主に女性目線の作風を得意としております。現実社会で生きる人たちのリアルを描写し、恋愛やミステリー的な要素を加えながら、オリジナルの話を作っております。
嗣永シュウジ(つぐなが しゅうじ)です。主に純文学の小説を書いております。
翌日会社に行くと、貴和子さんの旦那さんが、出張先の京都で買ってきたというお土産を渡された。「はい。これ、千重ちゃんの分……」「え?先輩、どこかに行かれたんですか?」出社早々、お土産の入った紙袋と手渡され、反射的にこちらが聞き返すと、貴和子さんも理解するのに少し時間がかかったようで、少し間を置いてから、「あ〜!」と、手を打って納得する。「何言ってんの、私じゃないわよ!うちの旦那!しばらく京都に出張で行ってたから、そのお土産……」「あ〜、そういうことですか!え?でも、いいんですか?」「え?いいもなにも、うちの旦那が、あなたのために買ってきたもんだからね〜」「あ、なんか、わざわざ、すみません……」ひとまず、そう謝罪のようなお礼をし、素直に手渡されて紙袋を受け取った。用が済んだらしく、一度は自分のデスクに戻ろうとしてい...『凍える愛情』XXVI
都庁前の公園に足を運んだ夜、久々に実家の母から電話があった。電話の内容としては、「最近、全然連絡して来んけど、元気しとうとね?」とか、「ちゃんとご飯は食べようとね?」とか、いつも電話をかけてきたときに、挨拶代わりに訊いてくるとような、他愛もない内容だったのが、ここ最近、私の周りが立て続けに結婚している影響もあり、結婚絡みの内容が、徐々に増えてくるようになった。「あんたも、もう、三三なんやけん。そろそろ結婚とか考えないかんよ!」「ちょっと待って、お母さん!その前に、私、まだ三二やけん!」「あら?そうやったね?一歳くらい大して変わらんやないね……。それよりあんた、いつまでものんびり構えとったら、三〇代なんて、あっという間に終わるけんね。あんたさえいいなら、私が人肌脱いでもいいやけん。なんなら私の知り合いの人に、ちょ...『凍える愛情』XXV
彼氏の車で来ていたあかりとは別れ、新田くんと二人、駅までの道のりを歩いた。吹きつける潮風が強く、体感温度は実際の気温より寒く感じられた。「今日は、わざわざ参加してくれて、ありがとうございます……」そう呟いた私の声が、前を歩く新田くんの背中にぶつかる。どうやらよく聞こえなかったらしく、新田くんが、「え?」と、首だけでこちらをふり返る。「いや、今日は、ありがとう……」今度はタメ口で言い直してみて、妙に気恥ずかしくなり、「って、あかりが言ってましたよ……」と、とっさにつけ加えた。次はちゃんと聞き取れたようで、「ああ、べつにいいですよ……」と真顔で答えて、「どうせ暇してましたから……www」と、ふざけたように悪態をつく。「いや、でも、運動とか結構久しぶりだったんで、もうだいぶ脚とか強張ってますよ。やっぱ、たまには運動し...『凍える愛情』XXIV
実際、男たちの練習が終わったのは、それから一時間ほどあとのことで、時刻はすでに二二時を回っていた。救急隊が去ったあと、しばらくはパス回しなどの練習を行っていた、隣のグループの若者たちはというと、先ほどのアクシデントのせいで、その練習にすらあまり身が入らなかったようで、三〇分もしないうちに、早々と解散してしまった。思い掛けずコートの片側が空き、全体の人口密度が少なくなったお陰で、ようやく風除けのある中央のベンチに座ることができ、快適とは言えないまでも、雨に濡れた芝生の上に長時間座らせられているときよりは、ずっとマシで、冷たい潮風に晒されながら、男たちの試合が終わるのを、じっと待たされているときに比べたら、よほど天国みたいなものだった。男たちが練習を終わるのを待ってるあいだ、途中、何度かホットココアなどの飲み物で、...『凍える愛情』XXIII
「今日の人たち大丈夫かな?」まだ着替えを済ませていない男子連中を待ちながら、あかりと二人フットサル場のロビーに、設置されていたテレビ画面に流れていた『スペースシャワーTV』の映像を、見るともなく眺めていると、隣に居たあかりが、そう私の顔を覗き込んでくる。「あ、うん……、そうだね。大丈夫だといいけど……。てか、怪我人が二人いるときって、ちゃんと救急車も、二台来るんだね……」「あー、そうそう!それ、私も思った!ふつうに生活してて、まず救急車とか呼ぶことないじゃない?てっきり、最初の一台で、二人とも運んでくんだと思って、なんとなく見てたけどさぁ〜、あとから、ちゃんともう一台来たから、『ああ、こういうときって、救急車も二台来るようになってるんだぁ〜』って、ああいうときに、不謹慎なのかもしれないけど、そっちのほうに目が行...『凍える愛情』XXII
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