「やあ! ペンギン」「あぁ、らっかせいくんか」「きみ、ペンギンのぺんぺんくんでしょー?」「そうだよ。ぼくはぺんぺんくんだよ。きみは?」「ぼくは、らっかせいのらっかせいさ」「うん、そうだね。ところで、何か用なの?」「ううん。もうさむくなったから、きみが現れると思ってね。待ってただけさ」「そう、ぼく、さむくなったら出番がくるんだよ。それまでは、氷のあるところにいるんだけどね」「もう出ていいんだろ? ...
不思議な展開をみせる、オリジナル小説、 ほんのり奇妙な短編・ショートショートや、 中編小説を書いています。
◆小説一覧リスト https://riemiblog.blog.fc2.com/blog-entry-2.html 読んで感じたこと、思ったことなど、 ひとことでもいいので、 作品へのご感想をお待ちしています。
おれは大きく息を吸い込み、潜った。 これはおれ自身の戦いだ。 もうこれ以上潜れないところまで、潜った。 こんなに潜ったのは初めてだ。 息が苦しい。 肺が圧迫され、頭に血の気が回ってくる。 く、くるしい……。 しかしやらねばならんのだ。 おれは負けない。 負けないぞ! このままの状態を維持することに、全神経を集中させた。 何秒耐えれるか、数を数える。 おお! 新記録だ!! ついにやった。 おれはや...
新人の宇宙警察官は、一台の宇宙船に乗って、宇宙をパトロール中だった。 彼はまだ新人なので、早く手柄を取りたいと常々思っていた。 近々昇級試験があると聞いていたが、いつのことになるか、まだ未定だった。 だから日頃から手を抜かずに、訓練しておかなければならない。 今日も自ら宇宙船に乗り込んで、危険な異物などないか、パトロールに精を出していたのだ。 宇宙には、地球から出たさまざまなゴミが漂っている。...
高度な文明の発達した星から、3人の宇宙人が地球に来た。 地球人は友好をはかるため、手厚くもてなすことにした。 まず、長旅で疲れていると思ったので、マッサージを受けさせた。 すると宇宙人はこう言った。「なんてことだ、凶暴な地球人め。こんなに体をつねられて、憤慨だ!」 今まで高度な星にいて、重力も軽いせいか、体が凝ることもなかったのだ。 次に、仕方がないのでお灸士に来てもらい、お灸で和んでもらおう...
シャツは、「自分はどうしてこんな人に着られているんだろう」と、納得がいきませんでした。 シャツは、ショーウィンドーのマネキンに着られているのが、一番でした。 華やいだ人通りから、たくさんの視線を集めていたのですから。 今、シャツは試着室にいます。 おばさんに着られて、鏡と向き合わされているのです。 ちょっと太いおばさんは、シャツのボタンを引きちぎりそうです。 シャツは、ショーウィンドーに早く帰...
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「やあ! ペンギン」「あぁ、らっかせいくんか」「きみ、ペンギンのぺんぺんくんでしょー?」「そうだよ。ぼくはぺんぺんくんだよ。きみは?」「ぼくは、らっかせいのらっかせいさ」「うん、そうだね。ところで、何か用なの?」「ううん。もうさむくなったから、きみが現れると思ってね。待ってただけさ」「そう、ぼく、さむくなったら出番がくるんだよ。それまでは、氷のあるところにいるんだけどね」「もう出ていいんだろ? ...
◆雨の降る街 現代ドラマ(全7話) 泣きたくなったら、ここへおいで。 その街は、毎日雨が降る街だった。 少年は、ある一つの仕事について知る。 それは街の人々にとって、必要なシステム。 たぶんきっと、あなたにも……。 ▽目次(クリックで展開) 1 昨夜 2 配管 3 蛙堂 4 社長 5 睡蓮 6 雲海 7 翌日 1 昨夜 少年は、眠れない夜に考え事をするのは、よくないことだと分かっていた。 考えは...
~ お知らせ ~ ・「雨の降る街」完結 ・「扉の中のトリニティ」Up ・「アパルトマンで見る夢は」完結◆人生の散髪屋ファンタジー (読了時間・約6分)変わりたいという人のために――この散髪屋でカットすると、まったく違う自分になれる――♪ 人生の散髪屋【朗読ver.】 ◆スランプの怪物SF (読了時間・約4分)「そんな、まさか、信じられない……」ある日、スランプに陥った作家の前に、謎の怪物が現れた。その怪物は、恐ろしい...
時計は、静かで凍りついたような空間に、大きく、振動を響かせていた。 午後一時。 窓のない部屋は、壁の時計と、白い電灯に照らされた三人の、小さな呼吸の音だけを、密やかに閉じ込めていた。 三人はそれぞれ、赤、白、黒のシンプルなワンピースに身を包み、狭い部屋の中央に置かれた、木でできた丸い机に、向き合って座っていた。 アイドルのような整った顔立ちに、セミロングの黒髪。三人は似たような白い顔に、何の表...
