前回(2025-04-20)は酸化還元反応のネルンスト式、標準電極電位およびそれらと平衡定数との関係について調べました。今回は、見掛けの電位および酸化還元反応に対するpHの影響について調べます。 前回説明したように、半電池反応(aOx + ne- ⇄ bRed)のネルンスト式は
酸塩基反応、沈殿反応、錯生成反応などの溶液内イオン平衡についてエクセル(EXCEL)を用いて理論的に解析し、滴定曲線の作成や溶解度の計算などをしていきたいと思います。
前回(2025-04-20)は酸化還元反応のネルンスト式、標準電極電位およびそれらと平衡定数との関係について調べました。今回は、見掛けの電位および酸化還元反応に対するpHの影響について調べます。 前回説明したように、半電池反応(aOx + ne- ⇄ bRed)のネルンスト式は
これまで、酸塩基平衡、錯生成平衡、沈殿平衡について見てきました。今回からは、酸化還元平衡について調べたいと思います。 <<酸化還元の定義>>酸化還元の概念は、ラボアジェによって導入され、多くの変遷を経て、現在は電子の授受あるいは酸化数の増減で定義するの
ハロゲン化物イオン(I-,Br-, Cl-)を含む溶液をAg+で滴定するときの理論的滴定曲線を描きます。 AgI, AgBr, AgClの溶解度積を、Kspi = [Ag][I], pKspi = 16.08Kspb = [Ag][Br], pKspb = 12.30Kspc = [Ag][Cl], pKspc = 9.74とします。これらのハロゲン化銀塩の
前回(2025-03-30)述べたように、硝酸銀による塩化物イオンの滴定においては、指示薬としてクロム酸カリウムを用いるモール法がよく用いられます。今回はモール法における銀イオン、塩化物イオン、クロム酸イオンの濃度変化の様子および滴定誤差について調べます。 硝
これまで滴定として、酸塩基滴定(2023-06-25)、EDTA滴定(2024-05-03)を取りあげましたが、今回は沈殿滴定を考えます。よく利用される沈殿滴定の一つは、硝酸銀標準溶液による塩化物の定量です。これを例にして沈殿滴定を説明します。 <<全濃度と平衡濃度の関係>>銀標
これまで溶解度を求める場合、主に25℃における平衡定数を用いて計算してきました。なぜならば、一般に平衡定数値の測定は25℃で行うことが基準であり、教科書等では25℃での値が記載されていることが多いからです。しかし、実際問題として、異なった温度における溶解度を
バリウムおよびストロンチウムを含む溶液にK2CrO4を加える
今回には、酢酸バリウム(Ba(CH3COO)2)、酢酸ストロンチウム(Sr(CH3COO)2)および酢酸-酢酸アンモニウム緩衝液を含む溶液にK2CrO4を加えることを考えます。この結果を踏まえ、バリウムイオンとストロンチウムイオンを含む溶液にクロム酸カリウムを加えて分別沈殿を行うことが可
リン酸カルシウム塩には組成や結晶形の違いによって様々な種類があることが知られています。今回は、リン酸水素カルシウム(CaHPO4・2H2O)、リン酸三カルシウム(Ca3(PO4)2)およびヒドロキシアパタイト(HAp) (Ca10(OH)2(PO4)6)についてpHと溶解度の関係を求めます。 <関
カルシウムイオンとバリウムイオンを含む溶液に硫酸を加えて分別沈殿を行うことを考えます。CaSO4とBaSO4の溶解度積を比較するとBaSO4の方が小さいので、硫酸を加えていくと先にBaSO4が沈殿し、次いでCaSO4が沈殿します。Ca2+を溶液にとどめて、Ba2+だけを選択的に沈殿させる
前回(2025-02-16)の検討で明らかなように、炭酸塩によるCaとMgの分別沈殿において、pHおよび(NH4)2CO3の添加濃度が高くなると、場合によってはMgCO3の沈殿が生じます。また逆にこれらを低くなると、CaCO3の溶解度が大きくなり、沈殿が不完全になります。どのような条件下でMg
系統的無機定性分析において、マグネシウムイオン(Mg2+)は第VI族に属し、難溶性炭酸塩を作る第V族(Ca2+, Sr2+, Ba2+)を沈殿分離したあとの沪液から分析します。しかし前回(2025-02-09)も述べたように、場合によってMg2+は炭酸塩として沈殿することがあります。今回は、どのよ
CO2ガスとの平衡の有無を考慮して、酸・塩基に対するMgCO3の溶解度を計算で求めます。Mg2+とCO32-を実際に反応させると、生成条件により炭酸塩や塩基性炭酸塩など様々な組成の沈殿が生じます。ここではMgCO3・3H2O(ネスクホナイト)が生成するものとしました。 用いた平
前回に引き続き、CaCO3の沈殿平衡に関するいくつかの具体的な問題を解きます。 <<気相中CO2との平衡がない場合>>(前回からの続き)<固体CaCO3が共存する溶液にNaOHまたはHClを加える>前回(2025-01-26)は、Ca溶液に炭酸塩あるいはCO2を加えてCaCO3が沈殿する様子
今回はCaCO3の沈殿平衡に関するいくつかの具体的な問題を解きたいと思います。 <<気相中CO2との平衡がない場合>>CaCO3の沈殿平衡に関連して次の平衡式が成立します(2025-01-12)。K1 = [H][HCO3]/[CO2(aq)]K2 = [H][CO3]/[HCO3]Kw = [H][OH]βo =[CaOH]/([Ca][OH
前回(2025-01-12)は、気相のCO2との平衡を無視して溶液中のCaCO3の沈殿平衡を考えました。自然界においては、大気中のCO2がCaCO3の沈殿・溶解に大きく影響します。今回は気相のCO2との平衡を考慮に入れて溶液中のCaCO3の沈殿平衡を考えます。<<CaCO3飽和溶液-CO2(g)系平衡
CaCO3は石灰岩・大理石などの主成分であり、またサンゴ、貝類、鶏卵などの骨格、殻を形成する主要な成分として天然に広く存在します。天然におけるCaCO3の沈殿平衡においては、大気中のCO2の増減が平衡に大きく関与します。しかし今回は、気相のCO2との平衡を一旦無視して閉
