コーヒーとキティ用の水が置かれると、若干だけ事務的な雰囲気が生まれたようだった。二人と一匹はしばらく黙ってそれを飲み、たまに紙へ目を向けた。 「で、あ…
1件〜100件
性格の違い――といえばそれまでだけど、この姉妹には目に見えぬ大きな隔たりがあった。ミカはよくそれを感じることがある。ただ、無理をしてそれを越え、姉の考え…
ミカは溜息を(こう何度もつきたくないのだけど)洩らした。この人には意見なんてないのだろう。こうやって訊きまくっては、そこに自分を合わせられるのだ。唇は歪…
「どうだった?」 部屋を訪ねてくるなりユキはそう言った。 「ミカちゃん、どう思った? あの人のこと」 「どうって?」 「私、あの人と結婚すること…
「文武両道でいらっしゃるんですね」 母親は上品そうに「ほほほ」と笑ってみせた。しかし、その後はまた沈黙だ。ユキは頬を染め、うつむき加減になっている。父…
見合いの日には雨が降っていた。ただでさえ憂鬱なのを定着させるような、しとしととやみそうにない雨だ。 「藤田吉之助です」 キチノスケ? ミカはまわり…
「ね、お願いよ。なんとかしてもらうの。ユキもあなたに来て欲しいって言ってたしね」 「その前に訊きたいんだけど、お姉ちゃんは真面目にお見合いするつもりなの…
3 お見合いは七月に決まったようで、相手は銀行員とのことだった。そういうのをミカはちょこちょこと耳に挟んでいた。 事前情報というのも聞かされていた。…
ただ、ミカは人の相談を受けていられるような立場にいなかった。自分の方こそ相談したく思っていたのだ。 ミカにはつきあって半年になる彼(山内くんといった…
「で、」 細く息を吐き、ミカは目をあけた。すべてが面倒になったのだ。 「どんな感じなの? ルックスは? 実業家ってのはどんなお仕事してるわけ?」 …
「ああ、あの話ってまだつづいてたんだ。でも、まあ、いいんじゃない?」 姉の皿が空くとサラダを足し、やはりピザも取り分けてやった。席の前は広い通りになっ…
二人が行ったのは駅からすこし離れたところにできたイタリア料理店だった。木枠に嵌められた窓から覗くと店内は混みあい、桜の並木が見えるテラス席も埋まってる。…
前にも増して忙しく働いていたミカはそんな話があったことすら忘れかけていた。忙しいのには理由があった。マネージャーが事故にあい、しばらく出てこられなくなっ…
「ま、お父さんも困ってるんでしょうね。あんなふうに言ってきたのって初めてでしょ?」 「そうなのよ。パパに迷惑かけるのはよくないと思ってるんだけど、」 …
雑誌を読んでると弱くノックの音が聞こえてきた。 「お姉ちゃんでしょ? 入っていいわよ」 薄くだけドアがひらき、上気した顔があらわれた。――その開け…
「そう言ってくれるのは嬉しいんだが、そろそろ結婚のことも考えた方がいい。いや、この話でなくてもいいんだ。ただ、そういう年頃なのは確かなことだ。そうだろ?」…
2 二十八歳になるユキにはあらゆる方面から見合いの話がきていた。父親がさる大会社の重役だったので花婿候補を紹介したいという人間が後を絶たなかったのだ。…
しかし、それはもう終わった話だ。あるとき――忘れもしない、大学四年の十月のことだった――彼からのラインにこうあった。 『そういえば、この前ミカのお姉さ…
ミカはけっこうモテる。 ユキほどではなかったものの子供の頃からラブレターをもらったり、なにかとちょっかいを出されていた。高校生になってからは特定の彼…
しかし、あるときユキはこう言ってきた。 「ミカちゃん、今日はお茶淹れてくれないの?」 たぶん――ミカは今にして思う――そのときの私はちょっとばかりイ…
ミカはイランイランとベルガモットのエッセンシャルオイル(ともにイライラ解消に役立つ)を焚き、フラワーエッセンスなるものからインパチェンス(これもイライラ…
ミカには二つ年上の姉がいる。そちらはユキといって、とても美人だ。それも子供の頃からそうだったし、今もってそうだ。ミカは自分を磨くため努力してきたし、勉強…
