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場所にまつわる記憶と省察
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2017/06/21

場所にまつわる記憶と省察さんの人気ランキング

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  • 不思議なできごと

    不思議なできごと

    私は福祉事務所のスタッフです。時折、訪れる独り住まいの病持ちの老人の家での出来事です。孤独な彼は、訪問看護の職員に、夜中でもしばしば電話をかけてきて、職員もその応対に困惑する日々が続いていました。ところが、その連絡がある日、プツリと途絶えました。それから一週間ほどして、私はその人のアパートを夜に尋ねることにしました。ドアをノックしてあけてみると、そこに見知らぬ女性がいました。彼女はちょうど食事の支度を終えるところでした。私に気づいているはずなのにこちらを振り返ろうとしません。一方、当の本人に目をやると、炬燵に寝転がって、ナイターの中継を見ているではありませんか。私に気づいているはずなのに、私を無視している態度なんです。卓上には2人分の食事が並んでいました。それを見て、一瞬、私はその女性がヘルパーさんではな...不思議なできごと

  • 愛と性のはざまで

    愛と性のはざまで

    ・現実には観念的恋愛から性的恋愛への移行は単純ではない。多くの女性は多少とも幻滅を恐れる気持ちから注意深く自分たちの情熱を避ける。・愛しい偶像が吐き気をもよおす一個の雄になるから逃げる。・もし男が激しい反応を示すと彼女たちは怒る。男が好かれたのは近づき難く見えたからであり、恋人になると彼は平凡になってしまうからである。「他の男と同じじゃあないの」若い娘は自分の幻滅について彼を恨む。彼女は処女の感性をふるえ上がらせる肉体的接触を拒むためにそういう口実を盾にする。・相手の中に欲望を生じさせたことに気づくと、嫌悪の念とともに身を引く。男の欲望は賛辞であるとともに侮辱とらえる。女は自由に自分の魅力が働いていると思われるあいだは、自分の魅力にうっとりする。が、すぐに自分の魅力が受動的なものだと知ると、女はそういうも...愛と性のはざまで

  • 出会いの不思議

    出会いの不思議

    ・恋に落ちることによって、相手に特別の感情が生まれる。その結果、相手の一挙手一頭足が気にかかる。相手に逢わなければ、逢わないで相手のことが気にかかる。場合によっては、あらぬ妄想が湧き出て、嫉妬心さえめばえる。・男と女が出会い、そのような関係になりそうでならぬまま終わる場合、あるいは一線を超えてしまう場合。その違いはどこにあるのだろうか。当然ながら、人には感情があり、心がある。そのふたつながらのものがそろわなければ、人は行動に移すということはない。道ならぬ道に踏み込むことはそう容易なことではないのだ。・出会いはほんの偶然のことだった。どちらかがどういうことでもなく、行き逢ったのだ。それからはお互いの気持ちを少しずつ、出汁が染み込むように交換しあった。そんななか、行き違いもあった。誤解も生じた。それでも投げ出...出会いの不思議

  • 断りの口実

    断りの口実

    ・思い返すと、いくつか思い当たるふしがある。以前にも一度、「先約があるのでごめんなさい」と言われた時がある。その時は、具体的に先約の内容を明らかにしていたので、その通りであるのだろうと納得した。それが二度目になると、明らかに口実を設けているに違いないと思われた。先約があるという言い訳は、断る理由として自分も使うことがある。だから、見え透いた嘘が透き通るように見えるのである。相手の内心が知れるのだ。・ここで相手の断りの理由である「先約」とは何かをあえて追求してみたくもなるが、あえてそれをすれば、それは相手を疑うことであり、その時点で二人の関係は崩れてしまうだろう。それがいまは怖くて、何となく曖昧にやり過ごしているが、疑念は宙に浮いてサスペンス状態になる。・誘いを断る際は、まず最初に誘ってくれたお礼を言うとい...断りの口実

  • 別れの予感

    別れの予感

    ・邪推というものがある。邪推は歪んだ僻みから作り出される。それゆえに女々しいのである。あんな女に未練はないが、と言いながら内心は泥々の煩悩に翻弄されている。その妄念が強ければ強いほど、深い悩みの淵に突き落とされる。そんな心理状態になると、もはや、相手の実像とは関係ないところで、虚像を創りあげ、それと格闘して、ひたすら七転八倒の思いに目くるめくのだ。・そしてついに決定的な瞬間が訪れる。三択でアポイントの日を提案したものの、いずれの日にちも理由をつけて断りのメールが返ってきた。予想したとおりの結果だった。これで相手の気持ちが明らかになった。「28は仲間との外出、29日は仕事、31日は前からの約束なの」「やはり、ダメですね。何かが食い違っているようです」「そうよね」「太鼓の音に足の合わぬ者を咎めるな。その人は、...別れの予感

