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創作BL小説を書いています。 ヤフーブログから引っ越して参りました。
ヤフーブログ終了でライブドア様に引越しました。今日の夜中更新分からはこちらがメインです!
「ゆ……っ。祐樹……っ、熱くて……硬い……っ、祐樹の物で……開かれる……っ感じが……物凄く……っ、悦(い)……っ」 甘く濡れた歔欷(きょき)の声が祐樹と彼が繋がった場所から奏でられる肌の擦れ合う音や動くたびに立つ淫靡な水音と相俟って客室を愛の空気で満たしてい
「病院内に倫理委員会が設置されていることはご存知ですか?」 教授・准教授クラスとか看護総長や事務局長などは指名されるので当然知っているだろうが、前線に立っている人間は知らない人も多いので聞いてみた。祐樹最愛の人は教授職だけれども「手技と医局運営に尽力した
最高に魅惑的で、それでいて無垢さを感じさせる白い飛沫を宿した紅色の顔をこのままにしておきたいという切実な欲求に駆られたが、最愛の人には不快かと思って薔薇の香りのお湯を浸したタオルでゆっくりと拭った。瞳を閉じた彼はとても安らかな笑みを浮かべている、と言っ
向かいの席に座って古びた合成革と思しきメニューを捲っている三好看護師に聞いてみた。職場では見慣れた顔だったが私服姿は初めてだ。「大阪風ミックスジュースにします」 パタンとメニューを閉じる爪が何も塗られていない点も職業柄好ましい。尤もネイルは自粛するよう
「聡の紅色に染まった綺麗な私好みに顔に艶やかな真珠が宿っているのも最高に綺麗ですよ。睫毛に私の真珠の放埓の細かい飛沫(しぶき)が精緻な宝石細工のように宿っているのも……」 理知的で端整な容貌が無垢な淫らさに煌めいているのを見ることが出来るのは祐樹だけの特権
医師には見せなくても看護師には別の顔を見せている不埒者が居る可能性は高い。今夜の救急救命室は久米先生が替わってくれたことも有って、後は三好看護師に話を聞いてみるべく医局に入って来るのを待つことにした。ナースステーションとか彼女たちの控室に行くことが出来
「え?祐樹……」 トリートメント髪全体に付けたままでタオルを被せた。そういう行為は初めてなので驚いたのだろう。「これは直(じか)にシャワーを当てるよりも気持ちが良いハズです」 シャワーを強にしてタオルに水流を迸(ほとばし)らせた。「本当だ。じんわりと頭皮に浸
「久米先生、実家の母の容態が非常に悪化してしまってイザとなれば帰省しなければならないのです。で、今夜の救急救命室勤務を替わって頂けませんか?」 柏木先生にも吐(つ)いた白々しくも真っ赤な嘘を繰り返すことにした。二人は同じ医局だし、異なる嘘を祐樹が口に出した
若木のような肢体が風を受けたようにしなやかな動きをした。「祐樹、私も愛している」 薄紅色に染まった耳朶(じだ)が健康的な色香を纏ってとても綺麗だ。「愛する聡の全てが欲しいです……。最も魂に近い場所で聡を感じたいです」 薄紅色の耳朶(みみたぶ)を甘く噛みなが
ちょうど今の時間は患者さんの食事の時間で廊下に人は居ない。香川外科の場合は病気が病気だけにベッドから起き上がる人は稀だが、他科の入院患者さんはリハビリがてらとか、暇つぶしの病院散策でウチの科にやって来る人も多い。しかし、この時間帯だけは皆ベッドに居ない
「離婚するか夫婦生活を継続するかで変わってきますわ。相場と言われましても、両者の合意が有ればその金額ですのよ。個人的にはお安いと思いますけれども。ただ、相場は離婚で300万円程度、継続で100万程度だと興信所の方(かた)に教えてもらいました。あの部屋で密会
「『つみたて投資枠』はその名の通り毎月決まった金額でコツコツと積み立てる方(ほう)が長期的に見て得だ。方程式で説明することも出来るが、このバーでの祐樹の質問は全病院関係者に向けてのアナウンスの練習という意味も有るのだろう?だったら方程式を使わない方法で説明