◆アパルトマンで見る夢は 現代ドラマ(全15話) 諦めることは簡単だ。それでも前を向く。 もう一度、夢の続きを見たいから……。 仕事に行き詰まりを感じた女優、舞花。 逃げるように来た引っ越し先で、 どこか不思議な絵描きと出会う。 ▽目次(クリックで展開) 1 椅子 2 スーツケース 3 ベッド 4 リンゴ 5 ギター 6 カーテン 7 階段 8 エクレア 9 手紙 10 グラス 11 傘 12 鏡 13...
◆稲妻トリップ ファンタジー(全15話) 明日もちゃんと生きていく。 心の中に、抱え込んだ思い。 そして過ぎてゆく、昨日、今日、明日。 三人の視点で綴る、 生きる世界と、その時間。 ▽目次(クリックで展開) 1 さっき…… 2 アオムラ 3 りゅうの 4 AKIYOSHI 5 溶ける時計 6 今日のこと 7 十年前 8 特別な人 9 スパーク 10 ビー玉 11 世界 12 白い光 13 音 14 明日 15 ...
◆ソレイユの森 SF(全15話) 「守っています。命令は、絶対です」 数奇な運命をたどる命と、一人のロボット。 時の流れの中で、大きな展開をみせる、 この世界。 ▽目次(クリックで展開) 1 シュー教授 2 温室栽培 3 訪問販売 4 マネキン 5 日光浴 6 目覚め 7 約束 8 命令 9 傍観者 10 蜘蛛の巣 11 カナユワテ 12 送受信 13 0 14 光の中 15 森 1 シュー教授 ...
◆月のライン 現代ドラマ(全34話) ノエル(クリスマス)の夜に、 煌めく町と、光る花。 美しい町並みに交差する、人々の想い。 月に何度も沈む島で起きる、一つの事件。 自身初の連載小説。 ▽目次(クリックで展開) 1章 1-1 1-2 1-3 1-4 2章 2-1 2-2 2-3 2-4 3章 3-1 3-2 3-3 3-4 4章 4-1 4-2 4-3 4-4 5章 5-1 ...
~ お知らせ ~ ・「雨の降る街」完結 ・「扉の中のトリニティ」Up ・「アパルトマンで見る夢は」完結◆人生の散髪屋ファンタジー (読了時間・約6分)変わりたいという人のために――この散髪屋でカットすると、まったく違う自分になれる――♪ 人生の散髪屋【朗読ver.】 ◆スランプの怪物SF (読了時間・約4分)「そんな、まさか、信じられない……」ある日、スランプに陥った作家の前に、謎の怪物が現れた。その怪物は、恐ろしい...
その国は昔から、幾度の争いにも勝利し、長らく繁栄を保ってきた。 国王の裏には、偉大な力を持つとされる予言者が一人いて、どうすれば他の国に負けず、大国を維持できるか、国王に指示しているという。 国王は自分では何もせず、すべてはその予言者の指示にかかっている。 そうと知った他国の軍が、予言者をさらってしまおうと考えた。 しかし、考えただけで、その意思は予言者の脳裏に行き届いてしまう。 これにより、...
大きなヘビが現れた。 地面の中から現れた。 はじめ、体長2メートル程だったが、動物園のオリの中で、徐々に伸びだした。 すぐ、オリはいっぱいになり、ヘビは別の場所に移されることとなった。 郵送トラックに詰まれたケージ内で、ヘビは頭に麻袋を被せられ、自分がどこへゆくのか分からないまま、静かな眠りについていた。 寝る子はよく育った。 運転手がケージを見た時、ケージははち切れんばかりに歪み、ヘビの皮膚...
あるところに、ひとりのおじいさんがいました。 おじいさんは、どこにでもいる普通のおじいさんです。 そのおじいさんは、そこに住んでいたのではありません。 ただ、そこにいただけでした。 どこにでもいるそのおじいさんに、白羽の矢が立ったのは、単なる偶然でした。 天の国で天使を務めているビーちゃんは、「次の天国人を決めなさい」と、大天使様に言われ、地上に降りて、そのおじいさんに狙いをつけたのでした。 ...
――その病院から出てきた者は、皆さわやかになる―― 最近鬱ぎみのしー君は、その宣伝に惹かれて、さわやか病院に行くことにした。 精神科の先生が、いい腕なのだろうか。 しー君は病院内に足を入れた。 その瞬間、この世とは思えないほどの、異臭がした。 なんだか照明も薄暗く、壁のあちこちに、血の痕のような飛び散りが見える。「本当にこんなところで、さわやかになれるのだろうか……」 しー君は戸惑いながら、とにかく...
子は、小さな頃から母に聞いていた。 私たちは、光の方向へ進んで生きているの。 光がなくては生きられないのよ。 子は最近、強烈な光を見つけ、何度もそこへ向かおうと考えていた。 でもね……と母。 強すぎる光は、その分刺激的よ。 でも、命を落としてもしまうのよ。 あなたの父は、光に長く当たりすぎたのね。 最後にはビリビリになって、体を溶かしてしまったのよ。 子は疑問に思う。 ぼくらは、光を夢見ることを...
