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  • 白熱の接戦、からの異次元

    ○7ー5巨人(バンテリンドーム:6回戦) 打ちも打ったり15安打7得点。『燃えよ!ドラゴンズ』の一節を借りるなら「僕もあなたも願って」いたような試合がようやくできた。 何しろ初回から岡林勇希を3番に据えた新打線がつながっての4得点である。石川昂弥も昨日の汚名返上とばかりのマルチ安打、さらに細川成也は打率4割超キープの大活躍。お立ち台にも登ったこの若い3人が今季のドラゴンズを支えていくことになるのだろうか。 「今年は勝つためのメンバーを使います」と豪語し、開幕わずか2週間にして古株の高橋周平とビシエドの名前がスタメンから消えた。たとえ守備を含めた総合力で彼らに一日の長があろうとも、若さの躍動はチ…

  • 「4番サード」

    ○9ー2巨人(バンテリンドーム:4回戦) ちょうど2週間前、東京ドームでの開幕戦と同じマッチアップとなったこの試合。あの時は小笠原慎之介、ビーディ共に白黒つかず、9回表に巨人のリリーフ陣を打ち崩したドラゴンズが逆転勝ちした。あれからまだ10試合余りしか消化していないが、両軍は早くも苦境に立たされている。 ゲーム差なしの最下位攻防戦ーー。皮肉っぽく言えばこのカードはそうした謳い文句が付く。既に4度の零敗を喫したドラゴンズは深刻な貧打に苦しみ、一方の巨人はそもそもの先発投手不足に解決の兆しが見えないまま黒星を重ねている。一筋でもいいから何とか光明を見出したいのは両軍同じこと。だとすれば、先にそのき…

  • ホームランは偉大なり

    ○5ー2広島(バンテリンドーム:2回戦) 悪いことは重なるものである。それにしても近年のドラゴンズはちょっと疫病神に愛され過ぎじゃあるまいか? 開幕ダッシュにみごとに失敗し、9試合目を終えた時点で借金は早くも5個。プロ野球の歴史上、借金9をこさえたチームが優勝した例は無いというから、2023年の我らがドラゴンズは開幕早々にして “リミット” 間近まで到達してしまったわけだ。 人は不幸が続いたとき、自分より不幸な人間と比べて安心しようとする。今のドラゴンズにとっての精神安定剤は、昨季の阪神に他ならない。開幕からずっこけること9連敗。「うちは2個も勝ってる!」とポジティブになれると同時に、これだけ…

  • ファンをやめようと思った日

    ○3-1(バンテリンドーム:3回戦) 火曜日のゲームは堪(こた)えた。そして萎えた。大野雄大の7回自責点0で負け投手、「グランドスラムか⁉︎」と身を乗り出して行方を追った一打がフェンス際でキャッチされたのを見た瞬間、私の中で何かがプチンと切れてしまったのである。 低迷期のドラゴンズは定職にも就かず家でダラダラして過ごすヒモ男のようなチームだと思う。情深い彼女(ファン)は散々裏切られながらも、いつか必ずこの人はちゃんと自立してくれるはずだと信じ続けている。本当はこんなはずじゃないから。ちゃんとやる気になれば、この人はできる人だから。 そんな風に待ち続けて早10年。ヒモ男もずっとどうしようもなかっ…

  • 惜しくなんかない

    ●2-3巨人(東京ドーム:3回戦) 爽やかな日曜の朝は、中日スポーツの名物コラム『龍の背に乗って』を読んで自分の浅はかさを反省するところから始まった。 投手が踏ん張ったロースコアの試合を、ポロポロ落としていては上位浮上は望めない。「うちの野球」ができた日こそ、しぶとく勝ちきらなくてはいけないのだ。「惜しい」は実は惜しくない。(4月2日付「中日スポーツ」) 平手打ちを食らった気分だった。ニヤつきながら「涌井の投球を堪能できたから実質的な勝ち試合!」などと敗北の悔しさをごまかし、「紙一重の内容。悪い内容ではない。心配いらない」と虚しい楽観論で自分自身を慰めていた。 そんな浅薄なポジティブ思考に対し…

  • 昼下がりの情事

    ●0-2巨人(東京ドーム:2回戦) 背番号20はドラゴンズのエースナンバーだと言われている。杉下茂から権藤博へと引き継がれ、一年だけ他の選手を経由したあと、今度は星野仙一が引退までの11シーズンにわたって背負い続けた。その次が小松辰雄で、1985年の投手三冠は20番を背負って成し遂げた。 要するに一時代を築いたこの4人のエースの活躍によって背番号20の神格化は進んだわけだが、21世紀に入ってからはお世辞にもうまく継承できているとは言い難い。挙句は2018年以降は空き番状態となっていて、今や若いファンからしてみれば「エースナンバーだ」と言われても実感はないだろう。 どうもドラゴンズという球団はこ…

  • 「野球ってすげえな」

    ○6-3巨人(東京ドーム:1回戦) 映像を見れば一目瞭然だった。髙松渡の伸ばした左手がわずかに捕手のタッチより早くホームプレートに触れていることを確認するや、固唾を飲んで見守っていたレフトスタンドの青い集団はこの日一番の絶叫とも歓声ともつかない大声を張り上げた。 このために選ばれた男 髙松はつい数週間前まで開幕2軍スタートが濃厚視されていた選手だ。足の速さは誰もが認めるところながら、スタートの判断力や盗塁技術の乏しさだったり、俊足以外の取り柄がないことがネックとなり、キャンプを通してメディアでもファンの間でも話題に上ることはほとんど無かった。 事態が急転したのはちょうど1週間前。期待のルーキー…

  • もう弱いドラゴンズは飽きた

    ○3-0広島(25回戦:Zoom-Zoom スタジアム) 2018年秋のドラフト会議で与田監督が当たりクジを引いたその瞬間から、ドラゴンズは根尾昂との心中の道を歩み始めた。『中日スポーツ』はこの4年間、事あるごとに根尾を1面に据え、球場のファンは根尾が登場するたびにいつもより大きな拍手で出迎えた。根尾昂は、今のドラゴンズで唯一の全国区のスターといっても過言ではない。 人気に対して遅れを取っていた実力面でも、今季は課題だった三振率が改善するなど健闘。荒削りながらも着実に成長の跡を残し、緩やかながら順調に歩を進めている……。少なくとも客観的にはそう見えていたし、巨人戦で2打席連続タイムリーを放つな…

  • 若者たちの9.30〜岡林と小笠原 それぞれの躍動

    ○6-1DeNA(25回戦:横浜スタジアム) 23年前の今日、星野仙一が神宮球場の夜空に舞った。守護神・宣銅烈がペタジーニをセカンドフライに打ち取り、立浪和義が大事そうにボールをキャッチした瞬間、ドラゴンズは11年ぶりの優勝を果たしたのである。 あれが物心ついて初めて経験する優勝だったという方もおられることだろう。かく言う私もその一人である。優勝するのに11年間もかかったのは、球団史を紐解いても'54年から'74年までの20年間に次ぐ歴代2位……。いや、歴代2位 “だった” と表現するのが適切だろう。 前回優勝から今年で11年。残念ながらドラゴンズは優勝どころか最下位という結果に沈み、待望の立…

  • 春が待ちきれなくて〜最下位確定の夜、悲壮感なし

    ●1-6DeNA(24回戦:横浜スタジアム) 我々は今夜、高橋宏斗が打ちのめされる光景を初めて目にしたことになる。5回6失点。エラー絡みとはいえ、4点を失った5回表の投球は集中力が切れ、ボールが制御できていないように見えた。これまで驚くべき安定感を維持してきた高橋が、このような状態になるのも19度目の先発登板で初のことだ。 DeNAとは今日の対戦が6度目となる。1勝3敗(試合前時点)と負けが先行するが、言うまでもなく味方の無援護に泣いた結果である。32.1イニングに投げて防御率1.95、奪三振率10.86、WHIP(イニングあたりに何人走者を出したかを表す指標)は驚異の0.93を記録する。 D…

  • 勝者のメンタリティ〜松田宣浩構想外の衝撃

    慌ただしい朝だった。と言っても私自身のことではなく、スポーツ紙面上の話だ。まず飛び込んできたのはヤクルト・内川聖一、嶋基宏の現役引退を伝える記事だった。2010年代を代表する両プレーヤーの引退に、時代の移り変わりを感じずにはいられない。続いて目を引いたのが阪神・藤浪晋太郎のメジャー挑戦。新監督の内定が報じられたばかりだと言うのに、果たして球団はポスティングを容認するのだろうか? だが、一番のサプライズはその次だ。 「ソフトバンク・松田宣浩 構想外れる」ーー。 目を疑い、二度見した。松田といえば常勝ホークスの象徴ともいえる存在。巨人における坂本勇人、西武における栗山巧のようなスペシャルな選手とし…

  • 15本塁打に王手〜良くも悪くもビシエド

    ●3-8DeNA(22回戦:横浜スタジアム) 昔ティモンズという外国人がいた。オジー・ティモンズ。5位に終わった2001年はドラゴンズの球団史でも語られることが滅多にないシーズンなので、あまり知名度の高くない選手に分類されるだろう。 前年まで在籍したゴメスの後釜として期待され、開幕戦には「4番・レフト」で出場。しかし2週間足らずで7番に降格するなど星野監督の信頼を失い、後半戦に入ると出場機会すら与えられなくなった。いわゆる “ハズレ助っ人” の一人である。打率2割代前半で12本塁打では4番と目された外国人としては寂しい数字ではあるが、このレベルの選手でさえ今のドラゴンズなら余裕でクリーンアップ…

  • Hello, Again

    転職で地元・愛知を離れ関東に移り住んで4年目。最後にナゴヤドームを訪れたのは2018年の10月。荒木雅博と岩瀬仁紀の引退試合の日だった。あれから4年、久々にドームへと足を運んだ。3試合連続の試合観戦は2008年9月14~16日以来14年ぶり、またカード3試合全て観戦するのは人生初となった。 福留孝介の引退試合、小笠原慎之介のキャリアハイとなる9勝目、そして大野雄大と菅野智之のマッチアップの3連戦を見届け、埼玉県の自宅へと戻ってきた。充実感を遥かに凌駕する疲労感。その裏には壮絶なドラマがあった。 これはマズい 9月18日の深夜5時前、38.2℃という数字を表示した体温計をテーブルに置き、しばらく…

