脳は人間を理解するための基礎を与える科学である。したがって、これは人の発育、教育、社会、老化など、人間と社会のすべてに関係する。
では、実際に脳内のネプリライシンは加齢に伴って変化するのてしょうか。マウスの脳内では加齢に伴ってネプリライシンの活性化や発現が低下しますが、同様の現象がヒト脳でも観測されることが複数回報告されました。ネプリライシン:孤発性アルツハイマー原因解明に向けて②
私たちの研究室では、それまで誰も行わなかった新しい実験方法をもってこの問題にチャレンジしました。まず、ラジオアイソトープで標的したAβ1‐42ペプチドを合成・精製しました。ペプチドの化学合成は、カルボキシ末端側から一残基ずつ付加することによって伸ばしてゆきます。一残基あたり10時間を要しました。放射線物質を取り扱う上に、一つでも失敗したら台無しですから、緊張感が張りつめっぱなしでした。同僚の岩田修博士と津吹聡博士と私では、毎日侃侃諤諤の議論をしたものです。合成と同じくらい苦労したのが精製でした。結局、共同で作業を進めていた米国のある企業の不誠実な対応(脱落)が原因が遅れたため、計画を立てて、精製が終了するまで約一年を要しました。これだけ長い標識ペプチドを合成したのは私たちがはじめてでした。次にペプチドをラ...ネプリライシン:孤発性アルツハイマー原因解明に向けて
私たちの研究室では、それまで誰も行わなかった新しい実験方法をもってこの問題にチャレンジしました。まず、ラジオアイソトープで標的したAβ1‐42ペプチドを合成・精製しました。ペプチドの化学合成は、カルボキシ末端側から一残基ずつ付加することによって伸ばしてゆきます。一残基あたり10時間を要しました。放射線物質を取り扱う上に、一つでも失敗したら台無しですから、緊張感が張りつめっぱなしでした。ネプリライシン:孤発性アルツハイマー原因解明に向けて
分解系は合成系と対をなしてAβの存在量を規定します。速度論的には、分解系全体の活性半分が半分に減るだけで、合成系が二倍に上昇するのと同程度の効果があります。家族性アルツハイマー病の原因として最も典型的なプレセニリン1の変異は、Aβ1‐42の畜産力を約1.5倍上昇させるだけで、若年におけるAβ畜産を引き起こします。つまり、分解系が数十年にわたってわずかずつ低下していっても、十分にアルツハイマー病理の原因になりうるということです。たとえば、生まれてから一年ごとに1パーセントずつ低下しても50年では50パーセント低下するということになりますから、その30年以上後の80代以降に発症することを上手く説明できます。また、一般的に代謝過程は加齢に伴って低下することも矛盾しません。このような理由から、分解系の重要性は認識...Aβ分解系による挑戦‐研究が遅れている分解素素
これらなかで、βセクレターゼは、新規の膜結合型アスパラギン酸プロテアーゼBACE‐1であることが報告されました。他のセクレターゼと比較して基質の配列特異性が高いうえに、BACE‐1遺伝子を破壊したノックアウトマウスではAPPのβ部位での切断が完全に消滅することから、薬学的な効果が期待できるとして注目されています。当初、遺伝子ノックアウトマウスに重篤な異常が見られないとされていたことも理由です。実際、多くの基礎研究者が企業研究者がβセクレターゼ阻害剤の合成や探索に取り組んでいます。しかし、ニューレギュリンという神経調整タンパク質も基調であることがわかり、ノックアウトマウスに末梢の髄鞘形成異常が見いだされました。現在、多くの研究者や製薬企業がBACE‐1阻害剤の探索に取り組んでいますが、長期投与しても副作用の...βセクレターゼに注目
Aβ生成に関するプロテアーゼ(タンパク質・ペプチドを加水分解する酵素)、セクレターゼと総称され、Aβのアミノ末端を切断するものがβセクレターゼ、カルボキシ末端を切断するものがγセクレターゼです。さらに、βセクレターゼに代わって、アミノ末端側で切断するαセクレターゼの存在も知られています。αセクレターゼの産物は病原性がないとされています。前述で述べた家族性アルツハイマー病原因遺伝子の中で、APP遺伝子における変異は、βセクレターゼ切断部位およびγセクレターゼ切断部位の付近に存在するものがほとんどです、Aβ1‐40およびAβ1‐42の産生量を増加させ、後者はAβ1‐42の産生量を増加させます。その他の変異は、Aβの凝縮を促進する作用や、分解を抑制する作用が知られています。またプレセリン1とプレセリン2は、γセ...Aβの生成