1 清水ミカというのが彼女の名前だ。 彼女は二十六歳で、ショップの販売員で、つねに明るく振る舞ってる。服装にも気をつかってるし、長い髪はいつも艶や…
さて、明日からまた小説になるようなのでこの人に出てきてもらいましょう。佐藤清春さんです。 あ、はい。よろしくお願いいたします。 さっそくお訊きしますが、前…
いやぁ、この季節は気持ちがいいよねぇ。 暑くもあるけど、風が吹くとまだ爽やかだし、葉のさやさやという音も心地いいなぁ。 ん?あれは? エピクロス・・・・…
『生活というものは早晩、落ち着くところへ落ち着くものなのだ。どんな衝撃を受けても、人はその日のうちか、たかだか翌日には――失礼な言い方で恐縮だが――もう飯…
『人間は歩く影だ。あわれな役者だ。舞台の上を自分の時間だけ、のさばり歩いたり、じれじれしたりするけれども、やがては人に忘れられてしまう』 というわけで…
いや、ここのところまったく余裕がなくて、落ち着いてこういう文章を書く時間も持てない状態なんですよね。 だったら書かなきゃいいだけのことなのですが、習い性とい…
見える人 『《monkey's paw》にて/ありのままを見ること』- 4
雨はやはりスーツを濡らした。 街灯が照らす中を歩き、僕は立ちどまった。――ああ、こいつだったな。これが突然消えたのだ。それがあったのも雨の降る夜のこ…
見える人 『《monkey's paw》にて/ありのままを見ること』- 3
駅に着いたのは十二時過ぎだった。 小雨が降り出したけど僕は傘を持ってなかった。風も吹き、雨粒はまっすぐ落ちてこない。右往左往してるように流され、スー…
見える人 『《monkey's paw》にて/ありのままを見ること』- 2
「ただ、そういうことがあったってんなら、その通りなんだろ。話としちゃ信じられる部分は微塵もないが、俺はお前を信用してる。なにしろ大親友だもんな」 「あり…
見える人 『《monkey's paw》にて/ありのままを見ること』- 1
営業先を出ると僕はカフェへ入った。窓の外は人で溢れてる。それを眺めつつ、スマホを取りだした。 『八時にいつもの店で待ってる。話があるんだ』 送った…
「カミラ! ちょっとは落ち着きなさい。――あなた! あなたもよ!」 背後をうろつきまわる音が聞こえてきた。僕たちはその間ずっと見つめあっていた。そうし…
僕はそれまでに起きたことを違う視点から見ようと試みた。ありのままを見ようとしたのだ。それはひどくつらいことだった。怖ろしくもあった。そのものというのはな…
頬は歪んでいった。そのままの表情で長椅子を指している。 「これは何色?」 「緑ですね」 「そう、緑と呼ばれる色に見えるわね。でも、あなたはどうして…
「もし、それが本当だったとして、彼女はどうして僕のことを思いつづけてるんですか?」 「その人はあなたと別れてからひどい病気に罹ったの。もう四年も入院して…
「僕は反対だな! やっぱりどうしても反対だ!」 「あなたは黙ってなさい!」 「いや、黙ってるなんてできないよ! 僕は反対だ! こんな男じゃカミラちゃ…
僕はそっと左肩を見た。曲げきることはできなかった。彼女の顔は浮かんでいた。忘れるわけもない。しかし、待てよ――と思った。 「信じられない。だって、向こ…
「――うむ、そうだったのね。――いえ、あなたじゃないわ。嘘はおよしなさい。私にはわかってるのよ。――そう、わかるわ。――ん? いや、そういうことなの?」 …
通されたのは応接室とでもいうようなところだった。厚めの絨毯が敷いてあり、背の低いテーブルを挟むように古びたグリーンの長椅子と一人掛けソファが二脚置いてあ…
「で、佐々木くんの出身はどこ?」 「出身ですか? 埼玉ですけど」 「ご兄弟はいるの?」 「ええ、弟が一人」 「ということは長男? そうかぁ、長男な…
しかし、迎えにきていたのを見つけたときはわからないように舌打ちした。彼女より隣に立ってる人物が問題だった。腹のでっぷり突き出た初老の男――どう見ても父親…
