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嗣永シュウジの小説ブログ https://blog.goo.ne.jp/tsugunagashuto

主に女性目線の作風を得意としております。現実社会で生きる人たちのリアルを描写し、恋愛やミステリー的な要素を加えながら、オリジナルの話を作っております。

嗣永シュウジ(つぐなが しゅうじ)です。主に純文学の小説を書いております。

嗣永シュウジ
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2016/02/02

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  • 『凍える愛情』 XXI

    とつぜんの悲鳴に、思わず振り返ると、視線の先で二人の男性がコート上で蹲っていた。濡れた芝生の上で、ピクリとも動かない男性の周りに、異変に気づいた周囲の客が集まり、「おい、大丈夫か?」「ちょっと、しっかりしてよ!」「おい、立てるか?」など、思い思いに声を掛け合っている。ただそのどの声にも、全く反応が見られない。次第にその動揺が、こちらのコートにまで伝わって来る。気がつくと、いつの間にか、こちらのコートで試合をしていたはずの男性陣も、プレーを中断し、その光景に見入っていた。ざわつき出す向こう側のコートとは反対に、こちらのコートは徐々に静まりかえっていく。「おい!救急車呼べ!救急車!」向こう側のコートの利用客の一人が、そう叫び声を上げると、その声に反応したチームメイトの一人が、すぐに事務所のあるプレハブ小屋へと駆け込...『凍える愛情』XXI

  • 『凍える愛情』 XX

    その日の昼休み、久しぶりに都庁前の公園まで足を伸ばした。事件の影響もあり、どこか街全体が、物々しい雰囲気が包まれているように感じられ、通りを行き交うその誰もが、もしかすると事件に関わっているのではないかという、いらぬ想像が膨らんでしまい、その警戒心からか、ついからだに不自然な力が入ってしまう。さすがに都庁前の公園まで足を伸ばすとなると、時間が掛かるため、昼食はコンビニでサンドウィッチを買って軽目に済ませた。公園をショートカットしようと、北通りに面した交番脇の入り口から園内に入ると、敷地内に入るなり、とつぜん笛を鳴らされ、4、5人の警官に呼び止められた。「ちょ、ちょ、ちょっときみ!」「は、はい?なんですか?」「なんですか?じゃないですよ」「へ?」「ほら、ここ書いてあるでしょ」警官の指差すほうへ視線を向けると、『現...『凍える愛情』XX

  • 『凍える愛情』 XIX

    翌日、寝癖のついたままの頭で出社すると、貴和子さんから、「あれ?髪どうしたの?」と出迎えられた。少し早起きして、ブローし直すつもりが、前日に無駄に夜更かししてしまったせいで、結局寝坊してしまい、まともに髪をセットする暇もなかった。ヘアバンドで纏めたままの癖が髪についており、えらく毛先が爆発している。一応、市販の寝癖直しで、誤魔化してきたつもりだったのだが、誤魔化すどころか、より悲惨なヘアスタイルに仕上がってしまってしまい、何もせずヘアバンドで括ったままにしておいたほうが、まだマシだった気がしないでもない。「あ、もう、これは、そっとしておいてください……」私が切実に訴えると、「いや、変とかそういう意味で、言ったんじゃなくて……」と、慌てて貴和子さんがフォローする。「……」不満そうに私が見つめると、「いや、かわいい...『凍える愛情』XIX

  • 『凍える愛情』 XVIII

    あかりに誘われて、最初に新田くんを連れて行ったフットサル場は、午後から降り出した雨で、人工芝が濡れており、あまりコンディションは良くなかった。芝生の上を走る男たちが、ボールを奪い合う度に、霧を吹いたような、水しぶきが上がる。汗臭さの混じった潮風が、フットサル場の湿った人工芝を撫でて、剥き出しの足首にまとわりついてくる。湾岸沿いの倉庫街の一角にある立地上、基本的には屋外のグラウンドは常に強い潮風に曝されている。防護用のネットで覆われた粗末な作りの休憩スペースには、風除けのような気の利いたものはなく、じっとしていると、一段と寒さが増してくる。休憩スペースのベンチに座ればいいのだが、その唯一のベンチは、すでに隣のコートで試合を観戦している女子グループに占領されており、後から来た私たちは、地べたに座らざるをえない。仕方...『凍える愛情』XVIII

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