「病院内は不倫が多いみたいですね。露見したら家庭を木っ端微塵(こっぱみじん)にする破壊力を潜在的に秘めていますよね?それなのに何故そんなリスクを取るのでしょう?人体に触れることに職業柄抵抗がないということは分かります。そして、特に外科では手術の達成感を皆で
「スマートフォンだと録画時間も限られてしまうそうですわ。いつ次の密会が有るかも分からないですし……」 多分長岡先生以上に病院内に精通している祐樹は、密会場所になりそうな人気(ひとけ)のない部屋がたくさん有るのは知っている。 「ここは逢瀬には絶好な場所だな」
名前は忘れてしまったが、記憶容量が目の前で大輪の花の笑みを浮かべている最愛の人ほどないので不要な情報は全て破棄している。「ああ、なるほどです。他にも不動産などを持っていたら、あっという間に相続税対象者になりますよね?税務署にしては珍しい温情ですが。鬼の
「世界恐慌は当然知っています。『鬼退治アニメ』の先行公開の劇場版と『遊郭編』の最後の二話が劇場で先行放映された時にデートでご一緒しましたよね。あの時に観に行った『タイタニック』でも世界恐慌で婚約者が自殺したとヒロインは言っていました。しかし、私は新NIS
「やはり問題になりますよね?誰も来ないハズの部屋で密会をしていれば……?」 祐樹の我が儘に押し負けて執務室で愛の交歓をしたのが事実だった。当然二人しかその事実を知らないのだけれどもそれが露見したら最愛の人の立場もまずくなるのではないかと。愛の行為に対して
「いや、業績が悪いというわけでもないな……」 薄紅色のしなやかな指がグラスを持っているだけで絵になる。グラスを傾けている彼は最適解を導き出しているような感じで少し考えに耽っている表情だ。そんな彼の怜悧な様子は病院でも見て来たけれども、そちらは数秒で答えを
「祐樹……」 ビルの狭間にあるごく狭い路地だった。殺風景な空間に甘く蕩けた声が艶やかな空気の欠片となって周りに飛び散っていくような錯覚を抱いた。瞳を閉じた顔がキスを強請るように上に掲げられている。薄紅色の唇も祐樹の接吻を待ち焦がれたような切なさで咲き誇っ
この話の輪に居る錚々たる外科医が爆笑した理由は、手術の時に妬み混じりのヤジを飛ばして来た外科医に鮮やかな反論をした森技官と呉先生の苦手というか生理的嫌悪感まで抱いてしまう話題になったのだろうかなと予想してみた。「で、大出血した心臓のリカバリーを具体的に
「非の打ちどころのない性格ですよ。具体的にはいつも私のことを最優先に考えて下さったり想って下さったりしていますよね。関西空港で初めて(・・・)会った時に一目惚れをしたのは事実ですが、内面を知るにつれて徐々に好きになっていきました。聡の性格がもし異なっていた
これは突っ込んで聞いた方が良いのか?それとも大爆笑に合わせるべきかという、いかにも日本人らしい控え目な思考が頭を過(よぎ)って最愛の人と困惑した視線を絡ませた。アッシュベリー先生も突然の大爆笑に面食らった表情を浮かべている。何だか躁めいた笑いだと思ってし
「あの薬品保管室は香川外科の医局の人間しか知らない部屋です。ですから隙を見て侵入して密会に使っている人間は限定されます。そのことが表沙汰になれば香川外科の不名誉として病院内の評判失墜になるでしょう?発見した時には教授にご相談をしようと考えたのですが、あま
「そろそろ、ホテルに戻りましょうか……?」 教授職の最愛の人は妥当だが、祐樹は一介の医局員に過ぎない祐樹は国際公開手術推薦のためのオマケだったとしても心臓外科医学会の理事という肩書なので、ホテルは学会が準備してくれている。普通の配慮なのかまでは分からない
特に臭いだった。汗とか精液の入り混じった独特の……。これはこの部屋に入って性行為を仕出かしている男女が居たということだろう。長岡先生はプライベートの時には香水をつけているのは知っている。ちなみに祐樹が内心驚くような大きなダイヤモンドの指輪とその指輪のデ
病棟巡りを終えて医局に帰った祐樹は、自分の机のパソコンのキーボードの上に上質な紙の封筒を見つけた。良く来るダイレクトメールみたいに住所や宛名が書いていないのを不審に思って裏返すと「長岡」と綺麗な字で書いてあった。香川外科唯一の内科医の彼女には当然LIN
