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  • 垣根亮介「午前三時のルースター」

    ★垣根亮介さんの「午前三時のルースター」(文春文庫)を読み終えた。★旅行代理店に勤める長瀬という男が、得意先の社長から仕事の依頼を受ける。その仕事とは16歳の社長の孫にして会社の跡取りとともにベトナムを旅するということだった。★なぜベトナムなのか。社長には内密で少年に事情を聞くと、数年前に失踪した父親をあるビデオで見かけたので、捜しに行くとのこと。母親の再婚話とそれに伴う会社の合併話が浮上し、少年の心は揺れているらしい。★気乗りしない依頼ではあったが、長瀬は少年とベトナムに行き、現地での協力者も得て少年の父親捜しを始める。★ところが彼らの行動は誰かに監視され、邪魔をされる。果たして少年は父親を見つけられるのか。★発展途上にあるベトナムを舞台に、ハードボイルドタッチで物語が進む。★父親と少年との関係は、ドラ...垣根亮介「午前三時のルースター」

  • 小泉綾子「無敵の犬の夜」

    ★仕事を終えて心地よい疲労感にひたる。★先日、朝日新聞で渡邊英理さんが紹介されていた文藝賞受賞作、小泉綾子さんの「無敵の犬の夜」(「文藝」2023年冬号所収)を読んだ。★ある事故で手の指の一部を失った中学生が主人公。欠けた指が原罪のように彼に付きまとう。いつしか不良グループと付き合うようになるが、そんな時、工業高校に通う「橘さん」と出会い、彼の舎弟のようになる。★主人公と「橘さん」との九州地方の方言を交えた会話が心地よい。★中盤まではとても面白かった。モノローグで主人公が内面を吐露する終盤は、着地点を模索してさまよっている感じ。欠損した指の記述や「橘さん」とのやり取りが減って残念だった。☆さて、明日も中学3年生の土日特訓に頑張ろう。高校入試まであと110日余り。小泉綾子「無敵の犬の夜」

  • 吉村昭「海馬」

    ★昨日から今日にかけて塾生が2人増えた。高3と中3。受験が迫ってきての駆け込み入塾。うちの塾は最後の頼みということか(笑)。それはそれで、何とか志望校に入れるように頑張りたい。★さて今日は、吉村昭さんの「海馬」(新潮文庫)から表題作を読んだ。「海馬」はトドと読む。★どんな過酷な環境の中でも、人が生きるところに物語が生まれる。この作品は北海道、極北の地で海馬を撃って暮らしている人々の話。★この地では流氷と共に海馬の群れがやってくる。そして漁師が仕掛けた定置網や刺し網を破り、獲物をごっそりと食っていく。この被害を防ぐため、海馬が駆除される。海馬の方も簡単には仕留められない。人と海獣との知恵比べである。★物語はあるハンターの生い立ちや家族や恋愛などを描いていく。★先日の朝日新聞、渡邊英理さんの「いま、文学の場所...吉村昭「海馬」

  • 堀江敏幸「砂売りが通る」

    ★昨日接種したインフルエンザワクチンの跡が痛む。インフルエンザなど何十年も罹ったことはないが、一種のお守りのようなものだ。普段は閑散としている医院もこの時ばかりはと、高齢者が列をなしていた。★さて今日は、堀江敏幸さんの「熊の敷石」(講談社文庫)から「砂売りが通る」を読んだ。水彩画を鑑賞するような美しい作品だった。★男は浜辺を歩いている。傍には姪ほど年の離れた友人の妹と彼女の幼い娘がいる。友人が亡くなり、その3周忌に集まったのだ。★男はその女性を、彼女が幼いころから知っている。6歳の彼女は浜辺で砂遊びに熱中していた。15歳の彼女は「雪まつり」のように「砂まつり」があればなぁと相変わらず砂いじりを楽しんでいた。★男は外国で暮らし、「砂の城」をつくる大会があることを知り、病床の友人に手紙を送った。その手紙を彼の...堀江敏幸「砂売りが通る」

  • 田中慎弥「不意の償い」

    ★土日が忙しくなったので、月曜日、特に塾生たちが学校に通っている時間帯が束の間の休息。今週は近隣の小学校が林間学習に行ってくれるので、少しは楽かな。★さて今日は、田中慎弥さんの「切れた鎖」(新潮文庫)から「不意の償い」を読んだ。田中さんの文体は独特だ。★妻を産婦人科に運ぶ夫。妻は破水し、すぐにも生まれそうだ。その時にして、夫は果たして生まれる子が自分の子なのかと疑っている。★話は過去にさかのぼる。二人は団地で育ち、幼いころから結ばれることが暗黙の了解のようであった。二人の両親は近くのスーパーで働き、彼らが共に仕事に出た日、二人は初めて性交する。しかし同時に、スーパーが火災に遭い、両親が死んでしまう。★親に隠れた性交と親の死には何の因果もないが、男はこの偶然を気に病んでいる。★二人は結婚し、それなりに平穏な...田中慎弥「不意の償い」

