やなせたかし『ふしぎな絵本 十二の真珠』
どこにでも死闘はある 小川の流れの中にも ツルバラの茂みにも タンポポの葉の下にも なにかが生きて なにかが死んでいる (p.52-53「チリンの鈴」より) この本に収められている十二の短編、そのほぼ全てが、悲しい、強烈に。 なぜこんなに悲しいのかというと、その悲しみを照らす光がまた、強烈だからだと思う。その光は、優しさと呼ぶことができるだろう。 光が同時に影を存在させるように、この本の中では、優しさと悲しさが同時に存在している。優しいから、悲しいのではないのだ。優しくて、悲しいのだ。 通常であれば二分される感情が、ひとつのものとして描かれている。かつて作者が作詞した歌に「生きているから悲しく…
2023/12/23 22:34