★中学校の学年末テストが終わった。3月7日の公立高校中期試験が終われば、塾の1年が終わる。今年もいろいろあったが、なんとか乗り切れそうだ。★昨日の「永遠の0」に続き、今日は城山三郎さんの「逃亡者」(新潮文庫)から「えらい人」を読んだ。★時代は戦時中、主人公は旧制中学校の生徒である。各校には将校が配属され、軍事教練の外、気にいらないことがあると生徒に鉄拳制裁を繰り返している。将校の肩書は中尉。当時は校長でさえ、軍には逆らえない。★主人公はこの中尉から何度か制裁を受けた。この将校を憎みながらも、カッコよさも感じていた。軍国主義は彼らにも浸透していたのか。★主人公は不祥事を起こし、姉が中尉のもとに謝罪しにいく。そこで何かがあったようだ。主人公の処分(退学)はうやむやになったが・・・。★やがて、この中尉は戦場で亡...城山三郎「えらい人」
★世界がきな臭い。アメリカは保護主義に走り、ロシアや中国と組んで、世界分割競争を繰り広げるのではないかとさえ思える。★世界のパワーバランスが揺らぎ、ヨーロッパ諸国での右翼台頭も気がかりだ。第3次世界大戦が近づいているのではないか心配だ。日本は幸運にもこの80年間、大きな戦争に巻き込まれることはなかったが、この時代がやがて歴史家から「戦間期」と呼ばれることがないように祈りたい。★今日は百田尚樹さんの「永遠の0」(講談社文庫)を読み終えた。想像以上に感動した。★主人公の男性は、ジャーナリストを目指す姉のアシスタントとして、特攻隊員として亡くなった祖父のことを調べ始める。祖父母の間には一人娘がいた。それが主人公の弟姉の母親である。祖父が戦死した後、祖母は他の男性と再婚した。二人は義理の祖父のことを気にしながら、...百田尚樹「永遠の0」
★かつて、高度経済成長を実現させ、経済大国にのし上がった日本の強さは、終身雇用、年功序列といった日本型経営にあると言われた。★確かに先進国に追いつくためにはそれは効果的だったようだ。海外の斬新な技術をうまく応用し商品化する。日本人は器用だった。「24時間働けますか」といったモーレツ社員の奮闘もあった。★かつての企業戦士ももはや80代に迫り、うなぎのぼりの経済成長などもはや望めない。技術革新の目まぐるしの中、一世を風靡した企業も10年後、20年後生き残っているかは疑わしい。スーパー業界の凋落や家電メーカの盛衰を見ると、もはや終身雇用など遺物になりつつある。日本の経済を支える自動車産業でさえ、この先は不透明だ。★業態改革、経営の集約化。力強い言葉の背景には大規模なリストラが伴う。★今日は、垣根涼介さんの「君た...垣根涼介「君たちに明日はない」
★3連休最終日。とはいえ、塾は平常通り営業中。昼頃まであちこちと積もっていた雪はすっきり解け、日が差してきた。明日は国公立大学の前期2次試験。滋賀まで受験に行く生徒がいる。交通機関は大丈夫だろうか。★さて今日は、志賀直哉の「清兵衛と瓢簞」(新潮文庫)から「網走まで」を読んだ。明治43年発表の作品。さすがに言葉づかいは古いが、内容は今でも新鮮だった。★主人公は所用で汽車に乗っている。そこに幼児と乳児、2人の子を連れた女性が乗ってくる。まだ言う事を聞かない幼子。眠りから覚めるとむずかる乳児。二人をあやす母親は大変だ。★そんな合間に母親は葉書を書いている。3人は網走に向かっているという。汽車が開通しているとはいえ、およそ1週間近くの長旅だ。★なぜ母子はそんな旅の途中にあるのか。物語は何も語らない。途中駅で主人公...志賀直哉「網走まで」
★3連休。とはいえ、学年末テストが近づいているので連日テスト対策。★今日は、倉橋由美子さんの「パルタイ」(新潮文庫)から「貝のなか」を読んだ。昭和35年発表の作品。この時代の作品は、理屈と感情が入り乱れていて、なかなか面白い。★主人公の女性は大学に通うために上京した。学生寮に住むが、6畳一間に4人の女子学生が住むといった過酷な環境だった。「貝」とは直接的にはこの寮(この部屋)のことを言っているようだ。★主人公には「革命党」を信奉する(まだ入党を認められていない)彼がいる。彼は時流ながらにマルクス=レーニン主義に酔っている感じだ。彼女は彼の話を聞き流しながら、あまり関心はないようだが「国家と革命」などを読んだりしている。★彼女は同居人を、イクラ、タラコ、スジコと呼ぶ。女臭さ(あるいは動物臭)漂う部屋の描写が...倉橋由美子「貝のなか」
★沢木耕太郎さんの「紙のライオン」(文春文庫)に収められている「完成と破壊」で、吉村昭さんの「羆」が紹介されていた。★吉村昭さんの「羆」(新潮文庫)から表題作を読んだ。銀九郎は熊撃ちの名人だった。彼が山に入ることを知ると、他の猟師はその山に入るのをあきらめたという。★ある日、銀九郎は子熊連れの母熊を仕留め、子熊も里に持ち帰る。最初は子熊を売るつもりであったが、孤独な身の上を自らの境遇と重ね合わせ、彼は子熊に権作という名をつけ飼うことにした。★無口で孤独を好んだ銀九郎だが、親戚の勧めで嫁をもらう。女性の肌を知った銀九郎は熊撃ちをやめ、土産物屋を始める。人当たりの良い女房、ペットの「権作」が人気となり店は繁盛する。★そんな日々が数年続いたが、月日は子熊を成長させ、何があったのか「権作」は銀九郎の女房を殺して逃...吉村昭「羆」
★今日は国木田独歩「牛肉と馬鈴薯・酒中日記」(新潮文庫)から「巡査」を読んだ。★国木田独歩の作品は随分久しぶりだ。高校の国語の教科書で「武蔵野」を学んだ記憶がある。「美文」だと説明されたが、あまり面白い作品だとは思わなかった。★国木田独歩は明治期の作家で、30代で夭折している。「巡査」は、1902年に発表されたというから、独歩30歳頃の作品か。★独歩らしき話者が、ある巡査と親しくなり。巡査の下宿を訪れた時の様子を描いている。★漢字の訓読が面白い。例えば、「懇意になった(ちかづきになった)」「年齢(とし)」「沈黙(むっつり)」「比喩(たとえ)」「憎悪(にくしみ)」「饒舌りましょう(しゃべりましょう)」「手真似(てつき)」など。わずか1ページの中でも多くの読み替えがある。★漢文から和文へ、過渡期だったのかも知...国木田独歩「巡査」