  • 天才どころの話じゃない〜岡林勇希 タイトル挑戦へ

    ○7-1巨人(25回戦:バンテリンドーム) 立浪ドラゴンズの初陣は、ちょうど半年前の巨人戦だった。3月25日の東京ドーム。奇しくも先発は大野雄大と菅野智之。新しい時代の幕開けに胸躍らせたのも遠い過去のようだ。あれから半年、ドラゴンズは最下位という順位でホーム最終戦を迎えることになった。 「秋からもう1回出直します」。試合後、満員の観衆の前で再出発を誓った立浪監督の顔にはシワやほうれい線がくっきりと刻まれ、髪にもずいぶん白いものが目立っていた。まるで玉手箱を開けた浦島太郎のような急激な変化は、それだけ強いストレスの表れでもあろう。 プロ野球監督は男が憧れる三大職業のひとつだとも言われる一方、半年…

  • 正捕手の働き〜木下拓哉がみせた影のファインプレー

    ○2-1巨人(24回戦:バンテリンドーム) 「小笠原慎之介vs.戸郷翔征」 昨夜、場内に予告先発がアナウンスされた時、中日ファンからは一様に「明日も負けだがや〜」と悲鳴のような声があがった。 勝利数、奪三振数でリーグトップに立つ戸郷を相手に苦戦は織り込み済み。ドラゴンズの勝ち筋としては、小笠原が耐えてロースコアの展開に持ち込むのみ……。グダグダだった昨夜の一戦とはうってかわり、この日は大半のファンが予想した通りの息詰まる投手戦が繰り広げられた。 予想外だったのは打線の奮起だ。2点どまりでは “奮起” と言えるのかは微妙だが、取ったタイミングがよかった。初回の先取点と、同点に追いつかれたあとの3…

  • 青春のエピローグ〜福留孝介引退試合

    ●3-9巨人(23回戦:バンテリンドーム) 強い選手だった。弱音を吐いているところなど見たことがない。外野手に転向した2002年以降は球界を代表する強打者として君臨。その後、落合監督の就任と共にスタートした “黄金時代” にはリーグMVPを受賞するなど華々しい活躍をみせた。メジャー挑戦、阪神移籍を経て'21年に14年ぶりの古巣復帰。しかし今季は不振に陥り、6月以降は灼熱のナゴヤ球場で若手と共に汗を流す日々が続いた。 スターの宿命を背負い、走り続けた24年間。自らのエラーで試合に負けてもどこ吹く風という生意気な若造は、気が付けばプロ最年長選手になっていた。今夜、福留孝介が惜しまれつつも現役生活に…

  • 見えたぞサイ・ヤング賞〜神を超えた高橋宏斗

    ○3-0東京ヤクルト(25回戦:明治神宮野球場) このごろ世間に流行るもの。56号、三冠王、マジック4にヤクルト1000……。朝、ニュースを付けたら「村上新記録なるか」という話題が流れていてびっくりした。大谷翔平ならともかく、プロ野球の一選手がこうして脚光を浴びるのはめずらしい。もはや「村上宗隆」は野球ファンの枠を越えた国民の関心事なのだ。 何日か前には「ヤクルト1000」の増産に踏み切るという記事も見かけた。物が売れない時代にあって品切れ続出の乳酸飲料は、今年を代表する大ヒット商品のひとつだ。加えて優勝目前とくれば、ヤクルト社内はさぞかし活気に満ちていることだろう。 かたや6年ぶりの最下位が…

  • 40手前の働き盛り〜衰え知らずのレフト大島洋平

    ●2-6東京ヤクルト(24回戦:バンテリンドーム) 世間で40歳手前と言ったらいわゆる働き盛りにあたるわけだが、プロ野球の世界でこの辺りの年齢は引退適齢期である。昔、和田一浩がドラゴンズでバリバリ活躍していた頃は風格が漂いまくり、誰しもが「和田さん」と “さん” 付けで呼んでいたものだが、冷静に振り返るとMVPを獲った2010年で38歳。サラリーマンの世界での38歳は、まだギリで「若手」の範疇に入る年齢だ。 引退といえば長嶋茂雄がユニフォームを脱いだのも39歳のことだった。40代になっても第一線で活躍する選手は当時はめずらしく、“不惑” という言葉を世に広めた門田博光、村田兆治あたりから徐々に…

  • 天才・岡林勇希、再びの栗林攻略

    ◯5-3広島(24回戦:マツダスタジアム) 出てくる選手というのは、さほど時間をかけなくてもきちんと出てくるものだ。言うまでもなく、岡林勇希のことである。 5打席目まで併殺打を含む無安打といいところのなかった岡林だが、11回表に絶好のチャンスで6打席目が回ってきた。2死一、二塁。とはいえマウンドに仁王立ちするのは守護神・栗林良吏。そう簡単に打ち崩せる相手ではない。ただ、この回先頭の高橋周平に9球粘った末に四球を与えるなど、さしもの栗林といえどもイニングまたぎの影響は少なからずチラついていた。 直前の大島洋平に対しても変化球を叩きつけ、捕手が身を挺して止める場面もあった。結局これでカウントを悪く…

  • 嘆きとため息の中で〜あっさり後続を切った森博人の好リリーフ

    △3-3東京ヤクルト(23回戦:バンテリンドーム) 「え、勝負すんの?」 正直驚いたのは12回表、この日5度目の村上宗隆との対戦だ。このイニングさえ凌げば負けは消えるという局面。6番手・藤嶋健人がテンポよくツーアウトを取り、打席には4番・村上。5番のオスナは既に退いており、ネクストには今季2本塁打の内山壮真、ベンチでは川端慎吾が待機していた。 もし一発打たれれば致命傷に繋がるわけで、セオリーに従うならば敬遠一択だっただろう。しかしベンチは勝負を選択した。左の福敬登をあらかじめ用意し、万全の態勢でこの日最後の “神様退治” に臨んだのである。先発・小笠原慎之介がカーブで翻弄して最初の2打席こそ三…

  • 心地いい緊張感の中で〜村上vs大野雄大 極限バトル

    ○8-0東京ヤクルト(22回戦:バンテリンドーム) 息子がライオンズ戦を見たがっていたので週末のベルーナドームのチケットを取ろうとしたところ、目ぼしい並び席はすでに完売。ひとり席がちらほらと残っているだけだった。 あぁ、そうか。優勝を争うチームにとって、この時期は激しい首位攻防戦の佳境も佳境なのだ。秋風吹けば消化試合というシーズンを10年も続けているうちに、季節感を失っていたことにハッと気付かされた。本来ならプロ野球観戦が最も楽しい時期だというのに……。 この時期のバンテリンドームは、最終戦を除いて閑古鳥が鳴くのが恒例となっている。ところが今夜はプレイボールがかかって間もなく7,8割が埋まる活…

  • 今だから考える~福留孝介、社会人野球での3年間~

    「よっしゃー!!」 1995年のドラフト会議にて、近鉄・佐々木恭介監督の声が会場に轟いた。しかし7球団の抽選の末、この年の目玉である福留孝介(PL学園)の交渉権を獲得したにもかかわらず、その声にはどことなく虚しさが漂う。 話題の超高校級スラッガーはドラゴンズ、もしくは巨人入りを熱望。それ以外は入団を拒否し、社会人入りする意向を表明していたのだ。 翌日のスポーツ紙には、高校の先輩・清原和博がプロ入りを勧める見出しが踊り、逸材の動向は国民的関心事となった。近鉄も必死の説得を続けたが、18歳の意志が揺らぐことはない。 「初志貫徹」 少年の拘りを思えば驚くことではない。特にドラゴンズは憧れの立浪和義が…

  • 三振45% 本塁打0.5%〜だから石垣雅海はおもしろい

    ○3-2DeNA(21回戦:バンテリンドーム) 日々辛辣なバッシングを受け続ける立浪監督だが、若手の積極起用に関しては素直に評価すべき点だろう。誰が監督でも頭角を表していたであろう天才・岡林勇希は別として、土田龍空がショートで50試合近く先発出場という状況は、思い切りのいい立浪でなければ難しかったのではなかろうか。 怪我が惜しまれるが、石川昂弥と鵜飼航丞の起用も明確な意志を感じるものだったし、二軍暮らしが長かった石橋康太を二番手捕手まで引き上げたのも貴重な功績だ。そしてこの日久々に先発出場した石垣雅海もまた優先的にチャンスを与えられた選手の一人である。 昨年までの最多出場は2020年の25試合…

  • 守り勝つ野球とは〜高橋宏斗見殺しの罪

    ●0-1DeNA(20回戦:バンテリンドーム) なぜ投手の一世一代の好投を、高揚感ではなく苛立ちと共に見守らなければいけないのか? 完全試合をやりかけた大野雄大の時もそう。マツダスタジアムで8回途中まで無安打無失点ペースだった高橋宏斗の時もそう。そして今夜、高橋は再び偉業に向けて快進撃を続けていた。パーフェクトこそ5回表に四球を許して途絶えてしまったものの、依然として “ノーノー” は継続。投げるたびに進化するハタチの凄みにファンは酔いしれ、「今夜こそ」という期待と機運は高まるばかりだった。 しかし、どれだけ高橋が圧巻の投球を見せようとも味方が点を取らなければ水泡に帰してしまうのが野球のルール…

  • 清算にはまだ早い〜熱さ失った甲子園ラストゲーム

    2006年のドラゴンズは分厚い選手層を背景として圧倒的な強さを見せつけた、と語られがちだ。まあ間違いではないし、擦りに擦られてきた「10.10」の優勝試合を振り返れば、あの年の強さはリアルタイム世代ではないファンにも容易に伝わるはずだ。 確かに強かった。あの強さは球団史上最強といっても過言ではない。ただ、決してペナントレースを “圧倒” したわけではなかった。それは優勝時期が10月10日までずれ込んだことにも表れている。それどころか、8月12日に早々とマジック40を点灯させながらも2位阪神とのゲーム差はじわじわと狭まり、9月29日には遂に後半戦以降、最接近となる2.0差まで追い詰められてしまう…

