映画『古都』感想&あらすじ/日本人である原点に気付かされます ★3.5
2016年公開。いい映画だと思うのですが、クライマックスの日本舞踊のシーンが長すぎて、残念に思います。 あらすじ 京都の老舗呉服店を経営する千恵子(松雪泰子)には、生き別れた双子の妹・苗子(松雪泰子)がいた。苗子は北山杉の里で林業を営んでいる。 千恵子の娘・舞(橋本愛)は大学で就活中。一人娘で店を継ぐかどうか迷っている。一方苗子の娘・結衣(成海璃子)は、絵を学ぶためにパリに留学していた。 千恵子と苗子は若い頃に一度会ったことがあり、千恵子は苗子に北山杉を描いた帯を送ったことがあった。 あるときパリで日本文化を紹介するイベントがあり、舞は日本舞踊を披露するためにパリに向かう。 また苗子も絵のことで悩む結衣に会うためパリを訪れていた。結衣に生き別れた姉の話をし、北山杉の帯を見せる苗子。結衣は自分自身の中の日本人の部分を描くことに目覚める。 また就職のことで千恵子と揉めていた舞も日本文化の世界での立ち位置をパリで目の当たりにし、日本の伝統に対する思いが変わっていくのだった・・。 感想 川端康成原作の「古都」を現代に置き換え、主人公の二人のその後を描いたものです。 松雪泰子はきれいな人ですね。ちゃんと年を取っていってるのですが、それなりに美しいです。品もあって、日本人としての美しさを持った人。 娘たち二人もきれいな女優さんですが、佇まいが違います。 一口に言って、京都のいいところを紹介する動画のような映画です。京都に住んでいる人でも、京都のことをよく知らないという人は多いですが、京都に残っている京都ならではの文化は、大切に残さなくてはいけない日本の財産だと思います。 それは、世界遺産になった神社仏閣や高いお料理だけでなく、街の中の、奥深い路地にある細長い家々や、庶民に浸透している年中行事など、すべてのことに共通しています。 もっと言えば、日本中の地域によるしきたりの違いや県民性も、大切にしなくてはいけないものだと思います。 京都だけが日本ではないけれど、日本の中の京都は日本の代表と言っていいでしょう。京都を大切にするということは、自分たちの街を大切にすることに繋がると思います。 このような映画はもっとあってもいいんじゃないでしょうか。古い古い国なのですから。
映画『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』感想&あらすじ/シリーズ最高傑作だと思っています ★4.2
1980年公開。「新たなる希望」から3年後を描いています。ハン・ソロとレイア姫が最高に魅力的だった作品と言えます。ポスター画は生頼範義という日本のイラストレータの作品です。ポスターも最高に素晴らしいですね。 あらすじ デス・スターを反乱軍に破壊された帝国軍の反撃は熾烈を極めていた。帝国軍のダース・ベイダーはルークを探し出すため、星々にドロイドを放っていた。 そのころハン・ソロはもらった賞金を借金取りに払うために反乱軍を離れると言い、レイアは止めようとするがハン・ソロは旅立ってしまう。しかしルークが襲われて窮地に立っていると知ると救出に向かうのだった。 その後ルークはヨーダのもとでジェダイの修行を始める。厳しい修行に耐えるルーク。 一方ダース・ベイダーは皇帝ダーク・シディアスに、ルークを暗黒面に引き込むように命令されていた・・。 感想 私は、スターウォーズの全作品の中で、この帝国の逆襲が一番好きです。ハン・ソロが一番かっこいいときで、レイア姫ももっとも魅力があふれていた作品だからです。 実はふたりはしばらく付き合っていたと、キャリー・フィッシャーが生前告白しています。もしかしたら、この撮影の少し前ぐらいかなあと推測。ふたりの心がうまくもつれあって、かけひきしている、恋人の表情が見え隠れ。このあと悲しいことにキャリーは薬物中毒に陥り、その後自伝を書いて映画化されたり、たいへんな人生だったようです。 「帝国の逆襲」は唯一最後が完結せず、ハン・ソロがダース・ベイダーによって冷凍されて終わります。この後の続きを見たいと、人々はどれだけ待たされたことでしょう。そういうこともスター・ウォーズの人気をさらに高めたに違いないと私は思っています。 宇宙の戦争を描いていながら、親子の愛、兄弟の愛、そして男女の愛を描いているスター・ウォーズ。それがこれまでのSFには無かった部分ではないでしょうか。 ハン・ソロが冷凍される寸前、レイアはようやく一言告白します。「愛していたわ・・」 ハン・ソロはいつもの調子で、それでもレイアの眼を熱く見ながら、「知っていたよ・・」と答えます。 このシーンに胸が熱くなり悶絶し、そして冷凍されるというショックなシーンで終わるという、この衝撃は今も忘れられません。