夜になって電話がかかってきた。つぎの土曜であれば大丈夫とのことだった。 「土曜か。別に問題ないけど、そこまで保つんだろうな? その前に最悪の事態ってこ…
その瞬間から僕は大きく変化した。起こってる現象からすると適当な表現でないけど『憑きものが落ちた』のだ。もちろん、それでも理解しがたいことに取り囲まれたま…
「で?」 「ん?」 鏡には仏頂面が映りこんでいる。僕は毛先を整えていた。 「なんだよ」 「いや、っていうか、その格好はなんなんだ? なんで変な感…
翌日の朝はそれまでよりも激しくうんざりさせられた。背筋を伸ばした篠崎カミラの横には小林が立っている。二人して待ってたわけだ。 「な、こういうのって高校…
「とにかく、そのいろんな色にみえる宝石みたいのがなんだっていうんだ」 「そっ、そっ、それを、さ、探して、く、ください。きっ、きっ、きっと、さ、佐々木さん…
「なんでこんなことになった? 僕がなにしたっていうんだ? 悪いとこがあるなら改めるよ。どんなことだってする。だから、こういうのはやめてくれないか」 「だ…
ただ、その直後に説明のつかないことが起こった。マンションに着いた途端に入り口の電球が消えたのだ。眉をひそめながら僕はテレビのボリュームをあげた。それから…
部屋の片づけは最終段階にさしかかっていた。小物のあらかたは元の場所に収まり、認識のあやふやな物だけがキッチンボウルに残ってる。あとはその処分を考えるだけ…
「いやぁ、あの子、面白いな」 エレベーターを降りると小林は肩を小突いてきた。 「からかうにはだろ?」 「まあ、そうだけど面白いことに変わりない。そ…
「なんなんだよ、『んあっ!』ってのは。朝から聞くのにはそぐわねえ声だな。まるで後ろから刺されたみてえだぞ」 「ん、いや、その、なんだ」 「なんだよ、歯…
次の日も篠崎カミラは待ちかまえていた。僕たちは「おはよう」、「おっ、おはよう、ごっ、ございます」と言いあい、足早に会社へ向かった。 「み、見ましたか?…
会計を済ませ(レアなカードの再登場というわけだ)、僕たちは地上まで降りた。雨はまだやんでいない。 「あっ、あっ、あの、に、荷物が、お、多いので、わ、私…
「は、母の話と、い、いうだけですが、そ、その、は、母も、わ、私と変わらないくらいの、と、年のときに、ち、父に出会ったんです。だ、誰でも、い、いいのかは、わ…
当然のことに妙な雰囲気になった。彼女はうつむきつづけ、僕は意味もなくうなずいていた。きちんと理解できていないものの要約するとこういうことになるのだろう。…
「は、母は、あ、あなたにも、そ、そ、そのときが、き、きたのねと、い、言ってました。わ、私の、ち、力が、か、完全なものに、な、な、なるときが――という、い、…
「あの、よくわからないんだけどさ、君のお母さんも『見える人』なのか? でも、君には『先生』ってのもいるよな? 昨日、僕としゃべった人だよ。そっちは『先生』…
「あっ、あっ、あの、うっ、うっ、嬉しいです。そ、そんなふうに、お、お、仰って、く、くださるなんて」 「あ?」 僕も口をあけていた。それを見つめながら…
僕たちはイタリア料理店に入った。時計を見ると八時半になるところだ。デパートの飲食店なんて十時には閉店だろう。そう思いながらメニューをひらいた。あまり楽し…
それからも何店かまわり、似たようなことをした。当然のことに紙袋は増えていき、僕は幾つかを持ってやった。どうしたってそうせざるを得ないだろう。 「あっ、…
「あら! まあ! よくお似合いで!」 「え、ええと、そ、そ、そうでしょうか?」 「はい、お似合いですよ! 背が高くていらっしゃるからでしょうね。まるで…
改札に近づくと居所はすぐにわかった。目印になりやすい背の高さをしているとこうなるものだ。 「き、き、来て、く、くださったんですね」 「まあね」 …