タイトル URL 2024 ポリプロトン酸塩基の滴定曲線(6)-混合酸、混合塩基 被滴定溶液中の化学種の濃度変化 滴定曲線の式の一般化 ポリプロトン酸塩基滴定の滴定誤差 ポリプロトン酸塩基の緩衝液(1
ソート、検索等が必要ならばエクセルにコピペして利用ください。 カテゴリー タイトル 年月日 元素 (新)ポリプロトン酸塩基平衡と滴定 ポリプロトン酸塩基の滴定曲線(6)-混合酸、混合塩基 2024-01-0
典型的な系統的定性分析において、カドミウムイオン(Cd2+)は第Ⅱ族に属し、0.3 M HCl中でH2Sによって黄色の硫化物沈殿を作って、第Ⅲ族以下の元素から分離されます。しかし0.5 M HCl以上になると沈殿は不完全となり、また生成したCdS沈殿を2 M HCl中で煮沸すると溶解します。
常温でNH3を加えて塩基性にしたNi溶液に(NH4)2Sを加えると無定形のNiS(α)が沈殿します。この沈殿を加熱・放置すると結晶性のNiS(β,γ)へ変化します。今回は、硫化物錯体の影響を考慮しつつ、硫化水素を飽和した溶液あるいはHCl, NH3および(NH4)2Sを含む溶液に対するNiSの溶
前回(2024-12-08)は、様々な金属硫化物の溶解度について調べましたが、しかしこの時は硫化物錯体については考慮しませんでした。今回は、硫化物錯体の影響を考慮してZnSの溶解度を計算します。 <<ZnSの溶解度-Zn(HS)n錯体の影響-H2S飽和の場合>>まず、前回(2024-12-0
pHの異なる溶液に対する様々な金属硫化物の溶解度を求め、pHと溶解度の関係を調べます。また、硫化物の分別沈殿法の系統的定性分析への応用について考えます。 <<様々な金属硫化物の溶解度とpHの関係>>pHを調整した硫化水素飽和水へのCuS, PbS, CdS, ZnS, NiS, FeSお
硫化水素は水に溶けて硫化物イオン(S2-)を生成し、S2-は多くの金属イオンと反応して金属硫化物沈殿を生成します。この硫化水素に関して、水への溶解と酸塩基平衡、および金属硫化物の溶解度積と溶解度の関係について説明します。 <<硫化水素の溶解と酸塩基平衡>>硫化
pHの異なる溶液に対する様々な金属水酸化物の溶解度を求め、pHと溶解度の関係を調べます。また、水酸化物沈殿による分離方法を考えます。 具体的には、2価の金属(M2+)あるいは3価の金属(M3+)について、溶解度積(Ksp)および水酸化物錯体の生成定数(βn)の値から、pHと
水酸化銅(Ⅱ)および塩基性塩の溶解度(2)-硫酸銅にNH3, NaOHを加える
硫酸銅(Ⅱ)溶液に少量のアンモニア水を添加すると青白色の沈殿が生成し、過剰にアンモニアを添加すると銅(Ⅱ)アンミン錯体を生成して沈殿が溶解し、深青色の溶液になることはよく知られています。この青白色沈殿は塩基性硫酸銅(3Cu(OH)2・CuSO4)であるとして、添加したアンモ
高校の教科書等では、「銅(II)溶液に塩基の溶液を加えると水酸化銅(II)の沈殿が生成する」と記されています。しかし、たとえば硝酸銅や硫酸銅の溶液に少量のアンモニア水を加えて最初に沈殿するのは塩基性塩であることが知られています。今回は、水酸化銅および塩基性硝酸銅
水酸化鉄(Ⅲ)の溶解度(3)-硝酸鉄(III)溶液に酸または塩基を加える
鉄(III)のOH単核錯体・多核錯体、NO3錯体の生成やイオン強度の影響を考慮して、硝酸鉄(III)溶液に酸(HNO3)または塩基(NaOH)を加えた場合の平衡計算を行います。 <関係式>Fe(OH)3の沈殿については、無定形沈殿(pKsp=38.8)を想定しました。その他の定数については前回
前回(2024-10-20)は、「0.1 molの硝酸鉄(III)を水に溶かして1Lにすると、水酸化鉄(III)が一部沈殿する」という計算結果になりましたが、これは事実に反します。したがって今回は、NO3-錯体、多核錯体の生成や活量係数補正を考慮に入れて、もう少し厳密に平衡計算を実施します
Fe(NO3)3溶液に塩基を加えると、Fe(OH)3の褐色沈殿が生成します。このときの反応について、与えられた平衡定数からエクセルのソルバー機能を用いて定量的に解析します。 鉄(III)イオンは自然界で普遍的に存在し、また様々な酸化-還元反応に関与するので、化学的に非常
水酸化アルミニウムの溶解度(3)-Al(NO3)3にNaOHを加える
2024-09-29, 2024-10-06では、pHとAl(OH)3の溶解度の関係について調べました。今回はAl(NO3)3にNaOHを加えたときのNaOHの添加濃度と溶解度の関係を求めます。 <<ソルバーを用いた溶解度の算出>>濃度Calmol/Lの硝酸アルミニウム溶液に、水酸化ナトリウムを添加
水酸化アルミニウムの溶解度(2)-イオン強度、多核錯体の影響
これまでも述べてきたように(例えば、2023-03-26)、濃度平衡定数はイオン強度に影響されます。今回は、水酸化アルミニウムに関して溶解度積、錯生成定数および溶解度に及ぼすイオン強度の影響を調べます。また、アルミニウムイオンは単核の水酸化物錯体とともに多核の水酸化
Al(NO3)3溶液にNaOH溶液を加えていくと、最初Al(OH)3の白色沈殿が生成し、さらに過剰に加えるとアルミン酸イオン(Al(OH)4-)を生じて沈殿は溶解します。またアルミン酸イオン含む溶液に酸を加えるとAl(OH)3の白色沈殿が生成します。このような反応について、与えられた平衡定
様々な銀化合物の溶解平衡について、いくつかのトピックスを取りあげます。①AgCl, AgBr, AgIのアンモニア水に対する溶解度の差 ②AgIのチオ硫酸ナトリウム溶液に対する溶解度 ③AgNO3にNH3を加えて生じるAg2Oの溶解度 <<AgCl, AgBr, AgIのアンモニア水に対する溶
