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  • 山を彫る(9)山小屋の主

    初めての沢登りだった。着るものや、履くものが判らなかったので、聞き込みをして、それなりの準備をした。足回りは、この日のために地下足袋を購入、ザックは古くから持っていて、なかなかへこたれないデイバッグの底に穴を開け、水浸しになっても排水できるようにした。着替え他の装備は、それぞれビニール袋に入れて防水を図った。興津川の上流、田代峠への上り口に車をデポ、Ahさんの案内で、いよいよ沢に入る。早々に滝に出会った。手近にあった丸太を淵に渡し、危なっかしい足取りで一同通過。第2の滝は強烈だった。足が底に着かないほど深い淵を右から回りこみ、先行した青島さんがフィックスしてくれたザイルを頼りに、本流に足を取られながら体を引き上げた。8月末の山行で、相当暑いと思いきや、二つ、三つの滝を上がっただけで寒くなってきた。着衣が沢...山を彫る(9)山小屋の主

  • 北八ッ彷徨

    2001年10月発行・平凡社北八ヶ岳というと苔の森と湖沼のイメージがあるが、白駒池や北横岳あたりは今やすっかり観光地化してしまい、静寂という言葉とは少し距離があるように思える。かつての「北八ッ」の森を彷徨ってみたい、そんな好奇心から本書を手にしたように覚えている。南八ヶ岳を動的[ダイナミック]な山だとすれば、北八ヶ岳は静的[スタティック]な山である。前者を情熱的な山だといえば、後者は瞑想的な山だといえよう。北八ヶ岳には、鋭角の頂稜を行く、あの荒々しい興奮と緊張はない。原始の匂いのする樹海のひろがり、森にかこまれた自然の庭のような小さな草原、針葉樹に被われたつつましい頂や、そこだけ岩魂を露出しているあかるい頂、山の斜面にできた天然の水溜りのような湖、そうして、その中にねむっているいくつかの伝説――それが北八...北八ッ彷徨

  • 山を彫る(8)八島湿原

    霧ヶ峰、ここは私にとって不愉快な、というほどではないが愉快ではない思い出のある場所だった。昭和34年、日本楽器(現ヤマハ)に入社、設計課に配属された。当然18才の私らが最年少なのだが、ほとんどが20才周辺の若者で、当時流行っていた青年活動も盛んに行われていた。ようやく職場に慣れてきた8月盆休に、白樺湖へキャンプに行くことになった。入社後半年も経っていない身では、登山用具などあるはずもなく、リュックザックは親戚から借りて間に合わせた。靴も、スニーカーに毛の生えた程度のものを使うしか思い至らなかった。生憎、山行の直前に台風が襲来し、少なからぬ被害が出た。中央線が不通になり、なんとか列車が動いていた飯田線を利用して長野に向かった。飯田線を全線乗った人は少ないと思うが、とにかく長い。距離的には短いのだが、スピード...山を彫る(8)八島湿原

  • 山を彫る(7)鳥海山々頂への道

    ようやくたどり着いた御室小屋の脇、建物を風雨から護る石垣の傍らにザックを置き、これから山頂を往復する。岩場では、ストックは邪魔になるから持たないようにと指示があった。杖に頼ることが多くなっている私には不満だったが、言葉に従うことにした。トップを行くThさんは、奥さんの出身が山形県温海町であるということもあって、何回も登っていると聞いていた。足場が悪いので自信の無い人は見合わせるようにとの呼びかけがありAkさんが手を挙げ待機を宣言する。いよいよ山頂を目指して出発。直ぐに、大きな岩塊をへばりついて上り始めたところでMtさんがリタイヤ。道はますます険しくなっていく。Thさんは、当時小学生だったお子様を連れて登ったとも言っていたが、この道については何も語っていない。子供でも登れるんだからと、油断していた部分もある...山を彫る(7)鳥海山々頂への道

  • 山を彫る(6)房小山

    会報150記念号アンケートに、好きな山を挙げよという項目があった。迷わず「房小山」と書いた。好きな理由はいくつかあるが、まず、佇まいが良いことを挙げたい。鋸岳直下、樹間から眺めて良し、いくつかの沢を隔てて、静かに座っているところが好ましい。帰りのことを考えるとかいだるいが、急降下してガレの頭を過ぎてから北上する稜線が良い。笹原の中を緩やかに上下する道は、私の最も好む雰囲気である。この稜線には白やしおがたくさんあり、花の当り年にここを通れば顔が火照る程であろう。Saさん(千頭山の会)によれば、私の太腿くらいの木でも樹齢300年は経っていようという代物が並んでいる。一旦、巻き道に入った辺りは、眺めもなく、時々急坂が現れるので気分的にも体力的にもきついが、我慢、我慢。そこを抜ければ笹原が山頂まで続く超明るい道が...山を彫る(6)房小山