★家族には傲慢、権威主義で、外では上司にヘコヘコ頭を下げているような父親像は、向田邦子さんの「父の詫び状」が印象に残っている。★角田光代さんの「父のボール」(「ロック母」講談社文庫所収)にも、家族としては許しがたい父親が出てくる。★作品は、娘の視点で書かれている。娘や彼女の兄である息子の目から見ると、なんともできの悪い父親だ。身勝手で、自分の想い通りにならなければすぐに切れる。モノに当たり散らしたときなど、後片付けが大変だ。母親も不満を抱えているが、それを言った後の後始末が大変なので、従順を装っている。★その母親も、ポックリ先に逝ってしまった。子どもたちは早々と実家を去り、一人暮らしになった父親。その父親が癌に冒され、死の床に臥せている。もはや意識も混濁し、臨終が身近に迫っている。★他に身寄りもないから、...角田光代「父のボール」
★京都府公立高校の前期試験が終わった。難易度は例年並みということだが、塾生たちは力を出し切れたであろうか。合格発表は25日、火曜日。そして、3月7日の中期入試で今年の戦いは終わる。★この時期何が忙しいかといえば、高校入試、中学1・2年生の学年末テスト、確定申告がドッと押し寄せることだ。これに新年度生募集のチラシづくり。どれも手が抜けない。★この中で一番生産性がないのが確定申告だ。面倒だが仕方がない。1年間の所得税、市府民税、個人事業税、健康保険料がこれで決まる。高校無償化、給食無償化など耳障りの良い政策が目白押し。その一方で、税・社会保険料の負担感はずっしりと重い。★昨夜は映画「茲山魚譜チャサンオボ」(2021年)を観た。何気なく観始めたが、なかなか良かった。19世紀初頭の韓国が舞台。身分ある家柄で、学識...恩田陸「ノスタルジア」
★昨夜は韓国映画「ハント」を観た。全斗煥軍事政権下、韓国各地では民主化を求める運動が活発化し、それに対する安企部の取り締まりも厳しくなっていた。★そんな折、どうやら安企部に二重スパイがいるらしいとの情報が流れる。その解明に国内班の次長と海外班の次長があたることに。この二人が大統領暗殺計画に巻き込まれていく。「ソウルの春」とも関連しているようだが、この二重スパイというのがややこしい。更に、国内班次長と海外班次長が似ているのでやや混乱する。★それはそうとして、アクションシーンは迫力があった。★さて読書は、大沢在昌さんの短篇集「鏡の顔」(講談社文庫)から「ダックのルール」を読んだ。★失踪人捜し専門の探偵、佐久間公が依頼されたのはある女性を捜し出すこと。依頼したのは、日本国籍の黒人男性。傭兵として共に戦った戦友と...大沢在昌「ダックのルール」
★今日はバレンタインデーということで、塾生たちからちょこっとチョコレートをもらった。カカオが高騰しているので、チョコレート製品も高騰している。みんな、ありがとう。★さて今日は、江國香織さんの「ぬるい眠り」(新潮文庫)から「放物線」を読んだ。★大学を卒業して5年。かんちゃんは保険会社に勤め、バイトを転々としていた光一朗はペットショップに就職したという。そして主人公の私は、物書きの仕事をしているようだ。★この3人、数か月か半年単位で会っている。それぞれに仕事を持ち、それなりに恋愛をしているようだが、3人が出会うと学生時代に戻って楽しい時間を過ごせる。★3人の「規則」は、思い出話をしないこと。常に前へと進んでいくこと。★家庭を持ち、子どもができたらこのままの関係が続くとは思えない。でも、こうした仲間が集まって、...江國香織「放物線」
★私立高校に合格したという知らせが、2つ、3つとあった。明日は報告がどっと押し寄せるだろう。★今年は花粉がきついようで、鼻をぐずぐず言わせていると、どうも風邪気も出てきた。風邪の薬は睡眠に勝るものなし。今日は早めに床に入ろうと思う。★鼻かぜ用の薬を飲んで、少々うつらうつらしながら、井伏鱒二さんの「山椒魚」(新潮文庫)から「夜ふけと梅の花」を読んだ。★ある夜ふけ、主人公が歩いていると妙な男に出くわした。その男は顔が血だらけになっていないかと問う。妙な男に関わりたくないと足を速めたが、男はマントの裾を離さない。仕方なく薄暗い街灯に照らして男の顔を見れば、確かにいくつかの傷がある。★男が言うには、消防の男たちに殴られたらしい。男もたいそう酔っているから、何か原因があったのだろうが、それを知ったところでどうにもな...井伏鱒二「夜ふけと梅の花」
★ウィークデイに祝日が入り込むと、感覚が狂う。今日は水曜日なんだと改めて思う。今週は私立高校の合格発表だ。朗報が次々押し寄せることを期待したい。★さて今日は、伊集院静さんの「三年坂」(講談社文庫)から「春のうららの」を読んだ。★娘が嫁ぐ数週間前。バッサリと髪を切って母親を驚かせる。娘に数年前亡くなった夫の面影を認めつつ、現代っ子の気風がわからない。★母親は若かったころ、亡き夫との出会いに思いを馳せる。二人とも戦後の混乱期の中、孤児として出発した。東京の料亭で住み込みで働き、そこで二人は出会った。★ある日、店の主人に2日間の休みをもらって、温泉などを楽しもうとしたもの、いろいろとアクシデントが重なって、日帰りで東京に戻ってきた話へとつなぐ。★まるで小津監督の映画を観ているように感じた。★どこにでもあるような...伊集院静「春のうららの」
★少し前、近くの高校の国際コースを受験されるという母娘が突然、塾に来られた。中国の方で日本語はほとんどできない様子。英語での会話となったが、私も久しぶりの英会話でドキドキしながら応対した。★それから数回来塾された。「ここぞ」とポケット型の翻訳機を購入し、それでのやりとり。AIの進化は著しい。さすがに固有名詞は難しそうだが、普通の会話はごく自然な文で表現してくれる。それも英語だけではなく、中国語、韓国語はじめ世界の多くの言語に翻訳できるというから優れモノだ。★昨日は試験が終わったと報告に来て下さった。合格されることを願うばかりだ。★さて今日は、石田衣良さんの「スローグッドバイ」(集英社文庫)から表題作を読んだ。2年間同棲した20代の男女がちょっとした行き違いから別れることになったという話。★二人はこの日「さ...石田衣良「スローグッドバイ」