PbCl2の沈殿平衡については、(2024-08-11)において取り上げましたが、しかしこのときはイオン強度による影響を考慮しませんでした。今回は、PbCl2の溶解度に対するHCl濃度の影響について、イオン強度による影響も含めて解析します。 <<Pb-Cl系の関係式>>様々なイオン
AgClの溶解度に対する塩酸の影響については、(2024-08-18)および(2024-08-25)で取り上げましたが、このときはイオン強度の影響を無視しました。今回はイオン強度別の平衡定数データを基に、イオン強度の影響も含めて、AgClの溶解度に及ぼすHCl濃度の影響について詳細に調べま
銀イオンに塩化物イオンを加えると塩化銀AgClの沈殿が生成します(2024-08-18,2024-08-25)。このAgCl沈殿にアンモニア水を加えると、塩化銀の沈殿は溶解します。AgClの沈殿生成時には沈殿平衡および錯生成平衡が成立しますが、沈殿が無くなったあとは錯生成平衡のみとなります
二つの溶液を混合して塩を沈殿させる場合を考えます。ここでは硝酸銀溶液と塩酸の混合によってAgClを生成させる例を取りあげます。もし二溶液を互いに過不足なく当量比で混合した場合は共通イオン効果を生じないのですが、そうでない場合は、共通イオン効果によって塩の溶解
共通イオン効果だけを考えるならば、沈殿剤を加えれば加えるほど金属イオンの溶解度は小さくなります。しかし、沈殿剤をあまり過剰に加えると、金属イオンと沈殿剤が錯体を生成して逆に溶解度が増加する場合があります。前回(2024-08-11)はPbCl2の溶解度について言及しました
沈殿反応に錯生成反応や酸塩基反応が関与すると溶解度の算出は複雑になります。このような場合、副反応係数の考えを導入すると計算が楽になります。 <<副反応の寄与>>沈殿反応は次のように表されます。MaLb(固体) ⇄ aM + bL ………①Ksp = [M]^a[L]^bここで注
ものが溶解したり沈殿したりという現象は、実験室のみならず、家庭や工場や自然界など様々な場所において普通に見出すことができます。沈殿生成・溶解反応は人々の目を引き、非常に興味深い現象です。また分析や分離において重要な役割を担っています。この沈殿生成・溶解反
アルミニウムのEDTA滴定-逆滴定とフッ化物によるマスキング
アルミニウムは、加水分解して多核錯体を作りやすくまたEDTAとの反応速度が遅いなど、EDTA滴定にはあまり適さない元素であり、EDTA滴定を用いるにあたってはいくつかの困難回避策を考える必要があります。今回は、標準Zn溶液による逆滴定およびフッ化物によるAlのマスキング
滴定を妨害する金属イオンが試料溶液中に含まれる場合、妨害の回避策として、pHの調節、金属イオンの分離(沈殿、イオン交換等)、別の選択的キレート試薬の使用などのやり方もありますが、簡便かつ汎用的なのはマスキング剤を使用する方法です。このとき、妨害イオンに対する
ニッケルとEDTAの錯生成反応は生成速度が遅いので、直接滴定をする場合は、溶液を加温してゆっくり滴定する等の工夫が必要です(2024-07-7)。今回は、EDTAを過剰に加えてNi-EDTA錯体を十分に生成させたあと、XOを指示薬として過剰のEDTAを標準Zn溶液で滴定する逆滴定法につい
ニッケルのEDTA滴定(1)-直接滴定-CuPAN指示薬の使用
ニッケルとEDTAの錯生成定数は大きいのですが、生成速度が遅いので、直接に滴定する場合は溶液を加温してゆっくり滴定する等の工夫が必要です。今回は、Cu-PANを指示薬に用いて、Ni2+をEDTAで直接に滴定する場合について考えます。 <<Cu-PANとは>>PAN(1-ピリジルアゾ
前回(2024-06-23)は、エリオクロムブッラックTを指示薬とした弱塩基性でのZn-EDTA滴定について考えました。今回は酢酸-アンモニア緩衝液によってpHを弱酸性に調整したあと、キシレノールオレンジを指示薬としてZn-EDTA滴定をする場合について考えます。 <<キシレノー
亜鉛のEDTA滴定法を考えるにあたって最低限必要な条件は、(1)水酸化物(Zn(OH)2)が沈殿しない、(2)Zn-EDTAの条件生成定数が十分大きい、(3)適切な終点検出法がある、ことです。この滴定条件について考え、適切な条件下で滴定曲線を描きます。 <<滴定可能な条件>><補
EDTA滴定の重要な応用分野として水の硬度測定があります。水の硬度を求めるためには、CaおよびMgの定量が必要です。今回はEDTA滴定によるCa, Mgの分別定量について考察します。 水試料中のCa, Mgの定量法としてJISに採用されている方法を調べます。JIS K-0101, -0102
これまで述べてきたように、pHなどの滴定条件によって滴定曲線のジャンプの程度は変化します。今回はカルシウムのEDTA滴定を例にとって、与えられた滴定条件における適切な指示薬の選定について考察します。 <<Ca-EDTA滴定が定量的となる条件>>金属イオンMをEDTAで滴
滴定では当量点を実際に検出することが必要です。このために何らかの化学的、物理的な検出手段が用いられ、こうして実際に求められた当量点を終点と言います。(理論的)当量点と(実験的)終点のあいだには幾分かの誤差が生じます。今回は金属指示薬を用いたときのEDTA滴定の滴
前回(2024-05-19)のカルシウムの滴定に引き続き、今回はEDTAによるマグネシウムの滴定曲線を求めます。マグネシウムの滴定ではMg(OH)2沈殿の生成に十分注意する必要があります。MgOH+,MgHY-の錯生成およびMg(OH)2の沈殿生成を考慮に入れ、ソルバー(2023-04-23)を用いてより
前回(2024-05-12)は「滴定曲線の式」を導いてカルシウム(II)-EDTA滴定の滴定曲線を描く方法について考えました。今回はエクセルの「ソルバー」を利用してより厳密な計算を行って滴定曲線を描きます。 <<Ca2+-EDTA滴定の条件>>前回の取り扱いで、pHは常に一定と仮定
