悪文の構造 ――機能的な文章とは (ちくま学芸文庫) 作者:千早耿一郎 筑摩書房 Amazon 書名の通り、本当に悪文とみなした文を指摘して修正していく本です。「機能的な」つまり意図した通りの意味で伝わる文にするため、悪文たちの構造を紐解いていきます。一文を短く、主述関係を明確に…というのはよく言われることではありま須賀、実践例も多く掲載されているのでイメージしやすいのではと思います。 ただ、言葉の解釈を楽しむ、もっと言えば誤読を楽しむような境地はここにはなさそうです。
2025年7月
悪文の構造 ――機能的な文章とは (ちくま学芸文庫) 作者:千早耿一郎 筑摩書房 Amazon 書名の通り、本当に悪文とみなした文を指摘して修正していく本です。「機能的な」つまり意図した通りの意味で伝わる文にするため、悪文たちの構造を紐解いていきます。一文を短く、主述関係を明確に…というのはよく言われることではありま須賀、実践例も多く掲載されているのでイメージしやすいのではと思います。 ただ、言葉の解釈を楽しむ、もっと言えば誤読を楽しむような境地はここにはなさそうです。
『民主主義を装う権威主義』(東島雅昌)、『デジタル権威主義』(大澤傑・編)
民主主義を装う権威主義 - 世界化する選挙独裁とその論理 (叢書21世紀の国際環境と日本 008) 作者:東島 雅昌 千倉書房 Amazon 何らかのレベルで公正と言えない選挙を行うことで「民主主義を装う権威主義」と呼ぶべき体制の国家が増えている中、独裁者がどのような戦術で権威主義体制下の選挙を乗り切ろうとしているのか、あるいはそれに失敗した場合にどんなことが起こりうるのかを計量分析も踏まえて論じた本です。 権威主義体制下の選挙には、体制の強さを誇示したり、支持状況に関する情報を得たり、(選挙への参加・不参加を通じて)野党を分断したりといったメリットがある半面、圧勝できないと自分の弱さを曝け出…
2025年7月
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悪文の構造 ――機能的な文章とは (ちくま学芸文庫) 作者:千早耿一郎 筑摩書房 Amazon 書名の通り、本当に悪文とみなした文を指摘して修正していく本です。「機能的な」つまり意図した通りの意味で伝わる文にするため、悪文たちの構造を紐解いていきます。一文を短く、主述関係を明確に…というのはよく言われることではありま須賀、実践例も多く掲載されているのでイメージしやすいのではと思います。 ただ、言葉の解釈を楽しむ、もっと言えば誤読を楽しむような境地はここにはなさそうです。
民主主義を装う権威主義 - 世界化する選挙独裁とその論理 (叢書21世紀の国際環境と日本 008) 作者:東島 雅昌 千倉書房 Amazon 何らかのレベルで公正と言えない選挙を行うことで「民主主義を装う権威主義」と呼ぶべき体制の国家が増えている中、独裁者がどのような戦術で権威主義体制下の選挙を乗り切ろうとしているのか、あるいはそれに失敗した場合にどんなことが起こりうるのかを計量分析も踏まえて論じた本です。 権威主義体制下の選挙には、体制の強さを誇示したり、支持状況に関する情報を得たり、(選挙への参加・不参加を通じて)野党を分断したりといったメリットがある半面、圧勝できないと自分の弱さを曝け出…
持続可能なメディア (朝日新書) 作者:下山 進 朝日新聞出版 Amazon canarykanariiya.hatenadiary.jp などで知られる著者が週刊誌連載をもとに、直近の国内外のメディアの動向やそれらを取り巻く環境などを紹介した「続編」です。 canarykanariiya.hatenadiary.jp に続く一冊というような位置づけで、今回も興味深く読みました。 著者は最終章で、 イノベーションのジレンマ(過去の成功体験)に囚われていないか 技術革新を適切に受け入れているか そこでしか読めないものを提供しているか 買収が可能で横の流動性があるか 孤立を恐れていないか を「持続…