Aβは、前駆体タンパク質からタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)で切り出されることによって生成します。ここで、ペプチドの構造について簡単に説明します。ペプチドはアミノ酸の重合体です。アミノ酸はアミノ基(‐NH_2)とカルボキシ基質(-COOH)を有します。二つのアミノ酸が重合してできたペプチドをジペプチドと呼びます。重合の際に片方のアミノ酸はカルボキシ基を、もう一方はアミノ基を供してペプチド結合を形成します。その結果、ジペプチドには、最初のアミノ酸のアミノ基と二番目のアミノ酸のカルボキシ基が残ります。これは、三つのアミノ酸からなるトリペプチドやそれよりも長いペプチドになっても同様です。アミノ基のあるアミノ末端、カルボキシ基のある側をカルボキシ末端と呼びます。通常は、アミノ酸を一文字表記し、アミノ末端側を左に...アミロイド・ペプチドとその産生‐悪玉Aβ
基本的に神経細胞は分裂後細胞です。つまり、肝臓細胞等と違って分裂し続けることができません。したがって、一度出来上がった神経回路を維持するためには、個々の神経細胞が個体の死まで数十年にわたって生存し続ける必要かあります。言い換えれば、脳の老化は他の臓器に比べて細胞分裂によって回復される割合が非常に小さいことになります。また、神経細胞は他の細胞に比べて物理的サイズが大きい上にエネルギー消費量が高いので、様々のストレス(虚血ストレス・酸化ストレス・カルシウム恒常性異状など)に曝されやすいことが知られています。三人から「いいね」されるが、アクセス解析では1PV、やはり奴がストーカーしているのか。馬鹿馬鹿しくなって書くの虚しくなった。在日韓国人は分かりやすい情報操作をやる。後は自分で勝手に勉強してください。私は馬鹿...脳老化の特異性とその本質
このように、家族性アルツハイマーのと関連疾患原因遺伝子の同定は、病因論における因果関係の樹立に決定的な役割を果たしました。1990年代の10年間はその研究のために費やされたといってよいでしょう。また、孤発性アルツハイマー病も家族性のものと同様の病理変化を経ていることから、共通のメカニズムによって進行すると考えられますが、実は肝腎なことがまだよくわかっていません。遺伝子変異が原因となる全アルツハイマー病の1000分1程度にしか過ぎないのです。残りの大半(99パーセント以上)を占める孤発性アルツハイマー病におけるAβ蓄積の原因は、これから解決されるべき謎といってよいと思います。後述するように、私たちはその答えの最も近い位置にいると考えています。なお、アポリポタンパク質Eの遺伝子多型Latin_4が原因遺伝子だ...アルツハイマー病の最大の謎
では、タウタンパク質はどうでしょうか?アミロイド前駆体やプレセニリンの変異が同定され解析された頃は、かなり劣勢に立たされました。しかし、1990年代になって「第17染色体にリンクしパーキンソン症状を伴う前頭側頭葉認知症:FTDP-17(Fronto-TenporalDementiawithParkinsonismlinkedtochromosme17)」の原因遺伝子にタウ遺伝子であることが発見され、タウタウンパク質の重要性が再確認されました。FTDP-17では老人斑は形成されず、神経原線維変化が生じて、神経変性に至ります。タウタウンパク質の異常が神経変性を起こしうることが直接的に証明されたことになります。実際、病原性変異を有するタウタンパク質を過剰発現するトランスジェニックマウスにおいても、タウタンパク質...タウタンパク質の過剰にリン酸化