Ca2+-EDTA滴定の滴定曲線を描く方法について考えます。まず、EDTAの酸解離だけを考慮した場合の滴定曲線を描きます。ついで、Ca2+の加水分解(CaOH+の錯生成)も考慮に入れてもう少し厳密な計算をして滴定曲線を描きます。 <<EDTAの酸塩基反応だけを考慮した場合>>前
錯生成平衡を利用する金属イオンの滴定を錯滴定と言いますが、このうち滴定剤としてキレートを用いる場合はキレート滴定と呼ばれます。エチレンジアミン四酢酸(EDTA)はほとんどの金属イオンと1:1の安定な金属-キレート錯体を作ります。キレート滴定の代表であるEDTA滴定につ
カドミウムイオン(Cd2+)は塩化物イオン(Cl-)と塩化物錯体(CdCl+,CdCl2, CdCl3-, CdCl42-)を作ります。このCd-Cl錯体の平衡、特にイオン強度の大きな溶液中での活量係数を考慮した平衡について調べます。 <<平衡式、生成定数および化学種濃度>>前提として十分な酸が
前々回(2024-04-07)は非常に単純な系(すなわち金属イオンが配位子と反応するのみで他の副反応は起きない場合)について考えました。しかし、前回(2024-04-14)でも述べたように、実際の錯生成反応においては、多くの副反応が起きて、対象とする錯生成反応に影響を与えます。今
前回(2024-04-07)は、配位子の平衡濃度が既知の場合における溶液中の化学種の平衡濃度を求めました。今回は、配位子の全濃度は与えられるが、平衡濃度が未知の場合について考えます。 <配位子の平衡濃度が未知の場合>一般に錯形成反応において、配位子の全濃度(式
「錯体」の定義は様々ですが、一般に「金属イオン」を中心に「孤立電子対を持つ陰イオンあるいは中性分子」(配位子)が配位結合して生成した化学種のことを言います。また、これらの錯体が生成する反応を「錯生成反応」と言い、金属イオンと配位子の間には「錯生成平衡」が成
今回は沈殿反応を伴う酸塩基滴定について考えます。その一例として、ウインクラー法を取りあげます。この方法は、Na2CO3とNaOHの混合溶液をHClで滴定するとき、試料にBaCl2を加えNa2CO3をBaCO3として沈殿させ、残ったNaOHをHClで滴定するやりかたです。 <<ウインクラ
これまで見てきたように、ジプロトン酸の滴定曲線においてpHジャンプが必ず2回あるとは限りません。どのような条件のときにpHのジャンプが出現するのか調べたいと思います。 <<滴定曲線の例>>マレイン酸(pK1=1.92, pK2=6.27)、亜硫酸(pK1=1.86, pK2=7.17)、アスコル
酸塩基滴定の代表的な応用例としてケルダール法があります。ケルダール法は有機窒素の最も一般的な定量法の一つです。これは、試料を熱濃硫酸中で分解して有機窒素をアンモニウムイオンに変換し、NaOHを加えてアンモニアとして蒸留して硫酸またはホウ酸に吸収し、間接的ある
高校の教科書には、"強酸"の説明として「水溶液中でほとんどすべて電離している(=電離度が1に近い)酸を強酸という」と書かれており、その例として"硫酸"は「2価の強酸」に分類されています。このことが原因なのかも知れませが、硫酸溶液は常に(=どんな濃度でも)H2SO4
今回は気相と溶液でCO2の平衡が成立するとき、気相のCO2分圧の変化によって炭酸溶液のpHがどのようになるか調べます。 <CO2分圧とpHの関係>前回(2024-02-25)説明した通り、気相と溶液の間でCO2の平衡が成立するとき、次のような関係が成立します。[CO2(aq)] = KHP
気体の二酸化炭素(CO2(gas))は、ある程度水に溶解し、溶けたCO2(aq)は一部水和して炭酸(H2CO3)を生成します。炭酸はジプロトン酸として働きます。今回は、大気中のCO2と平衡が成立するときの水、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液のpHについて調べます。また比
以前モノプロトン酸塩基の緩衝液に関して、活量係数を考慮した計算を行いました(023-08-27)。今回はポリプロトン酸塩基の緩衝液のpHを計算します。また活量係数を考慮した緩衝液の調製方法を計算で求めます。 ある特定のpH値を持つ緩衝液を実際に調製したい場合、理論
以前、モノプロトン酸塩基の緩衝液のpHを求めました(023-08-13)。今回はポリプロトン酸塩基の緩衝液について、pHを求めます。 <<ポリプロトン酸-共役塩基の緩衝液>>ポリプロトン酸およびその共役塩基を含む緩衝液は、モノプロトン酸の場合(023-08-13)と同様に取り扱
モノプロトン酸塩基の緩衝液についてはすでに述べました(2023-08-13)。今回はポリプロトン酸塩基の緩衝液の「緩衝能」について考察します。 <<緩衝指数の計算>>希釈したりあるいは少量の酸や塩基を加えたりしても、pHがほぼ一定に保たれる溶液は緩衝液と呼ばれ、また
以前(2023-09-03)に続いて、今回はポリプロトン酸塩基の滴定における滴定誤差について考察します。一般に、滴定誤差は実験的に求めた終点が理論的な当量点に一致しないためにおこる誤差のことを言いますが、ここでは終点検出方法(たとえば、指示薬による目視法)に原理的に伴
これまで、エクセルによる様々な酸塩基滴定曲線の作成方法を説明してきました。「二分法」とは異なり、「レビ法」では「滴定曲線の式」(pHを与えて滴定剤の滴下量Tを求める式)を求める必要があります。これまで個々のケースについて検討してきましたが、今回は滴定曲線の式の
いくつかの滴定を例として、各滴定段階において被滴定溶液中の化学種濃度がどのように変化するかについて調べます。 <<リン酸の滴定>>水酸化ナトリウムによるリン酸の滴定について調べます。試料溶液のリン酸(H3A)のモル濃度をCao mol/L、試料体積をV mLとし、滴定