日ソ戦争 帝国日本最後の戦い (中公新書) 作者:麻田雅文 中央公論新社 Amazon 第二次世界大戦の最終盤にソ連が日ソ中立条約を破って参戦し、日本が降伏文書に調印した後まで続いた「日ソ戦争」の経過を論じた本です。 本書では、原爆の有無にかかわらず自軍の損耗を避けるためにソ連の参戦を求め続けたアメリカ、当初はそれを渋りながらも着々と準備を進め、最終的にはヤルタでの密約を実力で担保しようと参戦したソ連、「対ソ静謐」の建前上(ソ連領攻略はともかく)満州防衛の準備も十分にできず、千島はむしろ米軍に備えながらソ連は終戦の仲介を求め続けた日本・・・という戦略面の諸相をまず示します。 その上で、西から蹂…
沖縄戦 なぜ20万人が犠牲になったのか (集英社新書) 作者:林博史 集英社 Amazon 沖縄戦の経緯・展開を踏まえつつ、そこに人々がどのように巻き込まれ、動員され、多数の生命が失われるに至ったのかを豊富な事例とともに論じる本です。 凄惨な事例が多く、鬱々とした気持ちで読み進めざるを得ない箇所ばかりでしたが、特にショッキングだったのは6月23日はおろか、8月15日以降に離島で起こった日本兵らによる住民虐殺でした。敗戦の事実を知らず、それを伝えにきた島民が殺されたり、それを知りながらも朝鮮人男性をも含めて虐殺した事例が紹介されています。 一方で、日本兵にも米兵にも非戦闘員を守るべく行動した人*…
[:contents] 北朝鮮に出勤します―開城工業団地で働いた一年間 作者:キム・ミンジュ 新泉社 Amazon ツン9割のツンデレ 南北経済協力の象徴だった開城工業団地の食堂で1年間、栄養士として働いた韓国人女性によるエッセイです。栄養士でありながら食堂のマネジメントにも関わる立場で*1、北の職員や彼女らを束ねる強権的な*2「班長」、食材をかすめ取っていく税関職員、父に似て優しい警備員…などと時に対峙しながら交流してきた様子が描写されています。 一言で言うと北の人たちは「ツン9割のツンデレ」で、公式の建前を非常に重視して*3自分たちの非はとことんまで認めず、南の食材や化粧品をけなす割には平…
NEXUS 情報の人類史 上 人間のネットワーク 作者:ユヴァル・ノア・ハラリ 河出書房新社 Amazon NEXUS 情報の人類史 下 AI革命 作者:ユヴァル・ノア・ハラリ 河出書房新社 Amazon 「ネクサス」としての情報 『サピエンス全史』や、 canarykanariiya.hatenadiary.jp などの著作で世界的に有名な著者が、情報が人類史の中で果たしてきた役割を追いながら、AIというこれまでと異なる情報テクノロジーが何をもたらすか考察する本です。 著者は、情報が異なるものを結びつけて新しい現実を創り出す面に注目し、物語や聖典、文書などで他の大勢と協力できたことが、人間が…
【目次】 カルトとは何か、何が該当するのか 「政教分離」にどこまで含めるか 日本のカルトと自民党 政教分離を問い直す (集英社新書) 作者:橋爪大三郎 集英社 Amazon カルトとは何か、何が該当するのか 自民党との関わりが指摘される生長の家・日本会議、旧統一教会の教理や歴史、政治との関わりを紹介しつつ、「カルトとは何か」「政教分離はどのようにあるべきか」を論じた本です。 まず冒頭で、カルトを「信徒の実生活と両立できないほどの貢献を求める宗教」と定義付けます。 その上で、生長の家がアメリカの相対主義的な思潮「ニューソート」の系譜で成立し、その可変性の高いあり方ゆえ戦時中に皇国主義と結びついた…