★いよいよ京都の私立高校入試が明日に迫った。さすがに緊張が高まっているせいか、今日も朝から塾生が最後の調整に頑張っている。「あきらめたら、そこで試合終了」(「スラムダンク」安西先生)。最後まで粘ってもらいたい。★彼らを見守りながら、今日は赤川次郎さんの「幽霊列車」(文春文庫)から「凍りついた太陽」を読んだ。★真夏の海で、久々の休暇を楽しむ警視庁の宇野警部と女子大生の永井夕子。二人のいるところに事件あり。(まるでコナンくんのように)。年の差が20歳もあるこのコンビが、事件を解明する。★今回の事件。宇野警部と夕子が出会ったある婦人と3人の子どもたち。平和そうな家族だが、この婦人、柄の悪い男にどうやらゆすられているようだ。そして、この男が殺される。その死因が、真夏だというのに凍死だという。そこで二人の謎解きが始...赤川次郎「凍りついた太陽」
★2032年、1.3%の確率で小惑星が地球に衝突するという。1.3%といえばおよそ77分の1。だだっ広い宇宙空間にあってはかなりの確率だろう。★そんなこんなで、今日は伊坂幸太郎さんの「終末のフール」(集英社文庫)から「籠城のビール」を読んだ。★8年後に小惑星が地球に衝突するとわかって、すでに5年が過ぎた。当初起こったパニックは一段落した。ある者はわずかな希望を求めて逃げて去り、ある者は決められた運命に耐え切れず自ら命を絶ち、ある者は略奪や殺人など反社会的な行動で警察に捕まったり射殺されたりした。★もはや警察も人権を守った流暢な対応をしない。むしろ犯罪者をいたぶることにせめてもの終末の喜びを感じているようだ。★そんなある日、元ニュースキャスターの家に二人の男が押し入った。二人は兄弟で、不幸な事件で妹と母を失...伊坂幸太郎「籠城のビール」
★かつて小学校4年生の教科書(東京書籍)に清水達也さんの「ウミガメのはまを守る」という作品が採用されていた。静岡県御前崎の砂浜に産卵するアカウミガメの様子が描かれていた。★その情景をイメージしながら、今日は伊与原新さんの「藍を継ぐ海」(新潮社)から表題作を読んだ。★本作の舞台は徳島県の小さな漁村。堤防が築かれたためか、かつて産卵に多くのウミガメがやってきたが、今では年に数匹。産卵となれば数年に1度になった。★この年、ウミガメはやって来て、産卵した。大人たちはそれぞれの思惑(例えば町おこしのため)で、産卵場を保護している。ある夜、近くに住む中学生が卵を掘り返し持ち帰った。自らの手でふ化させようとしているようだ。★物語は、この少女を中心に、ウミガメ監視員をしている70代の女性、カナダからAETとして日本を訪れ...伊与原新「藍を継ぐ海」
★猛烈な寒波。とはいえ、気温自体は私が小学生だった頃の方がもっと低かったように思う。温暖化に慣れてしまって(あるいは暖房に効いた環境に慣れてしまって)、寒さがこたえるのかも知れない。★この寒い中、一人の塾生は受験のため東北へと出発した。野球の推薦入試だという。最近は、全国規模で野球選手が移動している。目指すは甲子園。高校の数が多い都市部の学校より、トーナメントで勝ち上がりやすい地方の高校を志望する中学生が目につくようになった。★今入っているクラブチームでまとまって受験に向かうそうだが、無事たどり着けただろうか。★野球ということで、今日はあさのあつこさんの「晩夏のプレイボール」(角川文庫)から「街の風景」を読んだ。★主人公の男性は野球強豪校のエース。2年生の時は地方大会で惜敗したが、3年生の夏、遂に甲子園で...あさのあつこ「街の風景」
★先日、京都文化博物館で開催されている(2月2日まで)「大シルクロード展」に行ってきた。京都文化博物館は元日本銀行京都支店だということで、建物そのものが文化遺産のようだった。★久々の京都市内、それも烏丸御池は行く機会がほとんどなかったので、少々右往左往しながら現地へ。平日の正午頃とはいえ、外国人の観光客の多さが目についた。★「大シルクロード展」は京都府等が主催とあって、なかなかの賑わいだった。チラシの表紙にもなっている「瑪瑙象嵌杯」や仏塔などの埋蔵品。人混みが嫌いなので駆け足での閲覧だったが、仏典の断片などにこれを書写した人に想いを馳せた。★「大シルクロード展」を記念して、映画「敦煌」(1988年)を観た。宋の時代の中国。西方に西夏という国が興り、ウイグルなどの近隣諸国に勢力を伸ばし、宋にも圧迫を加えてい...映画「敦煌」
「ブログリーダー」を活用して、じゅくせんのつぶやきさんをフォローしませんか?
★寒気の影響か肌寒い。それに晴れたかと思えば、雷に驚かされ、ザーとひと雨降ればまた晴れる。落ち着きのない天気だ。★与党か野党か知らないが、選挙目当てかどうかも知らないが、ぶち上げた給付金が予想以上に不評で、次いで、消費税減税をめぐっては、自民党も立憲民主党も党が割れんばかりの混乱だ。★「大山鳴動して鼠一匹」ともいう。結局は所得制限付きの給付金あるいは、マイナポイントでお茶を濁すのか。バラマキがポピュリズムなら、票目当ての党利党略もポピュリズム。気になるのは某国大統領のコロコロ変わる顔色か。★さて今日は、伊藤たかみさんの「八月の路上に捨てる」(文春文庫)から「貝からみる風景」を読んだ。物書きらしい男性が主人公。鮎子という女性と暮らしている。男性は時間的にはゆとりがあるらしく、彼女が仕事から帰るのに合わせて、...伊藤たかみ「貝からみる風景」
★gooブログが閉鎖されるらしい。私のブログは開設しておよそ20年。古参に含まれるのかな。残念だが、時代の趨勢には勝てない。★ホームページからブログへ、ブログからツイッター(現X)、フェイスブック、インスタへと駆け足で時代が過ぎていく。★さて今日は、有栖川有栖さんの「ロシア紅茶の謎」(講談社文庫)から「動物園の暗号」を読んだ。★大阪の動物園のサル山で、飼育員の遺体が発見された。何ものかに鈍器で殴られ、転落死したようだ。警察の依頼を受け、犯罪社会学者・火村英生とその相棒で作家の有栖川有栖が、捜査に協力する。★犯行が行われたのが深夜の動物園ということで、容疑者は限られたが、決定的な物証に欠けた。残されたのは被害者の手に握られていた紙片だけ。それには、動物の名前が羅列してあった。★火村と有栖川はこの暗号の解明に...有栖川有栖「動物園の暗号」
★のんびりとした週末。天気は下り坂で、明日は雨が降るらしい。今年の桜も見納めか。★今日は、彩瀬まるさんの「骨を彩る」(幻冬舎文庫)から「ばらばら」を読んだ。主人公は二児の母親。彼女は今、仙台に向かう長距離バスに乗っている。折しも雪が降りだした。★彼女は4回、姓を変えた。最初は実父の姓。7歳の頃、両親が離婚し、母の旧姓を名乗るようになった。12歳の時、母親が再婚し新しい父親の姓を名乗る。そして、結婚して今の姓になった。★こう見てくると、女性にとって姓とは何なのかと考える。古い「家」制度の名残なのだろうか。★女性は今、7歳の息子との接し方に悩んでいる。意識はしていなかったが、表情が険しくなっていたらしい。「おかあさんがこわい」という息子の言葉はショックだった。彼女は夫と話し合い、夫は彼女に、数日旅することを勧...彩瀬まる「ばらばら」