営業先を出たのは六時過ぎだった。人混みをすり抜けるようにしてると雨が落ちてきた。間隔もまばらな弱い雨だ。しかし、周りの者はさも大事が起こったとばかりに動…
「ほっ、ほっ、本当ですか? うっ、うっ、嬉しいです。で、で、では、い、い、一緒に、デ、デ、デパートに、い、行ってください」 「デパート? なんでだ?」 …
翌る日も篠崎カミラは待ちかまえていた。背筋を伸ばし、若干は自然に見えなくもない笑顔を浮かべてる。 「おっ、おはよう、ごっ、ごっ、ございます」 「ああ…
見える人 『あらぬ噂/《monkey's paw》にて』- 9
「あっ、あっ、あの、」 「なんだよ」 「い、いえ、す、すこしは、お、お役に、た、たちましたか? わ、私だけでは、ちょっ、ちょっと、ふ、不安だったので、…
見える人 『あらぬ噂/《monkey's paw》にて』- 8
スマホを押しあてたまま僕は待った。もういいから部屋に戻って寝ちゃおうかな。そう考えてもみた。なんでもないことを騒ぎ立ててるだけに思えたのだ。しかし、怖れ…
見える人 『あらぬ噂/《monkey's paw》にて』- 7
コンビニでビールを買い、僕はマンションの前に座りこんだ。とはいってもどうしよう? もう一時近くだし、突然電話するのも変だよな。――はあ、こんなに思い悩む…
見える人 『あらぬ噂/《monkey's paw》にて』- 6
駅に着いたのは十二時過ぎだった。 僕は疲れ果てていた。二日酔い一歩手前まできていたところに強い酒を重ね、なおかつ葉巻まで喫ったものだからくらくらする…
見える人 『あらぬ噂/《monkey's paw》にて』- 5
「そこまで女っぽくなってないよ。厚化粧して、背筋伸ばしてるだけだ」 「そうなのか? ほんとにそれだけ?」 「そうだよ。見ればわかる。どうせ見てないん…
見える人 『あらぬ噂/《monkey's paw》にて』- 4
僕たちは席を移動した。葉巻を頼むとバーテンダーが穴開け機みたいので吸い口をつくってくれた。二人でそれを咥えてる絵はなかなかのものだった。まるで千万単位の…
見える人 『あらぬ噂/《monkey's paw》にて』- 3
その日は僕が先に着いた。店は空いていて、糊のきいたシャツに蝶タイ姿のバーテンダーが無表情に若干の笑みをつけ足したような顔をして立っていた。背後には縦に四…
見える人 『あらぬ噂/《monkey's paw》にて』- 2
そして、その通りになった。小林からラインが来たのだ。 『大事件が起こったようだな。詳しく聴かせろよ。いつもの店で待ってるぜ』 『これといって事件なん…
見える人 『あらぬ噂/《monkey's paw》にて』- 1
あらぬ噂/《monkey's paw》にて その翌朝にはさらにうんざりさせられた。篠崎カミラがふたたび待ちかまえていたのだ。 「あっ、あっ、あの、」…
「わかった。わかったから。――いや、何度も言って悪いけど全面的に信じてるわけじゃない。ただ、心配してくれてるのはわかった。で、つまりはこの後も悪いことが起…
「ただ、もし本当に君がそういったのを見たってなら、他になにかないのか? 僕のまわりで起こったことで他に見えたものは?」 口は半月状にゆるんだ。僕はその…
「悪いけど、そんなに暇じゃないんだ。用事があるならすっと言ってくれないか?」 「すっ、すっ、すみません! あっ、あっ、あの、わ、私、」 「で、なに? …
そんな感じにゆっくりではあるけれど僕の生活はかつてのペースを取り戻しつつあった。無駄な残業はせず、鷺沢萌子と出会う前とほぼ変わらないルーチンを組めるよう…
部屋はだいぶ片づいてきた。 大きなものは然るべき場所に収まったし、小物はキッチンボウルにまとめておいた。あとは必要なものを揃えればいい。ただ、買いに行…
それからもぐだぐだと下らない話がつづいた。すべて愚痴や陰口みたいなものだ。上司どもは「あのデブ」だの「ハゲ野郎」と呼ばれ、それでも誰について言ってるかす…