映画『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』感想&あらすじ/まるで主演はジョニデ ★3.8
2018年公開。とてつもなくお金はかかっているなあと思わせる作品ではありました。ダンブルドアを演じるジュード・ロウや黒い魔法使いのジョニー・デップはやはり素晴らしかった。でも期待していたニュート(エディ・レッドメイン)の活躍は中途半端だったかなあと思いました。 あらすじ 前作でニューヨークの魔法省に捕らえられていた黒い魔法使いのグリンデルバルドは脱獄することに成功する。同じく前作でオブスキュラス(魔法族の子供の中で、抑圧された感情の爆発を具現化できるものがおり、それが生み出したとてつもない力を持つもの)を出現させる少年クリーデンスが、パリで生きているとわかり、グリンデルバルドもパリに向かう。 一方、主人公の魔法動物学者のニュートはロンドンの魔法省に入るよう勧められるが、かたくなに拒否。兄は魔法省でエリートだが、ニュートは自由に生きたいと思っている。しかしその破天荒な生き方のため、当局から監視が付いていた。 そんなときニューヨークで友達になったマグル(非魔法族)のジェイコブと恋人の魔法使い・クイニーがニュートを訪ねてくる。クイニーの姉のティナがニュートが婚約したと誤解していると知り、ニュートはティナのいるパリに向かう。マグルのジェイコブとクイニーが結婚できないことで仲違いし、姉のもとに向かったクイニーを追うジェイコブとともに・・。 感想 全編を通じ、グリンデルバルド(ジョニー・デップ)の独壇場です。だって、こんな大スターが出たら、そりゃ周りみんなカスむでしょう。それは前作の最後にジョニデがほんの少し顔を出したときにすでに兆候がありました。全部持ってくわ、この人と。 ファンタスティック・ビーストは全5作だそうです。最初から5作だったかどうかはわかりませんが、第2作の黒い魔法使いの誕生に関しては、話が少し間延びしている感が否めませんでした。ものすごいCGシーンによって、退屈するようなことはありませんが、あとから落ち着いて考えてみると、あまり話が前に進んでいなかったように思います。 長い時間をかけて、オブスキュラスを生むクリーデンスの生い立ちを探っていくのですが、なかなか真実にたどり着きません。やきもきするうちにジョニデの見せ場がきます。なんとかパリが火の海になるのは免れましたが、あれクリーデンスは結局だれ?
映画『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』感想&あらすじ/世界の映画界の新たなる幕開けでした ★4.3
米国では1977年公開。ジョージ・ルーカス監督。日本では1年後の78年に公開されました。最初は「Star Wars」というタイトルでしたが、あまりにも人気が出てシリーズ化されることになったので、あとから副題がくっつきました。 実は残念なことにスクリーンで見ていません。なんて惜しいことをしたのだろう、とずっと後悔しています。クラスの友達は結構見に行ってたのに・・ 初めて見たのは1983年のテレビ放映でした。ところが映画の前にコントや曲の演奏があったりして、なかなか始まらずイライラしたのを覚えています。また、吹替を人気俳優さんがやりましたが、へたくそすぎて集中できませんでした。 その後ちゃんとした人が吹替直して放送されています。水島裕(ルーク)、島本須美(レイア姫)、村井国夫(ハン・ソロ)、鈴木瑞穂(ダース・ベイダー)の組み合わせがベストです! 今、Amzonプライムで見返してみても、この作品のおもしろさは色あせることは無いのだと確信できます。話の展開の早さ、テンポの良さ、特撮のすばらしさ、どこを取ってもこれまでには経験したことのないものでした。 米国のプレミア上映では評判が良くなかったと聞きましたが、「SFはB級だ」という先入観を持って映画を見ていた批評家の人たち、本当にサイアクですね。(友人のスピルバーグは絶賛したそうです) しかし映画を見る若者たちには先入観はありませんでした。まったく新しい映画が誕生したことを、上映が始まるとすぐに確信したはずです。この作品と、スピルバーグの「未知との遭遇」以降、SFに対する人々の評価ががらっと変わりました。 あらすじ 遠い昔、はるか彼方の銀河系で…。 銀河系を支配する銀河帝国。その圧政に苦しむ星々の反乱軍(レジスタンス)のスパイが、帝国軍の要塞デス・スターの設計図を盗み出すことに成功。(この話は「ローグ・ワン/スター・ウォーズストーリー」となりました) 反乱軍の指導者の1人、レイア姫は設計図をドロイドのR2-D2に託し、帝国軍のダース・ベイダーに捕まってしまう。 R2-D2は相棒のドロイドC3POとともに、砂漠の惑星タトゥィーンに到着。そこで農場の手伝いをしている青年、ルーク・スカイウォーカーに出会う。