ルポ 国威発揚 「再プロパガンダ化」する世界を歩く 作者:辻田真佐憲 中央公論新社 Amazon 長野県の山中にある安倍晋三をまつる神社、虎ノ門事件を起こした難波大助の実家、発泡スチロール製の神武天皇像、「救国おかきや」の三重塔、ムッソリーニの生家、相手への威嚇がショー化している印パ国境、北朝鮮を臨む丹東、そしてトランプタワー…国内外の国威発揚の現場を訪ねたルポです。 掲載旅行記一覧【先頭に固定】 - かぶとむしアル中 私自身、こういう旅は好きなので楽しく読むことができました。 印象深かったのは「モニュメントは永久不変なものではなく、まるで生き物のように呼吸し、新陳代謝する」との指摘です。時を…
【目次】 失敗に学び鍛えた「統治力」 本当にこの道しかなかったのか 政権「暗部」への検証は より分断した社会で 宿命の子 安倍晋三政権クロニクル 上下2巻セット 文藝春秋 Amazon 失敗に学び鍛えた「統治力」 著名なジャーナリストである著者が、7年8カ月にわたった第二次安倍政権の事績と意思決定の内実を追った、上下巻合わせて1100ページを超える大作です。安倍晋三元首相がアメリカ、中国、ロシア、韓国、北朝鮮、オーストラリアや欧州の首脳たちとどう切り結び、どのような外交・安全保障政策を展開してきたかを中心に詳述されています。各首脳とのやりとりという面では、 canarykanariiya.ha…
自民党幹事長 ――歴史に見る権力と人間力 (ちくま新書) 作者:星浩 筑摩書房 Amazon 朝日新聞社の政治記者などとして知られる著者が、自らの取材経験を交えながら自民党幹事長の役割や歴史について書いた本です。 歴代幹事長の列伝(特に息遣いの伝わる「安竹宮」以降)や主に総裁との関係に基づく類型論、党則上の権能や代行以下のバックオフィスについてなど、興味深い内容が少なくなく、戦後の日本政治を切り取る視角の一つとしての意義を感じることができました。 それだけに、全体として内容の重複(列伝で書かれたエピソードが何度も登場する)や誤字脱字が目立ったのは残念でした。取材していた橋本龍太郎の名前に誤植が…
台湾を知るための72章【第2版】 (エリア・スタディーズ147) 作者:赤松 美和子,若松 大祐 明石書店 Amazon 来月、諸事情で台湾への家族旅行をねじ込んだため読んでみました。外省人/本省人だけでなく、客家やオーストロネシア系の「原住民族*1」や東南アジアなどからの新たな移民も含めた多文化・多民族性、お馴染み「一つの中国」をめぐるさまざまな論点、民主化の過程で生じた「移行期の正義」に関する問題など、さまざまな論点がわかりやすく紹介されており、非常に興味深かったです。 前二つの絡みで特に印象的だったのは、現在も僅かに台湾に居住するチベットやモンゴル系の人たちの歴史です。彼らは中華民国の「…
【目次】 政権内や各国首脳とのやりとりを詳述 第1期政権のアウトプットに影響した3要素 再登板まであと数日 ジョン・ボルトン回顧録 トランプ大統領との453日 作者:ジョン・ボルトン,梅原季哉,関根光宏,三宅康雄 朝日新聞出版 Amazon 政権内や各国首脳とのやりとりを詳述 第1期トランプ政権で国家安全保障担当大統領補佐官を務めたジョン・ボルトンが、ホワイトハウスでの経験を綴った本です。イラン・シリアなどの中東や北朝鮮のみならず、中国・ロシア・ウクライナ・アフガニスタン・ベネスエラなどをめぐる問題で、トランプ大統領を中心にどのようなやり取りがなされ、結論に至った/至らなかったのかを詳述してお…