★行きつけのパン屋さんのご主人と、昨今話題の消費税減税について雑談をした。ご主人曰く、いっそのこと消費税を0にして、それで当然のこと歳出ができなくなるから、そこで国民の判断に委ねればとのこと。★随分と大胆な提案ではあるが、政治家の政争よりかは実感が伴う。中途半端に税率をいじるとレジ一つの修正も大変だ。それも時限付きとなるとどうするのか。政治家が無責任な発言をするほど現実は甘くない。★給付か減税か、給付と減税のセットか、それとも何もせずか。この決断が政権を左右しそうだ。★それはそうと、関税をめぐる米中の対立は、熱い戦争の前哨戦とも思える。困った時代になってきた。★さて今日は、阿刀田高さんの「消えた男」(角川文庫)から「姉弟」、安部公房さんの「R62号の発明鉛の卵」(新潮文庫)から「鍵」を読んだ。★「姉弟」は...安部公房「鍵」
★世界経済は大混乱。原因はトランプ大統領。世の中がおかしくなりつつある気がする。★日本では政府・与党の一部が給付金に前向きとのこと。選挙を目前に、消費税減税の代替案ということか。そもそもが国民の税金。「給付します」と政治家が自慢げに語るのも何か筋違いな気がする。★減税はありがたいが、その前に国民健康保険料を下げて欲しいものだ。★さて今日は、青山文平さんの「つまをめとらば」(文春文庫)から「つゆかせぎ」を読んだ。★江戸時代。旗本の家に勤める下級武士が主人公。彼の父親は、藩と農民の板挟みになって、仕えていたお家を出奔し、何とか今のお家に仕事を得た。目立たず真面目に。父親の生き方を間近に見て、彼もまたそのように生きていた。★そんな彼が、どうしたわけか美貌の誉れ高い女性に見初められ結婚。周囲の羨望の的となったが、...青山文平「つゆかせぎ」
★晴天。近隣の中学校は入学式。制服を着て一段と大人びた子どもたち。一歩一歩人生の階段を昇っていく。★昨夜は、映画「侍タイムスリップ」を観た。最近、タイムスリップモノがよく目につく。「またか」と期待せず観始めたが、想像をはるかに超えて良かった。劇中劇の監督が「命を懸けてるんだ」というセリフを吐く場面があるが、低予算ながらこの作品に懸ける監督を始めスタッフ、キャストの意気込みが感じられた。★看板俳優と宣伝だけの空疎な映画が多い中、低予算ながら骨のある作品だった。監督が宇治市の隣、城陽市の出身だというのにも親しみを感じた。★さて今日は、青山七恵さんの「ひとり日和」(河出文庫)から「出発」を読んだ。地方から上京し、新宿の企業で働いている男性が主人公。28歳になり、何かを変えたくて、会社を辞めようとしている。とはい...青山七恵「出発」
★昨日と一転して株価は高騰。乱高下のマネーゲームの様相だ。今、今年の漢字を選ぶとすれば「米」だろうね。★小中高ともに新学期が始まり、入塾の問い合わせが増えてきた。次の課題は、ゴールデンウィーク対策と中間テスト対策だ。英検の受付も始まる。★今日は、湊かなえさんの「ポイズンドーター・ホーリーマザー」(光文社文庫)から「ポイズンドーター」を読んだ。★今は女優として活躍する主人公。彼女の母親は娘に言わせると「毒親」。友人関係や将来の職業など、娘の生活をすべて支配しようとする。★父親は彼女が3歳の時、交通事故で亡くなり、母親は一人で娘を育てた。その自負と見栄が、そうさせているのかも知れない。★よく言えば娘想いの母親だが、当の娘にとってありがた迷惑。とはいえ、自分で稼げるまでは母親に従わざるを得なかった。進学のため上...湊かなえ「ポーズンドーター」
★週明けの東京株式は大暴落。金融市場が落ち着くまで、企業の設備投資は鈍るかな。このまま景気は冷え込むのか。スタグフレーションの始まりか。★昨夜は映画「殺人の追憶」を観た。1980年代後半、韓国の田舎で起こった連続女性殺人事件をベースにしたもの。拷問など当時の警察の取り調べは残酷だが、それでも犯人は捕まらない。結局、犯人は「普通の人」ということで、刑事(ソン・ガンホさん)のアップで終わる。すっきりしない終わり方だが、それが狙いか。★さて今日は、渡辺淳一さんの「光と影」(文春文庫)から「猿の抵抗」を読んだ。最初、表題から実験動物のことかと思ったが、そうではなかった。★主人公の男性は梅毒で神経が侵されている。生活保護を受けるほど困窮していたが、「学用患者」ということで無料で大学病院に入院している。「学用患者」と...渡辺淳一「猿の抵抗」
★佐久間亜紀さんの「教員不足」(岩波新書)を読んでいる。近い業界だけにかえって敬遠しがちなのだが、昨今の教員不足は深刻で、その原因を探るべく読み始めた。★読み始めて10ページ。深刻な現場のため息を聞いて、あらためてびっくりした。ある小学校は、臨時免許の非正規教員が小学6年生の担任をもたされたという。荒れのあるクラスで正規の教員が担任を敬遠した結果だという。大変な担任業務の上に自らの教採(教員採用試験)対策と涙ぐましい努力が描かれていた。無事に全員卒業にこぎつけたというから、まずは良かった。★またある教員は研究主任を担当していた。本来なら担任を免除されるが、たまたま同僚教員が産休に入ったため担任を兼務することに。さらには心を病んで休職した教務主任の仕事も担う羽目に。「今日がまだ木曜日であることに絶望していま...連城三紀彦「指飾り」
★トランプ関税を受けて、世界中で株安。ニューヨークのダウ平均株価も史上3番目の下げ幅だという。週明け、「ブラックマンデー」の再来となるのか。★日本でも選挙戦を前に、消費税減税の声が高まっている。減税はありがたいが、結局は借金の先送りにならないか。ある専門家が数年後に日本経済が行き詰まると言っていたが、現実になるのか。小惑星が地球に衝突する確率も再び2%台になったとか。まだ今世紀に入って25年というのに、世紀末の様相だ。★国破れて山河在り。世相がどうあれ、春が来れば桜は咲く。楽観的に生きよう。今この時を楽しんで。★さて今日は、横山秀夫さんの「動機」(文春文庫)から「逆転の夏」を読んだ。★あるエリート営業マン。魔が差したのか、思い上がっていたのか、妻が出産のために帰省中、女子高校生と1回きりの肉体関係をもった...横山秀夫「逆転の夏」