  • 三浦しをん「炎」

    ★土日特訓第2週目。3時間45分の授業に塾生たちも少しずつ慣れてきた様子。慣れすぎてだらけないようにしなければ。来週からは「放課後ゼミ」(中学3年生が放課後に自学自習する)も始まる。★さて今日は、三浦しをんさんの「天国旅行」(新潮文庫)から「炎」を読んだ。最初は学園モノかと思ったが、とんでもなかった。★主人公の高校生、亜利沙は地味な女性で、自らもそれを自認していた。通学で毎朝同じバスに乗り合わせるあこがれの先輩とも声をかけるどころか、目を合わせることさえしない。★先輩には彼女がいて、それは亜利沙の同級生で初音といった。彼女は群れることをしなかったが、その美貌から周りの同級生の頭目と目されていた。★そして先輩が学校で焼身自殺をする。あまりの衝撃に作品に緊張感が走る。★先輩はなぜ死を選んだのか。心無い噂ばかり...三浦しをん「炎」

  • 森村誠一「人間の証明」

    ★連日、新しい塾生が入ってきたり、入塾に向けての相談を受けたりで、うれしい悲鳴。読書の時間がほとんどとれなかった。★今日、ようやく森村誠一さんの「人間の証明」(角川文庫)を読み終えた。★映画を何度か観て、おおよその筋はわかっていた。刑事役の松田優作さん、風に舞う麦わら帽子、そして西條八十の詩が印象的な映画だった。1970年代後半、角川書店が仕掛けたメディアミックスが成功を収めた作品だった。★「読んでから見るか、見てから読むか」がキャッチコピーだったが、映画を見てから数十年してやっと読むことができた。活字で読むと、映画では端折られている作者の時代認識が読み取れて面白かった。★ナイフが刺さったっまで息絶えた黒人青年。彼は「キスミ」と言って、荒廃するニューヨークのスラムから日本へとやってきていた。彼の来日の目的...森村誠一「人間の証明」

  • 小池真理子「玉虫」

    ★谷村新司さんがお亡くなりになったという。中学生の頃、近畿放送(KBS京都)の「丸物ワイワイカーニバル」という番組に、まだ売れる前のアリスが何度かゲスト出演されていた(と記憶している)。★「遠くで汽笛を聞きながら」など繰り返して聞いたなぁ。1970年代が懐かしい。御冥福をお祈り申し上げます。★さて読書の方はミイラ話が続いたので、今日は艶っぽい話。小池真理子さんの「玉虫と十一の掌篇小説」(新潮文庫)から「玉虫」を読んだ。★30代後半の女性が主人公。彼女が「ジジイ」と呼ぶ町長の愛人となった。20代から男でいろいろと苦労を重ねてきたようだ。★町長の愛人となり、そのお手当で生活費に困ることもなく、それなりに安定した生活を送っていた彼女だったが、そんなとき、また新たな男が現れる。★傍から見るとこの先、老いてからが心...小池真理子「玉虫」

  • 角田光代「おみちゆき」

    ★中学3年生の「土・日特訓」がスタートし、いよいよ高校受験に向けた戦いが本格化する。中学3年生16人、高校3年生10人。今年も全員志望校合格を目指して頑張ろう!★さて今日は、角田光代さんの「かなたの子」(文春文庫)から「おみちゆき」を読んだ。「遠野物語」のような土俗的な作品だった。★その集落では極秘裏にあるプロジェクトが進んでいた。寺の住職が即身仏をめざして、土中に埋もれるというのだ。★土に埋もれた住職。地表には竹の空気穴だけが出ている。集落のメンバーが毎夜交代で巡回し、住職が放つ鈴の音が聞こえれば、まだ生きているということ。それが途絶えると入滅ということになる。★100日を経て土は掘り起こされ、ミイラとなった住職が姿を現した。★住職の姿態は何を意味するのか。住職はなぜ即身仏を目指したのか。薄暗い余韻を残...角田光代「おみちゆき」

