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書に耽る猿たち https://honzaru.hatenablog.com/

本と猿をこよなく愛する。本を読んでいる時間が一番happy。読んだ本の感想、本の紹介、本にまつわる色々な話をしていきます。世に、書に耽る猿が増えますように。

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2020/02/09

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  • 『ガリバー旅行記』ジョナサン・スウィフト|旅行記・冒険譚と名のつくもので間違いなく一番おもしろい

    『ガリバー旅行記』ジョナサン・スウィフト 柴田元幸/訳 ★★ 朝日新聞出版 2023.12.27読了 小さい頃に『ガリバー旅行記』を読んだ記憶はある。とはいえ、大男が地面に横たわり、その周りを多くの小人たちがぞろぞろ歩いてるような挿絵を覚えているだけと言った方が正しいかも。 その小人たちが住む国の場面しか印象になかったが、実はそのエピソードは旅の一つ目の国「リリバット国」での出来事だったのだ。タイトルに「旅行記」とある通り、ガリバーが訪れた各地のことが書かれている。小人たちが住むこの国(挿絵)のインパクトが強すぎた。大きさは人間の12分の1だ。 なんと次にたどり着いた「ブロブディングナグ国」は…

  • 『存在のすべてを』塩田武士|引き摺り込まれる抜群のおもしろさ

    『存在のすべてを』塩田武士 ★ 朝日新聞出版 2023.12.21読了 この殺風景な表紙が不思議だ。何が表されているのだろう。帯にある久米宏さんの「至高の愛」という言葉も気になる。 神奈川県で起きた二児同時誘拐事件、この導入から早速引き込まれる。身代金受渡しに伴う警察による追跡劇は息をもつかせぬ緊迫感だ。私は横浜の地に、しかもこの現場周辺に住んでいたことがあるので土地勘があり、なおさら引き摺り込まれた。 誘拐事件に謎を残したまま30年の年月が流れた。当時捜査一課でマルK指導(身代金受渡し時の現金持参人に指示をする立場)を担った中澤の訃報により、中澤が死ぬ間際まで解決に挑んでいたことを知った大日…

  • 『関東大震災』吉村昭|天災には怒りや恨みをぶつける相手がいない

    『関東大震災』吉村昭 文藝春秋[文春文庫] 2023.12.17読了 今年は関東大震災から100年が経ったということで、装い新たに(というか文庫カバーの上にぐるりと更なるカバーがかけられている)書店に並べられていた。天災は人間の力で防ぎようがない。それでも、その記録から事実を理解し教訓とし、我々が今後なすべき事を考えるためには、語り継がれなくてはならないのだ。 日本は言わずと知れた地震大国である。一つ前に読んだ山本文緒さんの短編集のなかの『バヨリン心中』の中に、大地震を経験したポーランド人が日本人の妻と子を捨てて自国に帰ってしまったというのを思い出した。それだけ、大地震は恐怖なのだ。地震を知ら…

  • 『ばにらさま』山本文緒|日常にひそむ虚無感とままならなさ

    『ばにらさま』山本文緒 文藝春秋[文春文庫] 2023.12.15読了 表題作を含めた7作の短編がまとめられた本。なんて小気味良くて、心を掴まれる文章なんだろう。日常にひそむちょっとした不安定さを掬い取り、虚無感と生きることのままならなさを絶妙に描く。どの作品も、山本文緒さんらしさが光る唯一無二の作品たちだ。山本さんは短編も良いなぁ。 『ばにらさま』 雑誌から飛び出したモデルのような容姿端麗な美女。色がとても白いことから友だちが「ばにらさま」とあだ名をつけた彼女と付き合っている「僕」は、彼女の気持ちがわからない。読んでいて、主人公の「僕」よりも「ばにらさま」がどういう気待ちなのか、今度どうやっ…

  • 『野生の棕櫚』ウィリアム・フォークナー|交わらないのにお互いを高め合う二つの作品

    『野生の棕櫚(やせいのしゅろ)』ウィリアム・フォークナー 加島祥造/訳 中央公論新社[中公文庫] 2023.12.12読了 フォークナーの小説を読むときは心を静謐に保ち、雑音を排除する必要がある。そうしないと頭に入ってこないのだ。タイトルにある漢字の「棕櫚」は見慣れないが、カタカナで「シュロ」と書かれているのはまれに目にする。そう、椰子の木のことである。 二つの異なる長編小説が交互に書かれている。今であれば当たり前のように小説の構成としてあるものだが、これが刊行された時には斬新なスタイルだったのか、文学界に激震が走ったようだ。 タイトルでもある「野生の棕櫚」と「オールド・メン」という二つの作品…