★春期講座が終わった。春は新塾生を中心に9日間。それぞれ新学年に向けて復習・予習に頑張った。いよいよ来週から新学期が始まる。子どもたちが学校に行っている間が、塾にとっては一休み。★アメリカ、トランプ大統領の政策で世界経済が大混乱。日本経済新聞の東証の株価を見ているととてもスリリングだ。結局、終値は昨日より1000円弱のマイナスだったが、一時は1500円まで下がった。為替も波乱気味だ。★先の世界大戦も背景には1929年からの世界恐慌がある。大きな世界史的なうねりの中で、一個人に何ができるのか。どのように生き延びればよいのか、考えさせられる。★隣国、韓国も分断が深刻だ。★そんな世相はさておき、今日はほっこりした小説。向田邦子さんの「思い出のトランプ」(新潮文庫)から「男眉」を読んだ。1人の女性を中心に家族模様...向田邦子「男眉」
★大学の入学式だったそうで、塾生のお母さまがラインを送ってくださった。その学校は、私の母校(大学院)でもある。丘のふもとに咲く桜が美しかったが、今日は満開だっただろうか。★2021年に亡くなられた師匠、堀内孜先生の著作集が送られてきた。全4巻。第1巻は公教育論・学校論、第2巻は教育行政論、第3巻は学校経営論、第4巻は教師教育論。生前の先生の著作が網羅されている。刊行委員会の方々のご尽力に感謝申し上げたい。★かつて20代だった私たち教え子も、もはや還暦、古希の歳となる。月日は駆け足で過ぎていく。★さて今日は、宮下奈都さんの「遠くの声に耳を澄ませて」(新潮文庫)から「どこにでも猫がいる」を読んだ。マンションに帰った女性。机の上の葉書には「どこにでも猫がいます」と書かれていた。★女性は20歳の頃、恋人とイタリア...宮下奈都「どこにでも猫がいる」
★春期講座は順調に進み、残りあと2日となった。新年度の授業も少しずつ動きだした。道路わきの桜も一気に花を開いている。★今日は、朱川湊人さんの「花まんま」(文春文庫)から「摩訶不思議」を読んだ。舞台は大阪の下町。通天閣の近く。話し手は小学生の男の子。彼の面倒をよく見てくれた叔父が突然亡くなった。酔っぱらって歩道橋から落ち、打ちどころが悪かったようだ。★葬儀が終わり、火葬場を目前に霊柩車が動かなくなった。その上、男たちが力づくで動かそうとしてもビクともしない。★実は、叔父には3人の彼女がいた。10年ぐらい同棲しているガラモン(ウルトラQ参照)のようなカツ子さん。叔父が行きつけのスナックの、ちあきなおみに似た感じのカオルさん。そして、ダンゴ屋に勤める、まだ20歳そこそこながらグラマーなヤヨイちゃん。★霊柩車が動...朱川湊人「摩訶不思議」
★年度末。何となくバタバタしながら月日が過ぎていく。ふとテレビを見るとコメの話題。「消えた23万トン」だという。投機目的で誰かが抱えているのか。そもそもが農水省が把握している生産量が違っているのか。謎だらけだ。★12年に一度の東京都議選、参院選が行われる年。政府は「強力な物価対策」を行うそうだが、はたしてどれほどものか。トランプ大統領の自動車関税の影響か、東京の株価は大きく値を下げている。トランプ恐慌になってしまうのか。★そんなことを考えながら、東野圭吾さんの「白鳥とコウモリ下巻」(幻冬舎文庫)を読み終えた。この作品も面白かった。特に下巻の中盤からは一気読みの勢いだった。★東京である弁護士が刺殺された。容疑者はすぐに浮かび上がり、自供を得て早々に事件は解決かと思われた。ところが、容疑者の息子と被害者の娘が...東野圭吾「白鳥とコウモリ下」
★春の甲子園が終わった。以前は4月上旬までやっていた気がする。好天にも恵まれたか。いよいよ桜前線が急上昇。新学期、入学式の春が来る。★塾の方は、新年度に備えて時間割の組み換え、教室割、テキストの手配など忙しい。1年が終わるとまた1年。2025年度も頑張らねば。★さて今日は、乃南アサさんの「禁漁区」(新潮文庫)から「免疫力」を読んだ。組対の警察官が懇意にしている組事務所を訪れた。昔気質の組長から姪っ子が白血病で、可愛そうでという話を聞き、ある薬を紹介してやる。★警察官の息子も悪性の病気で、一時期は覚悟を決めたが、ある薬を試したところ回復したと話したからだ。★最初は親切心からだった。組長の姪っ子も徐々に回復に向かっているようで、それはそれで良かったのだが、組長はその薬を他にも紹介してやりたいと言い出した。人助...乃南アサ「免疫力」
★好天の後の寒気。急激な温度差に体が悲鳴を上げそうだ。春期講座4日目。前半戦が終了といったところ。退塾する子、新たに入塾する子。この時期は人の行き交いが多く慌ただしい。★さて今日は、伊坂幸太郎さんの「死神の精度」(文春文庫)から「吹雪に死神」を読んだ。吹雪に埋もれるかのような山荘に集まった人々。ほぼ密室状態で、連続殺人が起こる。★よくあるシチュエーション。名作「オリエント急行殺人事件」へのオマージュともとれる。本作の面白さは、このオーソドックスな物語に死神の視点を入れているところだ。★物語を読んでいくと、死神の方が善人に思えるから不思議だ。本当に恐ろしいのは人の方かも知れない。☆今期のテレビドラマ。「相棒」は別格として、「ホットスポット」と「アイシー」が面白かった。☆「ホットスポット」は、宇宙人、未来人、...伊坂幸太郎「吹雪に死神」
★春期講座2日目。今年は朝9時から12時までの午前中だけ。それでも、夜型の生活から朝型への切り替えは辛い。数日もすれば慣れてしまうだろうが。★ここ数日の陽気は心地よくもあるが、身体が馴染まない。今年は花粉症の症状が厳しい。年のせいだろうか。★さて、なかなか米の価格は下がらず、米に限らず、物価高に閉口する日々だが、終戦直後のことを思えば(実際に経験したわけではないが)、極楽のようなものだろう。★浅田次郎さんの「帰郷」(集英社文庫)から表題作を読んだ。終戦直後、体を売ってその日の暮らしを支えている女性。復員兵らしき男性が彼女に声をかけた。★カネはあるが、邪な気持ちはない。ただ話を聞いて欲しいと男は言う。女性は奇妙な男だと思ったが悪い人ではなさそうだ。宿で男の話を聞いてやることにした。★男は生い立ちから、召集さ...浅田次郎「帰郷」
