特許実務 - 進歩性の基本的考え方(19)【示唆と阻害要因】
はじめに 前回(下記記事)に続き、進歩性の基本的考え方(19)です。 テーマは、示唆と阻害要因です。 masakazu-kobayashi.hatenablog.com masakazu-kobayashi.hatenablog.com 示唆 示唆 「示唆」というのは、ある引用発明の内容中に、他の引用発明を適用することに 関する記述です。 本件発明の構成要件がA+B+C+Dであるとして、 たとえば、スライドの例1にあるように、 公知文献1に、構成A+B+Cからなる公知発明1が開示されており、かつ、 当該公知発明1が高温で用いられると記載されている一方、 公知文献2には、構成Cは高温で安定するた…
特許実務-進歩性の基本的考え方(18)つづき【組合せ類型とロジックの強さ】
はじめに 前回、下記記事の進歩性の基本的考え方(18)【組合せ類型とロジックの強さ】をやりましたが、その続きです。 masakazu-kobayashi.hatenablog.com 行き詰まったら・・・ 組合せ類型とロジックの強さ(2) 背景 ライバル会社の特許出願をウォッチングしていて、その特許発明が邪魔で、特許が無効であることを確認したい(特許クリアランス)、あるいは、実際に無効にすべく、特許無効審判を請求する場合があるかと思います。 既に、ライバル会社から特許権侵害訴訟を提起されており、その中で、非充足の主張が弱く、また、そうでなくても、特許無効の抗弁(=被告として、原告特許は無効であ…
特許実務-進歩性の基本的考え方(18)【組合せ類型とロジックの強さ】
はじめに 進歩性の基本的考え方(18)です。 「20回シリーズ」+「ケーススタディ1~5」の記事を書く予定で、 ほぼ完成しているので、まもなくこの進歩性シリーズも、「一応」終わります。 ご興味のある方は、進歩性のタブで各記事をお読みください。 ちなみに、前回の記事(公然実施品に関する進歩性判断の問題)は、下記です。 masakazu-kobayashi.hatenablog.com 組合せ類型とロジックの強さ 組合せ類型とロジックの強さ(1) パターン 文献(に開示された発明)同士の組み合わせについては、様々なパターンが考えられます。 典型的には、スライドの(3)主引用発明+副引用発明ですが、…
はじめに しばらく特許実務の記事ばかりでしたが、ブログの趣旨は自分のことを残すことでした。そこで、久しぶりに自分のことを書こうと思います。 自分の人生は、ほぼ、「試験」と共に歩んだ人生でした。 私ほど試験を受けている人は、あまりいらっしゃらないかもしれません。 その意味で、試され続けた人生といえるかもしれません。 随分辛い思いもしましたので、結果として、非常に謙虚な性格になりました(笑)。 誰かの参考になるわけではありませんが、試験について、現時点で思っていることを、書き残しておこうと思います。 私の試験の歴史 全部書き切れるか自信がないですが、これまで受けた試験の主なものを思い出して、挙げて…
特許実務 - 進歩性の基本的考え方(20)【証明力-証拠のレベル】
証明力-証拠のレベル はじめに 進歩性の基本的考え方(20)の記事です。 一応これで、進歩性の基本的考え方のスライド説明は終了なのですが、まだ、進歩性の基本的考え方(18)、(19)は書いていません。この2つが終わると一応完成です。 後日、がんばります。 今回は、証拠の証明力の話です。 これは、進歩性欠如を言うときの証拠に限らず、充足性や先使用の抗弁などの 場合にも共通するトピックです。 masakazu-kobayashi.hatenablog.com 証拠の証明力 様々な証拠の形式 進歩性を肯定・否定するための証拠や、進歩性の論点に限らず、充足性や先使用の場合でも、実験報告書を作成し、これ…
特許実務-進歩性の基本的考え方(ケース5)【単なる寄せ集め?】
