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小説と物語の集う空間 https://fanblogs.jp/akira715/

1〜15分で読める短編小説です。 より良く書けているものだけを掲載し、ジャンルも様々あります。

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2018/11/28

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  • かやくごはん

    About this capture 投稿画像プリフォト璉 イケテル画像満載 『夕食』 「…何コレ?」 夕食の時間。食卓につくなり、僕から出た第一声はまさにそれだった。 「かやくご飯よ」 母は台所でトントントン、と一定のリズムで材料を切りながら、こちらに振り返りもせ ずに言ってきた。 「…かやくごはん」 僕は母の言ったことを反芻しながら、僕は今一度目の前に置かれているモノに向き直っ た。そして、…

  • 幸運を運ぶ猫

    ある日、中年のサラリーマンが首を吊って自殺した。死んだのは、高田一良、45歳の会社員だった。高田の部屋からは、自筆の遺書も見つかった。 刑事の前田は現場検証に訪れた。 「首吊りの仏さんは、いつ見ても壮絶な顔していますね。」 運ばれていく死体を見ながら、前田の後輩の今井が声をかけた。 遺書に書かれていたことは、三年前に交通事故で娘を亡くし、妻にも病気で先立たれたことが、高田の心に大きな衝撃を与…

  • 赤い箱

    雨が強く窓にあたっている。 さとしはその様子をいつまでも眺め続けていた。 どうして、雨は降るのだろう。 「かあさん、なんで雨はふるのかなぁ?」 「そんなこと知らないわよ。それより算数のプリントはやったの。他の子はもっとできるのよ」 最近、母親は塾の話しかしない。 宿題はやったの。 今度のテストはがんばるのよ。 たくさん勉強していい中学に入ってね。 ニ年生…

  • 夕暮れどき

    秋の風に揺られ、稲穂が頭を重たそうに垂らしている。今年も小金井家で端正込めて作った米は豊作だ。年老いた父親の義正、母のイクそして五人兄弟の長男、義一と三人で丁寧に刈り込んだ稲を荷台に乗せ精米しに小屋へと向かう。一年の中でこの時期が一番忙しく、体にこたえる刈り入れ時というわけだが、待ちに待った日でもある。これが、終われば、ほんの一時だが、休息出来る。 「義一、これ、出来上がった米、小倉さんと…

  • ある生徒会室にて

    「ねぇ、式はいつにする?」 「ついに頭、沸いたか?佐々木」 淡々とした声で、姫宮は資料に落とした目も上げずに、佐々木の言葉をばっさりと切って捨てた。しかし、佐々木は全く頓着した様子も見せずに、変わらない調子で続ける。 「ワタシ、ここなんていいと思うのよねぇ〜」 姫宮はそれに答えず、いつものように、あえて視界から佐々木をはずして、周りを見渡し、ちょうど通りがかった役員の一人を捕まえた…

  • マリオネット

    ある、大きな大きな街の片隅に、みすぼらしい服を着た、一人のマリオネット使いが住んでいた。マリオネット使いがマリオネットを操ると、大人も子供も、それを見物しようと集まって、マリオネット使いの周りには決まって人垣ができた。マリオネット使いのマリオネットは、いつも本当に生きているみたいに木箱の上を動き回り、帽子を揺らして踊ったり、とんぼ返りを打ったりして人垣を沸かせた。マリオネットのピエロは、いつも…

  • 初めて見た時、鏡のような奴だと思った。…いや違うか、私を、鏡に映したような奴だと思った。なんというか、雰囲気が似ている、と。だけど… 「あづさ?」 「ん?」 はっと我に返って、目の前にいるあいつを見上げる。 「何考えてた?」 「別になんにもー?」 あ、怒ってる。 「俺といるのに?」 「だから別に考え事じゃないって。」 「俺といるのによそ事考えるんだ?」 ここで、笑ってごめんて言え…

  • それはいつものように訪れた市場にあった。 普段なら通りすぎてしまうような露店の汚れたテントの下。暗がりに身を潜めるように座る店主の前に、テントと同じくらい汚れた布が広げられている。 そのはじっこに、ぽつんとそれは置かれていた。 それを見た時、心がはねた。 どうしてもほしい。 そんな欲求が心を満たす。 けれど、それにつけられたチケは、約半月分の生活費に匹敵した。 思わず手にし…

  • ラブレター

    麻生拓也様へ 6月15日 私はこの手紙を、気が狂いそうになりながら書いています。出来れば今すぐにでも、自分のこの身を芯からズタズタに引き裂きたい。その存在の証拠や痕跡さえも残らず消滅させて、一気に楽になりたい。そんな衝動に、日々駆られながら生きています。あなたが好きです。死ぬほど好きです。いつもいつも、登下校のとき、昼休み、いえ授業中、貴方がいるはずもない自分の教室の中…