★近隣の小中学校は今日が終業式。「あゆみ(成績表)」はどうだっただろうか。明日からの春休み、事故なく過ごしてほしいものだ。塾では春期講座が始まる。★さて今日は、柳広司さんの「ジョーカー・ゲーム」(角川文庫)から「幽霊」を読んだ。★日中戦争が泥沼化する昭和15年頃。陸軍参謀本部は、皇紀2600年の記念祝典で爆弾テロが起こるとの情報を得た。どの集団がこの計画を立て、実行しようとしているのか。背後にイギリス総領事の影がちらつき、その真偽を探るため、スパイ組織「D機関」が動き出す。★D機関のエージェントはテーラーに勤める蒲生次郎という人物になりすまし、総領事の公邸に入り込む。総領事は白か黒か。この判断を間違えば、日英間の外交問題、更には戦争にも発展しかねない。★物証を得るため、ある夜、蒲生次郎は領事館に忍び込む。...柳広司「幽霊」
★今日も好天、洗濯日和。朝は早めに起きたのに、ボーっとしている内にもう夕方が迫っている。★今日できたこと。洗濯、風呂のカビ掃除、春期講座の予約表作成、昼食の買い物。これだけかぁ。★これからすべきこと。明日の授業の準備。春期講座の準備。新年度に向けた問題集の入れ替え。今年は中学校の教科書が改訂になったから、すべて入れ替えだ。少しずつ衣替えもしなければ。★今日は、宮本輝さんの「真夏の犬」(文春文庫)から表題作を読んだ。昭和37年の大阪が舞台。主人公は少年。彼の父親は事業を興しては失敗し、借金まみれの日々が続いている。それがどういう風の吹き回しか、父親が大金を持って帰ってきた。★知り合いがカネを出し合い広い敷地を借り、そこに解体のために廃車をプールする仕事を見つけたという。久々に輝く夫に、主人公の母親も幸せそう...宮本輝「真夏の犬」
★7月2日、5年に1度、運転免許証の更新。以前は伏見区の羽束師にある運転免許試験場での更新だったため、半日は手続きにつぶれたが、京都駅までに更新できるようになって便利になった。★最近はめっきり出不精になってしまったので、およそ1年ぶりの京都駅。海外客の多さにびっくりする。★ここ数日は映画「陸軍中野学校」シリーズを観ている。今までも何度か観たが、日本のスパイものはこのシリーズが面白い。作品の魅力は何といっても市川雷蔵さんだ。「眠狂四郎」と合わせて観てみたい。★韓国映画や中国映画でも言えるが、スパイものが描かれる時代は不幸な時代なのだろう。★さて暑さで読書が進まない。★今読んでいるのは、柚月裕子「蟻の菜園」(角川文庫)、角田光代「方舟を燃やす」(新潮社)、垣根涼介「信長の原理」(角川文庫)、荻原浩「噂」(新潮...映画「陸軍中野学校」
★この前はスパイを扱った韓国映画を続けて観たが、昨日から今日にかけて、アクション満載の中国映画を2本観た。★まずは、「崖上のスパイ」。日本が満州を支配していた時代。ソビエトで特殊な訓練を受けた工作員たちが密かに中国に侵入する。ミッションはある「同志」を救出すること。★誰が敵か味方かわからない。腹の探り合いのハラハラ感が見どころだ。拷問シーンは残酷だが、アクションシーンは面白い。★ロシア語で「夜明け」を意味する作戦。その遂行に多くの人が死んでいく。映像の背後に流れる音楽が切ない。★続いてみたのが「ヘリオス赤い諜報戦」。韓国の小型核兵器が謎の犯罪集団「ヘリオス」に奪われる。どうやら彼らはこの兵器を売りに出すようだ。★韓国のエージェント、香港警察、中国の公安がけん制しあいながら、「ヘリオス」と奪われた兵器を追う...映画「崖上のスパイ」
★菅元総理の発言が話題になっている。岸田内閣に引導を渡すのか。★「引導」ということで、今日は水上勉さんの「雁の寺」(「雁の寺・越前竹人形」新潮文庫所収)を読み終えた。★京都洛西の孤峯庵には、画師・岸本南嶽による雁の襖絵がある。その南嶽が死に、彼と馴染みのあった女性・里子を孤峯庵の慈海和尚が引き取るところから物語が始まる。★昭和初期の話とはいいながら、当時の僧侶は戒律を蔑ろにし、飲酒するは、愛人を囲うはと乱れている。慈海もまた酒に溺れ、夜ごと里子との肉欲に溺れていた。★孤峯庵には一人の小僧がいた。名を慈念という。家庭環境に恵まれず、北陸からこの寺にやってきて、中学に通いつつ、僧侶への修行をしながら、寺の雑務を担っている。★和尚とその愛人の女性、そして小僧という不思議な構図で話が進む。★ある日、和尚が失踪する...水上勉「雁の寺」
★去年の夏は「新しい学校のリーダーズ」の首振りダンスが流行り、ちょっと前までは「ビングバングバングボーン」や「カンカンダンス」、そして今は「たんたんふるふる」と若い人たちの流行は目が回るようだ。★若い人相手の仕事なので、時代遅れにならないように努めねば。★さて中学校の期末テストが終わり、次は高校の期末テスト。それが終われば、夏期講座だ。今年も受験勉強が始まる。★今日は短い作品、芥川龍之介の「仙人」(「蜘蛛の糸・杜子春」新潮文庫所収)を読んだ。★大阪を舞台にした話。権助という男が口入れ屋を訪れる。男は仙人になれる奉公を求めているという。呆気にとられた口入れ屋。しかし、「よろず口入れ」という暖簾を嘘にはできない。なんとかならないかと考え、ある医者の家に仕事を見つける。★奉公先を見つけてもらい喜んだ権助。医者の...芥川龍之介「仙人」
★今年は梅雨入りが遅れているという。6月は「水無月」ともいう。旧暦とはいえ「水がない月」とはどういうことか。語源は諸説あるようだが、「無」が当てられている「な」は「の」が転じたものだというのが有力だそうだ。「水無月」は「水の月」だという。★京都では氷を模したういろうに小豆を乗せた和菓子が出回る。じめじめした季節にちょっとした清涼感が漂う。★さて今日は、立松和平さんの「卵洗い」(講談社文芸文庫)から「蛍の熱」を読んだ。昭和20年代の田園地帯には多くのホタルが夜ごとほのかな光を放っていたそうだ。★「卵洗い」は、父親の実家に住む少年の目で当時の暮らしを描いている。母親は食料品店を営み、卵がヒット商品になっている。父親は近所の農家を訪れては、卵を仕入れてくる。★「蛍の熱」は蛍狩りをし、家に持ち帰った家族の静かな就...立松和平「蛍の熱」