私自身、難病を患っておりますし、造影CT検査にて、肺、肝臓、腎臓に腫瘍が見られると診断されました。ドラマや映画だけの絵空事のように感じていましたから、ショックでした。難病を宣告された時も「自分はこの病気ではない」と確定診断されるまで信じていました。人生は色々ありますね。私がインターネットを始めた理由が、自分と同じ難病をもつ方の少しでも力になればでしたが、なんだかネットアイドルみたいになり、私としては、それが嫌で仕方なくなって、顔写真とか載せるのが嫌なのです。対立していたネットアイドルさんに「落ちぶれたな、涼介」とか言われましたが、私が本来やりたかったのこちらとやっていました。以来、モーツァルトや坂本龍馬のことばかり書いていました。脳関係の話だけではなく、好きな音楽、私はモーツァルトが大好きですから、彼の音...お知らせ
家族性アルツハイマーの原因遺伝子として同定されたものは、これまでに三つあります。コードされるタンパク質はいずれも膜タンパク質で、アミロイド前駆体タンパク質(APP:AmyloidPrecurseProtein)、プレセニリンⅠ、プレセニリン2と呼ばれます。これまでに、これらの遺伝子の変異は100以上が同定され、調べられた変異の全てがAβの蓄積を促進する作用がありました。そして、そのほとんどが、次節で述べるように、アミロイド前駆体タンパク質からAβが生じる過程に影響します。とくに大切なことは、培養細胞を用いるイン・ビトロ(細胞生物学)の実験と遺伝子改変動物を用いるイン・ビボ(発生工学)の実験の結果が、互いに矛盾なく一致したことです。この結果によって、「アルツハイマー病はAβ蓄積によって引き起こされる」という...Aβの蓄積によって引き起こされる
アルツハイマー病は、早期発症型と晩期発症型に分類されます。早期発症型は、20代後半から60歳までに発病します。60歳以降の発症は、晩期発症型と定義されます(研究者によっては65歳以降とする場合もあり、私もその方が妥当だと思いますが、ここでは60歳とします)。患者数において晩期発症が圧倒的に多いので、医療経済学的には最も重要な標的です。早期発症型は少なく、かなりの割合で「常染色体優性遺伝」に関する家族性アルツハイマー病です。「常染色体優性遺伝」は、性別に関係なく一対の染色体の片側に遺伝子変異が存在するだけで発症するということを意味します。両親の一人が家族性アルツハイマー病であれば、子供は二分の一の確率で発症することになります。将来、私は家族性病も予防・治療可能になるという信念があります。家族性アルツハイマー...家族性アルツハイマー病と孤発性アルツハイマー病
ようやく役者がそろってきたので、因果関係の検討が可能となりました。原因は結果に先行するはずですから、これらの事象の時系列が検討され、アミロイドペプチド(Aβ)の蓄積→タウタンパク質蓄積→神経細胞死という順番が確立されました。また、現在では、神経細胞死の前に実質的な症状の原因として神経機能不全が存在すると想定されています。しかし、これだけでは厳密な意味での因果関係の樹立にはなりません。原因と想定される事象が、単なる付随的現象に過ぎない可能性も否定できないからです。この因果関係の検討において決定的な役割を果たしたのが、家族性アルツハイマー病です。患者さんや家族には幸いなことだった思いますが、人類遺伝学研究において、三つの原因遺伝子が同定されました。最初の発見は、病理生化学によるAβの精製でした。次に、アミノ酸...因果関係の樹立へ
実はアルツハイマー病の確定診断のためには、これら「三大病理」(老人斑、神経原線維変化、神経変性)を確認することが必要です。病理解析は死後、脳を解剖しないとできませんから、今のところ患者が生きている間は確定診断ができないということになります。臨床の現場では、認知症の症状(認知能力の進行的低下や精神症状)を確認した上で、その他の疾患の可能性を排除してゆく除外診断が通常行われます。除外される疾患として代表的なものは、脳梗塞や心筋梗塞による血管性認知症、び慢性レビー小体病、ビタミンB_12欠乏症などがあります。臨床の現場では複数の病態が共存する複合型が数多くあります。さらに、血管性認知症と診断された患者の死後、神経病理を調べたらアルツハイマー病であったという症例が多数報告されています。全ての患者さんが病理解析され...アルツハイマー病の確定診断
アルツハイマー病と神経病理-アルツハイマー病は考古学だった!?