二分法およびレビ法を用いて、2種類の酸あるいは塩基を含む溶液の滴定曲線を描き、分別定量が可能かどうか検討します。 二分法による混合酸の滴定曲線Cao mol/Lの酢酸(HA)とCco mol/Lの塩酸(HCl)を含む溶液V mLをCbo mol/Lの水酸化ナトリウム(NaOH)で滴定する場合を
タイトル一覧 (2023)ソート、検索等が必要ならばエクセルにコピペして利用ください。 カテゴリー タイトル 年月日 元素 ポリプロトン酸塩基平衡と滴定 ポリプロトン酸塩基の滴定曲線(5)-アミノ酸-レビ法 2
前回(2023-12-17)に引き続き、アミノ酸の滴定曲線の作成方法について考えます。 今回はレビ法(2023-12-10)を用いて滴定曲線を描きます。 <<モノアミノ-モノカルボン酸・塩酸塩(例:アラニン・塩酸塩)>>モノアミノ-モノカルボン酸の一種であるアラニンは次のように解
アミノ酸は分子内にカルボキシ基(-COOH)とアミノ基(-NH2)の両方を持つ有機化合物で、ポリプロトン酸塩基と考えることができます(2023-11-05)。したがってその滴定曲線を描く場合も、これまでのやり方が適用できます。ただし、電荷バランス式の作成における化学種の電荷の取り
これまで、ポリプロトン酸塩基の滴定曲線を描く方法として、近似法(2023-11-26)、二分法(2023-12-03)を見てきました。これらの方法は、滴下量(T)を与えて被滴定溶液のpHを求める方法でした。今回は「レビ法」について説明します。これは逆に「pHを与えて滴下量(T)を求める方
前回(2023-11-26)は「近似法」によるポリプロトン酸塩基の滴定曲線の描き方について説明しましたが、今回は、「二分法」について説明します。近似法では開始前、当量点およびその前後で別々の近似式を用いる必要があり煩雑ですが、二分法を用いると、任意の条件で滴定曲線を
ポリプロトン酸塩基の滴定曲線はモノプロトン酸塩基の場合と同様の手法で描くことができます(2023-06-25~2023-07-30)。今回は、近似法について説明します。 <<酸塩基滴定の基礎>>以前(2023-06-25)にも述べたとおり、未知量の酸(または塩基)を含む試料溶液に濃度既知
これまで、ポリプロトン酸塩基やそれらの塩に関するpHについて計算してきました。今回は、これらの酸塩基をさまざまな割合で混合した水溶液について、ソルバー法、二分法を用いてpHを求めます。代表例としてリン酸とアンモニアの混合物を取り上げます。また理解の手助けとな
ポリプロトン酸塩基のpH-アミノ酸(2)-グルタミン酸、リジン
モノアミノジカルボン酸は分子内にアミノ基1個、カルボキシ基2個を持つアミノ酸で、グルタミン酸、アスパラギン酸などがあります。またジアミノモノカルボン酸は分子内にアミノ基2個、カルボキシ基1個を持つアミノ酸で、リジン、アルギニンなどがあます。ここでは、グルタミ
アミノ酸は分子内にカルボキシ基(-COOH)とアミノ基(-NH2)の両方を持つ有機化合物です。カルボキシ基はプロトンを放出し、またアミノ基はプロトンを受容する働きがあります。したがって、アミノ酸は酸性の強い水溶液中ではアミノ基が-NH3+の形をとり、陽イオンとなります。塩
トリプロトン酸以上のポリプロトン酸のpHの取り扱い方も、ジプロトン酸の場合と同じです。ここではリン酸およびその塩について見ていきます。 <<リン酸の平衡>>リン酸(H3PO4)は、水溶液中で次のように逐次的に解離します。H3PO4 ⇄ H+ + H2PO4-H2PO4- ⇄ H+ +HP
ポリプロトン酸塩基のpH-ジプロトン酸塩基の塩(3)-NaHA塩
前々回(2023-10-08)と前回 (2023-10-15)は、ジプロトン酸の正塩(Na2A)溶液のpHの求め方について調べました。今回はジプロトン酸の酸性塩(NaHA)溶液のpHについて調べます。<<NaHA塩溶液のpH>>ジプロトン酸(H2A)がNaOHで半分中和されてできた酸性塩(NaHA)溶液のpHについて
ポリプロトン酸塩基のpH-ジプロトン酸塩基の塩(2)-Na2A塩-エクセルの利用
前回(2023-10-08)に引き続き、ジプロトン酸のナトリウム正塩(Na2A)溶液のpHの求め方について述べます。今回はエクセルの利用を考えます。 <<Na2A塩溶液のpH>>エクセルを利用してジプロトン酸(H2A)の正塩(Na2A)溶液のpHを求める方法について説明します。Na2A塩の代表
ポリプロトン酸塩基のpH-ジプロトン酸塩基の塩(1)-Na2A塩-近似法
これまで、ジプロトン酸塩基自身のpHの求め方を説明してきました。これからはそれらが中和してできた塩のpHの求め方について述べます。 <<Na2A塩溶液のpH>>ジプロトン酸(H2A)の2個のプロトンがすべてNaOHで中和された正塩(Na2A)溶液のpHについて考えます。Na2A塩の代
ポリプロトン酸塩基のpH-ジプロトン酸塩基(3)-対数濃度図の利用
モノプロトン酸塩基のところでも述べたように(2023-05-14)、pHと化学種濃度の対数の関係を表したグラフは対数濃度図と呼ばれます。対数濃度図を作成すれば系全体を一目で見渡すことができます。そして、この図から溶液のおおよそのpHを求めることができ、またあるpHにおける
ポリプロトン酸塩基のpH-ジプロトン酸塩基(2)-エクセルの利用
前回(2023-09-17)は近似式を用いてジプロトン酸塩基のpHを求めました。近似法は、「ケースごとに仮定を立てて近似式を作成し、結果を算出して仮定の妥当性を確認する」といった手順を踏む必要があり、面倒です。今回は表計算ソフト(エクセル)を利用して「二分法」および「ソ
これまではモノプロトン酸塩基の平衡について見てきました。これからは供与または受容できるプロトンが2個以上のポリプロトン酸塩基の平衡について取り扱います。ポリプロトン酸塩基についても、モノプロトン酸塩基の場合と同様に平衡の系統的解析法(2023-04-02)が基本です