「私から説明致します。京都は観光地としても有名なのは皆様もご存知のことかと思います。昔はメインの仕事、つまり男性に肌を許すことでしたが、今ではお酌をしたり話し相手になったりすることの方(ほう)が多いらしいです。しかし普通の女性では『鬼退治アニメ』のような恰
オレンジ色の照明は落としてあるとはいえ、スマホの画面は充分に見える。「え?100株保有していれば500円サービス券が4枚貰えて200株だと10枚、つまり5千円分が実質無料で食べることが出来るのですか?呉先生が泣いて喜びそうですね」 呉先生は可憐な野のス
「TNT爆薬というのが最も破壊力が大きいとどこかで読みました。あれなら大正時代にもあったと思いますが、タイミング良く爆発させるのは難しいですね。少しの衝撃で爆発まではしないらしいですし……。そういえば、狭心症に劇的に効くニトログリセリンはダイナマイトの原
「明石教授も優れた外科医なのだけれども、英語力がイマイチと言うか……。いや日常会話レベルは完璧だよ?しかし、細かい点で通じないことが多くて教わる場合はそこがネックになる。その点田中先生はそういう点もなさそうだ。だからセイブ術を教わる語学の壁もないと判断し
「死滅回遊魚な……」 祐樹の肩に凭(もた)れ掛かった首を少しだけ上げた最愛の人は夜目にも澄んだ瞳を祐樹に向けた。地元の京都では定番のデートコースでもある鴨川の河川敷で、四条大橋から遠い場所でもこれほどの積極性は見せてくれなかったので何だか嬉しい。 東北とい
「セイブ術も明石教授を上回る出来だったと思います」 意外な言葉に口に含んでいたロマネコンティを吹き出しそうになった。しかし、大変高価なワインなので勿体なさ過ぎて必死に堪えた。最愛の人は大ぶりのワイングラスを細く長い指で持ったまま瑞々しい花のような笑みを浮
「そうだ。6,626円×100がミニ株を使わなかった場合の金額だ。上ったり下がったりしているだろう?」 オレンジ色の灯りで照らされた指がスマホを操作している。性格が最も好みだが、彼の顔や肢体も祐樹は大好きだ。しかし、凱旋帰国の前に見せられた彼の手技のビデ
公立の高校は詳しくは知らないけれども、全国で同じ仕様になっているのかもしれない。 と言っても祐樹の通った高校しかサンプルデータはないので定かではない。 最愛の人も公立高校を卒業しているので聞いてみようかとも思った。 自転車が遠ざかっていくと彼の頭が元通り祐
彼が祐樹の肩から頭を上げたと同時に自転車のライトと思しき光が近づいて来た。この近くの住民だろう。最愛の人が軽やかに立ち上がって祐樹との距離を友達のパーソナルスペースに戻す。幾ら「多様性」が重視されていると謳われている現代でも男性二人が密着して座っていれ
「サトシ、久しぶりだな?日本に籠り切りで何をしていたのかと思っていたが、年上(・・)の指導をずっとしていたのかい?」 いかにも親しそうに肩を叩いているアメリカ人と思しき人に少しムッとした。アメリカ人のパーソナルスペースは日本よりも近いことは知っていたにも関
一気に買うよりも上策な方法というのは何だろうと疑問に思ったが最愛の人の薄紅色の唇が紡ぐ言葉に聞きほれてしまう。「株式は良さげな銘柄(めいがら)、つまり会社をおいおい選ぶとして……」 三好看護師の同僚兼友達が「銀行でNISA口座を開設してしまったら投資信託
「ウチの田中」と呼んでくれたのはとても嬉しいし何だか新鮮な感じだった。しかも所有権を主張されたような気がする。しかも「出来なくはない」とゴール医師に言っている。「大学病院長兼医学部長の斎藤に貴方の上司から正式な要請のメールか手紙を出して下さるようにお願
「特に不思議に思ったことはないですね。強いて言えば、刃(やいば)の色が初めて握った剣士によって変わるという点でしょうか?『呼吸』の適性が分かるという刀の色は、最終選別を突破して分かるモノですよね。例えば主人公は『水の呼吸』の修行をしていても『滅多に見ない』