  • 勝ち運なき勝野

    ●0-5阪神(24回戦:甲子園球場) 負けた。勝野がまた負けた。いや、また勝てなかったと言うべきか。これで昨年から続く勝野昌慶の「連続先発機会白星なし」は19登板に伸びた。最後に勝ったのは昨年4月28日の阪神戦。6回1/3を無失点という文句なしの投球でチームトップとなる3勝目をマークしたのが、この日だった。 勝野のキャリア最多は2020年に挙げた4勝である。春先に幸先よく3勝したことで誰もが更新を確信し、更なる飛躍を期待した。同期入団の根尾昂があまりにも話題を集めたため隠れがちだが、勝野も即戦力と目されてのドラフト3位指名であり、3年目ともなれば二桁勝利くらいは堂々と狙ってもいい立場だ。 その…

  • 狂気の左腕〜小笠原慎之介に眠る鬼

    ○5-2巨人(22回戦:東京ドーム) 好投するたびに褒めるのも芸が無いが、それだけ小笠原慎之介の覚醒はドラゴンズファンにとってスペシャルな出来事なのだ。 前回のヤクルト戦では8回途中まで投げて8安打1失点と、粘りの投球で7勝目をマーク。2年連続の規定投球回到達、そして自身初となる二桁勝利も視野に入ってきた。小笠原といえば以前からビジターでの強さが持ち味だったが、今季もホーム防御率3.68に対してビジター2.24と極端な差が表れている。 この日は東京ドームの今季ラスト試合。小笠原にとってはプロ初完封を記録した思い出の地だが、今季は19登板目にして初お見えとなる。奇しくも相手先発は同じサウスポーで…

  • 崩した相性、崩れた相性

    ●1-3巨人(21回戦:東京ドーム) 誰にだって相性の良し悪しがあるが、それはプロ野球選手とて例外ではない。ただし彼らの場合はグラウンドでのコミュニケーション、すなわち対戦成績という形で表れる。 古くは1998年、川上憲伸が同じルーキーの高橋由伸を相手に22打数1安打とほぼ完璧に封じたことがあった。シーズン成績は両者互角ながら、この “直接対決” の戦績が決め手となり、川上が新人王を受賞。圧倒的な人気を誇る巨人の新スターを破っての受賞は、中日ファンに大きな希望と勇気をもたらした。 一方、その川上がプロ生活を通じて苦手としたのがヤクルト時代のアレックス・ラミレスだ。最優秀防御率を獲った'02年で…

  • 福留孝介引退に寄せて〜「ありがとう」と伝えたい

    ◯2-0広島(23回戦:バンテリンドーム) 涙をこぼすわけでもなく、情に刺さるようなフレーズもなく。飾らず、気取らず。飄々と、淡々とした受け答え。これぞ福留孝介という引退会見だった。 多くの人たちにとってそうであるように、福留は私にとっても非常に思い入れの強い選手の一人だ。1999年の鮮烈なルーキーイヤー、'02年の松井秀喜とのデッドヒートを制した首位打者獲得、'06年の優勝を決めた一打、'07年の旅立ち、そして'21年の14年ぶり古巣復帰……。 その全てを “中日ファン” として共有できたのはとても幸せなことだし、福留は間違いなく21世紀のドラゴンズにおける最大のスターだった。 会見で福留は…

  • ツキを生かせない弱さ〜福敬登、痛恨の2球目

    ●1-3広島(22回戦:バンテリンドーム) 転がり込んだツキをみすみす手放すことほど悔しいものはない。今夜のゲーム、ツキはどう考えてもドラゴンズに向いていた。初回、岡林勇希の四球から暴投、タイムリーで鮮やかに先制し、さらに阿部寿樹も6球粘って四球。制球のままならない森翔平を攻め立て、この回いったい何点取れるのだろうかと胸躍らせたのは私だけではないはずだ。 ところが歴史的な貧打にあえぐ打線は、ここで急ブレーキをかけてしまう。ビシエド、アリエル、木下拓哉が倒れて追加点ならず。このシチュエーションで4,5,6番に回り、攻略どころか相手を蘇生させてしまう打線は球界広しといえどもドラゴンズくらいのものだ…

  • がんばれ中スポ!〜西日本スポーツ発行休止の衝撃

    ●2-4広島(21回戦:バンテリンドーム) 西日本スポーツが来年3月末で紙面発行休止へーー。日本列島を駆け巡った衝撃の一報はたちまちトレンド入りし、多くの野球ファンを動揺させた。 古くは1950年に一年間だけ「西日本パイレーツ」というプロ球団を持ったこともある老舗中の老舗。その後は長きにわたり西鉄ライオンズの報道を主軸に据え、'89年の福岡ダイエーホークス誕生以降は一貫してホークス情報に力を入れてきた。まさしく九州におけるプロ野球の歴史そのものとも言える存在だ。 その西スポが、他誌に先んじてウェブ一本化を図るという。新聞絶滅の危機が叫ばれるようになったのは何もここ数年というわけではなく、既にゼ…

  • 先週のナイスプレー!(8/30~9/4)

    基本的に月曜日はゲームがない移動日、と言うことで「先週のナイスプレー!」という企画を行っている。今回は8/30~9/1のDeNA戦、9/2~4のヤクルト戦の中からピックアップした。 投手部門:全球ストレート!プライドで抑えたR.マルティネス(9/4 ヤクルト戦) 首位をひた走るヤクルトの原動力となっているのは、言うまでもなく4番の村上宗隆だ。この3試合でもしっかり2本塁打を記録し、令和初の三冠王に向けて着実に数字を伸ばしている。 その村上に対して2夜連続9回の先頭打者として対峙した竜の絶対的守護神・R.マルティネス。前日3日の試合では5球ストレートで押した後、勝負球のスプリットを打ち返されてし…

  • ゴロ2本〜祖父江大輔の渋い働き

    ○6-3東京ヤクルト(21回戦:明治神宮野球場) 狙って三振を取れる投手は強いと、高橋宏斗の投球を見ながらつくづくそう感じた。 ハイライトは4回裏だ。この回無死から2連打を浴びて失点。なおもランナー二塁という場面で打席には村上宗隆。第1打席ではストレートの四球を与えているが、ここでも無理せず勝負を避けるという選択肢は十分考えられた。いくら後続の打者が強力とはいえ、それで痛い目に遭ったことがこれまでに何度あっただろうか。 ピンチでの村上勝負が無謀であることは分かりきっている。ましてリードは1点。一発出ればたちまち逆転という場面だが、それでも高橋は果敢に挑むことを選んだ。高橋20歳に対して村上22…

  • 辿り着いた完成形〜これぞ小笠原というシビれる投球

    ○5-1東京ヤクルト(20回戦:明治神宮野球場) 人間誰しもがいずれは老いる。老いれば思い通りに身体が動かなくなり、おのずとモデルチェンジを図らなければならない時がやってくる。野球は選手寿命が比較的長い競技ではあるが、20代の時と同じパフォーマンスを30代半ばに求めるのは酷だし、スピードボールを武器とする投手は一度でも肩肘を故障してしまうと、同じスタイルをその後も貫くのはほとんど不可能に近い。 そうは言っても「スタイルを変える」というのはとても勇気が要ることだ。何しろ過去のやり方を否定するところから始めるのだから、プライドや成功体験が邪魔をして意固地になるのも無理はない。 “中年”と呼ばれる年…

  • 名勝負数え歌〜夜空を切り裂いた50号と、大野雄大の意地

    ●0-5東京ヤクルト(19回戦:明治神宮野球場) 「行ったああああああ」 打った瞬間それと分かる打球が夜空に舞い上がった瞬間、私の心の内では悔しさよりも何か、晴れやかさの方が優っていた。不思議な感覚だった。敵軍の先制本塁打に対して、こうした気持ちを抱くのは初めてのことかもしれない。まして消化試合ではなく、順位未確定のガチ勝負だ。本来ならあり得ない感情だが、相手チームのファンすらも魅力してしまう……それだけ村上宗隆が特別な存在だという証でもあろう。 事前の取材では「勝つためには逃げる」と宣言していた大野雄大だが、最強打者に立ち向かうという投手本能には逆らうことができなかったか。推測だが、30日の…

  • 突然の雨に打たれて〜上田洸太朗の強さと、ドラゴンズの弱さ

    ●DeNA(19回戦:横浜スタジアム) 雨曝しの横浜はどう考えても試合を続行できる環境ではなかったが、“大人の事情” というのはどんな時でも無理を押し通すものだ。計60分に及ぶ2度の中断を経て再開のコールがかかったとき、時計の針は既に19時を回っていた。 この調子だと試合終了は22時過ぎ。ブログを書き終えたら23時かぁ。「ジョジョ」6部を見るのは明日に延期かな……という私個人の都合なんかどうでも良くて、心配だったのは上田洸太朗の肩である。まだ19歳の上田にとって、これだけ長い中断は人生を通して初めての経験だったに違いない。 再開と中断を繰り返す不規則な状況で、約55分間の中断を経て再度プレイボ…

  • つれない夏の終わり〜本塁打0、怖くない4番打者

    ●2-3DeNA(18回戦:横浜スタジアム) 夏の終わりはなぜか切ない。あんなに鬱陶しかった猛暑も、寝苦しい夜も、今となっては少し懐かしい気さえする。毎週のように通った市民プールは一年間の閉園に入り、明日の朝には通勤電車もまた学生でごった返す日々が始まるのだろう。 いつのまにか夜になると鈴虫の鳴き声が聞こえるようになった。コンビニのお酒コーナーには秋限定ビールが並んでいる。こうした日常の些細な変化から季節の移ろいを感じられるのは、四季折々を持つ日本ならではの光景と言えるのかもしれない。 今年は3年ぶりに開催された祭りに手がけたという人もたくさんいることだろう。賑やかな祭囃子の音色を聞き、ようや…

  • シーズン最終盤、根尾はどこへ向かうのか?!