  • ラブレター

    麻生拓也様へ 6月15日 私はこの手紙を、気が狂いそうになりながら書いています。出来れば今すぐにでも、自分のこの身を芯からズタズタに引き裂きたい。その存在の証拠や痕跡さえも残らず消滅させて、一気に楽になりたい。そんな衝動に、日々駆られながら生きています。あなたが好きです。死ぬほど好きです。いつもいつも、登下校のとき、昼休み、いえ授業中、貴方がいるはずもない自分の教室の中でさえも、…

  • 沈まない舟

    沖に並べられた小さな舟に隠れ、こっそり昼寝をして起きると、世界は海に沈んでいた。 水中には自分の生活していた世界が見える。 今日学校はあるのだろうか?と心配したが、水面下に揺らめく学校を見て、 これからずっと学校はないのだと気づいた。 辺りを見回しても何も無い。 ただ水面が日の光を受けてキラキラと輝いている。 「これが世紀末か」 と、口に出して言ってみた。 何故か、もう他の人達は生きていな…

  • 一枚の地図

    全ての荷物が運び出されてガランとした殺風景な部屋。過ごしている時にはあんなに狭いと感じていたのに意外に広かった私の部屋。 埃っぽい匂いに混じって窓から流れてくる春の香り。 「この部屋とももうお別れかぁ」 感慨深げに呟いたその時。 部屋の隅に一枚の紙が落ちているのに気付いた。 四折りにされたそれを開いてみると、それは一枚の原稿用紙と中からもう一枚。 「何これ?」 『わたしのまち。 三…

  • かくれんぼ

    みのり 若狭さんとこの実悧ちゃん、居なくなって仕舞ったんだと、 何でも神隠しに逢うたそうやない、 こ めんこい娘やったからのう、神さんに連れてかれたんやろ、 可哀想になぁ、 初めに誘ったのは実悧の方だった。 まさよし 幼い頃から、何故か兄の柾美だけには良く懐き、七つも歳が離れれば矢張り可愛いのか、…

  • オーロラの見える山

    散歩に行こう。 そう思ったのが間違いだった。 散歩をしたからって生活が変わるわけでもないのに。 本当に僕は馬鹿だった。 その日の朝は肌寒くて、冷え性の僕を不安にさせた。 不安なきもちはしかし、子どものような冒険心の興奮に変わり、僕は裏山に行った。 もし、晴れだったら。もし鳥が鳴いてたら。 せめて息子の圭太が目を覚ましていたら。 きっと僕は少しも変わらずに家族と…

  • ゴミ

    ゴミ箱はゴミを捨てる場所。この世でゴミ箱は絶対無くならないものだ。 だって、ゴミがいっぱい生まれるから———。 僕には父がいない。昔、愛人と出て行ってしまった。 そのせいか、母は心が病んでいる。そして、僕を叩いたり、殴ったりする。 世間で言う虐待だ。でも、僕はそれほど殴られない。ニ、三発ぐらい僕を殴り、母は一人泣いてぶつぶつ言っている。 それが終われば、いつも通りの母になり平和にな…

  • 始まりのない終わりのうた

    「ソナチネ、って皆が呼んでいた気がする。意味は知らない、誰かに何かを習った事なんて1度もないから」 最後のピザをたいらげた後、手を拭くものを探すふうにテーブルの上を見回しながらソナチネ——それが彼女の名前らしい——が、肩を竦めて僕に言った。 僕は彼女の伏せられた眼差しから目を逸らさないままで、胸ポケットを探ってみる。そこには今日、部屋を出る時に突っ込んだハンカチが入…

  • 見つめる闇

    何をそんなに見つめているのですか? 先ほどから、ずっと何かを見つめていますね。 そこの暗がりに、何か、いるような気がする? 気のせいでしょう。 ほら、壁の染みや模様。あれは、三つがうまく並ぶと、人の顔に見えてしまうものだと言いますね。 闇も同じ。何も見えない闇の中ですら、人間の脳はそこに「何か」を探してしまいます。 ほんの少しの光の変化。自分自身の瞳孔のゆらめき。 そんなもの…

  • 春眠暁を覚えず

    ふと意識が戻った時、テレビでは甲子園の開会式が始まっていた。 居間に横になっているうちに、いつの間にか眠ってしまっていたらしい。 ああ、早く起きて、買物に行かなくちゃ… 起き上がろうとして、初めて身体がぴくりとも動かないことに気付く。 あー、まだ、身体が寝てる… 最近、疲れのためか、夜中寝ているときにも金縛りに遭うことが多くなった。 勿論、それは幽霊がいる、とかそうい…

  • 金木犀

    病室には穏やかな空気が満ちている。 ラウンジの方から楽しそうな話し声が聞こえる。 ほんの少し前まで私もおしゃべりに参加していた。 初めての妊娠ではないので大きな不安はない。 体調も安定していたので無事予定通りに出産できるようだった。 もうすぐお兄ちゃんになる正人は私が入院してから毎日病院に来ていた。 背中に大きなランドセルを揺らしながら、部屋に入ってくる。 そし…

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