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書に耽る猿たち https://honzaru.hatenablog.com/

本と猿をこよなく愛する。本を読んでいる時間が一番happy。読んだ本の感想、本の紹介、本にまつわる色々な話をしていきます。世に、書に耽る猿が増えますように。

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2020/02/09

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  • 『ジョヴァンニの部屋』ジェームズ・ボールドウィン|内面の葛藤や苦悩がほとばしる

    『ジョヴァンニの部屋』ジェームズ・ボールドウィン 大橋吉之輔/訳 白水社[白水Uブックス] 2024.09.26読了 ボールドウィン生誕100年ということで、装い新たに帯が巻かれて書店の新刊コーナーにあった。読み終えた今、絶望感に苛まれてなかなか重たい気分になっている。ボールドウィンの作品は過去に1冊(おそらく一番有名な小説)しか読んでいなくこれが2作目であるが、やはりアメリカを代表する作家だと改めて感じた。 父親や伯母エレンとの確執からフランス・パリに住むアメリカ人青年デイヴィッドにはヘラという婚約者がいる。彼女がスペインに自分探しの旅に出た期間、ジョヴァンニと知り合い深い関係となる。 第一…

  • 『霧』桜木紫乃|この世には「幸福」はなくても「幸福感」はある

    『霧』桜木紫乃 講談社[講談社文庫] 2024.09.24読了 北海道・根室で水産業を営む河之辺家に3姉妹がいた。長女の智鶴(ちづる)は政界を目指す御曹司の元へ嫁ぐ。次女の珠生(たまき)は家を出て花街に飛び込む。三女の早苗は地元の信用金庫の経営者と一緒になる。この物語は珠生の視点を通して語られていく。 常連客だった相羽(あいば)は、親方の身代わりになり警察に出頭するという。かねてから相羽に想いを寄せていた珠生は、この時点で彼を待とうと心に決める。一途な気持ちはすでにこの時からあった。健気で一途な珠生は、娑婆に戻ってきてから「組」を立ち上げる相羽と共に生きる決意をする。 相羽の仕事は裏側にある。…

  • 『海峡』『春雷』『岬へ』海峡三部作 伊集院静|人間が生き抜くこと、信念を貫き通すこと

    『海峡 海峡幼年篇』『春雷 海峡少年篇』『岬へ 海峡青春篇』伊集院静 新潮社[新潮文庫] 2024.09.21読了 伊集院静さん追悼の帯がかけられて重版されていた。表紙のタイトルの文字は伊集院さん自ら筆を取った字のようで、なんと達筆で多才な方よと思う。伊集院さんの作品は何冊か読んでいるが、実はこの作品のことはこれまで知らなかった。 『海峡 海峡幼年篇』 山口県、瀬戸内海の港町に住む英雄(ひでお)は、高木斉次郎の長男として産まれた。高木家は港を中心にして街の事業を経営する家であり、母屋とは別に従業員やその家族が住む長屋があり、総勢50人以上で大家族のように暮らす。父親は家にいることがほとんどなか…

  • 『小さな場所』東山彰良|中国語が日本社会の中に溶け込む日は近いかも

    『小さな場所』東山彰良 文藝春秋[文春文庫] 2024.09.13読了 台湾のどこにでもあるような街・紋身街(もんしんがい)にある食堂の息子景健武(ジンジェンウ)の目線で描かれる連作短編集である。どこにでもいる人たち、どこにでもある些細な事件、つまり他愛もない日々の営みがゆっくりと綴られる。 健武の父は「あんな大人になるんじゃないぞ」と言うのが口癖になるほど、そういう大人(子供にとって決して見本とならない大人たち)が多い街なのだけど、そんな人たちだって良いところもあって彼らから学ぶことも案外多いものなのだと思う。 「神様が行方不明」という章に登場する孤独さんの読み方は中国語(または台湾語)だと…