映画『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』感想&あらすじ/無難に懐かしく、おもしろい ★4.0
2015年公開。2005年の「スター・ウォーズ3/シスの復讐」から10年、満を持して旧3部作から続く続編の登場です。シスの復讐ではダース・ベイダーの双子の子供が生まれたところで終わりました。そして4.5.6の旧3部作ではその子供たちが大人になって帝国軍と戦い、大活躍します。その「スター・ウォーズ6/ジェダイの帰還」から数十年後という設定です。 あらすじ 遠い昔、はるか彼方の銀河系で…。ルーク・スカイウォーカーによって帝国軍は壊滅したが、その残党が「ファースト・オーダー」と名乗り、勢力を拡大していた。 しかしあるときルークは姿を消す。レイア姫は将軍となっていて、ルークの捜索を開始する。またファースト・オーダーもルークの抹殺を計画していた。 レイア率いるレジスタンス軍のパイロット、ポー・ダメロンはルークの居場所の地図を入手すべく、砂漠の惑星ジャクーに着いた。敵に捕まってしまうが、非道なファースト・オーダーから逃げ出そうとするフィンに助けられる。 そのころ、ルークの居場所の地図を託されたドロイドのBB-8は、危ういところを砂漠で一人で暮らす若い女・レイに助けられる。両親はすでになく、1人で生き抜く知恵と、並外れた運動神経や機械に強いところがあった。それだけではなく、レイにはフォースがあった。ルークなどジェダイにしかない超能力だった。 そしてもうひとり、強いフォースの力を持つ者がいる。暗黒面に落ち、ファースト・オーダーに与するカイロ・レン。ハン・ソロとレイヤーの1人息子だった・・。 感想 スター・ウォーズのファンたちはどれだけこの映画の公開を待ち望んでいたことでしょう。あまりにも開いてしまったので、若い人たちにはなんのことやら、という感もありましたが、やはり世界的に盛り上がりました。 内容的にも旧3部作を踏襲していて、古いファンが「ああぁ」と懐かしみ涙ぐむようにできています。ハン・ソロがチューバッカとミレニアム・ファルコン号に乗り込んだときにはもう号泣!(「ハン・ソロ」でもそんなシーンがあり、感極まりました-) スター・ウォーズらしさが随所に現れ、なんとも懐かしい、いい気分になれる映画となっていました。このあとはどうなっていくんだろう、とわくわくしました。
映画『スター・ウォーズ 最後のジェダイ』感想&あらすじ/本当にあと1作で解決できる? ★3.8
2017年公開 原題:Star Wars The Last Jedi 私はスターウォーズ4、5、6の時代に生きていたので、1、2、3、7、8についてはもはやスターウォーズでは無くスピン・オフだと思っています。 あらすじ 遠い昔、はるか彼方の銀河系で…。 スノーク(醜い悪者)が率いるファースト・オーダーとレイア将軍の軍隊レジスタンスとの戦闘が激化。レイア姫と伝説のジェダイのルークは兄弟。スターウォーズ4では若かったが、すでに壮年になっている。 フォース(超能力)を持つ主人公のレイは隠れ住んでいたルークのもとを訪れるが、その反応は期待したものではなかった。 そのころメガ・スター・デストロイヤーに潜入すべく、フィン(ファースト・オーダーから改心してレジスタンスになった)、ローズ(東洋人の女性技術者)、ポー(レジスタンスの有能なパイロット)の3人は作戦を練っていた・・。 感想 スター・デストロイヤーという敵の宇宙船は、スターウォーズ4(本当の第1作)のいちばん最初のシーンに登場します。当時は特撮と言われる撮影方法。画面の中でだんだんだんだん大きくなるその白い宇宙船デストロイヤーの、美しさと荘厳さに度肝を抜かれ、そしてその後の話の展開がどうなるのかと、ほんとうにワクワクしました。 遠い昔、はるか彼方の銀河系で…。 というクレジットのあとであのスター・ウォーズのテーマ曲が始まります。そして鳥肌。それはシリーズを通じて全て同じ作りになっています。けど旧3部作に夢中になった人でないと、感動はそれほど無いでしょうね。 7、8、9の三部作の監督は、7と9はJ・Jエイブラムス、8(最後のジェダイ)だけはライアン・ジョンソンとなっています。「最後のジェダイ」は、ルークやジェダイの描き方や解釈などいろんな部分が古くからのファンには評判は良くないようです。 こんなふうにしちゃって後の話どうするの?とか、ルークをあんな風に描くなんて馬鹿にしてる、とか大騒ぎ。 そうかと言って、7(フォースの覚醒)は、1~6を踏襲した内容になっていたにも関わらず、「まるでファンを楽しませるためのアンソロジーだ」というように揶揄されました。あまりにもスター・ウォーズは神格化され過ぎていて、何をやっても否定されるのでしょう。映画会社は儲かるが、監督はつらいよ、ということです。