    ●0-6DeNA(17回戦:横浜スタジアム) 降りしきる大雨の中、甘く入った150キロのストレートをオースティンに完璧に捉えられ、背番号7は投げ終えた身体を打球の飛んだ方へ向け、その行方をただ眺めていた。 残り試合、根尾の今後はどうあるべきか 根尾昂がウエスタン・リーグで「投手デビュー」を果たしてから4ヶ月。華々しい1軍投手デビューを経て、もがき苦しんでいる。 ピッチャーとしての実力が不足しているという訳ではない。これまで上手くいっていた歯車が噛み合わなくなり、その軋轢が大きくなって今に至っている。そこに輪をかけて夏場の疲労が根尾を襲っているという構図だ。 それがシーズン途中の投手転向となれば…

  • 哀しきワンサイドゲーム〜負け癖に打ち勝つために

    ●0-6DeNA(17回戦:横浜スタジアム) 降りしきる大粒の雨。もしこれがシーズン序盤であれば間違いなく試合中止か、降雨ノーゲームになっていただろう。今となっては、できればそうなって欲しかったと溜め息を吐くことしかできない。 今季まだ3勝しかしていないDeNA戦だが、内容を見ても紙一重ではなく一方的にやられるゲームが目立つ。決して偶然ではなく、必然であることを数字が雄弁に物語る。38得点に対して61失点、6本塁打に対して13被本塁打、端的に攻撃力を示すチームOPSは.543と、野手、投手ともにこのカードでは極端に弱体化してしまうのだ。 DeNAといえば本拠地17連勝という信じられないような快…

  • 先週のナイスプレー!(8/25現地版)

    基本的に月曜日はゲームがない移動日、と言うことで「先週のナイスプレー!」という企画を行っている。今回は現地観戦した8/25の巨人戦からピックアップした。 投手部門:状態は上向き、福敬登のパーフェクトピッチング 先発の高橋宏斗が7回2失点の好投で、この日の中日の話題を掻っ攫った。戸郷翔征との投手戦は令和における川上憲伸VS上原浩治を彷彿とさせるような、非常にハイレベルな投げ合いとなった。 さて、その高橋宏斗がマウンドを降りた8回、バトンを受け継いだのが福敬登だった。3年連続で50試合登板を重ねた左腕も、ここ数年の勤続疲労から今年は本調子になれない日が続いている。3年間で72のホールドポイントを稼…

  • クリーンヒット〜柳裕也を変えた痛恨の一撃

    ○4-1阪神(23回戦:バンテリンドーム) いつもより丁寧に靴紐を結び、まっさらなマウンドに上がる。その表情は、心なしか緊張しているようにも見えた。2週間ぶりの登板となった背番号17、柳裕也である。一球一球、確かめるように投げるその姿は、まるでプロ登板のルーキーのようでもあった。 奇しくも阪神先発は文字通りプロ初登板のルーキー・森木大智。しかし150キロ超のスピードボールをテンポ良く投じる森木に対して、むしろ柳の方が慎重になり過ぎていた感さえあった。 6回5失点と試合を壊し、2年ぶりのファーム調整を命じられたのが2週間前のこと。前年の投手二冠がこの時期に、怪我でもないのにファーム落ちするという…

  • 隣から見ても青くない芝生〜ビシ40本打法は何処へ…

    ●1-5阪神(22回戦:バンテリンドーム) 隣の芝生は青く見える、と言うが果たしてそうだろうか。阿部寿樹、ビシエド、溝脇隼人で組むクリーンアップはどう考えても火力が弱く、敵の立場から “青く” 見えているとは到底思えない。 3人合わせて11本塁打97打点。燕の4番とは比べるべくもなく、12球団見渡してもワーストぶっちぎりの貧打線は、いかにもチームの惨状を物語っている。長らく5番を打った木下拓哉を二軍へ落とし、レビーラは現状バットに当たる気配すらない。人材不足はその通りだが、それにしたって新興球団でももう少しマシなクリーンアップを組めるのではないのか?……というわけで、2005年楽天の8月27日…

  • 掴もうぜレギュラー〜土田龍空19歳の挑戦

    ○5-2阪神(21回戦:バンテリンドーム) 昨夜の巨人戦を終えてどこか虚無に襲われたのは、二度の満塁を活かせなかったことよりも、9回無死一塁でのバント失敗ダプルプレーがあまりにも痛かったからに他ならない。その当事者である土田龍空は、ナゴヤに移動したこの日さっそく早出のバント練習を行ったという。 里崎智也氏いわく「バントが上手なプロ野球選手などいない」。なぜなら、アマチュアでバントを命じられるような選手はそもそもプロにはなれないので、プロ野球の選手はプロに入って初めてまともにバントの練習をするのだと。 目から鱗だった。たしかに浅野翔吾(高松商)や内藤鵬(日本航空石川)がバントをしているシーンは見…

  • 巨人を最下位に突き落とせ!③〜エース高橋宏斗、間合いの妙

    ●1-2巨人(20回戦:東京ドーム) プロ2年目と4年目によるバチバチと音が聞こえてきそうな次世代エース同士の投げ合いは、ハーラートップタイを走る戸郷翔征に軍配が上がった。試合終了の瞬間、東京ドーム内に響き渡る「敗戦投手・高橋宏斗」という無情のアナウンス。 また勝ちを付けることができなかったか……。相次ぐチャンスをことごとく潰した打線に対して、言いたいことは山ほどある。特にバッティングを期待されて先発起用されながら、3打席3三振に倒れた福田永将については……溜め息しか出ない。ただ、負け試合にもかかわらず充実感があるのは、高橋宏斗という逸材の底知れぬポテンシャルをあらためて確認できたからだろう。…

  • 巨人を最下位に突き落とせ!②〜ビジター男の投球術

    ○4-1巨人(19回戦:東京ドーム) イヤだな〜、イヤだな〜と。心の中の稲川淳二がざわつき始めたのは、3回表を終えた時の事だった。印象の割に、点数が少なすぎるんですよねぇ〜と、淳二がギョロリとこちらをにらむ。 3回終わって早くも6安打。さらにパスボールやら送球エラーが重なり、間違いなく試合はドラゴンズ優勢で進んでいた。サッカーでいう「支配率」で表せば、9割方はこちらが主導権を握っていた感覚だ。 ところが、である。肝心の得点はわずか3点止まり。もう5,6点は取っていてもおかしくないほど攻めまくっているように思えて、実は大して効率よく得点できていなかったわけだ。結局、序盤でノックアウトできそうだっ…

  • 巨人を最下位に突き落とせ!①〜天敵中田翔

    ●0-6巨人(18回戦:東京ドーム) お盆過ぎれば涼しくなる。たしかに先週あたりから、朝夕の空気の変化を肌で感ぜられるようになった。窓を開けたときに入ってくる風が、まとわりつくような熱風ではなく、ひんやりとした秋風のそれなのだ。 ビデオ考古学者のコンバットRECさんの言葉に「8月過ぎたら消化試合」というのがある。なるほど、言い得て妙だ。一年の移ろいの中で、9月にもなればいつの間にやら冬になり、気づけば年の瀬になっているものだ。秋というのは、一年の総括に突入する季節なのかも知れない。 プロ野球も9月に入った途端、たちまち消化試合の色合いが濃くなる。もちろんそれは熾烈な優勝争いと表裏一体なのだが、…

  • 先週のナイスプレー!(8/16~8/21)

    基本的に月曜日はゲームがない移動日、と言うことで「先週のナイスプレー!」という企画の行っている。今回は8/16~18の広島戦、19~21のヤクルト戦の中からピックアップした。 投手部門:悪いなりにゼロを刻んだ、根尾の2イニング目(8/20 ヤクルト戦) この日の根尾昂は明らかに本調子ではなかった。ストレートも150キロに届かなければ制球も少しずれ、キャリア初の1イニング複数与四死球。ゴリ押しで討ち取ってきたパワーピッチングがミートされ粘られ、ギリギリのラインに打球を運ばれて1失点。8回の1イニングを終わらせるのに22球を要してしまった。 そんな酷いマウンドでも、8回の裏の攻撃時に根尾はベンチ前…

  • 戦術としての「逃げ」〜上田洸太朗に備わる“程よい割り切り”

    ○5-2東京ヤクルト(18回戦:バンテリンドーム) “飄々” という言葉が似合う投手がドラゴンズに現れたのは、とても喜ばしい事である。売り出し中の2年目サウスポー・上田洸太朗は、ピンチになろうが村上宗隆を迎えようが顔色ひとつ変えずに淡々とボールを投げる。これは本人の性格もさる事ながら、石井一久とか涌井秀章の系譜に連なる “タレ目” の特権なのではないかと思われる。 表情だけではなく、程よい割り切りが備わっているのも上田の評価すべきところだ。初回2死二塁、先制のピンチでその村上を迎えた場面を思い出して欲しい。当代最強打者との対戦……男であれば誰しもが奮い立ち、チームの勝利を脇に置いてでも白黒付け…

  • 破壊の美学〜村上宗隆の襲来

    ●2-7東京ヤクルト(17回戦:バンテリンドーム) 怪獣映画の白眉は都市破壊シーンにある、といっても過言ではない。東京に現れた初代ゴジラが国会議事堂を壊したとき、映画館の観客から歓声と拍手が沸き起こったというのは有名な逸話だ。『シン・ゴジラ』ではうねうねと移動する通称「蒲田くん」が下町を無惨に壊しまくるシーンが話題を呼んだ。 東京タワーに繭を張り、成虫へと羽化したモスラをはじめ、シリーズを通してキングギドラやラドンといった大怪獣たちは六本木ヒルズ、さっぽろテレビ塔、みなとみらい、名古屋城、福岡タワー等々、日本中の100万都市に出現しては執拗にランドマークを破壊し、その “勇姿” は怪獣映画の見…

  • 新時代とマルチタレント

    ○4x-3東京ヤクルト(16回戦:バンテリンドーム) 「厳しい言葉ですけど今までのレギュラーだと勝ててなかったわけです。(今まで)Aクラスにギリギリ入るようなチーム状況だったので、勝てるチームのレギュラーを作っていかなきゃいけないと立浪監督は考えていると思っています」 8月14日放送回の『サンデードラゴンズ』のなかで、若手を積極起用する立浪監督の意図を谷繁元信はこう説明したそうだ。谷繁が監督を務めた時期(2014-16年途中)も過渡期とは呼ばれていたものの、衰えるベテランに対してその座を脅かすような若手の台頭はほぼ無いに等しく、かろうじて高橋周平が頭角を現した、そんな時代であった。 あの頃に比…

