森の案内人:森林インストラクター田所清のブログです。自然観察日記を書いてブログ歴10年目です。
森閑とした空気に包まれる森の中は神秘の宝庫。そこに息づく植物や虫・きのこなどを観ながら造形の不思議を想い自然の奥深さに感嘆しています。そして、それを感ずる自分がうれしい。だから伝えたい。
海谷渓谷の登山道を遡ると渓谷を横断する場所に出ます。そこにはまだ残雪が厚く積もっていて、崖の上部から崩れ落ちてくる岩や土の塊などで黒くなっています。雪渓が残る海谷渓谷
雪渓の下部で傾斜の緩い場所を歩いてみました。隣接する崖の上部から剥がれ落ちてきた土の塊がありそこには何種類かの植物が付いていました。雪が解けて運よく生き延びられる場所に定着できれば良いのですが、ほとんどはいずれ枯死する運命でしょう。2・3の塊についている植物を観てみました。羅列してみます。雪渓の上に転げ落ちた土の塊
雪渓上に落ちた土の塊に見られた植物をいくつかを羅列してみます。これはワレモコウ。渓谷の上部は頚城駒ヶ岳(1487m)をピークにした山塊です。その山塊が渓谷に面した崖の頂部が崩れてくるのだろうと思われますが、そこはそれほど海抜は高くはありません。雪渓上に落ちた土の塊に見られた植物①ワレモコウ
オオバギボウシです。崖にはよく見られる植物です。雪渓上に落ちた土の塊に見られた植物②オオバギボウシ
高山の湿原におなじみのヌマガヤです。雪渓上に落ちた土の塊に見られた植物③ヌマヤガ
セリ科のハクサンボウフウでしょうか?雪渓上に落ちた土の塊に見られた植物④セリ科植物
ハルユキノシタは糸魚川地内の低地の崖にもたくさん見られます。雪渓上に落ちた土の塊に見られた植物⑤ハルユキノシタ
葉の比較をしてみます。ヤマノイモ科のキクバドコロです。福島以南に自生する多年性つる植物。雌雄異株。ヤマノイモ科キクバドコロの葉
こちらは全国に自生していてごく普通に見られます。キクバドコロ同様食用には適しません。ヤマノイモ科オニドコロの葉
かなりの大木になります。全国的に見られる種でいろいろな活用がされています。建材や皮から繊維を取りだしてシナ布の原料になったりします。シナノキ科シナノキの葉
シナノキの仲間に県内にはオオバボダイジュが見られます。中部以北に自生する種で日本海側には多い種です。シナノキに比べ葉は大型で細かな毛が多いのも特徴です。シナノキ科オオバボダイジュの葉
雪国らしくハイイヌガヤも見られます。中越地域に比べれば個体数は少なく気づいたのはこの1ケ所でした。雪国に適応した種とされます。ハイイヌガヤ
ハイイヌガヤは雌雄異株の種。果実がみられました。じつはこれは昨年実った実でこの秋に熟します。ヤニくさいのですがしょくようになります。残念ながら私はまだ口にしたことはありません。ハイイヌガヤの果実
新葉が先端から出ています。このように毎年先へ先へと伸びていきます。葉先は尖っていますが柔らかくチャボガヤみたいに硬く尖っていないので痛くありません。ハイイヌガヤの葉
見慣れないセリ科植物のお出ましです。主に1000m以上の高山に時々見られる大型の種です。県内ではごく少ない採集記録しかなくほとんどが県境の高地です。糸魚川の海山渓谷の散策道の生育は少し特異な場所になるのでしょうか。出会った場所が渓谷の水が流れる近くでそそり立つ絶壁にも近いので上から落ちてきて生育している可能性もあります。オオカサモチ
細かく切れ込んだ葉が特徴的です。1-3回三出羽状複葉とされます。花はまだ先ですが大型の花序で圧倒されるボリュウムがあります。オオカサモチの葉
美しいシルエットです。1ⅿを超す大型のセリ科の種の葉とも思えないですね。オオカサモチの葉裏
セロリを連想するような茎の様子です。食用になるかもしれません。オオカサモチの茎
アカシデの大木です。県内ではアカシデに似たものにイヌシデがありますが、イヌシデは分布が限定され、県を三等分すると主に中央部に限られますが、アカシデは全県的に見られる種です。個体数が特に多いわけではありませんが、低山帯を中心に生育しています。アカシデ
花や果実の季節ですが、大木で足場も悪く近くに花や果実がありませんから、望遠で撮ってみました。鮮明でないのが残念です。アカシデの実
アカシデの葉は先が尖り基部が円くなるのが特徴です。アカシデの葉
イタヤカエデの大木があちらこちらに見られました。オニイタヤと考えています。個体によってはまだ花が見られたり種子をたくさんつけて中には落としているものもありました。オニイタヤ
雌雄同株の種で雄花と両性花が一つの花序に混在しています。オニイタヤの花
めしべにはすでに翼が見られます。オニイタヤの両性花
