chevron_left

メインカテゴリーを選択しなおす

cancel
arrow_drop_down
  • 異次元の創作時間

    小腹が空いて目が覚めてしまった。明かりをつけるとまだ真夜中だった。1時間も眠っていない。何か口にするなら体によいものの方が、罪悪感が少ない。冷蔵庫を開けるとちょうど未開封のヨーグルトがあった。スプーンとプレーン・ヨーグルトの箱を持って、テーブルについた。 中身が飛び出さないようにヨーグルトの蓋を慎重に開けた。すると、中でおじいさんが机について煙草をふかしていた。深夜からの時間帯は、レンタルスペースになっていると言う。そんな馬鹿な話は聞いたこともない。年寄りのハッタリに違いない。 「出て行ってくれ!」 「真夜中にヨーグルトか?」 おじいさんの口から吐き出される灰色の煙が、狭い部屋中に広がる。 「…

  • カシミヤにたどり着けない

    冬になると毎年のようにカシミ屋さんの前には、長い長い行列ができた。厳しい冬を越すために、唯一無二と言える温もりが求められたからだ。当時の人気はそれは凄まじいものだった。家族で並んだとしても、先頭までたどり着けることは、ほんどなかった。 「本日はここまでとなります」 あと一歩のところで、完売が宣言された。旬のマフラーへの道程は思った以上に厳しかった。 「隣に行きましょう」 「イズミヤ嫌だ。カシミアがいい」 「2階のパレットにもいいのがあるかもよ」 「パレットやだ。みんなカシミアだもん」 「よそはよそ。うちはうちよ」 「何それ? 当たり前の繰り返しじゃん。意味ないじゃん」 「A=A 公式の基本よ」…

  • ライスボール(感動大一番)

    「いよいよ待ちに待ったこの時がやって参りました。今までの時間はまさにこの時のためにあったと言えるでしょう。待ちわびたほど期待はより大きく膨らみ、その向こうには生を実感する感動が約束されているのではないでしょうか。そこに感動があるならば見届けようとするのが人間だ。この大一番を待たなかった人間がいるだろうか。ここを素通りできる人間がいるのだろうか。いやそんなものはいるはずもない。私はここで自信を持って断言します。この待ちに待った大一番。いったいどんな中身のあるものが見られるか。駆け出しがあれば結びがある。それが人生の成り立ちと言っても過言ではありません。 さあ、いよいよ興奮が最高潮に達して参りまし…

  • エンドレス・チャリン

    憂鬱は時を長くする。単に時だけが引き伸ばされたとして、誰が幸せと呼ぶだろう。楽しいは時を速める。夢中になれば時を超えて未来へ進むことができるのだ。それは死への接近に等しいが、生まれるものがあることも見なければならない。駆け抜けて行くものは夢のように儚い。時は惜しいほどに楽しいものが含まれている。それは幸せと呼ぶことだってできるはずだ。未来は未知で危険なものかもしれない。だけど、時々、僕の胸は高鳴っている。現れるであろうものに期待を寄せて、僕は一歩前に進み出る。小さなコインを握りしめて、ガチャの前に立つ。 チャリン♪ 入れたコインが返ってくる。 もう一度、気を取り直して。 「チャリン♪ 今は取っ…

  • 中華ドロボー

    「アンドロイド?」「iPhoneだけど」「17?」「12」「古いんだね」「まだ新しいよ」「ちょっとみせてよ」「えっ?」「うん、やっぱりあったかいね」 少し暖を取らせてほしいと言って猫は私のアイフォーンを枕にした。 「もういい?」「もう少しゆっくりさせてくれないかな」 そう言って猫は譲らなかった。 「お客さん、何しましょうか?」「冷やし中華」 冷やし中華。その言葉を聞いて枕の上にいた猫は、目を閉じたまま身震いした。風を送ったわけではない。直接水をぶっかけたのでもない。微かに猫を動かしたもの。それこそが詩の力ではないだろうか。理屈でなく、長い説明も必要とせず、ただの一撃で遠く離れたものを結びつけ、…

  • 敗軍の将(トリプル・ショック)

    「まで。遠藤八段の勝ちとなりました」 なんと! 私はまだ自分が負けたという事実を信じられないでいた。生まれて初めての反則負け。痛恨の3手指しだった。 「いやー、ついポンポンポンと指しちゃったよー」 バカらしさ、恥ずかしさ、複雑な感情が入り交じって、私はいつになく陽気に振る舞っていた。 「ああ」 八段は、敗者のように小さく頷くだけだった。 そう。本来なら「負けました」と言って頭を下げるべきは向こうの方だろう。本当にあと少しで勝ちだった。そもそも形勢差は圧倒的で、物わかりのいい棋士ならば、とっくに投了していてもおかしくはなかったのだ。私は既に半分勝った気になってほとんど夢見心地だった。それで勢いに…

  • ヒット・マン

    俺たちの描くハードボイルド。スタントは一切なしが鉄のルールだ。俺は筋金入りの殺し屋。いつだって何らかの勢力に追われている。追うのならば俺の右に出る者はいない。一度定めた狙いを俺は外さない。信念は何があっても貫き通す。いかなる雨も嵐も俺の信念を足止めすることはできない。朝食はトースト1枚切り。チーズがあれば上にのせる。なければトースト1枚切りだ。家族はいない。俺は非情に徹することができる。愛する煙草は1日50本は当たり前。俺は本物のヘビースモーカーだ。いつだって煙草と拳銃を手放さない。勿論、どちらも本物だ。俺たちの描くハードボイルド。目指すところはいつだってナンバー・ワン。さあ、そろそろ始めると…

  • グループ鍋を遠目に見ている人

    今週のお題「紅白鍋合戦2023」 寒くなってくると暖かいものがほしくなりますね。夏にいただくホット・コーヒーとは美味しさが違うような気がします。寒いのは嫌だけど、美味しく感じるのは好きという人は、多いのではないでしょうか。 さて、今週のお題は「最近飲んでいるもの」から、「紅白鍋合戦…」に変わったようです。金曜日を楽しみにして、お題に挑戦するという人も多いのでしょうか。飲み物から食べ物へ、そして紅白が加わって絞り込むのも大変そうにも思えます。普段から鍋を幅広く食べている人には、そうでもないでしょうか。先週から比べると、人を選ぶかもしれないお題ではありますね。 鍋と言えば、わいわいとグループでつつ…

  • みそボールの感動をあなたにも

    今週のお題は「最近飲んでいるもの」ということでした。 カカオの力、ホットコーヒー、ポタージュスープなど、色々と思いつきます。寒くなってから、すっかりウィルキンソンへの依存度が下がりました。最近、一番感動したものと言えば、これは食事ジャンルに入るかもですが、みそ玉ですね。 みそ玉というのは、みそを丸めて冷凍してストックしておいて、好きな時に熱湯を注ぐだけで食べられるという奴です。他にも呼び方はあるかもしれません。 実際にどういうものかというのは、言葉で説明するよりもYouTubeを見るのが手っ取り早いでしょう。いくつもあるはずです。偶然僕も見かけたのですが、それ以来すっかりはまって毎朝のように飲…

arrow_drop_down

ブログリーダー」を活用して、ロボモフさんをフォローしませんか?

ハンドル名
ロボモフさん
ブログタイトル
ショートショートに詩情がほしい
フォロー
ショートショートに詩情がほしい

にほんブログ村 カテゴリー一覧

商用