  • 表情観察〜三好大倫、淡々と三塁打を放つ

    ○6-1広島(20回戦:MAZDA Zoom-Zoom スタジアム 広島) 最近はプロ野球を楽しむにも映像は観ずに、スポナビの速報だけで済ませるというスタイルも定着しつつあるように思う。会社帰りの通勤電車、隣の席のサラリーマンがスポナビ速報をチェック……という場面にしばしば遭遇する。 ひいきのチームが勝っていれば帰宅してから中継を観たり、夜のスポーツニュースを梯子するのも乙なものだが、ボロ負けでもしようものなら観る気も起こらないのが普通の感覚だと思う。私はブログを書いている手前、どんな試合でも一通り映像をチェックするわけだが、確かに負け試合を観るのは苦行に近いものがある。 ただ、勝とうが負けよ…

  • レビーラ成長譚〜キューバ産エンタメを楽しむ

    ●0-1x広島(19回戦:MAZDA Zoom-Zoom スタジアム 広島) 昔テレビ愛知でやっていた『TVチャンピオン』が好きで、よく観ていた。内容は2パターンあって、和菓子選手権やプラモデル選手権のような職人技術を競う回。一方、私が好きだったのは特撮選手権とかユーミン選手権(ウソじゃない、本当にあったのだ)のようなカルト知識を競う回だった。今にして思えば、プロ野球の遥か昔のできごとを調べてはニヤニヤするという私の変態的性分は、あの番組によって培われたものだったのかも知れない。恐るべし、テレビ愛知。というかテレ東。 で、番組のラストではチャンピオンに輝いた人がスタジオに登場し、田中義剛と松本…

  • 悲壮感すら漂わせ〜柳裕也の苦悩

    ●0-5広島(18回戦:MAZDA Zoom-Zoom スタジアム 広島) どうにもこうにもピリッとしない。今季の柳裕也の投球である。京セラドームでは若手の躍動で阪神をスイープし、3連勝で迎えるは敵地の広島戦。実は立浪ドラゴンズは「4連勝」が壁となっており、今季は4月に二度(1〜5日、7〜14日)記録したのを最後に、3連勝での “打ち止め” が続いている。 借金を少しでも減らすためにはカード勝ち越しを続けるか、大型連勝するかの二択に絞られる。そのどちらもできないから最下位に甘んじているわけだが、ここにきてチーム状態は上がってきており、今度こそは4連勝行けるぞと。これを足掛かりに我が軍も待望の大…

  • 先週のナイスプレー!(8/9~8/14)

    基本的に月曜日はゲームがない移動日、と言いたいが9連戦明けの移動日ということで「先週のナイスプレー!」という企画のお時間です。今回は8/9~11の巨人戦、12~14の阪神戦の中からピックアップした。 投手部門:昨年からの進歩を確実に見せた、小笠原の7イニング(8/13 阪神戦) 最高の投手戦だった。藤浪晋太郎との投げ合いになったこの日、小笠原慎之介は甲子園優勝投手の先輩に一歩も引かない好投をみせた。7回119球、11奪三振は見るものすべてを引き込むナイスピッチングだった。 昨年、初めて規定投球回に到達した左腕は今シーズンいきなりのコロナ陽性を受けて戦線離脱を余儀なくされた。勝っては負けての繰り…

  • ジャンピングスクイズ失敗を招いた、中日首脳陣の頭脳と木下拓哉の技術力

    ○5-4阪神(20回戦:京セラドーム大阪) 勝敗を分けた9回表の “あのプレー” を言語化するとしたら、「ジャンピングスクイズ失敗・暴投・盗塁・ホームスチール」とでも表すのが適当であろうか。なんのこっちゃ分からないが、あの一球で本当にこれ全てが起こったのは紛れもない事実だ。 1死一、三塁。打席には最高の切り札・木下拓哉。満塁には弱いが、決してチャンスに弱いわけではない。ドラゴンズとしても、木下で決められなければ諦めがつく。そういう存在だ。 だからこそ、この局面で大いにあり得る「スクイズ」の選択肢は、少なくとも私の中では5%程度しか想定していなかった。つい2日前に豪快な本塁打を打ったばかりの強打…

  • ドラゴンズ、始まったな〜風か魔かリューク

    ○4-0阪神(19回戦:京セラドーム大阪) 岡林勇希と土田龍空。このW若竜の名を、阪神ファンは嫌でも脳髄に叩き込まれたに違いない。 甲子園V投手同士のマッチアップとなったこの試合、最初にピンチを迎えたのは小笠原慎之介だった。4回表、無死二、三塁。「得点確率」の指標によると、この状況で得点が入る確率は80%を超えるそうだ。まして、打席には佐藤輝明である。最低でも1点は覚悟。あるいは……という場面だが、緩急を巧みに駆使する小笠原は、この窮地をなんと3者連続三振でみごとに切り抜けたのだった。 覚醒した若きサウスポーの躍動に震えた。心の奥底から震えたのだが、そんな小笠原の更に上をいくのが今夜の藤浪晋太…

  • エースの証明〜マダックスもならずも……大野雄大、完封

    ○4-0阪神(18回戦:京セラドーム大阪) 敗軍の将・矢野監督は試合後、この日の攻撃に関して「何もできなかった」と振り返った。何もさせなかったのは背番号22、ドラゴンズのエース・大野雄大である。 “エース” の定義は実にあやふやだ。トランプの「A」で表示される1の札。転じて「チームの柱となる投手。主戦投手」と辞書にはある。古くは金田正一、稲尾和久などが泣く子も黙る大エースとして知られる。しかし彼らほどの確固たる存在は稀で、多くの場合はシーズンによってその称号を持つ投手はコロコロ変わるというのが実情だ。 この点については、落合博満も自身のYouTubeチャンネルで指摘しており、曰く「今の野球界は…

  • 場当たり的〜京田陽太の明日はどっちだ

    ●1-6巨人(17回戦:バンテリンドーム) シーズン100試合目。繋がらない、決め手に欠ける打線は改善の兆しすら掴めぬまま淡々と試合数を重ね、この日もルーキー・山﨑伊織の前に4安打1得点に封じ込まれる「いつもの貧打」で、3万の観衆を集めたバンテリンドームには溜め息が充満した。 借金13で最下位に沈む立浪ドラゴンズだが、これまでの戦いを通じて目立つのは、立浪監督による “チャレンジ精神旺盛な起用” だ。開幕当初からその傾向は顕著だった。石川昂弥の開幕スタメン、鵜飼航丞の積極起用に始まり、根尾昂の投手転向や、最近ではレビーラ、ガルシアの支配下登録、土田龍空のショート起用など……。 大抵の監督が「誰…

  • 満塁・木下拓哉の苦悩は続く

    ●1-2巨人(16回戦:バンテリンドーム) ライデルで負けた。俺たちのライデルが打たれた。7回1失点の上田洸太朗に白星をプレゼントする事ができなかったどころか、負け試合になってしまうなんて……。 9回表ツーアウト。どう考えても本塁打しか狙っていない中田翔に対して、5球連続ストレートで勝負に行ったのは不用意と言わざるを得ない。ちなみに昨夜の対戦ではスプリットで空振り三振を奪っている。カウント1-2とまだ遊べる状況だっただけに、力勝負を仕掛けたのは安易ではなかったか。 まして、相手は中田翔である。力と力による殴り合いには絶対の自信を誇る番長キャラだ。そういう相手にこそ真っ向から挑みたくなるのが勝負…

  • 野球の華〜チームを救った土田龍空の好プレーと、レビーラの打球

    ○3-2巨人(15回戦:バンテリンドーム) 以前から何度も書いているが、私はホームランテラス賛成派である。理由は単純で、その方が楽しいから。エンターテイメントは客を退屈させた時点で負けなのだ。 「ホームランは野球の華」とはその通りで、ファンの心に何十年も残る名場面というのはホームラン絡みのシーンがほとんどだ。ドラゴンズでいえば、落合博満が斎藤雅樹から打ったサヨナラ弾だったり、タイロン・ウッズの満塁弾だったり……。範囲をプロ野球に広げても、天覧試合の長嶋茂雄サヨナラ弾、WBCの「蘇れ、福留!」などホームラン目白押し。 ちなみに私自身、子供の頃に観に行ったナゴヤ球場の試合ではっきりと覚えているのは…

  • スーパースターになるために

    ここ数週間は出張準備、出張、そして出張後対応と多忙でなかなか野球観戦に時間を割けずにいます。開幕から続けていた「先週のナイスプレー!」も盆休みの帰省のため一旦中断とさせていただきたいと思います。 先週は守備の乱れが多く発生しました。特に8/3(水)のヤクルト戦では、大島洋平が6打数6安打という結果を残しながらも試合に敗れ、かつ試合後の監督談話では大島の守備のまずさを指摘されるというフラストレーションの溜まる試合になりました。 私はこの日の帰宅が23時過ぎと全く試合を追えなかったのですが、帰りの電車で見たハイライトや動画でいくつかのシーンを確認しました。その中の一つに、サンタナが打ち上げた飛球を…

  • 抑止力60号〜チームと高橋を救った岡林のミラクル返球

    ○5-0DeNA(16回戦:バンテリンドーム) 夏の甲子園は愛工大名電が2回戦に駒を進めた。15安打14得点の猛打もさる事ながら、中日ファンとしてはやはり岩瀬仁紀の息子・法樹の登板には心躍るものがあった。意図的に演出したわけではあるまいが、父親さながら9回にマウンドに上がり、試合を締める姿には感慨が込み上がってきた。 一方、初戦を戦った八戸学院光星にはかつてドラフト2位でドラゴンズに入団した洗平竜也の息子・歩人が登場。制球を乱す場面もあったが、2イニング1失点の投球でチームの勝利に貢献した。 次戦では、なんと両校の直接対決が実現。岩瀬vs.洗平の投げ合いなんて事になれば、古参ファンは涙なしには…

  • 逆方向アーティスト〜一瞬声を挙げてしまった平田良介の右飛

    ●0-1DeNA(15回戦:バンテリンドーム) スポナビの「連載:2004年・新人監督落合博満」。第6回に登場した証言者は、当時スカウト部長を担当していた中田宗男。 落合は自らが課すハードな練習に耐え得る選手を求めたため、必然的に発達途上の高校生ではなく、ある程度体が完成している大卒、社会人を指名するケースが多くなったのだという。 2004年ドラフトではスカウト陣が推す「本命」に落合監督が首を縦に振らず、結果的に社会人の樋口龍美を1巡指名。12巡目まで大量11人を獲得し、全員が大社卒という極端なドラフトになったのも落合の意向が強く反映された結果であろう。 しかし2005年からいわゆる分離ドラフ…

