前回の投稿から暫く離れてしまいました最近ではボーイズラブのドラマも人気の様で、アイドルの様な美麗な男性が主役をされていますね人気俳優への登龍門的な要素もあるのでしょうか (仮面ライダーに継ぐ?)ドラマはコミックが原作のものが多く、私も読ませて頂いていますのでドラマもたまに観ますコンプライアンスがあるので公共電波では表現が狭められてしまいますよね個人的にはもっと攻め込んでほしいものですが・・・・中...
R18有。切ないけど楽しい物語。同級生、リーマン、日常系のお話です。
オリジナル小説・イラスト・漫画など 何でも思うまま創作中
「そういや腹は減ってないのか?」 黒田がテレビ画面をじっと観る岸に訊ねると、視線を寄越した岸が「塾の始まる前に食ったから、減ってないかな。あ、アイスなら食べたいけど」と白い歯を見せて云う。「じゃあ待ってて、持ってくるから」「うん、悪いな」 リビングを出るとキッチンに向かう黒田。 ふと自分の部屋のドアに目をやれば、中から音楽が聞こえるが、それと同時に喘ぐ声も漏れ聞こえる。冷凍庫からカップアイスを取り...
シャクシャクと、持って来たリンゴを頬張りながら、岸は椅子の上で胡坐をかく。 親に対して失礼な態度を取っているのは重々承知だが、あの空気の中に居るのは居たたまれない。妻の顔色を窺う父親と、自分の事以外には関心のない母親。岸に対しても、成績で他の人より勝っている事が大事で、人から後ろ指を指される事などもってのほか。自分の家族は特別だと、多分疑いもなく育ってきたのだろうと思う母に、父親の事や黒田の事を...
岸が自宅に戻ると、父親の車が車庫に入っているのが見えて、急いで玄関の扉を開けた。 丁度、家政婦の女性が玄関で父の靴をしまっている所で、岸の顔を見ると「お帰りなさい、今お父様が帰って来られたところですよ」と云う。岸は「そう」とだけ云って、自分も靴を脱いであがって行った。 キッチンでは料理が準備されていて、食卓に運ぶだけになっている。それを覗き見ながら岸は自分の部屋に行こうと階段を上がりかけた。「聡...
暫く岸と千晶と黒田の三人で話しをしていたが、あまりにも岸が千晶の兄の正美を話題にするので、部屋の空気は気まずくなってしまい千晶は帰ると言い出した。 時計を見ればもう夕方だし、そんな時間かと岸も黒田も見送る事にする。 岸が千晶に好意を寄せている事は分かるし、黒田もせめて気持ちだけは通じればいいと、帰り際に「岸と付き合ってやってよ」と、気軽に云ってしまった。まさかその言葉が引き金になるとは思わずに、...
腹が空いたという岸の為に、黒田はキッチンに行くと棚からホットケーキミックスの袋を取り出す。 普段なら焼きそばとか、ラーメンとかを作るところだが、千晶がいるので甘いものでも、と思ったのだ。ちょっとカッコつけたかったのかもしれない。千晶の見た目からして、スイーツは似合いそうだった。 リビングに居る岸と千晶の声が少しだけ聞こえてくると、黒田は自然に聞き耳をたてる。あの二人が何を話しているのか気になるし...
この日、バイトが休みで家に居た黒田は、久々に母の店の開店準備を手伝っていた。 中学の時に自分の父親の存在を知って、それが岸の父だった事で酷く落ち込んだ時期もあった。知らなければ岸とも普通に友人として付き合えただろうに、変に血の繋がりがあると分かってからは、何かにつけて岸を甘やかしてしまう気がする。たとえ半年でも自分の方が兄になると、庇護欲の様なものが湧いてしまう。それに、岸は一緒にいて楽なのだ...
翌日、昼からバイトをこなした黒田だったが、終わるや否や岸が塾の時間まで一緒にゲームセンターに行こうと誘ってきて、仕方なく連れだって行く事にした。本当は家でゆっくり寝たかった。岸を泊めて、なんとなく考え事をしていたせいか少し寝不足の様だ。「お前さ、今日は塾終わったら家に帰れよな」 黒田がそう云うと、岸は「なーんでよ、冷たいじゃん」とくちびるを尖らせる。「俺の服着てるし、せめてパンツぐらいは自分の持...