ケーススタディ5 はじめに 進歩性判断に関するケーススタディの5回目です。 前回の記事は、下記です。 masakazu-kobayashi.hatenablog.com ケース5 特許庁が公開している知的財産権制度入門テキストの事例から拝借しました。 本件発明: 船外機と空中プロペラの両方を設けた船 引用発明1: 船外機を設けた船 引用発明2: 空中プロペラを設けた船 公知文献である引用発明1、2から、本件発明は容易(進歩性なし)と言えるか、です。 このテキストでは、 「・・・、既に実在する発明(アイデア)を単に寄せ集めたにすぎないとして、 『進歩性』がないと判断される可能性があります。」 と…
ケーススタディ4 はじめに 今回は、進歩性判断のケーススタディ4の記事です。 これまで、進歩性の基本的考え方のスライド(本文)については、これまで順次説明を進めてきました(後少しで終わります)。 ご興味がある方は、ブログのタグの「進歩性」を見て頂ければ、全て入っています。 masakazu-kobayashi.hatenablog.com これと並行して、進歩性に関してケーススタディとして1~3までを記事にしています。 masakazu-kobayashi.hatenablog.com masakazu-kobayashi.hatenablog.com masakazu-kobayashi.h…
特許実務 - 特許実務において頻出する悩ましい問題について(セミナー資料)
Various Issues of the Patent Law & Practice in Japan from MasakazuKobayashi13 www.slideshare.net はじめに 昨年末に某大学で行ったセミナーの資料を共有します。 企業等の知財担当者をはじめ、300人近くの方に出席して頂いたそうです。 でも、ウェブ開催なので、その実感がなく(参加者の顔も見れず)、緊張感が全くありませんでした・・・。 AIPPI判例研究会(これは、コロナ前なのでリアルでした。)での発表以来の大人数でした。 内容 事前にご担当者様から「テーマは自由です!」と言われ、逆に困ったので、標記のテ…
特許実務 - 進歩性の基本的考え方(17)【公知文献(特許文献)と公然実施品】
公知文献(特許文献)と公然実施品 はじめに 進歩性の基本的考え方の記事を再開しています。 前回は、主引用発明に副引用発明を付加する場合と置換する場合についてでした。 masakazu-kobayashi.hatenablog.com 今回は、公然実施品を進歩性否定のロジックで使う場合の問題点についてです。 公然実施品を公知発明として使う場合 進歩性のロジックを否定する場合は、通常は、特許文献や他の文献を使う場合がほとんどです。 公然実施品による進歩性否定のロジックを構築しなければならないのは、やむを得ない場合です。つまり、適切な公知文献(特許文献等)がどうしても見つからない場合です。 どういう…
はじめに サボっていた進歩性の基本的考え方のスライド説明を再開したいと思います。 全体のスライドは、下記です。 masakazu-kobayashi.hatenablog.com 今回は、「置換と付加」です。 (私のパソコン、私が刑事事件を扱う影響で「置換」よりも「痴漢」が先に出てきてしまいます。誤変換に注意しなければ・・・。) 置換と付加 進歩性の基本的考え方「置換と付加」28頁 引用文献1(主引用発明)と引用文献2(副引用発明)とを組み合わせて、進歩性否定する理屈を考える場合、 ①置換であれば、 「主引用発明(引用文献1記載の発明)において、「構成○」に代えて、 引用文献2記載の・・・とい…
はじめに 下記の進歩性のスライドが思いのほか好評でした。ありがとうございます。 ブログを書く(セミナーをやる)モチベーションにしたいと思います。 masakazu-kobayashi.hatenablog.com さて今回は、 原告Xの特許権1、2を侵害するY社製造の製品がZ社によって販売されている場合(Y、Zが共同の実施主体の場合ではなく、それぞれが製造と販売を実施している場合)について検討します。 複数の特許権、複数の被告(製造者と販売者など)、それぞれの事件が別々の部に係属した場合の併合の可否について、ざっとまとめておきます。 間違っていたら、教えてください。 特許権複数の場合 原告Xは…
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