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ブログ記事が読めなかった件についてこんにちは。いつもお読みいただき、本当にありがとうございます。先日公開した記事について、リンクをクリックしたにもかかわらず「ページが表示されない」「アクセスできない」といった現象が一部の環境で発生していたようです。大
「祐樹……、この二人だけの愛の空間……。本当にこの屋上が最も高いのだな……。祐樹の高校の屋上もこんな感じだったのか?」 キスの合間に紡がれた、艶やかな中にも無垢さを含んだ言葉が紡がれている。最愛の人の高校時代も教室から出ることもなく読書をしているか、定期
いつもご覧いただきありがとうございます。これまでブログの更新はパソコンで行っていたため、スマホでの表示について深く意識していませんでした。ところが先日、珍しくスマホから自分のブログを見てみたところ、うっかり広告をタップしてしまい、まったく興味のない外部
「あ!オレ、いや私までも真殿教授は、とても不本意そうな顔で、『なぜFacebookをしないのか』と言ってきたことがあります。まだ医局にいた頃です。大喧嘩をする前も一触即発といった感じが漂っていたのですが、それでも誘ってくるのですから、イエスマンばかりの医局員は皆F
「――先に答えを言ってしまったら、興が削がれるでしょう?」 最愛の人の薄紅色の唇を祐樹の唇で封印した。そしてサマーセーターを着ていても先ほどピーチフィズを零したせいで可憐に尖った胸を指先で弾いた。愛の交歓の前奏曲としてはちょうどいいだろう。このエレベータ
そういえば、最愛の人も祐樹も「心臓外科」の医師一覧に載っているが、同じような「理知的で誠実な、そして控え目な笑みを浮かべてください」と広報室の人に言われた記憶がある。だからきっと同じ指示が医師全員に行き渡っているのだろう。「私が特定不可能な以上、森技官
確かにその通りだろうなと思った。脳外科のアクアマリン姫こと岡田看護師と付き合ったことで、久米先生はゲームという二次元から普通の恋愛にシフトしていて、以前ほどのめり込んではいない。しかし、顔は清楚なのに胸が異様に大きい美少女のセーラー服を一枚一枚脱がして
「別に私はガンジーのような非暴力主義者ではない。祐樹が久米先生の頭を叩いているのを見た時、その行為を彼自身が喜んでいると判断したので、敢えて干渉しようとは思わなかった。医局員全員も、あれは『愛のあるイジり』だと理解していると柏木先生が言っていた」 柏木先
「ウチの病院のサイトに、精神科所属の医師の顔写真は載っていましたっけ?」 最愛の人が淡い笑みを浮かべて頷いている。誰が聞いているかも分からない職員用の食堂で呉先生を揶揄する医師二人は、たとえ親真殿派ではなくても呉「教授」に反対するはずだ。 二人で暮らして
うっかり布地越しとはいえ、胸の尖りを晒してしまった最愛の人のリアクションも非常に気になった。そういう情事に触れられると、普段の最愛の人は顔を紅色に染めて目を伏せていた。しかし今夜はそうではなかったので内心、意外だった。 祐樹と二人きりの時には、大輪の紅
特筆すべきは最愛の人の麗しい筆跡のみで、祐樹には縁のない名前の羅列に過ぎない。森技官が、あたかも国家機密のように大切に抱えていたその紙を、祐樹はテーブルに広げ、何の演出もなくスマホで撮影し、LINEで清水研修医に送信した。一応「極秘でお願いします」とだ
「また始まった」 呉先生がぼそりと漏らした。諦めと愛情が絶妙なバランスで同居した、乾いた呟きだった。しかし、それ以上何かを言うことなく、呉先生は無言で森技官に視線を向けていた。祐樹もつられて視線を向ける。 森技官が言う「備考欄」には、最愛の人の達筆が静か
最愛の人はどこか誇らしげなセピア色の口調とまなざしだった。杉田弁護士は極上の生クリームを心行くまで舐めたチェシャ猫のような表情だ。何しろ祐樹に「香川教授が今『グレイス』に来ていて、多数の男たちから奢られている」と知らせてくれたのは彼だった。「グレイス」