  • 生まれ出ずる悩み

    生まれ出ずる悩み

    明子は腹のなかの子供が一体誰の子か疑った。明子はすでに結婚していた。結婚はお見合いのようなものだった。相手は兄の知人だった。明子には前から交際していた恋人がいたが、兄の強い勧めで、兄の知人と結婚することにした。その恋人との交際もそれで途切れることになった。結婚した相手は、出張の多い会社に勤めていた。新婚早々から家を空けることが多かった。子供のまだいない明子は終日、所在無く家にいることに退屈した。ぼんやりしてうちに以前付き合っていた恋人のことが気になりだした。「あの人は今どうしているのだろうか」と。気になりだすと、じっとしていられなくなり、ある日、思い切って彼に手紙を書いた。すると彼から手紙が返ってきた。手紙には、懐かしいな、幸せにしてる?と書かれてあった。さらに、一度会いたいな、とも添えられてあった。幾度...生まれ出ずる悩み

  • 初夜

    初夜

    いつかその時が来るとは思っていた。が、それがいつとは分からなかったし、不透明な期待と恐れがあった。処女を失うということの重大さは以前から噛みしめていた。しばらくの間、私たちはベッドの中でじゃれあっていた。そのうち、「ね、いいだろう」と男は幾度も私に囁いた。そして、衣服を脱がせてから私の股を開こうとした。私は本能的に躰をはねのけて抗った。すると男はやにわに力を込めて私を押さえつけようとした。幾たびかそんなことをしているうちに私の躰から力が抜けて、抵抗らしい抵抗も消えて、声も立てなかった。むしろ相手の躰に入ってゆこうとする気持ちになっていった。私は思わず男の躰にむしゃぶりついた。それからは、肌がはっきりと熱くなり、体内にこもった熱が一度に発散する様子で、汗さえ噴き出して、豊かな息がふくらんで抑えきれない嗚咽が...初夜

  • ロシアから愛を込めてーその2

    ロシアから愛を込めてーその2

    5・5こんにちは、あなたの今日の予定は?あなたと素晴らしい交流ができてうれしいです。あなたのことを考えるたびに気分がどんどん良くなり、一秒で気分が上がります!ロシアと日本の距離が遠いにもかかわらず、私たちは今、メールで話すことができます。あなたは私にとってとても大切な人です。自己紹介と私の質問に答えてくれてありがとう。さて、私の好きなことはたくさんありますが、私は人生と私の周りのすべてが大好きです。私はじっとしていることが苦手です。私は何か新しくて素晴らしいものを作るのが大好きです!だからアートスクールで五年間学びました。私はこの学校の私のスタジオを決して忘れません!私の絵をいくつかをお送りします。元気を出したい時やリラックスしたいときに私は本を読みます。本のジャンルはさまざまなで(サイエンスフィクション...ロシアから愛を込めてーその2

  • ロシアから愛を込めてーその1

    ロシアから愛を込めてーその1

    2020・4・1お元気ですか?あなたの手紙にすぐに返答しなくてすみません。最初の手紙に何を書くべきかわかりませんが、まず、私はロシア出身であることを申し上げます。私の名前はナターシャ、28歳です。私はいまだかつてロシアから離れたことがありません。でも、近いうちに日本に行きたいと思っています。なじみのない、誰も知らない国に旅行するのはとても難しいですが、それを何とか実現したいと思っています。ネットを介してで外国人と出会う方法を選んだのははじめてですが、当初、私はそれに懐疑的でした。でも、あなたのような人に会えてよかったです!今はあなたについて何も知りませんが、これから少しずつ、あなたのことを知ってゆきたいと思っています。次の手紙をお待ちしています。4・7私はあなたの国・日本が好きです。私はいつも日本に旅行す...ロシアから愛を込めてーその1

  • 再会

    再会

    道すがら、ふいに声をかけられた。振り向くと昔、仕事を一緒にしていた弥生だった。何年ぶりのことだろうか。少し太ったように思えたが、弥生はすっかり中年の女になっていた。ひさしぶりの再会だったので、近くの喫茶店でお茶でも、ということになった。素子は、すでに会社をやめているので、その後のことはわからなかった。が、一つだけ、昔付き合っていた同僚の井川のことが気になったので、彼の消息について聞いてみたかった。「ああ、井川さんね。素子、あの人とつきあっていたんだっけ。そんな噂聞いていてよ」そう言うと、弥生はさも秘密めいた口調で井川のことを話し出した。実は、素子は井川とは会社にいる頃、一度、あやまちを犯したことがあった。が、それきり事情があって関係が切れて、そのあと素子は会社をやめた。弥生によれば、井川はその後、博多へ転...再会