アルツハイマー病における原因と結果は、10年以上もの時間の開きがあります。何故これ程の時間を要するのか、厳密な意味では解明されていません。このような長期におよぶ因果関係を実験科学の方法論で解明することは大変困難です。しかも、人間に固有の疾患です。このような理由から、アルツハイマー病気研究は、多くの状況証拠を積み上げながら、互いに矛盾しないコンセンサスを築き上げる努力によって進んできました。さらに、徐々に出来上がってきたコンセンサスに対して何度も反論がぶつけられ、これに耐える仮説だけが生き残って、今日に至ります。これまでに10万報以上の論文が発表されていますが、これらは互いに事実と考察をぶつけ合いながら、本質的でないものを除外しつつ、最大公約数的必要十分条件を絞り込んできました。コンセンサスが形成される過程...アルツハイマー病と神経病理-アルツハイマー病は考古学だった!?
そして、ほぼ全ての人間が、十分に長生きすれば、アルツハイマー病を発症する宿命があることが、近年わかりました。65歳以上で1割、85歳以上で5割、100歳以上で九割が認知症を患っていると報告されています。これはなかなかショッキングなことですが、一方で、根本的な原因が明らかになってきたことによって、アルツハイマー病を予防・治療するだけでなく、全ての中高年が対象となる脳の老化を制御できる可能性が見えはじめています。アルツハイマー病が恐れられるのは、各人がそれぞれの人生において何十年もかけて培ってきた人間としての尊厳を奪い去られてしまうからです。本人のモラルや信条まで失われてしまかいと、まさに生ける屍であり、社会的地位の高い人にとっては絶対に言われたくないであろう「晩節を汚す」ことになりかねません。また、社会的コ...国の未来を左右するほどの影響力
アルツハイマー病を発症すると、まず記銘力を含む認知能力が進行的に低下し、さらに、譫妄(意識混濁、幻覚、錯覚)などの精神症状を呈することがあります。認知能力低下は通常エピソード記憶(最近自ら行ったことや見聞きしたことに対する記憶)の異常からはじまり、言語能力や判断力が失われ、自分の居場所や家族の顔がわからなくなるほどに進行します。一般に運動失調は少ないので、徘徊などの問題行動の原因になります。精神症状としては、性格の変化、うつ症状、異常な攻撃性、根拠なき嫉妬、妄想などが典型的です。数年前、80代の女性が夫をまさかりで殺すという事件がありましたが、彼女はアルツハイマー病を患っていたため、根拠もないのに夫が浮気をしていると思いこんでいたのです。このような症状は家族にとって大きな負担になります。「認知症」はかって...アルツハイマー病とは
アルツハイマー病は当初臨床医学や古典的病理学の手法で行われていたため、なかなか原因を捕らえることができませんでした。しかし、1980年代頃から基礎研究が導入されて基礎が築かれ、1990年代に入って研究は飛躍的に進歩しました。その主役は、生化学(タンパク質化学)、遺伝学、分子生物学、細胞生物学、発生工学といった生命科学の最先端の分析です。今や、アルツハイマー病の基礎研究と疾患研究は互いに影響を与えるだけでなく、研究の現場ではすでに融合していると言ってよいでしょう。以降、20世後半から飛躍的に進歩したアルツハイマー病研究の現状と将来への展望を解説することにします。一部、専門的な知識がないとわかりづらいところがあるかも知れませんが、そんなところは読み飛ばしてください。アルツハイマー病研究の概要を理解することが一...最新の生命科学による解明
科学することの本質は、「因果関係の樹立」と「メカニズムの解明」です。そしてそのためには研究対象を詳細に記述しておかなければなりません。これは「現象論」や「博物学」と呼ばれるものです。研究は研究対象に名前を付けることからはじまります。アルツハイマーは研究もそのようにしてはじまりました。たとえば天文学では、古代に星や星座に名前を付けられ、16世紀以降、コペルニクス、ガリレオ、ケプラーらによって天体の運動が詳細に記述されました。数学的に惑星の運動法則化することに最初に成功したのはケプラーです。さらに、ニュートンやライプニッツが確立した微積分学によって古典力学の対象として発展してゆきます。その後、電磁気学、相対性理論、量子力学、統計力学のおかげで、天文学は今や宇宙物理学となって発展を続けています。アルツハイマー研...100年前に発見されたアルツハイマー病
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