四個の洋菓子は既に食べてしまっている。呉先生は最愛の人よりも華奢な身体なのにどこに収まったのだろうか?まあ、洋菓子効果で呉先生の決意がさらに固まったなら祐樹としては喜ばしいのでスルーしよう。「――新しいかどうかまでは分からないですよ。ただ、その看護師が
最愛の人も男性器は見慣れているはずだ。といっても大学の講義の一環や医学部生の時にボランティアとして参加していた救急救命室での経験に限られていただろう。身体を重ねた相手は祐樹が二人目で祐樹のソレはともかく初めての相手のはそうまじまじと見ていないような気が
「教授教えて下さって有難うございます。あ!お前が軽躁の入り口に立っているかと思った。本気大道芸だったからな、あれはさ」 森技官は一瞬だけアルマーニがこよなく似合う肩を落とした。恋人の言葉は妙に効くらしい。祐樹に言われたなら、きっと三倍返しで皮肉を返してい
最愛の人の怜悧な声は相変わらず淡々としていて、まるで「地球は丸いのです」という自明すぎることを話しているようだった。その静謐な口調が胸の奥に染み入り、祐樹の心は、まるで水面に沈んでいく光の粒のように最愛の人の言葉に全て吸い込まれていく気がした。ただ、二
最愛の人は固まり、呉先生は呆れ果てたスミレの花といった感じで単に咲いている。祐樹は身体を動かすと笑いの発作が再発しそうで、身じろぎすら出来なかった。 精神的には一時間、実際には五分くらいだろうか?ナゾの空白の時間だけが、ただ過ぎていった。 最愛の人がし
ナツキは一瞬だけスマホに目を落とした。多分、両親の待つ家に帰ろうかと思ったのだろう。しかし、今の祐樹は「グレイス」の常連ではない。 今宵訪れたのは最愛の人とのデートの一環で、こんなに長居をするつもりもなかった。最愛の人も祐樹に誘われたから足を運んだだけ
祐樹が洗面所で顔を拭きながら深呼吸を一つ二つと行い、ようやく笑いの発作を収めてキッチンに戻った瞬間、祐樹は一瞬、時空が歪んだのかと思った。 テレビの中でしか見たことのないはずの――学生運動、アジ演説、安田講堂の熱狂。それなのにそこに居たのは、アルマーニ
彼が祐樹の肩から頭を上げたと同時に自転車のライトと思しき光が近づいて来た。この近くの住民だろう。最愛の人が軽やかに立ち上がって祐樹との距離を友達のパーソナルスペースに戻す。幾ら「多様性」が重視されていると謳われている現代でも男性二人が密着して座っていれ
「サトシ、久しぶりだな?日本に籠り切りで何をしていたのかと思っていたが、年上(・・)の指導をずっとしていたのかい?」 いかにも親しそうに肩を叩いているアメリカ人と思しき人に少しムッとした。アメリカ人のパーソナルスペースは日本よりも近いことは知っていたにも関
一気に買うよりも上策な方法というのは何だろうと疑問に思ったが最愛の人の薄紅色の唇が紡ぐ言葉に聞きほれてしまう。「株式は良さげな銘柄(めいがら)、つまり会社をおいおい選ぶとして……」 三好看護師の同僚兼友達が「銀行でNISA口座を開設してしまったら投資信託
「ウチの田中」と呼んでくれたのはとても嬉しいし何だか新鮮な感じだった。しかも所有権を主張されたような気がする。しかも「出来なくはない」とゴール医師に言っている。「大学病院長兼医学部長の斎藤に貴方の上司から正式な要請のメールか手紙を出して下さるようにお願
「特に不思議に思ったことはないですね。強いて言えば、刃(やいば)の色が初めて握った剣士によって変わるという点でしょうか?『呼吸』の適性が分かるという刀の色は、最終選別を突破して分かるモノですよね。例えば主人公は『水の呼吸』の修行をしていても『滅多に見ない』
「店舗を構えているとなると人件費の問題が出てくるだろう?窓口の女性や営業の人など一店舗で10人以上を配置しなくてはならない。それにオフィスビルの家賃とか光熱費その他諸経費を考えるとそれらを手数料で賄わなければならなくなる」 なるほどと思ってしまう。「最近
「そうなのか?それは少し興味があるな」 若干弾んだ声と艶やかな眼差しが夜の空気に煌めいている。ポケットからスマホを出して検索した。「この旅館ですね」 施設案内という部分をタップした。「本当だ……確かに似ているな」 彼は祐樹との距離を詰めて来てくれるのがと