UFO研究家の博士は、頑固な性格で有名だった。 人々の誰もが「ありもしない」と、UFOや宇宙人の存在を否定しても、博士だけは「存在する!」と言い張っていた。 博士は若い頃から、UFOが空から降りてきて、宇宙人が自分と握手する光景を、何度も夢に見ていた。 宇宙人が悪者であるわけがないと、博士は思っていた。 宇宙人は友好を築く為、いつの日か必ず地球にやってきてくれる、と信じて疑わなかった。 博士は...
飲食店の片すみに、いつも一人のお爺さんが座っていた。 店の店長は、もうその光景にはすっかり慣れていたので、毎日お爺さんに、料理を多めに出していた。常連客へのサービスだ。 店長は、手が暇になると、お爺さんのそばへ行き、他愛もない会話を楽しむ。 毎日そうしているうちに、お爺さんは、自分の身の上話を語り始めた。 それによると、こうだ。 お爺さんは絵描きだった。 手にスケッチブックを持って、外を散歩す...
私は走ることが好きだ。 走り続けることで、生きていることを実感できる。 とりわけ、雨の日が好きだ。 体を潤おし、乾いた心に染み渡る。 だから私は、雨の日でも走る。 ある日、私は、友達と賭けをした。 私がよく走るので、一年のうちに、この世界を一周できるか、賭けようというのだ。 体力には自信があったので、私はこれから一年間、走ってきて、必ず戻ると約束した。 友達は、もし私が勝ったら、豪華ディナーを...
目が覚めると、いつの間にか新人がやってきていた。「やぁ、おはよう。初めまして」「初めまして。ところで……ここはどこだい?」「ここは監獄だよ。入れられた者は、二度と外には出られない」「そんなぁ……」「ほら、あそこに机と椅子が見えるだろう? 看守がいてね、そいつが夜になると、決まってそこに座るんだ。そして僕らを、オリごしに眺める。何か、晩ご飯を持参してくるよ」「僕たちのご飯はいつだい?」「何のん気なこ...
お笑いピン芸人の鈴木は、最近、悩んでいた。 自分のギャグがヒットしなくなったのだ。 しかも、新人の芸人がどんどん出てくる。 若手に客を持っていかれ、TV出演もほとんどなくなってしまった。 最近では、山田とかいう二十歳そこそこのピン芸人が、ブームらしい。 お笑いのくせにルックスもよく、女子のファンも多い。 下積み時代も浅く、芸歴十年の鈴木にとっては、とんでもない強敵となった。 バラエティ番組のプ...
俺は退屈していた。 特に頭が良いでも悪いでもないし、ルックスだって良くも悪くもない。 特別運動神経にすぐれているというわけでもなく、いわゆるどこにでもいるような、いたって普通のつまらない人間である。 そんなつまらない人間は、やっぱり大きくも小さくもない中小企業の事務員として入社して、早くも3年の月日が経とうとしていた。 毎日の仕事といえば、上司から言われたことを地道にこなし、時には電話でのクレ...
ある日の放課後、わたる君は横断歩道の向こうから、一人のおじさんが歩いてきて、話しかけられた。「やぁ、やっと会えたな」「おじさんだれ?」 わたる君はおじさんの顔を見た。 どこか自分と似たような目をしている。「親戚の人?」「とりあえず止まって話さないか?」「えっ、横断歩道だよ。信号が赤に変わっちゃうよ」 わたる君が足を進めようとするが、おじさんはわたる君の腕を、がっしり掴んで放さなかった。「助けて...
その時、少年はまだ言葉も知らぬ赤ちゃんだった。 母と、ベビーカーに乗せられて、連れ出された散歩の途中で、少年はあるものに目が釘付けとなった。 ベビーカーから見上げたその先に、くるくると回る円盤があった。 なぜ円盤があるのか、なぜくるくると回っているのか、しかし少年は0歳だったので、母親に尋ねようとしても、ただ「あー!」としか言えないのであった。 円盤は回る。 ただくるくると、その場で回り続ける...
フェリーに乗って30分、本土から16キロと、さほど離れていないその島は、観光地として人気があった。 島、といっても南の楽園ではなくて、船が上陸する港には、たしょう砂浜がある程度で、島を支える地面には、そのほとんどに硬い石畳が敷き詰められていた。 上に建つのは、中世の面影を残した建物。 太い木枠が入り交じり、みな同じような朱色の屋根に、白い壁。 花を飾った出窓に揺れる、レースのカーテン。 ドアには飾...
大学の研究室で教授を務めていたしゅういちは、漢字で「周一」と書く。 同僚や教え子たちは、親しみを込めて「いち」を伸ばす発音にし、「シュー教授」と呼ぶことにしていた。 歳は四十過ぎ。毛量は多いけれど、白髪を染めないので老けて見える。 しかし性格は明るく、人当たりも優しかった。 生徒の勉強を、その子が解かるまで親身になって指導していた。 親身になり過ぎたのかもしれない……。 あとになって、シュー教授...