映画『ボヘミアン・ラブソディ』感想&あらすじ/クイーンを知らなくても、見終わったらファンになっている、そんな映画 ★4.2
2018年公開。正直言うと、クイーン世代ですがファンではありませんでした。しかしボーカルのフレディ・マーキュリーが亡くなったときに、「もうクイーンの曲を歌う人がいないんだ」と思うと、すごい喪失感に襲われたのを覚えています。 あらすじ 「スマイル」というバンドにフレディ・マーキュリーがボーカルで加入したのは1970年のことである。厳格な家に育ったフレディだが、父親とは対立し音楽を愛していた。 ギターのブライアン・メイ、ドラムのロジャー・テイラー、ベースで加入したジョン・ディーコンの4人が揃い、クイーンとなった。4人とも曲を作り様々な楽器をこなす。レコーディングも工夫を重ね、幾重にもハモり、美しいとも言えるサウンドを作り出していった・・。 感想 数限りないヒット曲のある、スーパーロックバンド「クイーン」。レディ・ガガの芸名もクイーンのヒット曲「RADIO GA GA」からきています。 東洋の果ての日本でも、今でもクイーンの曲を聞いたことのない人はいないぐらいでしょう。そんな伝説のバンド「クイーン」を映画化すると聞いたとき、それでもファンではなかった私は、映画館に行くのをどうしようかと思っていました。しかしそれは今、猛烈に反省しています。 ほんとうに劇場で見てよかった。「ウイ・ウィル・ロック・ユー」が始まったときの鳥肌と涙。クイーンのファンじゃなかった自分からそんなものが出ようとは。そして曲の途中からはうれしくて笑いながら感動している自分。こんな自分に会えるとは何十年ぶりでしょう。 それはきっと物語が時系列を追って展開していく作りだったので、感情移入がしやすいようになっていたせいだと思います。だからきっとクイーンを全く知らない人が見ても、最後にはファンになって劇場を出ていくのではないでしょうか。 主演のラミ・マレックの努力もすごい。もとの顔立ちが似てるということもありますが、ハッとするぐらいそっくりです。マイクパフォーマンスは完コピと言っていいと思うし、歌もとてもお上手です。そして前歯の義歯をしばらく付けて生活したらしいですね。そういう並々ならぬ気持ちが映像にはちゃんと現れます。それこそが私たちに感動を与えると思います。
映画『関ケ原』感想&あらすじ/せっかくの練られた作品が、最後に水の泡 ★3.6
2017年公開。監督・脚本:原田眞人。「関ケ原の合戦」をテーマに時代劇を世界に発信したかったのだそうです。 あらすじ 太閤秀吉に仕え、忠義を誓っていた石田三成。不器用でまっすぐな人物だ。秀吉亡き後、天下を我が物にしようと武将たちを次々と味方につける徳川家康。全く正反対の2人が関ケ原で対決する時が来た。関ケ原の合戦である。 感想 日本映画の悪い癖についていつも語っていますが、2/3まではすごくよくできていて、あとの1/3、つまりクライマックスで失速する。この映画もまさにそうでした。 失速、というのはちょっと当たらないかもしれない。むしろ「関ケ原の戦い」を早く駆け抜けすぎなんです。前置きがすごく丁寧で、そう、それはそれは克明に尾張の武士たちの会話や、家屋の中の様々な設えを再現し、石田三成と徳川家康の人物像を観客に伝えてくれて、合戦までのワクワク感をとてつもなく盛り上げてくれるのですが。 ようやくその合戦が始まったのは物語の後半。小早川秀忠の裏切りについてはすでに良く知っているのでもう少し短くてもいいかな、と思いながら、合戦は西軍(三成)の優勢で最初は推移。そしてやっぱり歴史通り小早川は裏切り、薩摩の島津軍は帰っちゃう。 もっと他の、いろんな国の武将が来ていたと思うのですが、もうちょっと詳しく、いや結構詳しくやっているのですが、詳しくやってるという印象がなくなってしまう。何かが足りない。それはおそらくおそらく、詰めの甘さ。じゃあどうすればいいのかと言われるとわからない。 岡田くんのせいではないと思いたい。 ところで、初芽という女忍び役の有村架純が意外に良かった。セリフがいい。声がいい。何でもできる女優さんなのですね。フィクションですが、石田三成とひそかに心を通じ合うという役。初芽のシーンが多いのですが、もしかしたら、そのせいで肝心の合戦が薄まったかもしれない。初芽が冒険するシーンを挿入する箇所が違う?でも初芽がいないと華が無い。難しいですね、脚本って。 だけど関ケ原の合戦ということ自体、派手ですから、初芽を多用する必要はなかったのでは。そして、戦いが終わってからの諸々のことは、まったくいらないぐらいだと思いました。