「麻酔医自身がクローズアップされることだろうか。森さんが日本で面白い催し物を開催予定しているらしいな。田中先生もこうして皆に祝福されたら外科医をしていて良かったとしみじみと思うだろう?麻酔医だって同じだと思う。そういう意味で、日本の催し物で外科医が脇役、
「プラチナや金(ゴールド)は今高価らしいですよね。柏木先生の奥さんが千切れたネックレスとか片方だけになったピアスをリサイクルショップに持って行ったら驚きの価格で買い取ってくれたとホクホクしていましたよ」 柏木看護師は手術室のナースなので手術(オペ)後に雑談す
「仙台結界(コロニー)と言っても、一般人には黒い壁としか認識出来ない物だろう?行ってもいいけれども呪いが見えない私達には単なる道路だろう」 月明かりに照らされた最愛の人の顔は苦い笑みを浮かべている。この人がこういう表情を浮かべるのは珍しいので心の中のシャッ
最愛の人は手術(オペ)を一日二件こなしている上に医局の責任者としての事務仕事を完璧にこなしている。有能な秘書が居るのは確かだが、事務処理能力は祐樹が知る限り最も優れている。森技官の無茶振りで不本意ながら捜査だか調査を二人して頼まれた時に彼の文書作成能力に
「そうなのですか。それは何故ですか?そんなにモルガンスタンレー銀行にお金が有ったら心強いと思いますが?」 思わず背筋を伸ばして彼の複雑そうな表情をまじまじと見詰めた。恋人同士の甘い時間はホテルの客室で過ごすことにして、このバーでは病院関係者の資産運用の話
弁護士の必要性は皆無なような気がするのだけれどもどうもそう単純なモノでもなさそうな表情を最愛の人は浮かべている。「祐樹の場合だと……家で二人きりの時には何の問題も生じないだろうな。いや、嬉しそうな表情で出勤して医局で正直に言った場合は異なるかもしれない
最愛の人は滑らかな白い肌に睫毛の影が綺麗なコントラストを作っている。夜に咲き誇る薄紅色の薔薇のような笑みを浮かべながら祐樹の話を興味深そうに聞いてくれているのも愛おしさが募る。「高価なお酒が呑み放題というのに釣られてしまっていてモトを絶対に取ってやる!
「保険って契約するもので作るものではないと思っていました。ただ、今まで全く気付かなかったのですが、保険商品が山のようにありますから作っている人も居るのでしょうけれども、ね?」 話しを促してみた。「日本人の平均寿命が年々延びているだろう?厚労省や色々な研究
「流石は祐樹のお母さまらしい用心だな。それはともかく若者よりも高齢者の方(ほう)が現金を持っている確率は高い。しかも老後のことを考えてあまり出費はしない傾向にある。例外は子や孫で、それに対して援助しやすいようにと税額が変わるのだ」 すとんと腑に落ちた気がし
「え?どういうことだ……?高専を卒業して第一線で働くことが出来るかという祐樹の質問なのだろうか……」 隣に座った彼は明眸(めいぼう)皓歯(こうし)のお手本のような、瞠った目と和洋折衷菓子を白い歯で挟んで切っている。それはそれで目の保養になっているのだけれど怪
杉田弁護士という知り合いは居るが税理士の知己はいない。確定申告はさして難しいモノではないので専門家に頼まずに自分で確定申告をしている祐樹には税理士の知り合いはいない。 「太陽のたまご」というらしいマンゴーを銀のフォークを使って優雅な動作で魅惑的な微笑み
最愛の人は計ったように二等分、しかもナイフとか正式名称は祐樹も生憎知らないが和菓子の時に使う木の小さなナイフめいた物を使ったかのように切ってあった。スマホのライトに照らされて、皮部分と中央の生クリームと思しき物に挟まれた鮮やかな緑色の色は真珠の中に翡翠
「麻酔医の大切さは良く知っていました。アメリカ時代は当たり前の一手術に一人の麻酔医だったのですが、日本ではそうでないと聞いていたので……私は日本の大学病院に招聘された身の上です。ですから多少の我が儘が効いて専属の麻酔医を指名出来たのですが、あくまで少数派