「ん?」 「お前の部署に新しい女の子が入ってないか? 背がえらく高くて、やけに地味な子だよ」 「ああ、あの子な。ふた月ばかり前に来たんだよ。よくは知ら…
「もうヤバいぞ。今度のはほんとにヤバい。マジで全員がお前好みなんだぜ。完全にストライクゾーンだ。どこ振っても当たるようにできてる。ま、こりゃいわば接待だな…
「あっ、あっ、あの、」 「篠崎さん?」 僕は思いっきり首を上げた。彼女は「そうです、私は篠崎カミラです」とでもいうように激しくうなずいてる。 「あ…
カフェは混んでいた。カウンター席に座り、僕は本を開いた。『ワインズバーグ・オハイオ』だった。学生の頃に一度読んだだけの、まだ持ってるとも思ってなかった本…
悲しい作業/永劫につづく罰 僕は部屋の片づけをはじめた。 それは被害状況を克明にしていく作業でもあった。あのジッポライターも盗られたんだな――など…
僕は腕を組んだ。これはどういう話なんだ? 全体的になにかがおかしいのだ。突然消える街灯、なぜか見つめてくる犬、それに奇妙な女まで出てきた。しかもその女は…
けっきょく僕たちは中華料理屋に入った。怒号のように中国語の応酬が聞こえてくる店内は混みあっていた。小林は〈青椒肉絲定食〉にし、僕は〈牛肉の八角炒め定食〉…
翌日は朝から営業先に直行だった。小林も同じだったので僕はラインにメッセージを入れておいた。訊きたいこと――というか、話したいことがあったのだ。 「なに…
「あの、失礼かもしれませんが、お名前は?」 「あっ、い、いえ、すっ、すみません。な、な、名乗りも、し、しないで、こ、こんなこと、い、い、言うなんて。そ、…
部屋はまだ荒れたままだった。僕には片づけをする気力も残ってなかったのだ。持ち出された物たち――炊飯器や電子レンジ、それにコーヒーメーカーもだ――を買いに…
ところで、僕にはもうひとつ気になることがある。それは犬についてだ。 いや、とりたててどうという話でもないのだけど、なんとなく犬に見つめられることが多…
「どうした?」 「ん、不思議に思えてな。ほんと、まったく不思議だ」 「なにが?」 「お前のことだよ。モテないはずないんだけどな。タッパもあるし、金だ…
新たな誘い/左肩を見つめる女 街灯が消えてから五日後に僕はまた合コンに誘われた。話を持ってきたのは同期の小林という、いかにも押し出しの強そうな、そして…
見える人 『街灯が突然消えることについて/鷺沢萌子という名の女』- 2
「じゃ、シャワー浴びてきちゃって。私は先に使わしてもらったから」 この台詞も毎日聴いたものだ。僕たちは初めて顔を合わせた日(合コンで知り合った)に寝て…
見える人 『街灯が突然消えることについて/鷺沢萌子という名の女』- 1
街灯が突然消えることについて/鷺沢萌子という名の女 そのときも街灯は突然消えた。 傘を傾け、僕は顔を仰向けてみた。 周囲を見渡しても 当然のことに他は…
明日からまた小説を載せますね。 これはだいぶ前にこのブログに載せたものを書き直した、まあ、新バージョンって感じのものです。 筋自体は変えてませんが、言葉足ら…
昨日も書いたのですが、腹立ちがおさまらないのでもう一度似たようなお話を―― 真実がどこにあるのかはきっと誰にもわからないのかもしれませんが自らがしたことの…
ソクラテスの死はプラトンのみならず他の弟子たちにも多くの影響をあたえたのでしょう。 たとえば、その一人であるテオドロスという人はとある王様から殺すと脅された…
終わりましたね。いや、長かったです。しかし、とにかく終わりました。 まあ、これについてはあまり書くべきことも浮かびません。内容はともかくとして、楽しく書けた…
女性が帰るとカンナはベビーカステラを持っていった。彼は顔をしかめてる。 「ん? こりゃどうしたんだ?」 「もらったの。もっともっとあるわよ。他の屋台…
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コーヒーとキティ用の水が置かれると、若干だけ事務的な雰囲気が生まれたようだった。二人と一匹はしばらく黙ってそれを飲み、たまに紙へ目を向けた。 「で、あ…