  • 吉本ばなな「ミイラ」

    ★高校の中間テスト、国語で吉本ばななさんの「バブーシュカ」が範囲ということで、読んでみようと思ったが、収録された本が手元にない。★高校生にあらすじを聞いた。彼氏の母親が亡くなった。母親は一人で彼を育てたから、彼の喪失感は半端ではない。主人公の女性は彼をなぐさめよう、励まそうと声をかけたり振舞ったりするが、どうやらそれは逆効果。ある日、風邪をひいて声が出にくくなり、表情や身振りで彼とのコミュニケーションをとっていると、それが彼の心に響いたという話。(伝聞なので、本当にそうなのかは自信がない)★「バブーシュカ」は後日に譲るとして、今日は吉本ばななさんの「体は全部知っている」(文藝春秋)から「ミイラ」を読んだ。★夜の公園、主人公の女性は若い男性から声をかけられ、彼の住居に向かう。折しも近隣では殺人事件が起こって...吉本ばなな「ミイラ」

  • 映画「1秒先の彼」

    ★高校が中間テスト。学校によって1週間程度日程に差があるので、さみだれ式に塾生がやってくる。★読書の時間が取れないので、映画「1秒先の彼」(2023年)を観た。台湾映画「1秒先の彼女」のリメイク。★京都を舞台に、何でも先走る男性と何でもちょっと遅れる女性のぎこちないけれど、ほのぼのとしたラブロマンス。★男性、皇一(すめらぎはじめ)役を岡田将生さん、女性、長宗我部麗華役を清原果那さんが演じている。レイカが天橋立の出身、ハジメが宇治出身ということで、京都市内のほか、ご当地が随所に盛り込まれている。★ハジメの実家、宇治のシーンではうちの近所の鰻屋さん「ふな栄大久保店」(平和堂大久保100番街店のほぼ隣)が登場する。そういえばハジメの母親役の羽野晶紀さんの実家は大久保駅から2駅京都よりの小倉だったと思う。そこにも...映画「1秒先の彼」

  • 浅田次郎「迷惑な死体」

    ★近隣の中学校は中間テスト1日目。テスト対策はあと1日。今年は塾生が多いのでうれしい悲鳴。(さらに入塾希望の問い合わせが今日だけで2件。いったいどうしたことやら)★忙しい中の清涼剤。今日は、浅田次郎さんの「見知らぬ妻へ」(光文社文庫)から「迷惑な死体」を読んだ。★ヤクザになりたての20代の男。マル暴恒例の家宅捜索で、お決まりの公務執行妨害で逮捕され、48時間拘留されたのち、釈放された。2日ぶりに自宅に戻ると、そこに見ず知らずの死体が横たわっていた。★慌てる男。そこに彼女からの電話がかかるやら、田舎から母親が上京してくるやら、兄貴分が訪問してくるやらと、本人はドギマギしながらも、事態は少々コミカルに進む。★殺伐とした世界を描きながら、どことなく人情味があり、最後は何となくほんのり終わるところが良い。☆明日か...浅田次郎「迷惑な死体」

  • 小川糸「いとしのハートコロリット」

    ★昨日、今日と1日中、中間テスト対策。あと1日。塾泣かせの3連休だ。★疲れた体を癒そうと、小川糸さんの「あつあつを召し上がれ」(新潮文庫)から「いとしのハートコロリット」を読んだ。小川さんの作品にはおいしそうな料理が登場する。★ご年配の女性、今日は「記念日」ということで、少々おめかしをして、腰の曲がった夫と思い出のパーラーに行く。★時代を経て現代風に変わったパーラのテーブルにごちそうが並ぶ。以前の紳士的なホールスタッフの違って、接客態度には不満はあるものの、料理は相変わらずおいしそうだ。★シャンパンで乾杯し、夫にはチキンライスとポタージュスープ。そして自分のためには「ハートコリット」。デザートは、コーヒーと小さな器に盛られた上品なパフェ。★作品のほとんどが女性の一人語りで進み、夫は無口。この辺で何か不吉な...小川糸「いとしのハートコロリット」