映画『シン・ゴジラ』感想&あらすじ/ゴジラ映画史上最高だと思います ★4.0
2017年公開。ゴジラ映画は好きですが、こんなおもしろいゴジラ映画は初めてでした。音楽やゴジラの姿かたちを踏襲しながらも、これまでのゴジラ映画とは一線を画しています。 あらすじ はじめは東京湾羽田沖の水蒸気の噴出だった。そして東京湾アクアラインのトンネルが崩落し、政府は海底火山などを疑うが、インターネットの画像で生物のようなものが写っており、内閣官房副長官の矢口(長谷川博己)はいち早く巨大生物の存在を訴えるが、相手にされない。しかしその後巨大生物が姿を現すことになり、どういう名目で自衛隊を派遣するかの議論などで政府は紛糾する。 そうこうしているうちに生物は形態を変えていき、最終形態のすがたになる。実は以前から米国は巨大生物の存在を掴んでおり、極秘裏に来日した大統領特使(石原さとみ)の情報により、巨大生物の名前は「Godzilla」と呼称されていた。 感想 いきなり出てきた生物だか何だかわからないものをめぐって、日本政府は杓子定規な議論を延々と続けます。そのコミカルな畳みかけるようなやりとりが、今の日本政府もゴジラが出たらこうなんだろうな、と思うと可笑しくて可笑しくて。この前半の政府の紛糾シーンが、今までのゴジラ映画にはなかった斬新なところ。そして大大ヒットの要因だと思います。 長谷川博己は熱演する俳優さんですが、今回それがあまり目立ちません。みんな熱演しているからです。出演者も並々ならぬ情熱で挑んでいるのがわかります。 また「日本映画はクライマックス前まではおもしろい」というのが定番ですが、シン・ゴジラに関しては最後までおもしろいです。特にストーリーに変化があるわけでなく、ただゴジラをやっつけるというだけなのですが、そのやっつけ方に一工夫。一人のヒーローが肩に担って戦うのではなく、みーんなで協力して挑むのです。それがスピーディで飽きさせない。 そしてなんと途中でエヴァンゲリオンを出してきた。なにしろ監督自身の作品だからしょうがない。「新幹線爆弾」のところで、エヴァを知っている人はおおぉっとなるのだそうで、上手いこと挿入したな、という感じ。 中盤までゴジラはとてつもなく無敵だったのに、なんか終盤急に弱くね、と思いつつも、最後は「やったー」となる終わり。しかも、謎を投げかけたラストシーンで終わる。
映画『パイレーツ・オブ・カリビアン 最後の海賊』感想&あらすじ/実は劇場で見るの初めてでした ★3.7
2017年公開。シリーズ第5作目。聞くところによると、1作目・2作目に比べてそれ以降はいまいちだとのこと。なるほど、5作目がいまいちなはずです。 あらすじ 幽霊船「フライング・ダッチマン号」の船長のターナー(オーランド・ブルーム)を助けるために、息子のヘンリーはポセイドンの槍を探す旅に出るが、途中で海の死神サラザールに襲われる。流れ着いた島で天文学者のカリーナと出会うが、彼女もまた父が残したガリレオの日記の謎であるポセイドンの槍をさがしていた。 感想 いったいいつジャック・スパロウが活躍するんだろうカッコよく、と思っていたら最後までカッコよくはなりませんでした。この役作りはたいへんなものだとジョニー・デップは何かで語っていましたが、そうなの?というくらいの、つまらない海賊さんだったけど。 実は第1作目はテレビで何度か断片的に見ました。ハラハラドキドキの展開で実に面白かったのを覚えています。もちろんスパロウも若いし、とても素敵でした。年月が経ったので同じようには無理ですが、それにしても覇気が無さすぎではないかしら。 それに対してサラザールはすばらしい。幽霊なんですけど、その存在感が半端ない。怖いし、上手いし、言うことなし。殺してしまうのは惜しいキャラです。 というわけで、初めて劇場で見たパイレーツ・オブ・カリビアンがもう旬を過ぎた5作目だったことに大反省。スター・ウォーズのように、旧3部作に感動した思いがあるから、あとのシリーズも特別の思いで見入ることができるので、パイレーツももう少しちゃんと見ておくべきでした。きっとファンならば回収できる伏線もいっぱいあったのでしょうし。 お金が莫大にかかった作品ですので、それなりにすごく面白いし、5作目だけ見たからといって話が分からなくなることはなく、最後まで手に汗握って見たのは間違いありません。 ですが、肝心のジャック・スパロウがただのアル中おやじに見えてしまうのは、私だけでしょうか。主役がやはり映画の肝であります。なんといっても主役が大事なのです。サラザールがどんなに名演しても、それだけじゃだめなんです。それが主役の仕事なのです。