  • 山を彫る(5)穂高連峰

    昔、5月のザイテングラードで怖い思いをしているので、ゴールデンウィークに蝶ヶ岳登山を誘われた時は、正直躊躇した。登山コースについて聞いたり調べたりする間に、登山道の大部分が樹林帯の中を行くことが判り、若干気が楽になり連れて行ってもらう決心がついた。1日目は横尾山荘へ入るだけ、3日目は徳沢園から帰るだけとういう余裕のある日程も歳をくった私にはありがたい。ゴールデンウィークの最中にもかかわらず車は順調に進んだが、さすがに沢渡の大駐車場は満タンで入れない。係りの案内に従い、少し奥の私設駐車場になんとか納まった。シャトルバスに乗り換え発車すると間もなく釜トンネルを通過する。拡張、舗装され昔の面影はまったく無くビックリ。いかに上高地方面にご無沙汰したかを思い知らされた。14:25横尾山荘着。早々に宴会になり明日の登...山を彫る(5)穂高連峰

  • 安田の大椎

    かねてから気になっていた粟ヶ岳北東中腹の安田(あんだ)にある巨樹を訪ねてみた。ムラの小さな神仏たちをその懐に抱えて悠然と立つ。静岡県島田市金谷安田の大椎と呼ばれるスダジイの巨樹である。この木は、ムラのなかに張り出した土手状の小丘の上にあり、根まわり18.5メートル、樹高27メートル、枝張り東西26メートル、南北23メートルで、樹齢は1000年と推定され、静岡県の天然記念物に指定されている。木の南根方には瓦葺きの小祠があり、なかに山の神と秋葉社の木祠が納められている。本来、この椎の木が山の神の座であったことをうかがわせる。椎の根もとには、このほか西側に庚申塔・北側に稲荷社も祭られており、この椎の傘下にムラの神々が集まっていると言える。ムラ中の、椎の枝に蔽われた小丘は安田の聖地なのである。八俣の大蛇(やまたの...安田の大椎

  • 山を彫る(4)かもしかの遊歩道

    今回の画は、SHC創立10周年記念展示会に出品したので、多くの方が目にされていると思う。けれども、画の中に仕込んだ2、3のいたずらに気がついた方は意外に少なかった。10/16バスは紅葉がボチボチ始まった甲斐路を走り信濃路へ。野辺山を経て川上村に入った。回りはレタス畑で埋め尽くされ、収穫の順番を待っていた。畑を突っ切った山裾に今日の宿「岩根山荘」がある。一旦、部屋に荷物を置き、もう一度準備をし直して散策に向かった。ここ金峰山の麓、廻り目平は花崗岩が所々に露出していて、変化に富んだ道が多くある。まず屋根岩に向かう。最初は苦も無く高度を稼ぐが上るにしたがって、梯子や岩の狭間を通るヤバイ所が増えてくる。屋根岩の上に立つには、チョッとした勇気が要る。飛び越えるには広過ぎるし、歩いて渡ろうとすると花崗岩が風化して細か...山を彫る(4)かもしかの遊歩道

  • 南アルプス写真選抜

    今夏「赤石小屋便り」としてLINEに送られてきたkimiさんの写真から、11月10〜15日に開催される「第7回南アルプス写真展」に出展する写真を皆で選んだ。小屋開け準備中(布団干し)小屋開け準備中(出番を待つ食器たち)月と山小屋初めての小河内岳から夕暮れの赤石お近くの方は足を運んでご覧ください。第7回南アルプス写真展[静岡市葵区]|アットエス南アルプスの雄大な写真を多数展示する!!4団体会員がご案内致します@S[アットエス]南アルプス写真選抜

  • 山を彫る(3)縞枯山荘

    北八へ行くなら高見石に限るという思い込みがあった。山の師匠のひとり、Mさんに連れられて冬の北八へ入って以来、ここの雰囲気が気に入り度々訪れた。単独だったり、二人だったり、夏には息子と行ったこともある。雰囲気が良いこともさることながら、アプローチが短い点が良かった。バスの終点渋ノ湯から1時間40分で高見石小屋に届く。賽の河原で吹かれたこともあるが、細竹に巻かれた赤布を頼りに行けば、なんとか小屋にたどり着く。ずーっと、そう思い込んでいたのだが、'00年頃から状況が変わった。バスをチャーターすれば、八ヶ岳や北八の一部は、日帰りが可能で魅力あるコースが沢山あることが判ってきて、SHCの目的地として採り上げられるようになった。'00年編笠山、'02年麦草峠周辺、間を縫ってグループ山行も多くある。そして集大成は'03...山を彫る(3)縞枯山荘