  • 村田喜代子「望潮」

    ★英検の資材が届く。明日は英検と中間テスト対策が重なる。この時ばかりと普段は通わない高校生もやって来る。忙しくなりそうだ。★さて今日は、村田喜代子さんの「望潮」(「日本文学100年の名作第9巻」新潮文庫所収)を読んだ。★高校時代の恩師の喜寿祝を兼ねた忘年会。恩師は酒が進むと九州の小島の話を始めた。俳句仲間と訪れたその島で見た風景が忘れられないという。1つは海岸に干されたワカメ、そしてもう一つは箱車を押す背中の曲がった老女たちだという。★その老女は1人や2人ではなく、あちこちに現れ、何をしているかと言えば観光客などの車に当たって(時には死ぬかもしれないが)、保険金を得ているという。★本当かどうか、後日、教え子の二人がその島を訪れた。しかし、そんな年寄りは見かけない。さては恩師の思い違いだったのか。とはいえ、...村田喜代子「望潮」

  • 宮部みゆき「神無月」

    ★中間テスト対策が忙しくなってきた。★さて今日は、宮部みゆきさんの「神無月」(「日本文学100年の名作第8巻」新潮文庫所収)を読んだ。★夜更け、ほの暗い居酒屋で、岡っ引きが店主相手に酒を飲んでいる。岡っ引きの話題は、毎年、神無月にだけ仕事をやる押し込み強盗のこと。★押し込みとはいっても、人を傷つけはしない。奪う金も強盗にしてはわずかだ。襲われた店も後ろめたいことがあるらしく、大きな事件にはしたくなさそうだ。そうなると捜査をする側も気が入らない。★ただ3本目の熱燗を手にしたこの岡っ引きだけは、何か心に引っかかるものを感じている。★男には押し込みをはたらかねばならない理由があった。しかし、それは許されることではない。その上、今までは運よく死者を出さなかったが、これからどうなるかはわからない。岡っ引きは事件を追...宮部みゆき「神無月」

  • 向田邦子「鮒」

    ★いよいよ中間テスト1週間前。この週末は、塾生たちがドッと押し寄せそうだ。★さて今日は、向田邦子さん「男どき女どき」(新潮文庫)から「鮒」を読んだ。さすがは向田さん。とても面白い作品だった。★塩村の家族は、妻と長女、長男の4人家族。笑い溢れる家族の穏やかな日曜日の風景から物語は始まる。そこで、事件が。誰かが台所にバケツに入った15センチ大の鮒を置いていったのだ。★このミステリーに家族はあれやこれやの大論争。ただ一人、夫(父親)だけは身に覚えがあった。★1年ほど前まで夫には愛人がいた。その時の女のアパートで飼っていた「鮒吉」に違いない。もう別れたはずなのに、女はどういう意図で「鮒吉」を置いていったのか。★情事の目撃者である「鮒吉」を見るたびに塩村の心は穏やかではない。★未練なのかどうなのか、ある日、塩村は息...向田邦子「鮒」

  • 増山実「ジュリーの世界」

    ★増山実さんの「ジュリーの世界」(ポプラ文庫)を読んだ。★ジュリーといえば沢田研二さんをすぐに思い浮かべるが、本書の主人公「ジュリー」は「河原町のジュリーさん」。今でいうホームレスだ。★物語は三条京極交番に勤める若い警察官の目を通して、1979年の京都、その街で生きる「ジュリーさん」を描いている。★私も実物の「ジュリーさん」と何度か遭遇した記憶がある。べたついた髪と強い体臭が印象に残っている。とはいえ、それはそれであまり奇異には思わなかった。それは「ジュリーさん」ご自身の風格なのか、あるいは1979年と言う時代性なのかも知れない。★「ジュリーさん」については本当か嘘かいくつかのエピソードを聞いたことがある。ある日、「ジュリーさん」はズルズルになったバナナを食べていたという。通りがかった学生だろうか、「うま...増山実「ジュリーの世界」

  • 竹西寛子「蘭」

    ★秋雨前線の影響か、早朝は激しく雨が降った。いよいよ10月。とはいえ、衣替えを迷う。★さて今日は、竹西寛子さんの「蘭」(「日本文学100年の名作第7巻」新潮文庫所収)を読んだ。少年が主人公なので、国語の教科書や入試問題に出そうな作品だった。★戦時中、父の知人が亡くなったので、少年は父と共に葬儀に赴く。その帰り、列車は買い出しにでかけた人であふれ、さらに軍需工場の近くを通るとあって窓は鎧戸で閉められていた。★酷暑。外気さえも取り込めないムッとした空気の中で、乗客はめいめい団扇や扇子で扇ぐのがやっと。そんな中、少年は歯痛に苦しめられる。★暑さの中でも疲労ゆえか、乗客は眠りに陥り。少年は歯痛のことを父に告げることをためらう。しかし痛みは増すばかり。遂に父に助けを求めたとき、父がとった対応に少年は胸を痛める。★鬱...竹西寛子「蘭」

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