  • 忘れ物と決別する夏

    104回目の夏がやってきた! 開会式の入場行進はいつの時も特別だ。今大会はプロ野球選手とつながりのある選手が数多くいる。ドラゴンズファンから熱い視線を集めるのは、岩瀬仁紀を父に持つ岩瀬法樹(愛工大名電)だ。 父とは異なる右投げだが、決め球は勿論スライダー。愛知大会・準決勝での好リリーフがなければ、愛知の名門が聖地の土を踏むことはできなかったかもしれない。 甲子園では、リリーフ投手としてエース左腕・有馬伽久を助けることになるだろう。現在の高校野球では、ハイレベルの複数投手を擁することは勝ち抜く上で必須。上位進出した際は、重要な場面で登場することも大いにある。 岩瀬親子だけじゃない! 元ドラ選手を…

  • オトナの分別〜大野雄大が泣いた夜

    ●2-4DeNA(14回戦:バンテリンドーム) オトナとは何ぞや、について考えてみた。タバコを吸う事、 酒席のマナーを心得ている事、休日はゴルフ接待に出かける事、ジャンプではなくビッグコミックや漫画ゴラクを愛読している事、カラオケの十八番が「酒と泪と男と女」である事……etc. 子供の頃に漠然と思い描いていた “オトナ像” に、いざ自分が大人になって近づけているかと言えば、正直なところ全然だ。何なら趣味嗜好は10代の頃から大して変わっていないし、未だにジャンプは毎週欠かさず読んでいる。そりゃたまには酒を飲まきゃやってられない夜もあったりするが、だからと言ってスナックやキャバクラでチーママ相手に…

  • 足りないのは技術か、執念か〜岡林勇希の失敗

    ●7-9東京ヤクルト(15回戦:明治神宮野球場) まるで記録のバーゲンセールだ。村上宗隆の5打席連発に続き、今夜は大島洋平が6打数6安打の球団新記録を打ち立てた。NPB全体で見ても1試合6安打以上は史上8人目という、歴史的な固め打ちである。こんな夜は勝って大島の打棒を称賛したかったが、なかなか現実はうまくいかないものだ。 しかも6安打以上の過去7例は、いずれも打った選手の所属するチームが二桁得点を挙げて大勝を飾っている。一桁点数も初なら、負けるのも初。ある意味で「屈辱的な敗北」と言ってもよかろう。 打ちも打ったり16安打。それでも押し切られたのは、ひとえに拙守が響いたからに他ならない。1点ビハ…

  • 勝負を挑みたくなる打者〜粉砕された柳裕也の意地

    ●0-5東京ヤクルト(14回戦:明治神宮野球場) またしても村 “神” 宗隆が球史に名を刻んだ。おととい阪神戦での3打席連続から引き続いて、この日は柳裕也から2打席連続アーチ。これで通算5打席連続本塁打の日本新記録樹立となった。これまで四死球を挟まない4打席連続本塁打は王貞治、R.バースをはじめ13人が記録しているが、5打席連続はMLBを含めて史上初の快挙だという。 ドラゴンズがその当事者となったのは不運である。今夜の映像は未来永劫、村上の凄さを物語る資料として機会があるごとに繰り返し再生させることになるだろう。そのたびに、両手を膝についてうな垂れる背番号17の姿を我々は目にするのだ。王貞治に…

  • 職人魂〜四球もぎ取った大島洋平の働き

    ○6-5広島(17回戦:MAZDA Zoom-Zoom スタジアム 広島) 一進一退のシーソーゲームは、4時間を超える激闘の末にドラゴンズが制した。互いに死力を尽くした好ゲームに勝てたのは嬉しい。ただ、いま私は勝利の余韻に浸るよりも、少しの怒りを引きずりつつこの文章を打っている。 事件が起こったのは9回裏ツーアウト。1点差に迫られ、なおも走者一、三塁という文字通りのクライマックスである。打席の坂倉将吾といえば昨季、ライデルがこの球場で劇的サヨナラ弾を喫した張本人である。その天敵を簡単に変化球で追い込むと、1球外してカウント1-2。ここでバッテリーはスプリットを選択し、キレ味鋭い縦変化に坂倉のバ…

  • セオリーは破るためにある〜「カウント3-0」からのファウル

    ○3-0広島(16回戦:MAZDA Zoom-Zoom スタジアム 広島) 両軍無得点で迎えた5回表。打球は静寂を切り裂くように高々と舞い上がると、そのままレフトスタンドの後方へと消えていった。打った瞬間それと分かる驚愕の弾道を放ったのは、まだ見慣れない背番号94ーーペドロ・レビーラその男である。 挨拶がわりとしてはこれ以上なく完璧な一発。浮いたスライダーとはいえ、失投を見逃さずに打てるのは一流打者の条件だ。さらに第4打席では、喉から手が出るほど欲しかった3点目を叩き出すタイムリーを放ち、初戦にしていきなりヒーローインタビューまで経験。藁にもすがる思いで支配下登録に踏み切った首脳陣の期待に応え…

  • SEASONS〜若手と4番の活躍で全てが噛み合った!

    サブスクで懐メロ漁りをしていた折、なんとなしに浜崎あゆみの「SEASONS」を聴いたのだが、ビックリするほどドラゴンズの境遇を歌っていて泣けてきた。ほとんどの人が頭ん中「??」だと思うので、解説しよう。まず最初のサビ。 今日がとても楽しいと 明日もきっと楽しくてそんな日々が続いてく そう思っていたあの頃 常勝軍団だった、かつてのドラゴンズ。毎年のように優勝争いを繰り広げるなど、体感的にはほぼ毎日勝っているも同然。このままいつまでも強い時代が続くのだろうと思っていたし、疑いもしていなかった。 いつか落合監督がいなくなっても、きっとのらりくらりとセ・リーグの上位には居続けるのだろうと。まさしく、「…

  • 真夏の祭典・都市対抗野球を観戦~武田健吾は元気でした~

    夏休みシーズンに入り、野球界はプロ・アマ問わず各所で熱戦が繰り広げられている。筆者もある日はプロ野球、またある日は高校野球へと現地観戦に勤しむ中、本日は都市対抗野球大会へと足を運んだ。 都市対抗野球は社会人のビッグトーナメントで、その名の通り「都市単位」で覇権を争う。この大会についてはk-yad君が書いたエントリーに詳しいので、読んでみてほしい。余談ではあるが、当大会は全試合東京ドームで開催されるため、真夏に空調の効いた空間で野球を観られる幸福感は最高だ。 お目当ては元ドラゴンズの…… 午後2時過ぎ、東京ドーム着。第2試合のENEOS対西濃運輸がちょうど始まる頃だった。お目当てはENEOSの補…

  • 先週のナイスプレー!(7/13~7/20)

    基本的に月曜日はゲームがない移動日、と言いたいが9連戦明けの移動日ということで「先週のナイスプレー!」という企画のお時間です。今回は7/13、14のヤクルト戦、15~17の阪神戦、7/18~20のDeNA戦の中からピックアップした。 投手部門:6回100球、「らしさ」を存分に発揮した上田洸太朗の先発マウンド(7/15 阪神戦) それはまるで先輩投手を見ているかのようだった。この日先発の上田洸太朗は北條史也に一発を浴び、致命的な逆転弾となり敗戦投手になってしまったが、これまでの登板の中で最も持ち味を出し切ったのではないか。 ストレートの球速こそ140キロそこそこではあるが、それに加えスライダー、…

  • 「投手・根尾」は「野手・根尾」を超えたのか

    ●4-6DeNA(13回戦:バンテリンドーム) 「さすが甲子園の優勝投手ですよ」 辛口で知られる解説者・権藤博氏も思わず唸ったのは、根尾昂の投球である。7回2死、打者ソトのところで福敬登からスイッチし、背番号7がこの日一番の拍手に迎えられて登場。5球でソトを空振り三振に打ち取る好投をみせた。 5点ビハインドという状況からファンサービス込みの起用かとも思われたが、根尾は8回表のマウンドにも立った。投手転向後初となるイニング跨ぎは、根尾が着実にステップアップしていることを感じさせる。長くリリーフを務める投手でも一筋縄にはいかないイニング跨ぎだが、これを難なくクリアしてしまうのだから、やはり根尾は非…

  • プロフェッショナル〜仕事の流儀を垣間見た、祖父江大輔の1球

    ○3-2DeNA(12回戦:バンテリンドーム) 小笠原慎之介はいつになく苦しんでいた。初回から明らかに制球がバラついており、ボール先行ないしスリーボールになる場面も少なくなかった。木下拓哉の盗塁刺に二度救われ、失点こそ2点で踏みとどまったが、5回投げて9被安打は本来の姿からは程遠い出来である。 それでも踏ん張れたのは、やはり味方のリードに守られたからだろう。いきなりの3ランで始まったこの試合。ビシエドの打球はいい角度で飛んでもフェンス最上部に阻まれることが多いが、この日は滞空時間の長い文句なしの本塁打だった。 めずらしく味方が先制点を取り、それも3点も入ったのがよほど嬉しかったのだろう。ビシエ…

  • たった2勝の最強投手〜犠飛で満足げな主砲にドロップキック

    ●1-2DeNA(11回戦:バンテリンドーム) プロ野球を見始めて25年以上経つが、高橋宏斗ほど完成度の高い投手がドラゴンズに現れたのは初めての事だ。川上憲伸や今中慎二も素晴らしいエース投手だったが、高橋ほど “規格外” という感じでは無かったし、これでまだ19歳という末恐ろしさを加味すれば、現時点で球団史でも十指に入る先発投手だといっても過言ではないだろう。 それこそダルビッシュとか田中将大とか、最近でいえば山本由伸とか……。大まじめに “日本のエース” を狙えちゃう逸材。このレベルの投手って意外とドラゴンズには少なくて、それこそ胸を張って当代最強エースと呼べたのは昭和30年代の杉下茂まで遡…