映画『キセキ-あの日のソビト-』感想&あらすじ/GReeeeNの実話、もっと丁寧に作ってほしかった ★3.4
2017年公開。GReeeeNのこの曲がとてもいいのと、菅田将暉につられて見にいきました。 とくべついい映画、とは言えませんが、曲の良さにも助けられ、まあ見てよかったなとは思いました。 あらすじ HIDEは医師を目指している高校生。父が内科の医師だが、兄のJINはミュージシャンを志していて医者にはならないため、自分に期待がかかっている。しかし実はHIDEも音楽を愛していた。歯科医になることを決め、歯学部に合格しても、音楽は続けている。あるとき歯学部の仲間でバンドを組むことになった。曲を作ってミュージシャンの兄にデモテープを託す。それを聞いた兄は弟の才能に気付き、メジャーデビューさせることを決意する。これがGReeeeNのはじまりだった。 感想 映画に出ている俳優さんたちでグリーンボーズというユニットをつくりCDも出しています。菅田将暉の歌う「キセキ」は意外に良くて、オリコン4位になっています。 菅田将暉、松坂桃李という2大スターを出しているので、ヒットしない訳はないのですが、GReeeeNの「キセキ」の人気もあって、邦画としては大ヒットを記録しているようです。 さて、内容はと言うと、力作ともいえるし、よくある話ともいえる作品なのですが、小林薫(ほんとに怖くてよく殴る人)や忽那汐里がいい味で、菅田将暉のスター性と松坂桃李のカリスマ性に「キセキ」の曲がうまく乗っかって、とくべつではないですが、まあまあの映画になっています。 日本映画は細かいディティールに凝って初めてその繊細な良さが出ると思っています。「万引き家族」の雪のシーンや、「日々是好日」の樹木希林の足音など。(最初に樹木希林が玄関に登場するときの、廊下を早歩きする足音。タッタッタと若々しいものでした。) そういうことができていないということに気づくと、どうしてもその作品に入り込むことができなくなります。 「キセキ」では松坂桃李の走る後ろ姿が良くなかった。全力で走るそのシーンは結構大事だったのに。それ以降いろいろなアラが目立ち、最終的に映画の印象も良くないものになりました。 それでも興行収入が大台にのってヒットすれば、作り手側は「あれでよかったのだ」、ということになりますよね。でもそれは映画界にとって、絶対に良くないことです。
映画『劇場版TRICK 霊能力者バトルロイヤル』感想&あらすじ/ばかばかし過ぎて好き ★3.3
ごぞんじ堤幸彦監督の数ある作品のなかで、もっともばかばかしく、くだらない部類のシリーズのTRICK。仲間由紀恵が若く美しいです。 あらすじ ある村を治める霊能力者・カミハエーリが他界する。100日以内に次代カミハエーリを決めなければ災いが訪れるという言い伝えがあり、村人たちはバトルロイヤルを開催する。天才物理学者・上田と自称奇術師・奈緒子はバトルロイヤルに参戦する・・。 感想 「人魚の眠る家」の監督でもある堤幸彦。膨大な映画やテレビシーズを手掛けています。あほらしいものから、シリアスなものまで。そのなかでこのTRICKはいちばんヒットしたシリーズと言ってもいいでしょう。やはり続編は最初の作品を上回ることが少ない、と言われている通り、この第3弾もちょっとネタ切れな感はあります。 まあしかし、Amzonプライムの無料のでみるには、肩がこらないのでいいのでは。ときどきうたたねしても大丈夫。血を見る悲惨な映画や、感動で涙を誘う映画だけが、映画というわけではありません。これはこれで。
映画『君の名は。』感想&あらすじ/日本のアニメ史を変えたと言っていいでしょう ★4.2
