次話へ→ ― 1 ― ただ、私は別に詩になんて興味がなかっ…
「ってのは?」 「いや、これはちょっと言いづらいんだけど、君のことをああだこうだ書いてたろ? あれはちょっと――というか、かなり気持ち悪い内容だった。あ…
コーヒーとキティ用の水が置かれると、若干だけ事務的な雰囲気が生まれたようだった。二人と一匹はしばらく黙ってそれを飲み、たまに紙へ目を向けた。 「で、あ…
「ま、いいわ。つづきを読んで」 「って、これも読むのか?」 「いいから読んで」 深く息を吐き、彼は紙を見つめた。文字を小さくした囲み記事には『イン…
店を閉めた後で二人は見つめあった。その間――応接セットのテーブルにはキティが端然と座ってる。問題の紙は隅に重ねられていた。 「どうだ? すこしは冷静に…
ベッドを降り、カンナは洗面台に向かった。うわっ、頭ボッサボサ。顔も浮腫んでるし、化粧は台無し。だけど、バッグは下だしな。どうしよう? 時計を見ると六時三…
ん? とふたたび思ったときには二階のベッドにいた。タオルケットが胸まで掛かってる。――そうか、私、倒れちゃったんだ。怒りのあまりに? それともなんらかの…
その日は朝から晴れていた。そのぶん気温は上がり、蒸し暑くもあった。 ガラス戸を大きくあけると、カンナは扇風機を眺めた。まるでお祖母ちゃん家にあるような…
おおよそ二週間、カンナはそういう態度を押し通した。 蓮實淳はうんざりしながらも仕事をこなし、猫の収集した同業者情報をまとめ上げていった。 サマンサ山…
不安なのは一緒だったけど、カンナは考えを改めることにした。変な手紙が投げ込まれたからってなんだっていうの? 意地の悪い人間が近くにいるってわかっただけじ…
しかし、彼も思い悩んでるばかりではなかった。近隣の占い師について調べてもらっていたし、店へ近づいた者も探してもらっていた。 「泉川扇宗のとこにはオチョ…
「あと、よくあるパターンは『二十年前の悲劇』ね。それが今の事件に関係してるの。商売してた実家が潰されたとかで復讐するのよ。ほんとは兄弟なのに、それを隠して…
翌る日にやって来た千春はガラス戸を開けるなりこう言った。 「脅迫状が届いたってほんとなの? どんな感じのもの? ね、私にも見せてよ」 蓮實淳は口を…
今度はカンナが紙を取った。目を大きくひらき、じっと読みこんでいる。 「納得はしてないよ。そう考えることもできるってだけだ。でも、じゃなかったら、誰が『…
ただ、顔を洗い、コーヒーを飲みつつトーストを囓り、歯を磨いて――としてる内に営業時間になる。予約客もすぐに来る。しかも、こういうときに限って長い相談にな…
『お前はインチキうらない師だ ひと様の家庭に鼻を突っこんでは こそこそとかぎ回る いやらしいシラミ野郎だ そっこく廃業しろ さもないとひどい事になるぞ こ…
――なんてふうにカンナは考えていたわけだ。しかし、彼らはやはり不穏さから逃れられなかった。 出勤するとカンナはまずガラス戸に挟まれた封筒やら葉書を引っ…
「ねえ、あなたのお家ってどんなだったの?」 ちり取りを使いながら、カンナはそう訊いてみた。 「は?」 「ほら、蛭子さんとこで言ってたじゃない。バラ…
まあ、このようにして春は過ぎていった。ごくたまに彼は自らの〈能力〉に限界を感じたけど、相談者はそんなのを待ってくれない。見えた映像をなんとか繋ぎあわせ、…
第7章 春は過ぎ、夏が近づいてきた。 すべての経験は過去のものへ変わっていく。いちいち立ちどまって検証する暇などないくらいお客さんは来るし、相談も多様だ…
って、タイトルの意味がわかりませんよね?これは、この子たちの鳴き声、そのギリシャバージョンらしいです。だけど、『ブレケケケックス、 コアックス、 コアックス』…
昨日につづき、紫陽花ですね。いえ、休みの日にカメラを持って外に出たら、あちこちに咲いてたんですよ。で、そうなるとパシャパシャ撮ってしまうわけで、紫陽花の写真だ…
子供の頃、けっこうな田舎に住んでいたので紫陽花なんてよく見てたはずなんですが、こうやってふと見つめるとあらためて綺麗なんだなと思います。 それに、色も形も実に…
「ああ、まずは今回のことについての口止め、それに、」 彼は嘉江から受け取った映像を思い出していた。ほとんどすべての顔が潰れてたのは隠し事が多いからなん…
二人が帰ると蓮實淳は鼻に指をあて唸った。気になることが多すぎる。きっと見落としてることがあるんだろう。しかし、それも当然だ。俺は見えたことに類推を加えて…
それからの数日間、蓮實淳はあの夫婦が乗り移ったかのようにぼうっとしていた。口から出てくるのは溜息か「あうあうあ」といった意味不明の音だけだ。カンナは掃除…
「それにね、来週は久しぶりに水天宮様へお参りしてきましょ。私たちも一緒に行くから、――ほら、どうしたのよ、そんな顔して。そうそう、《初音》にも行きましょう…
うんざりし尽くしながらもカンナは求められたすべてを完璧にこなした。まあ、祈りのダンスは考えられないくらいダサいものだったけど(蓮實淳は唇を噛むことで笑い…
「――で?」 「ん? ああ、あまり簡単に終わっちまうとつまらないだろ? なんだ、その、――うん、納得感ってのが薄くなっちまうんだよ」 「よくわからない…
「ね、いたんでしょ。やっぱりそうだったのね。あのお婆さんに取り憑いてたんでしょ。で、なんかした? 戦ったりしたの? お婆さんは緑色の塊を吐き出したりした?…
庭に出た蓮實淳は伸びをしたまま固まってしまった。さっき捉えた違和感がぶり返してきたのだ。 「って、なにしてんの? まさか、あなたまで取り憑かれちゃった…
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いやぁ、終わったんですね。ほんとに長かったですねぇ。ただ単に長いんですよ。長いだけでなんの意味もない。・・・・・・あ、 ・・・・・・ 佐藤さん、いたんです…
↑小説『stray sheep』先頭へ ← 前話へ ― 13 ― 未玖はあいかわら…
↑小説『stray sheep』先頭へ ← 前話へ 次話へ→ ◇ 蛍光灯の明かりで廊下は隅々まで…
↑小説『stray sheep』先頭へ ← 前話へ 次話へ→ ロビーは薄暗かった。雨は降りつづき、…
↑小説『stray sheep』先頭へ ← 前話へ 次話へ→ それからのことはよく憶えていない。な…
↑小説『stray sheep』先頭へ ← 前話へ 次話へ→ 私はなにも言わずに歩いた。これからど…
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↑小説『stray sheep』先頭へ ← 前話へ 次話へ→ ◇ 九月の半ばに私たちは鎌倉へ行っ…
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↑小説『stray sheep』先頭へ ← 前話へ 次話へ→ ◇ 文芸部は曖昧で、ぼんやりした、…
↑小説『stray sheep』先頭へ ← 前話へ 次話へ→ ― 12 ― 私たちの関係はき…
↑小説『stray sheep』先頭へ ← 前話へ 次話へ→ お店は徐々に空いていった。光も弱くな…
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↑小説『stray sheep』先頭へ ← 前話へ 次話へ→ それから川淵さん、私、未玖とつづいた…
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