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2023/10/11

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  • 月夜に溺れて 34

    静まり返った続木の敷地を雪久は琥珀の手を引いて歩いている。何も言わずに彼女をここまで連れ帰ってしまった。明日も仕事があるのだから、あのまま寮へ返すのが良かったはずなのに、それすら選べずに手を繋いでいる。琥珀は何も言わない。ただ雪久の手を握り返しただけで。続木の洋館を通り過ぎて、奥の一軒屋にたどり着くと鍵を開けて琥珀を招き入れる。使用人の珠はすでに帰ったようで中はしんとしている。『どうぞ、あがって。...

  • 月夜に溺れて 33

    待ち合わせ場所の喫茶店。雨が少し降り出したので雪久は足早に店のドアを開いた。中ではすでに煉陽明がコーヒーを飲んでいる。『すいません、急にお呼び立てして。』『いいえ。』雪久が席に付くと、陽明は小さく頷いてコーヒーを一つ注文した。『それで・・・電話でも少し聞きましたが。』『ええ。高唾礼子さんの件です。』テーブルに運ばれてきたコーヒーに一つだけ角砂糖を入れるとかき混ぜる。『その件を話す前に・・・知り合いが怪我...

  • 月夜に溺れて 32

    真昼の病院、消毒薬の匂いがする廊下を足早に進み目的の部屋のドアを叩く。小さな返事が聞こえてドアを開くと、ベットに眠る真舌の隣に少し青い顔の菊が雪久を見てホッと息を吐いた。『菊さん・・・。』菊の手足には包帯が巻かれている。説明では彼女自身は擦り傷だけのようだがベットに横たわっている真舌の頭に巻かれた包帯には気がかかる。雪久が眉をひそめると菊が首を横に振る。『義直さん・・・さっき気がついて・・・今は眠ってるだ...

  • 月夜に溺れて 31

    古い建物に大きな荷物を運び込んで一息つくと琥珀が頭を下げた。『すいません・・・荷物を一つにまとめちゃったから・・・。』『いや。これくらいはもてますよ?これで全部かな?まあ、必要なものがあればいつでも言ってもらえれば用意するから。』雪久は荷物をぽんぽんと叩いて笑う。この部屋は琥珀が仕事に通うために小鹿が用意したものだ。女子寮になっていて彼女が紹介された仕事場から近い。『ここなら仕事場から近いし、不便はない...

  • フィルター

    わいわい賑わう居酒屋の店内。各々が手にグラスを持ち楽しんでいる。間に合わせで参加していた睦原(むつはら)かじかは隣に座っている友人メイを睨んだ。『もう・・・こんなのごめんだからね。』小さな声で叱咤するとメイが片手で拝む。『わかってる。ごめんって。』テーブルの上には所狭しと食事が並べられている。かじかの前に座っている宮崎という男はこの中ではリーダーらしく皿に取り分けている。『睦原さんもなにか取る?』ふ...

  • 忘れてしまったあなたへ

    月がゆっくりと上がっていく。夜の静けさの中では獣たちの遠吠えも少し寂しい。丘の上の家に住むナカは時々外に出ては空を見上げている。一年と二十五日。朝は菫の砂糖漬けと作る。昨日、少し離れたお隣さんが摘んで持ってきてくれた。なかなか優しい人で人当たりも良い。ナカのような人間にも優しいのは徳を積んだからだろうか?そんな風にナカが話すとお隣さんはフフと笑った。くだらない世間話だ。午前のうちにベットのシーツを...

  • 手の中の純情

    真っ白い部屋。右側にはマジックミラーが貼られている。目の前の大男は先ほどから私の顔を覗きこんでは睨みつけ、筋張った拳で何度も何度も机を叩いている。繰り返される言葉の意味を私は理解している。それでも私は首を縦に振ることはない。エージェントと呼ばれる男が私の前に現れたのは数年前。エージェントはいわゆるアンドロイドで脳は人のものを持つ。容姿が美しいタイプで0A(ゼロエー)と呼ばれていた。後続のQ4(キュー...

  • 黒い烏 秘密 TOP SECRET 二次作品

    12月某日。とある研究施設にて殺人事件が発生。通報を受けた警察官によると、勤務交代の警備員からの通報により事件が発覚する。施設入り口付近廊下にて職員と警備員の男性二名が頭を銃で撃たれ死亡。室内でも職員男性二名が死亡、これも銃で頭を撃たれている。メインルームは電灯が破壊され、モニターだけが煌々と光りその前には女が一人椅子に座っていた。上半身血まみれの下着姿の女の右手には銃がテープで巻きつけられており...

  • どちらさまですか?

    ピンポーン。インターホンの音。時計は深夜一時を指している。こんな時間に誰だろうか?彼女は玄関に近づくと暗い玄関ドアを見た。玄関ドアは木製で頑丈だが両脇上面をすりガラスで飾っているため、わずかだが外がうかがえる。ドアの向こうには黒い影が見える。ピンポーン。またインターホンの音。今夜に限って家人はいない。誰か居れば安心して対応できるのにどうしようもない。電気をつけずこのまま居留守を使うべきだろうか?少...

  • まばたきのうちに

    雨だ。待ちに待ったはずなのに・・・どうして涙が出るのか。空が藍に染まっている。赤い鳥居を抜けて階段を上がってくるあの子が来る。時刻はいつもどおり。待っているだけでいいはずなのに心が落ち着かない。神ともあろうものが・・・。もうじき私は罰を受けるだろう。長い年月、美しい文字で彩られた文を貰った。読めはしないのに私は何度もそれを見返している。楽しくて楽しくて、楽しくて・・・楽しくて。神を愛するのか?あの子にそん...

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