  • 山を彫る(2)仙丈ヶ岳

    「よねの小屋」っていうのがあるんだけど、ご存知ですかねぇ。色々な局面でお世話になっている米沢正信さんがセルフビルドした小屋です。請われて、この小屋に仙丈ヶ岳の画を寄贈した。今回は「仙丈ヶ岳」について書いてみようと思う。'03年ゴールデンウィークの仙丈ヶ岳登山は、忘れられない山行です。初めての仙丈は、やさしく迎えてくれた。標高が高いし、5月とは言え積雪がかなりあることが予想されたので、とても不安であった。幸いアタック当日は、これ以上は望めない好天になり快適な登りが始まった。しかし3合目からの上りは、半端ではない。アイゼンは着けなかったので足元は軽いはずだが、きつい登りに皆押し黙って歩を進めた。それだけに、大滝の頭に達した時の開放感は格別である。そこは森林限界でもあり、南アルプス北部の主要な峰は丸見えだ。一転...山を彫る(2)仙丈ヶ岳

  • 山を彫る(1)八ヶ岳連峰

    この画は事務局の玄関に掲げてくれてあるので、T宅を訪問された方は目にされていると思う。’04/3グループで蓼科山に登った。好天に恵まれ女神茶屋からの上りは胸が躍る。ひと登りして落葉松の林を抜けるとブァーっと視界が開ける。八ヶ岳が堂々と連なり底抜けに明るい。慌ててシャッターを押した。頂上を極め、同じ道を戻ったので、朝の地点で休憩をとった時を利用して、午後の八ヶ岳も収めておいた。ここからの写真数枚を元に原画を起こした。高い山はより高く、誇張して描くように教えられているので、自分として許せる範囲で赤岳を盛り上げた。問題は前景である。その場所にもモミだったか落葉松だったか針葉樹があり、それを手前に置けば安定するかもしれないと思えたが、この構図は以前試しているので止めた(この画については、後日描く)。ふと、以前そば...山を彫る(1)八ヶ岳連峰

  • 小笠山ハイキング

    エコパでは、中学生の駅伝大会が行われていた6日、所属会で毎月実施される「おはようハイキング」に参加。午前中には終了するコンパクトさが良い。今回のコースは、エコパ〜法多山奥の院〜三ツ峰〜腹擦峠〜展望台〜富士見台霊園と小笠山山稜北側の稜線を歩く。法多山奥之院ここは硬軟の積み重なった地層の侵食の差によって、北面が切れ落ちた崖状、南面が緩斜面と非対称の丘陵となっていて、そういう地形を「ケスタ地形」というのだそうだ。崖縁のヤセ尾根という同じような風景が続く。腹摺峠の不動明王像と石碑腹摺峠は掛川と横須賀とを結ぶ道の峠で、馬の横腹を摺るほどに狭いことから名付けられたというが、峠越えのその道はすっかり荒れている。傍らに「納經・・」(下は削れて不明)と彫られた石碑と不動明王の石仏が佇む。尾根西端の法多山尊永寺は、725年、...小笠山ハイキング

  • 「北斎の富嶽三十六景」を巡って

    富嶽三十六景・尾州不二見原山座同定の楽しみ1月10日の夜、晩酌をやっていると突然、I氏より電話があった。ほろ酔いの頭で聞いた話は「NHK日曜美術館で、北斎『尾州不二見原』(富嶽三十六景)に描かれている富士は、実は聖岳を見誤ったのではないかということだ。ついては、東からもこのように聖が尖って見え、お前と会話を交わした記憶があるが、それはどこの山だったか」というものだった。我が地から見る聖岳は、前聖と奧聖が吊り尾根を成し、どっしりとした屋根型の特徴で比較的すぐにそれと判る。これが西側の伊那辺りから望むと、形がずいぶんと違って見え驚いた覚えがある。だが東側からとなると、すぐには思い浮かばなかった。翌日、次のようなメールが交わされた。〔I〕昨夜は、おかしな電話にお相手いただきありがとうございました。ご厄介かけつい...「北斎の富嶽三十六景」を巡って

  • 事始めとなった八ヶ岳

    西天狗岳より東天狗岳を望む2024年9月28日/唐沢鉱泉〜西天狗岳9月の会定例山行は、望月少年自然の家に宿泊し初秋の北八ヶ岳を楽しむ。天気は当初の雨天予報が良い方向に転び、曇空ながら一日もちそうな気配、却って陽射しがないのは暑さの点では好都合だった。周回のAコースパーティーに続き、予定の8時に唐沢鉱泉を出発。唐沢に架かる橋を渡り天狗岳西尾根に取り付く。シラビソ樹林の下に苔むした石がゴロゴロとした、いかにも北八ツらしい雰囲気の道をゆっくりと登っていくと、1時間程で尾根に出た。ここは枯尾ノ峰との分岐となっているが、訪れる人は少ないのか「荒れている」との注意標識があった。小休止の後、尾根上の道を登っていく。さらに1時間程で2416メートルの第一展望台に出たが、残念ながらガスが掛かり、楽しみにしていた八ヶ岳連峰稜...事始めとなった八ヶ岳

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