★中学校の期末試験対策2日目。今日は来る生徒が少なく、少々期待外れ。★空いた時間を利用して、髙村薫さんの「李歐」(講談社文庫)を読み終えた。★時代に翻弄されるある男性の物語。宿縁とでもいえそうな人々が絡み合い、大阪の町工場からアジア、世界まで大きく広がる物語だった。★父母が仲違いをして東京から大阪に移り住んだ母子。幼子は近所の町工場を遊び場とし成長する。子が成長すると母親は彼を残してある男性と中国に去る。★子は大学生となり、ナイトクラブでボーイとして働く。そこで殺人事件に巻き込まれるとともに、美しい容姿を持つ殺し屋・李歐と出会う。★李歐は再会する約束をして日本を去る。男性は罪を背負って服役する。刑期を終えた男性は町工場を引き継ぎ、李歐との再会の日を待つ。★それから15年。男性は幼なじみの女性と結婚し、子に...髙村薫「李歐」
★中学校の期末テストまで6日。今日と明日はその対策講座に追われる。★社会科はどの学年も「時事問題」が出題される。さて、この2か月はあまり大きなニュースはなかったなぁ。「政治資金規正法」改正とか、「太陽フレア」とか、郵便料金の値上げとか、「定額減税」「合計特殊出生率」が過去最低の1.20に下落したとか、新幹線の点検車「ドクターイエロー」が引退するとか、カメムシが大量発生しているとか、そんなところだろうか。★世界経済フォーラムの世界の男女格差調査で、日本が146か国中118位というのもあった。「ジェンダーギャップ」。★ということで、今なお男性が幅を利かす警察官の社会。横山秀夫さんの「陰の季節」(文春文庫)から「黒い線」を読んだ。★ある県警。わずか48人の女性警察官の適正配置を巡って、女性管理職(いちいち女性と...横山秀夫「黒い線」
★映画「前科者」を途中まで観た。授業が終わったら残りを見よう。先日、滋賀県で保護司が殺害されるという事件があったが、「前科者」では有村架純さんが演じる保護司が活躍する。★保護司とは、仮釈放中の受刑者の更生を支援する非常勤の国家公務員で、ボランティアのため無報酬だという。民生委員もそうだが、無報酬でも社会の役に立とうという人がいることに驚いた。★さて、警察小説つながりで、今日は佐々木譲さんの「廃墟に乞う」(文春文庫)から「博労沢の殺人」を読んだ。★17年前のある殺人事件。被疑者に限りなく近かったが決め手となる物証がなく逮捕に至らなかった牧場主。その人物が何者かに撲殺された。★かつての捜査に新米刑事として関わり、現在は休職中の仙道刑事が事件の真相に迫る。☆いよいよ、中学校の期末テストまであと1週間。久々に忙し...佐々木譲「博労沢の殺人」
★韓国映画は今日も1作。ハ・ジョンウ主演の「哀しき獣」(2010年)を観た。北朝鮮と中国の国境地帯、その朝鮮族居住区でタクシーの運転手をしている男が主人公。多額の借金を抱え、妻は韓国に出稼ぎ。借金を返すために男は仕事を引き受ける。それは韓国である男を殺すというもの。★男は韓国に密入国できたのだが、思わぬバトルに巻き込まれる。★さて、堂場瞬一さんの「検証捜査」(集英社文庫)を読み終えた。連続婦女暴行殺人事件の犯人として逮捕され、公判にかけられた男に無罪の判決が言い渡される。捜査を担当したのは神奈川県警。冤罪事件となったことを受け、捜査に問題はなかったのか、検察庁は各地の警察官を集め検証チームを編成する。★主人公は警視庁に籍を置く神谷警部補。警視庁管内で起こった婦女暴行事件での強引な捜査を責められ、離島の警察...堂場瞬一「検証捜査」
★夏を感じる気候。暑いが、洗濯物が早く乾いてありがたい。明日は下り坂とか。★さて読書の方は、堂場瞬一さんの「検証捜査」(集英社文庫)がもう少しで読み終わる。★この3日間で韓国映画を3本観た。★1本目は、「サスペクト哀しき容疑者」。殺された妻の仇をとるため脱北した元「北」のエリート工作員。復讐の機会をうかがっていたが、ある殺人事件に遭遇し、濡れ衣を着せられ追跡される羽目に。容疑者チ・ドンチョルと彼を追うミン・セフン大佐。これに対北情報局室長の不正が絡んで・・・という話だった。★チ・ドンチョル役のコン・ユが良い感じだ。★2本目は、「ベルリンファイル」。2度目か3度目の視聴。「北」のエージェントと「南」のエージェントがベルリンを舞台に、ある時は対立し、ある時は協力する。事件の背景には「北」の権力争いが絡んでいた...韓国映画
★今日は宇治のあがた祭り。塾生は祭りに興じているらしく、塾は開店休業。★時間が空いたので、垣根亮介さんの「室町無頼」下巻(新潮文庫)を読み終えた。面白かった。★室町時代後期。幕府の権威は落ち、民は支配者たちの重税に窮していた。そんな時代、京に二人の豪傑がいた。1人は稲荷大社を拠点に、弱体化した幕府に変わって町の治安をあずかる無頼の頭、道賢。もう1人は、向日神社を拠点とする無頼の頭、兵衛。立場を異にするも豪傑は相通じるものがあると見えて、お互いの腕と才を認め合う関係だった。★そしてもう1人。家族に恵まれず、幼いころから棒振りで糊口をしのぎ、棒術の際に恵まれやがては土倉の用心棒となる才蔵という男。★道賢の一味が土倉を襲った際、道賢は気まぐれか、あるいは才蔵に何かを感じたのか、彼の命を助ける。そしてその身柄をラ...垣根涼介「室町無頼下」
★曇り空。突然晴れたかと思うと、雷が鳴って激しい雨。こんな日は鬱になる。★昨日は英検。今日は、期末テスト前の静かな1日。静かすぎるのも何か物足りない。★さて、川村元気さんの「百花」(文春文庫)を読み終えた。母親と息子、息子は成長しレコード会社で働いている。同僚との恋が実り結婚。子も授かり出産目前。★そんな折、最愛の母親が認知症になった。日々薄れゆる母の記憶。消えてゆく人格。息子はその母に寄り添いながら、かつて二人が過ごした日々を振り返る。★母親にも辛い時期があったようだ。幼いひとり息子を残して1年間失踪。息子は祖母に救いを求め、過ごす。ふと帰ってきた母親と息子。息子は問い詰めもせず、母も何も語らない。ただそれ以降、母親は息子により一層愛情を注ぐ。★記憶を失い、幼児に戻ったかのような母親を見るのは息子として...川村元気「百花」
★午前10時ごろ大雨警報が発令され、小中学校では生徒たちが授業を切り上げ帰宅。★小学生の中には、家に家族がいない場合も多く、その場合は学校での待機となる。学校待機の児童は午後5時までに保護者が迎えに来ることになっているが、このあたりの確認等が煩雑で、学校は大忙しのようだ。★私の地域では、想定よりも雨が少なく、まずは一安心。塾も平常通りだ。★このシーズンは修学旅行も多く、このことも気をもむ。近隣の中学校では日曜日から今日までが日程で、今日は行事を切り上げての帰宅だったという。★うちの近くには2つの小学校があるが、1校は今週末、もう1校は来週末が日程になっている。仕方ないとはいえ、天候が気がかりだ。★さて、森見登美彦さんの「熱帯」(文春文庫)を駆け足で読んだ。ある人々たちが断片の記憶しかもっていない「熱帯」と...森見登美彦「熱帯」