前回(2023/09/03)は、終点検出法に原理的に伴う滴定誤差について考察しました。終点の検出にはpHメータや電導率計なども用いられますが、機器を使わない簡便な方法として指示薬による目視法が広く用いられています。今回は指示薬とそれに伴う滴定誤差について考察します。
酸塩基滴定の滴定誤差について考えます。滴定誤差は滴定で実験的に求めた終点が理論的な当量点に一致しないためにおこる誤差です。実際の滴定誤差は、ビュレットやメスフラスコなど測容器の不正確さ、試薬の純度、滴定溶液の変質、滴定操作の不手際など様々な要因による誤差
ある特定のpH値の緩衝液を実際に調製する場合、Ka値を用いて理論的な計算で必要濃度を求めるにはいくつかの困難が伴います。たとえば、Ka値は温度やイオン強度(活量係数)によって変動しますが、それらのデータがすべてあるとは限りません。したがって、実際の緩衝液の調製は
前回(2023-08-13)はヘンダーソン-ハッセルバルヒ式を用いて緩衝液のpHの計算をしました。今回は緩衝液の緩衝作用の大きさについて定量的に考えます。 <<緩衝液に少量の酸・塩基を加えたときのpH>>前回は、例題4においてヘンダーソン-ハッセルバルヒ式(近似式)を用い
溶液に少量の酸や塩基を加えても、pHの値をほぼ一定に保つ働きを緩衝作用といい、そのような作用を持つ溶液を緩衝液といいます。緩衝液として弱酸(または弱塩基)とその塩の混合溶液があげられます。今回はこの緩衝液の性質について調べます。 水溶液が関与する化学反
これまでモノプロトン酸・塩基の滴定曲線の描き方について説明してきました。今回はこのようにして作成した滴定曲線について、その特徴と濃度、酸解離定数の影響について調べます。 <<滴定曲線の特徴>>典型的な例として、0.1 mol/Lの硝酸(HNO3) 20 mLあるいは0.1 mol
これまで、弱酸を強塩基で滴定するときの理論的滴定曲線について考えてきました。今回は、弱塩基を強酸で滴定する場合について考えます。この場合も理論的滴定曲線の作成方法は弱酸の場合と基本的には同じです。ここでは、アンモニアを塩酸で滴定する場合について考えます。
これまで、近似法・二分法・MIN法による酸塩基滴定曲線の描き方について述べてきました。これらの方法はすべて、滴下量(T)を与えて被滴定溶液のpHを求める方法でした。今回は「pHを与えて滴下量(T)を求める方法」(レビ法)について説明します。 <<レビ法について>>理論
前回(2023-07-09)は、二分法を用いて弱酸の滴定曲線を描く方法について説明しました。今回は、MIN法を用いる方法について説明します。 <<MIN法について>>(2023-05-07)これまでも述べてきたように平衡定数式、物質バランス式、電荷バランス式から、NaOHによる弱酸の滴
前回(2023-07-02)は、近似法を用いて弱酸の滴定曲線を描く方法について述べました。今回は、二分法を用いる方法について説明します。 <<二分法について>>(2023-04-30)単調関数f(x)において、f(a)とf(b)とで符号が異なるような区間a, bを定めると、その区間内でf(x)=0
弱モノプロトン酸(HA)を強塩基(NaOH)で滴定するときの理論的滴定曲線の描き方を説明します。滴定曲線を描くにはいくつかのやり方がありますが、今回は近似式による方法を取りあげます。 <<理論的滴定曲線>><酸塩基滴定における平衡>酸塩基滴定における滴定曲線は
未知量の酸(または塩基)を含む試料溶液に濃度既知の塩基(または酸)溶液(=滴定液)を滴下すると当量点の前後でpHが急激に変化します。この当量点を化学的あるいは物理的方法で検知してこれを終点とし、終点における滴定液の量から未知量の酸(または塩基)の量を求める方法を酸塩
滴定操作や緩衝液の作成などにおいて、酸塩基混合溶液のpHを理論的に推定することは重要なことです。今回は1価の酸および塩基についてそれらを任意の割合で混合した溶液のpHを求めます。 <<酸と塩基の混合溶液>><強酸+強塩基>強酸である塩酸(HCl)と強塩基である
実験室や工場などにおいて種々の酸や塩基を様々に混合した溶液がよく用いられ、しばしばこの混合溶液のpHを推定することが必要となります。今回は1価の酸同士または塩基同士の混合溶液について、近似式あるいはソルバーを用いて、そのpHを求めます。 <<2種類の酸の
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前回(2025-04-20)は酸化還元反応のネルンスト式、標準電極電位およびそれらと平衡定数との関係について調べました。今回は、見掛けの電位および酸化還元反応に対するpHの影響について調べます。 前回説明したように、半電池反応(aOx + ne- ⇄ bRed)のネルンスト式は
これまで、酸塩基平衡、錯生成平衡、沈殿平衡について見てきました。今回からは、酸化還元平衡について調べたいと思います。 <<酸化還元の定義>>酸化還元の概念は、ラボアジェによって導入され、多くの変遷を経て、現在は電子の授受あるいは酸化数の増減で定義するの
ハロゲン化物イオン(I-,Br-, Cl-)を含む溶液をAg+で滴定するときの理論的滴定曲線を描きます。 AgI, AgBr, AgClの溶解度積を、Kspi = [Ag][I], pKspi = 16.08Kspb = [Ag][Br], pKspb = 12.30Kspc = [Ag][Cl], pKspc = 9.74とします。これらのハロゲン化銀塩の
前回(2025-03-30)述べたように、硝酸銀による塩化物イオンの滴定においては、指示薬としてクロム酸カリウムを用いるモール法がよく用いられます。今回はモール法における銀イオン、塩化物イオン、クロム酸イオンの濃度変化の様子および滴定誤差について調べます。 硝