イタヤカエデの仲間には似たものが多いのですが、オニイタヤの葉は先端が鋭く尖るのも特徴の一つです。県内にはアカメイタヤという品種もあり新芽の赤い色が特徴ですが、オニイタヤにはそのような性質はないようです。オニイタヤの葉
場合によっては20ⅿを超すくらいの大木になります。県内の分布は特徴的で、糸魚川地域と阿賀野川沿いとそれ以北に見られ、中越地域は空白域になっています。オニイタヤの大木
糸魚川の海谷渓谷は低山に見られる種もありました。オオイワカガミは里山などの近しい場所によく見られる種ですが、ここにもありました。まだ残りの花がわずかに残っています。オオイワカガミ
高山にはイワカガミが自生しています。時折オオイワカガミかと思わせるような大型の葉を持つ個体もありますから、かなり連続的な分布をしているのかもしれません。低山里山で見るオオイワカガミは生育がよく花数がかなり多い個体がありますが、この個体の花数もそこそこの数はあるようです。オオイワカガミの花
傾斜地の一角にオオイワカガミの群落ができていました。しかし、見かけた場所は1ケ所でしたから広く普通に自生しているようではありませんでした。オオイワカガミの群落
カワラマツバが見られました。キバナノカワラマツバかもしれませんが県内で見ているようないないような種です。菅平や八方尾根などでキバナノカワラマツバを見てきましたから、標高の高い高原などの草地に見られる種という印象です。カワラマツバ
花は7・8月ころの種ですからまだつぼみさえ分からない状態ですが、なんとなくそれらしいふくらみが感じられます。カワラマツバの先端
アマナです。これは赤城山の北側の川沿いを走る道路わきで見つけたものです。群馬県内では山間の川沿いなどの湿潤地で時々見かける種です。新潟県内では出会ったことがないので自生していないものと思っていましたが、佐渡の外海府、寺泊、信濃川、阿賀野川沿いなどでかつて採集された記録がありました。アマナ
民家などがそばにあると栽培していたものが逸出したものではと考えてしまいますが、れっきとした在来種です。ユリ科アマナ属の多年草です。アマナの花
ヒガンバナのように細長い葉が根際から数枚出ています。ヒガンバナのように白い線ははいっていません。アマナの葉
湿原に向かう坂道にアズキナシがありました。低山帯の雑木林で見かける高木ですが、1200mほどの高所では少ない樹だと思います。風の強い場所のようで5・6ⅿくらいの樹高で主幹が少し斜めになっていました。アズキナシ
ナナカマドに近い種とされますがアズキナシ属というのがあるようです。白い小さな花が複散房花序を作り咲きます。赤い果実はあずきのようにも見えることからこんな名前がついたのでしょう。5月中下旬には咲きます。アズキナシのつぼみ
散策路の真ん中にオスがメスを抱え込んだアズマヒキガエルのカップルがいました。私の少し前には人があるいたはずですから、その直後草むらから出てきたのでしょう。それにしても、私の目の前では動こうとしませんでしたから両手で抱えて草むらに移しておきました。近くには水場などはなさそうな場所でこのカップルはこれから難儀するのではと心配しました。それにしても、オスの抱きかかえる力はすごいものがありました。アズマヒキガエル
ネコノメソウは全国区の山野草のようです。新潟ではよく群生しているところを見るのですが、井戸湿原では小さな群落になっている程度でした。まだ花がみられました。ネコノメソウ
まだ新鮮な花がありました。似たような多くの種がありますが、この種は雄蕊が4本という特徴がありますので、見分けは難しくありません。多くの種は8本の雄蕊があります。ネコノメソウの花
横から葉を見ました。対生する葉は毛がありません。そもそも生育が良くないのでぎりぎりの環境なのでしょう。ネコノメソウの葉
見慣れた「ような」ネコノメソウがありました。花の季節ではないので「ような」にしましたが、この大型なネコノメソウはホクリクネコノメソウかボタンネコノメソウしかないといわれています。ボタンネコノメソウは西日本に自生するものですし、この仲間はいずれも日本海側に分布する種とされますから、どちらかというと太平洋側になる井戸湿原に見られるのは果たしてどうなのでしょうか。ホクリクネコノメソウ?
花の後の果実がありました。この形質を見てもホクリクネコノメソウとしても問題は無いようです。ホクリクネコノメソウ?の果実
この大きめな葉の広がりはホクリクネコノメソウでよいのではと思います。いかがでしょうか。井戸湿原は海抜1200mを越す高地で積雪もある程度はあると思います。ここは日本海側の環境とかなり類似しているのではないでしょうか。ホクリクネコノメソウ?の葉
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