★定額減税が始まるらしいが、電気代の40%以上(関西電力)も上がるから、結局は相殺かあるいは持ち出しだ。政府与党としては次期総選挙の目玉と位置付けていたようだが、焼け石に水だね。★以前から古物買取(ほとんど押し買い)の電話はたびたびかかってきたが、今日は「総務省」を名乗る不審な電話がかかってきた。「あと数時間であらゆる通信機器が使えなくなるとか」。どう考えても詐欺なので、早々に切断。そもそも奇妙な電話番号からかかってきたから怪しかった。★高齢者を狙った詐欺が頻発しているとかで、先日近隣の交番から注意を喚起する電話があった。しかし、こんな電話も善し悪しだ。今の世の中「警察官」を名乗っても鵜呑みにしてはいけない。詐欺の手口も巧妙になり、まさか自分がという被害も後を絶たないようだ。★さて読書は、長編ばかり読んで...大江健三郎「生きることの習慣」
★今日は天気が悪かったので、家で映画を観る。「エンド・オブ・キングダム」と「エンド・オブ・ステイツ」。どちらも不死身(?)のシークレット・サービスがテロ集団相手に活躍するヒーローもの。★「エンド・オブ・キングダム」の方が面白かった。イギリスの首相が就寝中に急死。その国葬にアメリカ、フランス、ドイツ、イタリア、カナダなど主要国の首脳が参列する。その時、インフラや警察が乗っ取ったテロ集団(ほぼ軍隊組織)が首脳たちを襲撃する。アメリカ大統領を除く首脳はこぞって死亡。ロンドンの街はあちこちが爆破される。★テロの原因は、かつてアメリカが行った作戦で身内を殺害された武器商人の復讐。★アメリカの大統領だけが助かるというのは、アメリカ映画だからか。しかも、この大統領は勇敢で、シークレット・サービスと共に武器を持って戦う。...安東能明「内通者」
★近隣の中学校では1学期の中間テストがない。塾としては対策講座を開かなくてよいので助かるが、しわ寄せが期末テストにきて、やたらテスト範囲が広くなって困る。★それはそうと教員不足が深刻だ。地元の学校での何とか数合わせをしているが、不足分は常勤講師に頼っている。採用1年目で中学2年生を担任する場合もある。★常勤講師は新学期早々生徒からの反発にあい、「授業が分からない」と騒ぐ生徒で学級崩壊寸前のようだ。新任の教員は何とか頑張っているようだが、こちらも「だんだん授業がわからなくなってきた」というのが生徒の談。管理職が手薄なのも心細い。★教育ニーズが多様化、個々への対応が煩雑になるなかで、教員の仕事はますます過酷になっている。教員の権威が低下し、父母や生徒からの直接的な(時には理不尽な)批判にさらされるのも気の毒だ...吉村昭「尾行」
★韓国映画「8番目の男」(2019年)を観た。有名なアメリカ映画「12人の怒れる男」を現代の韓国に翻案したものだ。日本で裁判員裁判が始まったのは2009年だったか。韓国でも2008年から「国民参与裁判」が導入されている。★設定は、国民参与裁判第1号となる事件。本人の自白がある上、犯行の目撃者もいる。もはや有罪は確定で、刑期だけが陪審員に委ねられるはずであった。ところが第8番目の男(「12人の怒れる男」でも8番目の男。韓国では陪審員自体が8人で構成されている)が、疑問を提示し、判決は意外な方向に。★映画としては、密室での陪審員にやりとりに焦点を当てた「12人の怒れる男」の方が面白かった。しかし、これは司法制度の違いによるものか。「8番目の男」では裁判官や司法制度自体に的が当てられていた。★さて読書の方は、村...村上龍「半島を出よ」上巻
★ゴールデンウィークが終わって、日常が戻ってきた。休み中に部屋の片づけをしようと思ったが、結局できなかった。★さて今日は、万城目学さんの「鹿男あをによし」(幻冬舎文庫)を読み終えた。関東の大学の研究室で働く主人公(28歳)は最近周りから「神経衰弱」と呼ばれている。教授からは奈良の高校の教師をやらないかと誘われ、体よく研究室を追い出される。★期限付きとはいいながら、初めての教壇。それも女子高ときている。生徒たちとの接し方に悩みつつ、更に重大局面にぶち当たる。ある日、鹿から話しかけられたのだ。人間の言葉で。折しも日本は自然災害が頻発し、それを鎮めるキーマンとして主人公が選ばれたという。まったく晴天の霹靂。最初は神経衰弱の為せる業と思えたのだが・・・。★前半は漱石の「坊ちゃん」を思わせる。読むにしたがってファン...万城目学「鹿男あをによし」
★好天が続く。外は人手が多いので、家にこもって読書三昧。★垣根亮介さんの「室町無頼上巻」(新潮文庫)を読んだ。時代は乱世に向かいつつある。出生に恵まれなかった一人の少年が棒を1本担いで身を立てる。まずは棒振りの行商。次いで棒術の腕を買われて用心棒となる。★ある仕事の最中、盗人たちの襲撃され、当時京を仕切っていた豪傑と出会う。当時の今日は武家、公家がそれぞれ形ばかりの権勢を振りかざしていたが、もはや民を治める実力はなく、無頼の徒に治安を守られせていた。★京を東西に仕切る二人の豪傑に見込まれ少年は成長していく。彼は棒術を極めるため、ある師匠の下で命懸けの修業をすることになる。上巻はここまで。★修行の風景は、中島敦の「名人伝」や映画「ベスト・キッド」の修行風景を見るようだ。さて、下巻を読み進めよう。☆現在読書中...垣根亮介「室町無頼」
★塾生に勧められて「ツムツム」を始める。時間の無駄遣い以外の何物でもないが、ハマってしまう。老眼の視力は益々衰えるし、肩も凝る。その上、ミッションが達成できずに血圧は上がりそう。塾生の中には1億点を超える人もいる。ゲームに使う時間を勉強に使えばよいものを・・・。★とはいえ、私もゲームに使う時間を読書に使えばよいのだが・・・。★映画「金環蝕」(1975年)を観た。大型ダム工事をめぐる政財官の癒着。それに付け込む闇のフィクサーと業界紙。アンタッチャブルの領域に踏み込んだ不都合な下っ端は次々と消されていく。★原作は石川達三さん。時代は昭和39年当時の政界がモデル。池田内閣とその後継の佐藤内閣の時代がリアルに描かれている。大平さんの役を演じた役者さんのセリフには笑った。★「カネは政治の潤滑油」というセリフ。映画の...映画「金環蝕」