これまで滴定として、酸塩基滴定(2023-06-25)、EDTA滴定(2024-05-03)を取りあげましたが、今回は沈殿滴定を考えます。よく利用される沈殿滴定の一つは、硝酸銀標準溶液による塩化物の定量です。これを例にして沈殿滴定を説明します。 <<全濃度と平衡濃度の関係>>銀標
これまで溶解度を求める場合、主に25℃における平衡定数を用いて計算してきました。なぜならば、一般に平衡定数値の測定は25℃で行うことが基準であり、教科書等では25℃での値が記載されていることが多いからです。しかし、実際問題として、異なった温度における溶解度を
今回には、酢酸バリウム(Ba(CH3COO)2)、酢酸ストロンチウム(Sr(CH3COO)2)および酢酸-酢酸アンモニウム緩衝液を含む溶液にK2CrO4を加えることを考えます。この結果を踏まえ、バリウムイオンとストロンチウムイオンを含む溶液にクロム酸カリウムを加えて分別沈殿を行うことが可
リン酸カルシウム塩には組成や結晶形の違いによって様々な種類があることが知られています。今回は、リン酸水素カルシウム(CaHPO4・2H2O)、リン酸三カルシウム(Ca3(PO4)2)およびヒドロキシアパタイト(HAp) (Ca10(OH)2(PO4)6)についてpHと溶解度の関係を求めます。 <関
カルシウムイオンとバリウムイオンを含む溶液に硫酸を加えて分別沈殿を行うことを考えます。CaSO4とBaSO4の溶解度積を比較するとBaSO4の方が小さいので、硫酸を加えていくと先にBaSO4が沈殿し、次いでCaSO4が沈殿します。Ca2+を溶液にとどめて、Ba2+だけを選択的に沈殿させる
前回(2025-02-16)の検討で明らかなように、炭酸塩によるCaとMgの分別沈殿において、pHおよび(NH4)2CO3の添加濃度が高くなると、場合によってはMgCO3の沈殿が生じます。また逆にこれらを低くなると、CaCO3の溶解度が大きくなり、沈殿が不完全になります。どのような条件下でMg
系統的無機定性分析において、マグネシウムイオン(Mg2+)は第VI族に属し、難溶性炭酸塩を作る第V族(Ca2+, Sr2+, Ba2+)を沈殿分離したあとの沪液から分析します。しかし前回(2025-02-09)も述べたように、場合によってMg2+は炭酸塩として沈殿することがあります。今回は、どのよ
CO2ガスとの平衡の有無を考慮して、酸・塩基に対するMgCO3の溶解度を計算で求めます。Mg2+とCO32-を実際に反応させると、生成条件により炭酸塩や塩基性炭酸塩など様々な組成の沈殿が生じます。ここではMgCO3・3H2O(ネスクホナイト)が生成するものとしました。 用いた平
前回に引き続き、CaCO3の沈殿平衡に関するいくつかの具体的な問題を解きます。 <<気相中CO2との平衡がない場合>>(前回からの続き)<固体CaCO3が共存する溶液にNaOHまたはHClを加える>前回(2025-01-26)は、Ca溶液に炭酸塩あるいはCO2を加えてCaCO3が沈殿する様子
今回はCaCO3の沈殿平衡に関するいくつかの具体的な問題を解きたいと思います。 <<気相中CO2との平衡がない場合>>CaCO3の沈殿平衡に関連して次の平衡式が成立します(2025-01-12)。K1 = [H][HCO3]/[CO2(aq)]K2 = [H][CO3]/[HCO3]Kw = [H][OH]βo =[CaOH]/([Ca][OH
前回(2025-01-12)は、気相のCO2との平衡を無視して溶液中のCaCO3の沈殿平衡を考えました。自然界においては、大気中のCO2がCaCO3の沈殿・溶解に大きく影響します。今回は気相のCO2との平衡を考慮に入れて溶液中のCaCO3の沈殿平衡を考えます。<<CaCO3飽和溶液-CO2(g)系平衡
CaCO3は石灰岩・大理石などの主成分であり、またサンゴ、貝類、鶏卵などの骨格、殻を形成する主要な成分として天然に広く存在します。天然におけるCaCO3の沈殿平衡においては、大気中のCO2の増減が平衡に大きく関与します。しかし今回は、気相のCO2との平衡を一旦無視して閉
タイトル URL 2024 ポリプロトン酸塩基の滴定曲線(6)-混合酸、混合塩基 被滴定溶液中の化学種の濃度変化 滴定曲線の式の一般化 ポリプロトン酸塩基滴定の滴定誤差 ポリプロトン酸塩基の緩衝液(1
ソート、検索等が必要ならばエクセルにコピペして利用ください。 カテゴリー タイトル 年月日 元素 (新)ポリプロトン酸塩基平衡と滴定 ポリプロトン酸塩基の滴定曲線(6)-混合酸、混合塩基 2024-01-0
典型的な系統的定性分析において、カドミウムイオン(Cd2+)は第Ⅱ族に属し、0.3 M HCl中でH2Sによって黄色の硫化物沈殿を作って、第Ⅲ族以下の元素から分離されます。しかし0.5 M HCl以上になると沈殿は不完全となり、また生成したCdS沈殿を2 M HCl中で煮沸すると溶解します。
常温でNH3を加えて塩基性にしたNi溶液に(NH4)2Sを加えると無定形のNiS(α)が沈殿します。この沈殿を加熱・放置すると結晶性のNiS(β,γ)へ変化します。今回は、硫化物錯体の影響を考慮しつつ、硫化水素を飽和した溶液あるいはHCl, NH3および(NH4)2Sを含む溶液に対するNiSの溶
錯生成平衡を利用する金属イオンの滴定を錯滴定と言いますが、このうち滴定剤としてキレートを用いる場合はキレート滴定と呼ばれます。エチレンジアミン四酢酸(EDTA)はほとんどの金属イオンと1:1の安定な金属-キレート錯体を作ります。キレート滴定の代表であるEDTA滴定につ
カドミウムイオン(Cd2+)は塩化物イオン(Cl-)と塩化物錯体(CdCl+,CdCl2, CdCl3-, CdCl42-)を作ります。このCd-Cl錯体の平衡、特にイオン強度の大きな溶液中での活量係数を考慮した平衡について調べます。 <<平衡式、生成定数および化学種濃度>>前提として十分な酸が