加耶/任那―古代朝鮮に倭の拠点はあったか (中公新書) 作者:仁藤敦史 中央公論新社 Amazon 新羅・百済・高句麗の3国が争う中、統一した王権が確立しなかった加耶諸国の歴史を朝鮮古代史の中に位置付けながら論じつつ、そこにあったとされる「任那日本府」がどのようなものだったのか、様々な史料を批判しながら明らかにしていく本です。 結論だけ言ってしまうと「任那日本府」はヤマト王権の出先機関ではなく、ヤマト王権から遣わされた将軍・使者や、そういった人々が通婚・土着化したものの総称だった、というのが本書の主張です。そこには、日本の中国地方を根拠とする吉備氏を出自とするような人々も含まれています。彼らは…
島津氏と薩摩藩の歴史 作者:五味 文彦 吉川弘文館 Amazon 日本中世史の大家といえる著者が、院政期から幕末までの島津氏と薩摩・大隅地方の歴史を追った本です。薩摩藩成立以降の支配制度や経済、文化、幕末に至るまでの藩政改革などについてはよくまとまっていると感じましたが、戦国以前の島津氏の歴史については、一族の争い*1が複雑なこともあってやや細切れ感がありました。土地支配のあり方などは比較的記述が充実しており、著者の眼目がそちらにあったということなのかもしれません。 *1:こちらに関心がある方は『図説 中世島津氏』(新名一仁)などの方がよいかもしれません
【目次】 国際システムとしての冷戦 「中原の大国・ドイツ」をどう位置付けるか 日韓関係との比較において 「ドイツ問題」の次は 「敗者」をちゃんと包摂してこそ 欧州を中心とする国際政治史を勉強してみました。 国際システムとしての冷戦 冷戦史(上) 第二次世界大戦終結からキューバ危機まで (中公新書) 作者:青野利彦 中央公論新社 Amazon 冷戦史(下) ベトナム戦争からソ連崩壊まで (中公新書) 作者:青野利彦 中央公論新社 Amazon 冷戦を「2陣営が地政学的利益とイデオロギーをめぐり対立し、多くのアクターがその構造を念頭に行動した」国際システムとして捉え、米ソ・欧州・東アジア・第三世界…
東大政治学 東京大学出版会 Amazon その名の通り、東大の1・2年生向けに法学部の政治系の教員が行ったリレー講義をもとにした本です。担当する各科目の基本的事項を説明する章もあれば、「戦間期フランスのある村における利益誘導事情」といった個別の事象や、時事的な内容から話を展開していく章もあり、それぞれ非常に興味深く読むことができました。 一番面白かったのは「憲法をめぐる政治学」(境家史郎)で、なぜ日本国憲法が外れ値的にまで改正されずに存続しているかを論じています。それによると、そもそも規律密度が低い(ざっくり規定されている)ため、重要な統治機構や選挙制度改革も法律の制定で対応できる点に加え、有…
【目次】 兄との「一定の了解」 「賊将の弟」だから首相を固辞したのか 「元老の中の元老」 西郷従道―維新革命を追求した最強の「弟」 (中公新書) 作者:小川原正道 中央公論新社 Amazon 兄との「一定の了解」 明治維新の大功労者ながら「逆臣」として城山の露と消えた西郷隆盛の弟でありつつも、明治政府内で何度も首相候補に擬せられ、元老として遇されるに至った西郷従道の生涯を追った本です。 維新初期に洋行の機会を得た従道は、兄との一定の了解の下で政府に残り、奇しくも西南戦争における政府側の兵站を担うことになります。兄の死を知った際の描写は気の毒でなりませんでしたが、その後は海相、農商務相、内相など…
2030年の広告ビジネス デジタル化の次に来るビジネスモデルの大転換 作者:横山 隆治,榮枝 洋文 翔泳社 Amazon 2023年時点で、30年の広告ビジネスを展望する本です。著者が通じる広告代理店業界目線の話が多めではありましたが、興味深い目線がいくつも得られました。例えば、 今や代理店のライバルはコンサル会社であり、戦い抜くためには広告というアウトプットのみならず顧客の課題を理解してマーケティング戦略全体を立案していかねばならない AIはクリエイティブ含め、いきなり広告やマーケティングの核心に入ってくる可能性がある コネクテッドTVでの(YouTuberのチャンネルというよりは)高クオリ…