「ま、いいわ。つづきを読んで」 「って、これも読むのか?」 「いいから読んで」 深く息を吐き、彼は紙を見つめた。文字を小さくした囲み記事には『イン…
店を閉めた後で二人は見つめあった。その間――応接セットのテーブルにはキティが端然と座ってる。問題の紙は隅に重ねられていた。 「どうだ? すこしは冷静に…
ベッドを降り、カンナは洗面台に向かった。うわっ、頭ボッサボサ。顔も浮腫んでるし、化粧は台無し。だけど、バッグは下だしな。どうしよう? 時計を見ると六時三…
ん? とふたたび思ったときには二階のベッドにいた。タオルケットが胸まで掛かってる。――そうか、私、倒れちゃったんだ。怒りのあまりに? それともなんらかの…
その日は朝から晴れていた。そのぶん気温は上がり、蒸し暑くもあった。 ガラス戸を大きくあけると、カンナは扇風機を眺めた。まるでお祖母ちゃん家にあるような…
おおよそ二週間、カンナはそういう態度を押し通した。 蓮實淳はうんざりしながらも仕事をこなし、猫の収集した同業者情報をまとめ上げていった。 サマンサ山…
不安なのは一緒だったけど、カンナは考えを改めることにした。変な手紙が投げ込まれたからってなんだっていうの? 意地の悪い人間が近くにいるってわかっただけじ…
しかし、彼も思い悩んでるばかりではなかった。近隣の占い師について調べてもらっていたし、店へ近づいた者も探してもらっていた。 「泉川扇宗のとこにはオチョ…
「あと、よくあるパターンは『二十年前の悲劇』ね。それが今の事件に関係してるの。商売してた実家が潰されたとかで復讐するのよ。ほんとは兄弟なのに、それを隠して…
翌る日にやって来た千春はガラス戸を開けるなりこう言った。 「脅迫状が届いたってほんとなの? どんな感じのもの? ね、私にも見せてよ」 蓮實淳は口を…
今度はカンナが紙を取った。目を大きくひらき、じっと読みこんでいる。 「納得はしてないよ。そう考えることもできるってだけだ。でも、じゃなかったら、誰が『…
ただ、顔を洗い、コーヒーを飲みつつトーストを囓り、歯を磨いて――としてる内に営業時間になる。予約客もすぐに来る。しかも、こういうときに限って長い相談にな…
『お前はインチキうらない師だ ひと様の家庭に鼻を突っこんでは こそこそとかぎ回る いやらしいシラミ野郎だ そっこく廃業しろ さもないとひどい事になるぞ こ…
――なんてふうにカンナは考えていたわけだ。しかし、彼らはやはり不穏さから逃れられなかった。 出勤するとカンナはまずガラス戸に挟まれた封筒やら葉書を引っ…
「ねえ、あなたのお家ってどんなだったの?」 ちり取りを使いながら、カンナはそう訊いてみた。 「は?」 「ほら、蛭子さんとこで言ってたじゃない。バラ…
まあ、このようにして春は過ぎていった。ごくたまに彼は自らの〈能力〉に限界を感じたけど、相談者はそんなのを待ってくれない。見えた映像をなんとか繋ぎあわせ、…
第7章 春は過ぎ、夏が近づいてきた。 すべての経験は過去のものへ変わっていく。いちいち立ちどまって検証する暇などないくらいお客さんは来るし、相談も多様だ…
って、タイトルの意味がわかりませんよね?これは、この子たちの鳴き声、そのギリシャバージョンらしいです。だけど、『ブレケケケックス、 コアックス、 コアックス』…
昨日につづき、紫陽花ですね。いえ、休みの日にカメラを持って外に出たら、あちこちに咲いてたんですよ。で、そうなるとパシャパシャ撮ってしまうわけで、紫陽花の写真だ…
詩、小説、イラスト、漫画、等の創作を行っている人による、 ポエム・物語・絵・マンガ等の自作作品、 日々のつぶやき、 馬鹿馬鹿しい戯言、 創作の喜びや苦悩、 創作以外での様々な呟き、 ひとりごと、…… 完全自作オリジナルから二次創作まで、 自作作品からくだらない日記まで、 幅広い創作家サンのトラバをお待ちしてます♪