  • 借金

    借金

    こんなことを頼める柄ではないんですが、たってのお願いなんです。来月には必ず返しますから、5万円、お貸しいただけませんでしょうか、と優子は切羽詰まった顔をして浅井に懇願した。そう言われた浅井は、勤め人にとって五万円は大きいな、と思った。でも、断れば二人の関係はそれっきりになる。5万円というけれど、優子の今の状況からすれば、その金は帰ってこない金と覚悟しなければならないかもしれない。貸すならそういうつもりで差し出さなければならない。後日再会した時、浅井は2万円だけ包んで「いまの僕にはこの金額が精一杯なんだ」と言ってから手渡した。優子は金の入った封筒を手にしながら、うっすらと微笑んでから、口を開いた。「多分、こんなことになるんではと思いましたよ。私が想像していた通りなので内心驚いたけど。ごめんなさいね。私、あな...借金

  • 猜疑心

    猜疑心

    めくるめく考えが頭の中を駆け巡っている。疑心暗鬼が絶え間なく渦巻いている。約束を取り付けようとすると都合が悪いと断るのも、実際何か予定があるのではなく、遠回しに拒否をしている証拠ではないか。思い返すと、いくつか思い当たるふしがある。以前にも一度、「先約があるのでごめんなさい」と言われた時がある。その時は、具体的に先約の内容を明らかにしていたので、その通りであるのだろうと納得した。それが二度目になると、明らかに口実を設けているに違いないと思われた。先約があるという言い訳は、断る理由として自分も使うことがある。だから、見え透いた嘘が透き通るように見えるのである。相手の内心が知れるのだ。ここで相手の断りの理由である「先約」とは何かをあえて追求してみたくもなるが、あえてそれをすれば、それは相手を疑うことであり、そ...猜疑心

  • 冬子という女

    冬子という女

    はじめの頃、冬子はまだ、躰を硬くしていて、本来の彼女らしい屈託のない態度が表にあらわれていなかった。それが幾たびか逢瀬をかさなねるうちに、最初の頃の凝り固まった不自然さはしだいに解消していった。彼女が少しずつ心を開いていっている証拠だと男には思えた。それはあたかも霧が晴れてゆくような喜びにとけはじめている様子をうかがわせた。心が色づきはじめたというか、かたい蕾が紅色にそまってゆくような変化が認められた。冬子の内に愛の芽吹きがはじまっていることが認められたのである。それからというもの、冬子は以前とは見違えるように、素直に自分の身の上話をするようになった。その内容はけっして明るいものではないのだが、屈託のない話ぶりが、その陰リある話の暗い部分をいくらか和らげてくれた。冬子は少しずつ花弁を広げてゆく牡丹のように...冬子という女

  • 男女・考ーその3

    男女・考ーその3

    夫が浮気しているのに別れない妻、妻が浮気しているのに別れない夫。こうした夫婦が増えている。形の上では夫婦であるが、心がすでに離反している。愛情が空洞化していてもひとつの家庭を保っている。特に、子供がいる場合など子供のためという大義名分で別れないでいる。もちろん、こうした夫婦でない場合もたくさんある。離婚が増えているのはそのためだ。夫婦ともに外で浮気しながら、家庭は維持しているというケースがこれからは増えるだろう。男女の関係が深まるとおのずと情が生まれる。昔からある男女の機微な関係は小説に描かれ、舞台で演じられてきている。現実世界に生きる男女はこれら非現実世に、ある時は共感し、ある時は憧れる。人の内側にはマグマのようなものが棲みついているのである。ある詩人は言う。女性はただこの世に有ると言うだけで、十分な意...男女・考ーその3

  • 男女・考ーその2

    男女・考ーその2

    男女の関係は、結果論では言い尽くせない。特に女性の多くは結婚に至らない愛は無駄だと思いがちだが、果たしてそうだろうか。その人とうまく結ばれたかどうかが問題ではなかにその人に甦る愛というものがあるものだ。愛は非論理であるとはよく言い得ている。夢中に愛しあっている時は、アバタもえくぼに見えていたものが、ひとたび二人の仲が冷えると、アバタがリアルにアバタに見える。一方で、燃えている二人にありきたりな常識や道徳を説いても無意味である。命が燃え尽きるほど人を愛した経験は、時が経ても鮮やかに甦る。ある瞬間に、命を燃やすことができた人と、そうでなかった人では、どちらが人間として幸せで、どちらが彩り豊かく、別れた後にも深く心に残り、あるいは別れたゆえに鮮やな人生を送ったか、これは疑問の余地はないだろう。恋というものは無垢...男女・考ーその2