もしこの映画を見ていない人がいたら、人生損してるかも?っていうほどじゃないけど、みんながいいって言う作品は一度は見てみるといいかもです。この映画について検索すると、無数のまとめサイトや映画レビューが出てきます。それぞれ本当に詳しく調べて解析してあり、1回見たぐらいでは絶対に気付かないことがワラワラ書いてある。すごいです。 あらすじ 東京に暮らす高校生の立花瀧はある日目覚めると、岐阜県飛騨の糸守町(架空の町)に住む宮水三葉と入れ替わっていた。 その後も定期的に入れ替わりが発生し、周りからは「おかしくなった」ぐらいにしか思われない。ただ一人三葉の祖母だけは気付いていた。 しかしあるとき入れ替わりが止まり、瀧はどうしても三葉を訪ねたくなった。入れ替わった時の記憶を頼りに糸守町の近くにたどり着くが、実は糸守には3年前に彗星の破片が直撃し、町民500人以上が死亡、町は消滅していたことがわかる。 さらに、糸守町の死亡者名簿に三葉の名前もあった。2人の入れ替わりには3年のズレがあったのだ・・。 感想 一瞬、このまま悲しい悲劇で終わるのかしら、と思いましたが、この後一気に話はアドベンチャーにシフトします。彗星の衝突から瀧と三葉は町民を守れるのか?という冒険ドラマ。終始きれいな絵と素晴らしくマッチした曲とで、とてつもなく引き込まれた映画となりました。 RADWIMPSがこの映画で一気にブレイクしましたが、彼らの曲なしではこの映画のここまでの成功は無かったかもしれないと思えるぐらい素晴らしかったです。 映画の終盤にようやく「君の名は」という題の意味がわかります。こんなにアドベンチャーなことをしたのに、お互いの名前を忘れてしまう運命だなんてちょっと変ですが、それは後になってゆっくり思うこと。ラストシーンで「君の名は・・」と言う場面ではもちろん涙が出ました。 私が思う、残念な個所は、やはり声優さん。瀧の役はとても重要。神木隆之介は演技派の役者さんですが、吹替で主役となるとあの声質は終始聞いているのはきびしい。耳にびんびん響くので辛かったです。上白石萌音の三葉は好感が持てましたが。 というわけで、日本アニメ史を変えたと言っても過言ではない作品の登場で、これからもいいアニメがどんどん生まれると思うと、非常に楽しみです。
映画『アンストッパブル 』感想&あらすじ/列車が止まらない、映画もノンストップ ★3.7
2010年 実際に起きたオハイオ州の列車暴走事故がモデルになっています。怪物と呼ばれた「777号」の赤い列車のかっこいいこと。 あらすじ 操車場で、動いている最新型機関車777号から運転手がちょっと離れてしまい、すぐに戻るつもりが、機関車はブレーキがかかっておらずスピードを上げ始めた。デブの運転手は飛び乗るのに失敗し、列車はそのままスピードを上げながら走り去ってしまった。毒性のある化学物質などの積み荷を載せて。 大変なことが起きたことを知った会社側はあらゆる手を使うが、列車の暴走を止めることはできない。頑強な列車が暴走するなど前例のないことだったのだ。 同じ線を走っていた別の列車の運転手のフランク(デンゼル・ワシントン)と車掌のウィル(クリス・パイン)。このまま暴走すれば、大カーブのところで脱線し、未曽有の事故になると知ったフランクはなんとか777号を止めようと、後ろから追いかけて列車を連結し、ブレーキをかけることを思いつく。 最初は反対したウィルも別居中の家族の命を守るため、運命を共にする決意をした。会社側は「勝手なことをするな、クビにするぞ」と脅かすが、「もうクビになってるよ」とすでに解雇を言い渡されているフランクは突っぱね、777号に向かって走り出す・・。 感想 あとから考えてみるとけっこう突っ込みどころのある作品でしたが、見ている最中はもう夢中な感じで食い入るように見てました。終始、大きな機関車が猛スピードで走る映像と、パニックになっている人たちとの忙しいやり取り。機関車は大きいし迫力満点、デンゼル・ワシントンをはじめ、慌てて話している人たちのセリフに目が離せず(字幕だから)、終わった時にはクタクタになっちゃう感じでした。 あれが実際に起きたことだとは後で知りましたが、住民の人たちは怖かったでしょうし、列車を止めようとする関係者の人たちはどれだけ必死だった事でしょう。 赤い機関車がカッコいいなどと不謹慎でしたが、でも人間の創造物であるはずの機関車に命があるような気さえしてきて、ブレーキをかけずに走る機関車は、解き放たれた猛獣のように雄々しくて、やっぱりかっこいいです。 監督のトニー・スコット。リドリー・スコットの弟さんで、クリムゾン・タイドなどの名作を残して亡くなられています。
映画『LIFE!』感想&あらすじ/なんて自由な映画、夢みたいな話だけど元気になる ★4.0