【目次】 日本アルプスはプレート沈み込みの「皺」 「大陸の端にある」意味 日本列島100万年史 大地に刻まれた壮大な物語 (ブルーバックス 2000) 作者:山崎 晴雄,久保 純子 講談社 Amazon 日本アルプスはプレート沈み込みの「皺」 現在の日本列島の地形に大きな影響を与えたとされる、ここ100万年の地形発達史をまとめた本です。日本列島全体の成り立ちから、各地域の特徴的な地形が形成された経緯までを紹介しています。 例えば▽日本アルプスはプレートがやや斜めに沈み込んでいることによる「皺」である*1▽かつて富士山が山体崩壊して土砂が足柄平野を埋めた▽琵琶湖は最初は伊賀上野あたりにあった▽近…
近代日本外交史-幕末の開国から太平洋戦争まで (中公新書 2719) 作者:佐々木 雄一 中央公論新社 Amazon ペリー来航からポツダム宣言受諾までの近代日本外交の歩みを概説した本です。「政治外交史」でなく「外交史」として、各時期の国内における外交アクター-その意思決定方法や国際秩序観-により着目した議論となっている点が興味深いです。 具体的には、第一次世界大戦ごろまでは特定のメンバー*1が外相・外務次官・主要国の大使を歴任するインナーサークルを形成しており、彼らは基本的に当時の国際秩序を一定程度信頼し、その中で日本が発展することは可能と見做していました。当時の価値観における自国の正当性を…
別冊 科学名著図鑑 (ニュートンムック) ニュートンプレス Amazon 別冊 科学名著図鑑 第2巻 (Newton別冊) ニュートンプレス Amazon 新聞の書評欄含めブックガイドものは割と好きなので須賀、最近の研究動向含めて手広く知ることができてよかったです。折を見て、何冊か読んでみるつもりです。
【目次】 侮れないサイバー攻撃力 より安価な「兵器」 北朝鮮についての記述はちょっと… ラザルス:世界最強の北朝鮮ハッカー・グループ 作者:ジェフ・ホワイト 草思社 Amazon 侮れないサイバー攻撃力 バングラデシュの中央銀行の資金を奪う、ソニー・ピクチャーズの内部情報を暴露する、イギリスの多くの病院をはじめとする多くのコンピュータをランサムウェアに感染させる、暗号資産を度々窃取する…こうしたサイバー犯罪に手を染めているとされる北朝鮮のハッカー集団「ラザルス」を追った本です。 読み物として十分楽しめますので、個別の事件についてはぜひ読んでいただきたいと思いま須賀、やはり特筆すべきは、彼らがい…
【目次】 「行動は遺伝的である」とは 努力できるかは生まれつき!? 遺伝子伝達という無知のヴェール 能力はどのように遺伝するのか 「生まれつき」と「努力」のあいだ (ブルーバックス) 作者:安藤寿康 講談社 Amazon 「行動は遺伝的である」とは 双子研究など行動遺伝学の知見から、タイトルにもなっている「能力はどのように遺伝するのか」という問いの最前線を紹介する本です。 言うまでもなく「能力と遺伝の関係」という議論は、道を誤ると優生学にも辿り着きかねない歴史的にデリケートな分野でもあるため、著者は「能力」と「遺伝」それぞれの概念や研究成果を掘り下げていきます。具体的には「能力」あるいは「才能…
日朝極秘交渉――田中均と「ミスターX」 作者:増田剛 論創社 Amazon 2002年の日朝首脳会談に向けた北朝鮮との秘密交渉を担った田中均氏へのインタビューを中心に、交渉や平壌での首脳会談、その後の経過を振り返った本です。 田中氏や元・駐英北朝鮮大使館ナンバー2の太永浩氏の証言は臨場感もあり興味深いものでしたが、特に田中氏が置かれていた環境や晒されていた評価を踏まえ、多角的な証言からインタビューをより客観的な流れの中に位置付けていく作業は、やや中途半端に終わっているような気がしました。秘密交渉である以上、証言できる人がそもそも少ないということはあるでしょうけれども、「取材者としての筆者の感想…