  • ルーク×龍空~異例の大抜擢に使いながら育てる覚悟を見た

    ●1-3阪神(17回戦:阪神甲子園球場) 昨夜の試合で高橋周平が脇腹を痛めて離脱。またアリエルも手首の痛みが再発し、立浪ドラゴンズはレギュラー二人が同時抹消という非常事態に見舞われた。今年はとにかく離脱者が多い。三塁は石川昂弥に続く負傷離脱だし、レフトもこういう時こそチャンスのはずの鵜飼航丞が離脱中と、踏んだり蹴ったりである。 それでも誰かを昇格させなければならない中で、この人選がサプライズだった。おそらく本人も驚いたのではないだろうか。何しろルーク・ワカマツの支配下登録、即日一軍昇格である。可能性の一つとしては想定していたものの、まさか本当にやるとは思ってもみなかった。また外野手の補充には後…

  • 永遠の野球少年〜平田良介カムバック

    ○3-1阪神(16回戦:阪神甲子園球場) 何事もせっかちは良くないと反省している。実は9回表、ライデルが出てきた時点で勝利を確信し、早々とブログを書き始めていたのだ。主題は清水達也で、8回裏の攻防について書くつもりだった。ところが1死三塁となって、ボテボテの打球は前進守備を敷いていたショート・土田龍空のグラブに。アウトだ! と叫んだのも束の間、身をよじりながらタッチをかいくぐった走者の方がわずかに早く、土壇場でまさかの同点に追いつかれてしまった。 リプレイで確認すると、土田がほんの一瞬握り直した分、送球が遅れていたことが分かる。とはいえ捕球までは完璧だし、ミスと言うほどのプレーでもない。それ以…

  • 鬼門に挑んだ19歳〜上田洸太朗に勝たせてあげたかった

    ●1-2阪神(14回戦:阪神甲子園球場) 「鬼門」といえば、阪神のナゴヤドーム嫌いはよく知られている。1997年の開場からとにかく負けまくり、初めてシーズン通して勝ち越したのは開場9年目の2005年のことだった。このシーズンの同球場での阪神の戦績は6勝5敗。五分で迎えた最終戦、勝ち越しを決めた中村豊(現・中日コーチ)の本塁打は今でも語りぐさになっている。 これで呪いが解けたかと言えばそうではなく、その後も昨季までの25シーズンで阪神が勝ち越したのはわずか5シーズンのみ。6勝6敗だった2015年を除き、実に19シーズンでドラゴンズが勝ち越している。本拠地で戦うドラゴンズにとっては鉄板カードなのだ…

  • 1,082日間の成長〜今夜はバッテリーの勝利だ!

    ○4-1東京ヤクルト(13回戦:バンテリンドーム) 投手は繊細な生き物だと言われる。どんなに調子が良くても、些細な事をきっかけに突如として崩れる投手の姿をこれまで幾度となく見てきた。この日マウンドに立った笠原祥太郎にも、初回からその気配が漂っていた。 先頭の並木秀尊を3球でピッチャーゴロに仕留めたのは良かったが、続く山崎晃大朗が粘りに粘り、11球の攻防の末に四球を与えてしまう。ストライク先行だっただけに、テンポよくアウトを取りたかったところで出塁を許し、明らかに笠原のリズムが崩れた。しかも迎えるはクリーンアップ。当然、4番に座る村上宗隆の存在を意識せざるを得ず、並木と山崎に対する投球とは一変し…

  • 9度目の正直〜岡林勇希、今季満塁で初安打

    ○6-3東京ヤクルト(12回戦:バンテリンドーム) 弱冠二十歳の若者の胸のうちは、激しく燃えたぎっていたに違いない。7回裏、岡林勇希の打席である。 3点ビハインドで迎えたラッキーセブンの攻撃は、1死満塁から1番・大島洋平が平凡なファウルフライに倒れてツーアウト。「この回もダメか……」という空気が、空席の目立つスタンドに充満しつつあった。 6回裏にはヒット3本で無死満塁のチャンスを得ながらも、上位打線で押し出し死球の1点しか取れず、どうしようもなく不甲斐ない打線に地団駄を踏んだものである。その時に空振り三振に倒れた一人が2番・岡林であった。“天才” の異名どおり開幕からヒットを量産し、外野の一角…

  • 先週のナイスプレー!(7/6~7/10)

    基本的に月曜日はゲームがない移動日ということで「先週のナイスプレー!」という企画を行っている。今回は7/6~7のDeNA戦、7/8~10の広島戦の中からピックアップした。 投手部門:ついに戦力としての登板、根尾昂が見せる切れ味鋭いスライダー(7/8 広島戦) 大量リードの展開となったこの日の試合、中5日で登板した松葉貴大が6回2失点とナイスピッチングを見せた。簡単に四死球を出さないピッチングスタイルは確実にチームに良い影響を与えている。その松葉からのバトンを森博人が受け継ぎ、8回のマウンドに上ったのが根尾昂だった。 7/1に絶体絶命の場面で登板し近本光司を打ち取りプロ初ホールドを記録した。この…

  • 脱「アットホームな職場です」〜加藤翔平ここにあり

    そういえば先の電撃トレードについて触れていなかったので、今日はまずそちらの話題から。 30歳の石岡諒太と29歳の後藤駿太。ただでさえ人材過多の外野手を獲得したことから、トレード自体の意義に引っかかりを感じたのは私だけではないだろう。選手に罪はないが、編成的な合理性は薄いと言わざるを得ない今回のトレード。その意図を推察するなら、やはり「刺激策」という言葉がしっくり来る。 ぬるま湯体質になりがちな組織の共通点として、人員の流動性の乏しさが挙げられる。異動や入れ替えの少ない労働現場では緊張感が生まれにくく、その代わりに馴れ合いが蔓延する。水は絶えず流れるから不純物が循環し、それによって雑菌の繁殖が抑…

  • 生気を失くしたエース〜遊ぶ余白を与えられなかった貧打の罪

    ●0-7広島(13回戦:バンテリンドーム) 張り詰めた糸が緩んだのは6回表のことだった。それまで好投していた大野雄大が突如として崩れたのだ。マクブルームの3ランに続き、小園海斗にも2ランを浴びて5失点。同じ140キロ台のボールでも、気持ちがこもっているかどうかでこうも結果が変わるものなのか。 マクブルームに打たれた瞬間、打球方向を振り返ろうともしなかった大野の気持ちは完全に “切れて” いるように見えた。シビアな見方をすればエースとしてあるまじき態度という事になる。しかしながらこうも思う。大野にも同情できる面は多分にある、と。 相手先発の森下暢仁はどう見ても本調子ではなく、事実2回から4回まで…

  • 無死満塁〜高橋周平の一打がチームを救った

    ○9-2広島(12回戦:バンテリンドーム) 久々の快勝である。それも序盤に大量リードを奪い、悠々と見ていられる試合なんていつ以来だろうか。たまにはこんな試合があってもいいし、相手が苦手の大瀬良大地というのもなお良しだ。 開幕後最初のカードで3連勝するなど、広島相手にはこの日の勝利を含めて7勝5敗と、どういうわけか善戦している我らがドラゴンズ。しかし目立った補強のない中日に対して、広島が超弩級の補強に成功したのが先月27日のことだった。 「広島 秋山翔吾の獲得発表」 正確には26日の深夜に駆け巡ったこの一報は、一夜明けスマホをチェックした全野球ファンの眠りまなこを一瞬にしてガン開きさせるだけの破…

  • 高橋宏斗、令和の衝撃〜怖さを知り、楽しむ余裕が出てきた

    △0-0DeNA(10回戦:横浜スタジアム) それは初回、2番大田泰示への5球目。この日高橋宏斗が投じた12球目の事だった。糸を引くように真ん中低めにコントロールされたストレートが、木下拓哉のミットを心地よく響かせる。次の瞬間、横浜スタジアムの電光掲示板に球速が表示されると、スタンドからはどよめきが漏れた。 「158キロ」ーードラゴンズの歴史上、日本人投手の持つ最高球速は1990年に与田剛が打ち立てた157キロが長らくトップであり続けた。後に浅尾拓哉、福谷浩司が並ぶことはあっても、超えることは30年以上無かったのだ。その歴史があっさりと塗り替えられた。それも新記録を樹立したのは、まだ20歳にも…

  • 生え抜き捕手初の快挙〜悩める木下拓哉が大黒柱になる日

    ●0-3DeNA(9回戦:横浜スタジアム) 木下拓哉がオールスターゲームにファン投票で選出されたという。ドラゴンズの選手が球宴ファン投票で選出されるのは2018年の松坂大輔以来。野手では2011年の井端弘和まで遡る。ちなみに捕手部門では谷繁元信、中村武志もファン投票による選出はなく、あの木俣達彦も球宴には9回選出(8回出場)しているが、すべて監督選出である。 もしや木下は球団史上初の快挙を成し遂げたのか? と早まるなかれ。長い歴史を紐解けば “史上初” というのはそう容易く出るものではないのだ。 1952,53年に野口明がファン投票で出場している。野口明とは「野口4兄弟」で知られる野球兄弟の長…

  • 先週のナイスプレー!(6/28~7/3)

    基本的に月曜日はゲームがない移動日ということで「先週のナイスプレー!」という企画を行っている。今回は6/28~29の巨人戦、7/1~3の阪神戦からピックアップした。 投手部門:決死のリレー、イニング跨いだ清水に拍手!(7/1 阪神戦) 大野雄大と青柳晃洋のマッチアップを待ちながら、気づけばひと眠りしてしまっていた。その間に場面は全く予想だにしない方向に動いていた。目が覚めてテレビをつけたら1回の表。マウンドに立っていたのは背番号54の藤嶋健人だった。 事情を把握してからはどこまで投げられるか、その後の投手リレーをどうするかを頭の中で考えながら戦況を見守っていた。私がその後のリレーを必死になって…

  • 「流線型打線」のすすめ〜極端な思想捨て、バランス追求を。

    ●0-3阪神(13回戦:バンテリンドーム) 今日はまず、70年以上前に「流線型打線」という概念を提唱した三原脩の考え方を紹介する。 《バッティング・オーダーは、各打者が各個に好打率をあげるように仕組まれるのをもって最上とはしない。むしろ、全体的な安打数はすくなくとも、得点能力の大であることが望ましい事なのである。得点能力とは、即ち流体の速度Cと同様に見做されるものである。 そこで、流体の速度C(得点能力)を、如何に効果的に発揮させるかが流線型打線の根本的着想である》(『三原メモ』1964,新潮社より抜粋) 従来は打者の打率に基づいて打線を組むのが定石であったが、三原は「どれだけ安打を打とうが得…