前々回(2024-04-07)は非常に単純な系(すなわち金属イオンが配位子と反応するのみで他の副反応は起きない場合)について考えました。しかし、前回(2024-04-14)でも述べたように、実際の錯生成反応においては、多くの副反応が起きて、対象とする錯生成反応に影響を与えます。今
前回(2024-04-07)は、配位子の平衡濃度が既知の場合における溶液中の化学種の平衡濃度を求めました。今回は、配位子の全濃度は与えられるが、平衡濃度が未知の場合について考えます。 <配位子の平衡濃度が未知の場合>一般に錯形成反応において、配位子の全濃度(式
「錯体」の定義は様々ですが、一般に「金属イオン」を中心に「孤立電子対を持つ陰イオンあるいは中性分子」(配位子)が配位結合して生成した化学種のことを言います。また、これらの錯体が生成する反応を「錯生成反応」と言い、金属イオンと配位子の間には「錯生成平衡」が成
今回は沈殿反応を伴う酸塩基滴定について考えます。その一例として、ウインクラー法を取りあげます。この方法は、Na2CO3とNaOHの混合溶液をHClで滴定するとき、試料にBaCl2を加えNa2CO3をBaCO3として沈殿させ、残ったNaOHをHClで滴定するやりかたです。 <<ウインクラ
これまで見てきたように、ジプロトン酸の滴定曲線においてpHジャンプが必ず2回あるとは限りません。どのような条件のときにpHのジャンプが出現するのか調べたいと思います。 <<滴定曲線の例>>マレイン酸(pK1=1.92, pK2=6.27)、亜硫酸(pK1=1.86, pK2=7.17)、アスコル
酸塩基滴定の代表的な応用例としてケルダール法があります。ケルダール法は有機窒素の最も一般的な定量法の一つです。これは、試料を熱濃硫酸中で分解して有機窒素をアンモニウムイオンに変換し、NaOHを加えてアンモニアとして蒸留して硫酸またはホウ酸に吸収し、間接的ある
高校の教科書には、"強酸"の説明として「水溶液中でほとんどすべて電離している(=電離度が1に近い)酸を強酸という」と書かれており、その例として"硫酸"は「2価の強酸」に分類されています。このことが原因なのかも知れませが、硫酸溶液は常に(=どんな濃度でも)H2SO4
今回は気相と溶液でCO2の平衡が成立するとき、気相のCO2分圧の変化によって炭酸溶液のpHがどのようになるか調べます。 <CO2分圧とpHの関係>前回(2024-02-25)説明した通り、気相と溶液の間でCO2の平衡が成立するとき、次のような関係が成立します。[CO2(aq)] = KHP
気体の二酸化炭素(CO2(gas))は、ある程度水に溶解し、溶けたCO2(aq)は一部水和して炭酸(H2CO3)を生成します。炭酸はジプロトン酸として働きます。今回は、大気中のCO2と平衡が成立するときの水、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液のpHについて調べます。また比
以前モノプロトン酸塩基の緩衝液に関して、活量係数を考慮した計算を行いました(023-08-27)。今回はポリプロトン酸塩基の緩衝液のpHを計算します。また活量係数を考慮した緩衝液の調製方法を計算で求めます。 ある特定のpH値を持つ緩衝液を実際に調製したい場合、理論
以前、モノプロトン酸塩基の緩衝液のpHを求めました(023-08-13)。今回はポリプロトン酸塩基の緩衝液について、pHを求めます。 <<ポリプロトン酸-共役塩基の緩衝液>>ポリプロトン酸およびその共役塩基を含む緩衝液は、モノプロトン酸の場合(023-08-13)と同様に取り扱
モノプロトン酸塩基の緩衝液についてはすでに述べました(2023-08-13)。今回はポリプロトン酸塩基の緩衝液の「緩衝能」について考察します。 <<緩衝指数の計算>>希釈したりあるいは少量の酸や塩基を加えたりしても、pHがほぼ一定に保たれる溶液は緩衝液と呼ばれ、また
以前(2023-09-03)に続いて、今回はポリプロトン酸塩基の滴定における滴定誤差について考察します。一般に、滴定誤差は実験的に求めた終点が理論的な当量点に一致しないためにおこる誤差のことを言いますが、ここでは終点検出方法(たとえば、指示薬による目視法)に原理的に伴
これまで、エクセルによる様々な酸塩基滴定曲線の作成方法を説明してきました。「二分法」とは異なり、「レビ法」では「滴定曲線の式」(pHを与えて滴定剤の滴下量Tを求める式)を求める必要があります。これまで個々のケースについて検討してきましたが、今回は滴定曲線の式の
いくつかの滴定を例として、各滴定段階において被滴定溶液中の化学種濃度がどのように変化するかについて調べます。 <<リン酸の滴定>>水酸化ナトリウムによるリン酸の滴定について調べます。試料溶液のリン酸(H3A)のモル濃度をCao mol/L、試料体積をV mLとし、滴定
二分法およびレビ法を用いて、2種類の酸あるいは塩基を含む溶液の滴定曲線を描き、分別定量が可能かどうか検討します。 二分法による混合酸の滴定曲線Cao mol/Lの酢酸(HA)とCco mol/Lの塩酸(HCl)を含む溶液V mLをCbo mol/Lの水酸化ナトリウム(NaOH)で滴定する場合を
タイトル一覧 (2023)ソート、検索等が必要ならばエクセルにコピペして利用ください。 カテゴリー タイトル 年月日 元素 ポリプロトン酸塩基平衡と滴定 ポリプロトン酸塩基の滴定曲線(5)-アミノ酸-レビ法 2
前回(2023-12-17)に引き続き、アミノ酸の滴定曲線の作成方法について考えます。 今回はレビ法(2023-12-10)を用いて滴定曲線を描きます。 <<モノアミノ-モノカルボン酸・塩酸塩(例:アラニン・塩酸塩)>>モノアミノ-モノカルボン酸の一種であるアラニンは次のように解