  • 男女・考ーその1

    男女・考ーその1

    集中度において男は女にかなわない。女性が心霊術や催眠術にかかりやすいのはそのためである。女性は単純な作業でも集中できるが男にはそれができない。男と女がお互いに「あの人の気持ちがわからない」と言い合うのは、相手が自分と同じものだと思っているところに最大の錯覚がある。別れにおいて、男女の違いが著しい。女性は心が離れた時はきっぱりと別れられる。一方で、男は未練がましく、いつまでも燻り続ける。人はみんな「後の祭り」を繰り返している。あの時、ああしておけばよかったと悔いる。その時は頭でわかっていても行動に移せなかった。頭と体が別々に分かれてしまっていたのである。異なる夢。男も女もロマンチストで夢見ることが多いが、男は女に尽くす夢を見て、女は男に尽くされる夢をみる。性的魅力というのは、ただ外見さえ良ければというわけで...男女・考ーその1

  • 今を抜け出したくて

    今を抜け出したくて

    翔子はこの20年ほど鬱の状態で過ごしてきた。翔子は事務職の経理の仕事を20年ほどつづけていた。経理の仕事は親の会社の手伝いということではじめていたのだが、そのうち欠かせない社員の一員となっていた。仕事に熟練するとやり気も増した。忙しい時には休みも返上して働いた。それでも毎日が充実し楽しかった。が、そのうち躰が思うように動かなくなった。気分も落ち込んだ。ふだんと違う自分の躰を案じて、翔子は心療内科を受診した。結果は、燃え尽き症候群という病名で、そのために気分がうつ状態になっているという診断だった。よもや信じられないことだった。自分は鬱になんかならないと自信をもっていたが、そうではなかった。医者の言うことによれば、鬱は心の風邪みたいなもので、誰もが罹る病気だと説明された。しばらくして翔子は会社をやめた。治療に...今を抜け出したくて

  • 回り道

    回り道

    回り道絹枝は主婦である。好き合って結婚したはずなのに、今は少し冷えきった関係になってしまっている。そんなある日、絹枝は結婚前に付き合っていた龍一郎という男と出会う。偶然とはいえ、予期せぬ出来事だった。何か待っていたことが現実に起きたような思いがした。大通りの裏にある喫茶店に入って、お互いの近況を時間を忘れて語り合った。愉しいひとときだった。あっという間に小一時間が過ぎた。このまま別れるのが惜しい気がした。別れ際、龍一郎が「今は幸せか」と聞いてきた。本当の気持ちを訴えようとしたが、絹枝はその場は思いとどまった。今の気持ちを吐き出せば、一気に堰が切れるような気がしたからである。後日、実家に帰った折に、母に、過日、龍一郎に逢ったことを告げると、母は「あの人はまだ独身でいるらしいわよ」と告げた。そして母は、「あの...回り道

  • 歳月

    歳月

    シングルパパである洋平は二女の子持ちである。妻が亡くなってからというもの大酒飲みのぐうたらな父親になった。二人の子供を抱える大変さに押しつぶされたのである。長女のユカはまだ10歳だったが、妹のサキの母親がわりになって家事をきりもりしていた。そんなたいへんな生活がつづくなか、気がつけばユカは18歳になっていた。ある日のことだった。呑んだくれた父が交通事故に遭い、それが原因で数日後、息をひきとるという不幸に出会った。ところが、災難はそれで終わらなかった。父親が多額の借金を抱え込んでいたことがわかったのだ。間もなく、取立てが押し寄せてきた。そんな不幸な姉妹を見かねて、周囲の人間がいろいろ手助けをしようとした。が、ユカはそれらの好意をきっぱりと断って、「親の借金は子の借金ですから」と言い放った。尋常の働きでは返せ...歳月

  • 取り戻せない過去

    取り戻せない過去

    絹枝は主婦である。好き合って結婚したはずの夫なのに、今は少し冷えきった関係になってしまっている。そんなある日、絹枝は結婚前に付き合っていた龍一郎に、駅前のバス停で出会った。偶然とはいえ、予期せぬ出来事だった。何か待っていたことが現実に起きたような思いがした。立ち話というわけにもいかないので、絹枝は龍一郎を促して、近くの喫茶店に入った。席につくとすぐに、堰を切るようにお互いの近況を話はじめた。違った世界に生きてきた二人の三年という月日がひどく長いように思えた。二人は時間を忘れて語り合った。あっという間に時が過ぎていった。話が進むにつれて、しだいに以前の二人の関係を取りもどしていた。このまま別れるのが惜しい気がした。でもこのままずっとというわけにはいかなかった。龍一郎と別れたあと、絹枝は、本当の気持ちを訴えよ...取り戻せない過去

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