  • '99年世代だけどミレニアム生まれ〜爪痕を残した伊藤康祐

    ●2-5阪神(13回戦:バンテリンドーム) 9イニングある野球とはいえ、囲碁・将棋を由来に持つ “先手必勝” の掟は例外なく通用するもので、先制点を取ったチームの勝率は7割弱にも上るのだそうだ(当然何点取ったかによって勝率は変動する)。 後ろにジャリエル、ライデルという強力なリリーフが控えるドラゴンズなら、尚更その重要度は増すというもの。「投手力を中心とした守り方野球」は1998年以来脈々と受け継がれる伝統のポリシーでもある。 この日、いち早く先制点のチャンスを掴んだのはドラゴンズだった。初回、1死から岡林勇希がヒットで出塁し、続く山下斐紹のショートゴロを中野拓夢がファンブル。思わぬ形で到来し…

  • 無謀と強気は紙一重〜8人継投も、勝てば正義だ

    ○3-1阪神(12回戦:阪神甲子園球場) 試合開始直前の17時25分過ぎに突然発表された、「大野雄大先発回避」の一報。相手は青柳晃洋。今季3度目となるエース対決は、突如として幻に消える形となった。急遽、ドラゴンズが代役に立てたのは藤嶋健人だった。 藤嶋のスクランブル先発といえば、思い出すのは4年前の所沢だ。松坂大輔の古巣登板として中日、西武両チームのファンが大勢つめかけるなど注目が集まっていたが、その松坂が先発を回避。開始15分前にプロ初先発を言い渡されたのが、藤嶋であった。この試合で藤嶋は6回2失点と驚きの好投をみせ、プロ初勝利をマーク。名前を売るとともに、非常事態にも動じない心臓の強さをア…

  • 思った以上に足りない……2軍が抱える深刻な投手不足

    ウエスタン・リーグのドラゴンズは今日で61試合目を消化した。ドラフト1位ルーキーのブライト健太に第1号が飛び出したのが好材料だ。 チームは4月こそ7連勝があったものの、選手のコロナウィルス感染拡大中に13連敗をするなどして現在は借金生活。個人的には苦しい中よくやり繰りしていると感じているが、投手陣の不足に不安を覚えているので、それを解消できている良い面と、あまり見えていない悪い面の両方を紹介したい。 山井現投手コーチの穴を埋めた2年目投手たち 昨年は101試合871.2回のうちの約9%にあたる80回を山井大介(現2軍投手コーチ)が担ったが、今年はその80回を誰が補うかが焦点だと感じていたが、上…

  • 日本の夏、マスターの夏〜38年ぶりに咲いた「花かつみ」

    ○3-2巨人(14回戦:ヨーク開成山スタジアム) 福島県は郡山に舞台を移しておこなわれたこの日の試合。『古今和歌集』にある「陸奥の 安積の沼の花かつみ かつ見る人に 恋ひや渡らむ」(よみ人しらず)でも有名な同地だが、この詩のなかの「花かつみ」が具体的には何の花を指すのかについては諸説あるそうだ。 「花かつみ」は『万葉集』にも使われるなど古来、歌枕として幾つかの詩に登場。後に興味を示した松尾芭蕉が、その正体を求めて郡山を旅した様子を『奥の細道』に記している。芭蕉は日が暮れるまで地元民に尋ね歩いたが(「かつみ、かつみと尋ね歩き」)、遂に結論を掴むことはできなかった。 つまり「花かつみ」は、井上陽水…

  • 山形傷心篇〜見たかった石垣雅海の故郷出場

    東北の日本海側に位置する山形県は日本国内でも有数の壮大なる自然に恵まれた地域である。全国生産量の7割を占めるさくらんぼのイメージが強いが、もちろんそれだけではなく、日本百名山に数えられる美しい山々に囲まれ、そのひとつの吾妻山を水源として日本海に注ぐ最上川は、一つの都府県のみを流域とする河川としては日本国内最長229キロを誇るのだという。 ちなみにこの最上川の河口にあたる酒田市で生まれ育った野球選手こそがドラゴンズ・石垣雅海である。せっかく一軍帯同していたにもかかわらず、この遠征直前に惜しくも二軍行きを命じられてしまったのが残念でならない。 そのために特別配慮する必要は無いとは思うが、ギリギリま…

  • 先週のナイスプレー!(6/17~6/26)

    基本的に月曜日はゲームがない移動日ということで「先週のナイスプレー!」という企画を行っている。すっかり間隔が空いてしまったが、交流戦明けの6/17~19の巨人戦、21~23のヤクルト戦、24~26の阪神戦からピックアップした。 投手部門:これぞクローザー!R.マルティネスの岡本斬り(6/18 巨人戦) その瞬間は最悪の事態を想定してしまった。吉川尚輝が振り抜いた打球が角度をつけてライト方向に飛んでいった。幸いにも打球はフェンスを直撃し、吉川は2塁でストップとなったが、R.マルティネスが今シーズン80人目にして初めて許した長打となった。 2アウトとはいえ打席に立っているのは4番・岡本和真。勝負を…

  • トドメを刺せない押しの弱さ……「ホームランしか狙ってない」と言えるスラッガーが欲しくてたまらない

    ●5-x6阪神(11回戦:阪神甲子園球場) 三ツ俣大樹のサヨナラ打という最高の形で始まった一週間は、5連敗という最悪な形で幕を閉じた。まるで天国から地獄へと突き落とされたような気分だ。 しかし “まさか” とは言えない面もある。離脱中のビシエドに続いてこの日は木下拓哉が腰痛で欠場。代役の石橋康太は咄嗟の判断力や守備面において不安が拭えず、11回裏には痛恨の悪送球でサヨナラの局面を演出してしまった。なまじ接戦になっただけに、最後の最後で正捕手不在が響いた形である。 溝脇隼人や石岡諒太の起用など、なんとか流れを変えようという試行錯誤は伝わってくる。だが4番と正捕手が抜けてしまってはいかに打線を組み…

  • 野次りたくもなる? 惨敗つづきの立浪竜に浴びせたい“あの人”の喝

    ●0-10阪神(10回戦:阪神甲子園球場) 記録的な猛暑に見舞われた日本列島。しかし茹で上がるような熱気とは真逆のお寒い内容に終始してしまったのが我らがドラゴンズである。 思い出すのも億劫な一戦をわざわざ振り返り、反省点を語るような無粋なマネをするつもりはない。福谷浩司が炎上し、根尾昂も打たれ、打線はいつも通り打てなかった。それだけの事だ。取り立てて「あのプレーが……」「あれが惜しかった……」なんて指摘するまでも無かろう。 日に日に荒んでいくのはファンのメンタルだけではない。立浪監督は試合後「ご覧の通り、チャンスになったら打てないから、何ともならないですね」と、全イニングで出塁を記録しながら零…

  • 「二度とオレの前に来るなよ」〜成るか、三十路のサクセスストーリー

    ●4-6阪神(9回戦:阪神甲子園球場) 16時の公示で思い切った選手の入れ替えが判明した。ヤクルト3連戦で2被弾の祖父江大輔、岡野祐一郎、21日に登録されたばかりだが2三振と振るわなかった石垣雅海、福田永将の4人が一挙に抹消となり、代わって好調を維持する石岡諒太、山下斐紹、リリーバーの森博人の3人が昇格となった。 中でも意外だったのが石垣の抹消だ。ヤクルト戦では2打数2三振、昨日はまるでノー感じの3球三振と爪痕ひとつ残せなかったのは確かだが、二軍での好調を買われて故障のビシエドの穴埋め要因として上がってきたばかりの選手だ。何年も前から将来性への期待は高く、次期大砲候補の最有力と目されていた時期…

  • 反則レベルのクリーンアップ〜求められるのは確固たる3,4番育成だ

    ●0-10東京ヤクルト(11回戦:バンテリンドーム) 電光石火の一撃だった。プレイボールからわずか5分後、岡野祐一郎は死を悟った小動物のような生気のない表情でマウンドに立ちすくんでいた。無死満塁で、打席には村上宗隆。先発投手は1試合につき3度の山場が来ると言われるが、今夜はこの場面を抑えるか否かが試合結果に直結するであろう事は、誰の目にもあきらかだった。 先に追い込んだのは岡野だった。フォークとストレートだけでカウント2-2とし、フィニッシュに選んだのはストレート。しかしこの1球が高めに抜けると、岡野にはバットを構える最強打者の威圧感を前にして、神頼みのようにフォークを投じるほか成す術は残され…

  • 刹那の判断〜逆転機を逸した一瞬の “迷い”

    ●3-7東京ヤクルト(10回戦:バンテリンドーム) 野球の醍醐味は “刹那の判断” にあり。約180分の試合のなかで勝負が決まるのは一瞬。結果的には接戦とは言い難いスコアに終わったが、この日の試合は両軍の判断力の差が明暗を分けた。 まずは初回、松葉貴大の立ち上がりを攻めたヤクルトが満塁のチャンスを作るも、オスナが平凡な内野フライに倒れてツーアウト。続く6番・中村悠平を2ストライクまで追い込んだのは良かったが、ファウルを挟んだあとを6球目を引っ張った当たりがレフト線を深々と破り、これが走者一掃の3点タイムリーとなった。 いきなりビハインドが重くのしかかる展開。打たれた松葉は満塁とあって遊び球を使…

  • ヒーローは遅れてやってくる〜溝脇隼人、三ツ俣大樹の殊勲打

    ○2x-1東京ヤクルト(9回戦:バンテリンドーム) 5月12日以来、久々となるヤクルト戦。交流戦前までは首位ながら2位と1.0ゲーム差だったのが、今や9.0差を付けて貯金21のぶっちぎり独走状態。まだ梅雨も明けていないというのに早くもマジック点灯の声が聞こえてくるなど、その勢いは止まるところを知らない。 交流戦から続く連勝も8に伸ばし、まさにイケイケの燕軍団を相手にどこまで食らいつく事ができるか。ドラゴンズの先発は火曜日の男・小笠原慎之介。3勝4敗と負けが先行するものの、昨季はシーズン通して4度しか無かった7イニング以上の投球を今季は既に同じ回数達成。課題のスタミナ面を克服しつつあり、一皮剥け…

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