  • 『ウィンダム図書館の奇妙な事件』ジル・ペイトン・ウォルシュ|保健師探偵イモージェンが魅力的

    『ウィンダム図書館の奇妙な事件』ジル・ペイトン・ウォルシュ 猪俣美江子/訳 東京創元社[創元推理文庫] 2023.12.06読了 保健室の先生って、優しかったよなぁ。小学校でも中学校でもその記憶はある。私は保健室に入り浸る生徒ではなかったけれど、包容感のあるあの部屋と先生の雰囲気はどこでも同じなのだろうか。若くて綺麗な先生であれば男子生徒は甘えるだろうし、ある程度歳をとった方であっても、その独特の優しさには安心感を覚える。 この小説の主人公は、セント・アガサ・カレッジの学寮付き保健師イモージェン・クワイである。小中学校の保険の先生とは少し異なる立ち位置だが、やることは同じで、主な仕事は学生たち…

  • 『がん消滅の罠 完全寛解の謎』岩木一麻|結局、がんというのは何ものなの?

    『がん消滅の罠 完全寛解の謎』岩木一麻 宝島社[宝島社文庫] 2023.12.04読了 副題の一部になっている「寛解(かんかい)」の意味は、医学用語で「がんの症状が軽減したこと」である。つまり、完全寛解とは、がんが完全に消滅して検査値も正常を示す状態のことである。 (目次の次頁に記載) 岩木一麻さんのデビュー作にして第15回このミス受賞作である。ドラマ化もされていたみたいだけど、全然気付かなかった。久々の医療ミステリで存分に楽しめた。ただ、こういった「がん」を扱うなど生死に関わる医療がテーマとなると、身近で辛い思いをする人がいる場合に、どうしても心から楽しめない自分がいる。しかし小説なのだから…

  • 『結婚/毒 コペンハーゲン三部作』トーヴェ・ディトレウセン|情熱的なトーヴェの生き方こそ詩的だ

    『結婚/毒 コペンハーゲン三部作』トーヴェ・ディトレウセン 批谷(ひたに)玲子/訳 ★ みすず書房 2023.12.02読了 デンマークの作家といえば、アンデルセンがぱっと思い浮かぶ。というか、他に誰がいるだろう?首をひねっても出てこない。このトーヴェ・ディトレウセンという作家は日本ではほとんど知られていないと思うが、デンマークでは国民的作家であるらしい。挑発的で、そしてなんともカッコいい姿で煙草をくわえるこの表紙の方こそ、トーヴェ本人だ。詩人・小説家である彼女が残した自伝的小説『子ども時代』『青春時代』『結婚/毒』の三部作を、一冊にまとめあげたのが本書である。 『子ども時代』 儚げでもろい、…

  • 『田舎教師』田山花袋|退屈なのに名作

    『田舎教師』田山花袋 新潮社[新潮文庫] 2023.11.28読了 田山花袋といえば『布団』である。布団の匂いを嗅ぐ中年男性の姿がよく取り上げられており、花袋の名前だけは知っている方は多いだろう。実は私も名前を知っていただけで、花袋の作品を読むのは初めてだ。この『田舎教師』も『布団』同様に花袋作品の中で代表作である。 タイトルの『田舎教師』からは、先生と生徒の触れ合いや子供と自身の成長が書かれている物語かと想像していたが、全く異なっていた。もちろん小学校での出来事も随所には書かれているが、ほんの僅かだ。それよりもメインとなるのは、1人の青年の心の機微のありのままの姿、捉えどころのないただのなん…

  • 『夢みる宝石』シオドア・スタージョン|切なく儚い幻想的な世界

    『夢みる宝石』シオドア・スタージョン 川野太郎/訳 筑摩書房[ちくま文庫] 2023.11.25読了 この作品はスタージョンの最初の長編小説で1950年に刊行された。もともと早川書房から邦訳されていたが、この度新訳としてちくま文庫から刊行されたものである。スタージョンの作品は過去に河出文庫から出ている『輝く断片』を読んだことがあるのに、ほとんど覚えていない。もしかしたら途中で断念してしまったのか。 虐待を受けていた孤児のホーティーが家を飛び出し、新たに出逢った人たちとの交流を通して成長していく物語である。超常現象的な要素もある。SF作家として知られているスタージョンだが、この小説はファンタジー…

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