンションを沖縄の青空のように一気に晴らしてくれたのは、石川昂弥や鵜飼航丞といった若竜たちの躍動する姿だった。 特にルーキー鵜飼は69スイング中14本の柵越え、中には体勢を大きく崩しながら強引に逆方向へと運ぶといった、往年のトニ・ブランコを彷彿させる豪快な一撃もあり、戦国東都で鳴らした規格外のパワーを存分に見せつけてくれた。長打力不足、とりわけホームランでの得点が極端に少ないチーム事情にあって、待望の和製大砲の登場に…
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