  • 『リヴァイアサン』ポール・オースター|親友に捧げる愛の鎮魂歌

    『リヴァイアサン』ポール・オースター 柴田元幸/訳 ★★ 新潮社[新潮文庫] 2024.09.12読了 どうしてこんなにも私の心を鷲掴みにするのだろう。この導入部、この語り口、この読み心地。例によって冒頭2〜3頁読んだだけで惹き込まれたわけだが、ふとこの感覚(初めて読む時に限られる)を味わえるのはあと数回だけかと思うとわけもなく寂しさが込み上げてきた。オースターの小説は未読の作品(邦訳済の作品)はあと2冊ほどしかないのだ。 お気に入りの作家がいたら多かれ少なかれこう感じる人は多いだろう。しかしオースターさんに関しては、心底大きくそう思う。今年の4月に彼が逝去されたことも大きいだろう。つまりもう…

  • 『笑うマトリョーシカ』早見和真|味方だと思っていたら敵なんてことも

    『笑うマトリョーシカ』早見和真 文藝春秋[文春文庫] 2024.09.09読了 早見和真さんの作品は『イノセント・デイズ』や『店長がバカすぎて』が好評のようでとても気になっていた。読むのはこれが初めてだ。この『笑うマトリョーシカ』は今クールでテレビドラマにもなっており、先週最終回を終えたようだ。 若くして官房長官に昇りつめた清家一郎とその秘書鈴木俊哉。彼らは高校時代に知り合った。父親のある過去が原因で自らは政治家になれないと感じた俊哉は、一郎の才能を見い出し、志を同じくして彼をサポートする形で夢に向かう。一方、「清家は誰かの操り人形なのでは?」と疑問を持った女性記者の道上は、彼らを謎を探ってい…

  • 『彼岸過迄』夏目漱石|改題「蛇の長杖」、ジャンルは精神分析小説

    『彼岸過迄』夏目漱石 ★ 新潮社[新潮文庫] 2024.09.08読了 先日読んだ島田雅彦さんのエッセイで、夏目漱石著『彼岸過迄』の尾行の場面について「探偵小説」の一つだと話していた。漱石ってそんな小説も書くのかなと俄然興味を持っていた。 この小説は朝日新聞に連載された連載で、元々漱石が「元旦から始めて、彼岸過迄書く予定だから単に名づけたまでに過ぎない実は空しい標題である」と序章で言っている通り、内容とは全く関係ないタイトルである。だから逆にインパクトがあって忘れられないけれど。短編をつなげたというスタイルのようだが、今でいう連作短編はここから始まったのだろうか。 なるほど、これは探偵風小説だ…

  • 『ビリー・サマーズ』スティーヴン・キング|それなりの真実が含まれているとおもしろくなる

    『ビリー・サマーズ』上下 スティーヴン・キング 白石朗/訳 文藝春秋 2024.09.03読了 圧巻の物語だ。やはりキングって桁違いだなと唸らされる。キングの作品は外れが少ないので読む前からどうしてもハードルが上がってしまうのだが、その期待が損なわれることもなく、読み終えるまで興奮冷めやらずだった。 ビリー・サマーズというのは殺し屋。裏社会で殺人稼業を繰り返しているが、ビリーは悪人しか殺さないことをモットーにしている。依頼人ニックからある人物を殺すよう頼まれた。ニックはビリーの身分を偽るために小説家志望の男性の役割を与えて偽装させる。しかしビリーには実はもう1つ別の顔もある。 小説家志望の男(…

  • 『隅田川暮色』芝木好子|東京の下町で伝統工芸とともに生きる

    『隅田川暮色』芝木好子 中央公論新社[中公文庫] 2024.08.28読了 縁あって私は現在隅田川界隈に歩いて行ける距離に住んでいる。ダイエット目的で10年以上前から始めたのに、今はもはや健康維持でしかなくなっているスロージョギングは、隅田川テラスを中心にしたコースだ。隅田川には何本もの橋が掛かっていて、ひとつひとつの橋のデザインや色(夜間は特に)はこんなにも違うのかと妙に納得させられる。橋を見た印象もかなり違うし、道をあるいているときは建物や交差点が目印になるけれど河川敷の場合は橋なんだよな。 夫の生家が商いをする「組紐作り」に魅入られて才能を発揮していく一人の女性の生き様が東京下町の風景と…

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