【目次】 2024年冒頭まで紹介 「韓国は外国。」それなら… 改めて「金主」を掌握できるか 最新版 北朝鮮入門―金正恩時代の政治・経済・社会・国際関係 作者:礒崎 敦仁,澤田 克己 東洋経済新報社 Amazon 2024年冒頭まで紹介 『LIVE講義 北朝鮮入門』(礒粼敦仁、澤田克己) - かぶとむしアル中の最新版が出たとのことで、買って読んでみました。2024年冒頭までが扱われており、金正恩体制下の近況がしっかり扱われているのが最大の特徴です。章立てが国内政治史・政治体制・安全保障(核とミサイル)・経済・社会・外交(日朝・米朝・南北・中朝)とテーマ別になっており、特に政治や安全保障と外交は話…
【目次】 同じ土俵での「競争」 中国台頭が招いた新たな展開 「急所」は分散してこそ 半導体戦争――世界最重要テクノロジーをめぐる国家間の攻防 作者:クリス・ミラー ダイヤモンド社 Amazon 半導体技術の黎明期から、それが安全保障上の主要テーマとなった現在までを扱った一大歴史物語です。 同じ土俵での「競争」 アメリカで生まれ育った産業でありながら、より安価にチップを作れる環境を求めて東アジアなどにオフショアされていきます。そこには、半導体工場を建設し現地の雇用・産業を守り育てることで、現地政府をアメリカを中心とする西側に繋ぎ止めておく意図も含まれており、これは日本も例外ではありませんでした。…
「日本史」にも地域差があります。京都や江戸で起きたある事象が東北から九州までに同様の影響を与えていたということはあり得ず、そもそもそうした地域の直接的な影響をさほど受けてこなかった地域もあります。そんな視点から、家や図書館にあった本を数冊読んでみました。 『東と西の語る日本の歴史』(網野善彦) 『図説 中世島津氏』(新名一仁) 『隼人の古代史』(中村明蔵) 『写真で見る種子島の歴史』(鮫嶋安豊) 『アイヌ学入門』(瀬川拓郎) 『東と西の語る日本の歴史』(網野善彦) 東と西の語る日本の歴史 (講談社学術文庫) 作者:網野 善彦 講談社 Amazon 古いハードカバー版を読みました。土地制度・度量…
【目次】 地方紙に焦点を当てた計量分析 突然の廃刊が突きつけるもの 現代日本の新聞と政治: 地方紙・全国紙と有権者・政治家 作者:金子 智樹 東京大学出版会 Amazon 地方紙に焦点を当てた計量分析 これまで見落とされがちだった地方紙を中心に、新聞と政治(世論や政治家)との関係を計量的に論じた本です。一口に「地方紙」と言ってもその地域でのシェアやプレゼンスはまちまちであり、そうした「メディアシステム」が各新聞社の社説の論調や政治報道に影響を与えており、またそれらは有権者の政治意識や投票行動と関係があることが示されていきます。一方で、この「関係がある」を「新聞購読が有権者の政治意識や投票行動に…
教養としてのインターネット論 世界の最先端を知る「10の論点」 作者:谷脇 康彦 日経BP Amazon インターネットが社会的なインフラとなり、データに基づいて動くようになってきた社会の展望について論じた本です。 特に興味深かったのは以下の二つの指摘でした。一つ目は、データという無形資産を基盤にする市場ルールや評価指標が必要というもの。もう一つは「集中か分散か」という論点です。当初からオープンでフラットな場とみなされてきたインターネットで須賀、 canarykanariiya.hatenadiary.jp canarykanariiya.hatenadiary.jp 巨大プラットフォーマーに…