2013年 原題:The Secret Life of Walter Mitty たぶん予告編にするとハチャメチャなものになっちゃうかもしれない。だけどストーリーには1本筋が通っています。自由だけどちゃんとしてる。コメディだけど感動する、そんな作品。 あらすじ フォトグラフ雑誌「LIFE」のネガ管理部門で真面目に地道に働くウォルターだったが、奥さんも恋人もいない、冴えない毎日を送っていた。ある日出社すると、会社の事業再編で雑誌が廃刊・ネット化されることを知る。そしてリストラを行うべく新しい上司のテッドがやってきて、次々と各部署のスタッフの首切りを行っていく。 LIFEの主要フォトジャーナリストのショーンもそれを知り、雑誌の最後の表紙にふさわしいというネガをウォルター宛に送ってきていた。しかし送られたネガの中からショーンが勧める25番が抜けていた。ウォルターはショーンが送り忘れたと思い、常に居所のわからないショーンを探して、遠い旅に出ることになる。今はグリーンランドにいるらしい・・。 感想 コメディなので、最初はどうなることかと思いました。ウォルターは空想好きで、空を飛んだりビルが爆発したり、どこまでが空想なのかわからない~、けど見ていくうちに、あぁこれは現実だな、と少しづつわかるようになり、そこからは面白くなりました。 監督・主演のベン・ステイラーはなかなかすごいです。最初ほんとうに風采の上がらないだけの人に見えたのが、冒険の旅に出て、サメと闘うし、山にも上る。スケボーもすごく上手い。しまいにはウォルターがハンサムに見えてきました。 どこかで見たことがある、この感じ・・と思っていたら、昔の「フォレスト・ガンプ」みたいな世界観。90年代に戻ったようなワクワク感を感じたこの映画。こういう映画がもっと評価されてもいいかなあと思います。 冴えない男の人が、いろんな冒険をして、クライマックスでは上司のテッドに向かって、「LIFE」という雑誌をどういう思いで何人の人が作ってきたのか、と思いのたけをぶつける。そしてラストシーンでついにLIFE最終号の表紙が明かされます。 やっぱりか、とも思う表紙ですが、それでも相当ぐっときました。思わず涙が出ました。
映画『ビブリア古書堂の事件手帖』感想&あらすじ/原作をないがしろにしている ★2.9
2018年公開 原作を読んでない人でも、たぶんつまらない映画だと思います。 あらすじ 就職活動中の五浦大輔は亡くなった祖母が所有していた、夏目漱石の大全集に一つだけ「夏目漱石」というサインが入っているのに気づき、ビブリア古書堂に査定を依頼に持ち込んだ。そして店の女主人の栞子に大輔はほんのり恋心を抱く。栞子が本を鑑定していくうちに、祖母の若い頃の秘密があきらかになっていく。本を見ただけでそんなことがわかってしまうのか、と栞子の知識と洞察力に大輔は感心するのだった。 ビブリア古書堂でアルバイトすることになった大輔。あるとき太宰治の古書を買いあさっている「大庭要蔵」という人物がいるという噂が古書業界で流れているのを知る。実は、栞子のところにも大庭からメールが来ていた。栞子が所有している「晩年」の初版本を譲ってほしい、というもので、いくら断ってもしつこくメールは来るのだった・・。 感想 ビブリア古書堂の事件手帖は、数年前にブームになり、フジテレビの月9ドラマにもなりました。そのドラマは視聴率は上がらなかったものの、原作の雰囲気をうまく再現したドラマになっていました。私はどちらかというとドラマのほうが作品の完成度が高いような気がします。主役の剛力彩芽さんがあまりに栞子と雰囲気が違うので、ネットがざわついたということはありましたが。 映画のほうの配役は皆さん適役だと思いますが、ただ監督が栞子という人を良く理解しないままなのか、あのキャラクター作りは残念ながら少し間違っています。せっかく黒木華なのに。 とにかくいちばんだめなのは脚本。それからセットや衣装などの設(しつら)え。スタッフの方たちは原作を読んでいないのでしょうかね。 冒頭のシーンで嫌な予感はしましたが、ビブリア古書堂のたたずまいを見たらやっぱり、残念~という感じ。それから先は、筋書きのアラを探すことに気を取られ、感動するどころではなくなりました。 原作と変更するところがあるにせよ、矛盾のある物語にしてはいけないです。人は理由があって行動します。その理由が納得できないことばかりでは、観客は映画の世界に入り込むことができません。 なぜそういう矛盾のある物語を作るのか、それは原作をリスペクトしていないから、だから「ないがしろ」にしているのだ、と思うしかないのです。
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