翌朝、少し早く起きた黒田は、隣で眠る岸の顔をそっと覗き込んだ。 昨夜は酷い事を云ってしまったかもしれないと、心の中で、すまない、と謝る。岸が千晶を好きだという気持ちに嘘は無く、自分は応援した方が友達としてはいいのかもしれない。だが、どうしても素直に応援できないでいる。 女と適当に遊ぶのとは違い、よりにもよって同性の中学生の男子に恋をするなんて、黒田からしたら青天の霹靂だ。本当は岸に諦める様に云っ...
エアコンを25℃に設定して布団を被ると、黒田は横を向いて寝る。 ベッドはダブルなので、二人で寝ても余裕はある。今まで西岡や沢口も泊ったりした事があり、寝相が悪くない限りは朝までぐっすり眠る事が出来た。 岸は風呂から出ると、黒田に借りた服を着て髪の毛を乾かすと部屋にやって来た。 既に壁の方を向いて寝ている黒田を気遣ってそうっと布団に入って来ると、背中を向けて横たわる。 まだ眠いわけではないが、電気を...
キッチンの方からいい匂いが漂ってくると、リビングに居る岸はニヤリと口角を上げる。 この匂いはラーメンだ、と想像しながら待っていると、黒田が盆の上に器と水の入ったボトルを乗せて部屋に戻って来た。「美味そうな匂い」 岸は、待ちきれない様に覗き込むと、テーブルに置かれた器を両手で持って舌鼓を打つ。もやしとキャベツが乗ったしょう油ベースのラーメンに、半熟のタマゴがおとしてあり、チャーシューの代わりにハム...
* * * その夜は蒸し暑さがピークで、黒田は夜にバイトが終わると、急いで帰宅し速攻でシャワーを浴びた。 先日、店に岸たちがやって来たが、3人はカラオケに行くと云ってそのまま帰って行き、黒田は自宅で静かな夜を過ごし、この日もひとり静かに映画でも観ようと思っていた。 髪を乾かしながら、冷蔵庫から水を取り出してリビングのテーブルに置く。ペットボトルの蓋を開けると一気に半分ほどを飲んでしまい、ふぅーっと...
夏休みに入ると黒田はバイトに精をだし、岸は親の勧めで塾に通う事になる。 自分がいなくても勝手に家に入っていいと云ったが、岸は流石にひとりで居るのがつまらなくて、夏休みに入ってからは来る事が減った。それに塾の時間が夕方なので、黒田と時間が合う時にだけ来る様になった。 この日は、黒田が昼のシフトに入っていたので、岸は沢口と西岡を誘って黒田のバイト先であるファミレスにやって来た。 人の事は言えないが、...
夏の陽射しが強くなり、通学途中は汗を拭うのも面倒で、早く夏休みにならないかと思う毎日。 黒田と岸はいつもの様に二人で校舎を後にすると通学路を進んで行く。今日は近くの喫茶店に寄って涼んで行こうと思った。「沢口はデートで待ち合わせって云ってたから、あそこの店にいるんじゃねぇの?」 岸が黒田に云うと、「じゃあ店変える?」と訊く。沢口がいると他の女子を呼びそうで面倒だった。「あッ」 岸が黒田の顔を見るで...
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前回の投稿から暫く離れてしまいました最近ではボーイズラブのドラマも人気の様で、アイドルの様な美麗な男性が主役をされていますね人気俳優への登龍門的な要素もあるのでしょうか (仮面ライダーに継ぐ?)ドラマはコミックが原作のものが多く、私も読ませて頂いていますのでドラマもたまに観ますコンプライアンスがあるので公共電波では表現が狭められてしまいますよね個人的にはもっと攻め込んでほしいものですが・・・・中...
「聡くん、東京に行っちゃうのねぇ、寂しくなるわね」 店の準備のために部屋を出るところで母のアケミがポツリと云う。 リビングのテーブルで昼食を食べていた黒田は、そんな言葉に振り向くと「岸だけじゃないよ、俺の仲良かった奴らは殆ど地元から離れて行く」と、箸を持ったまま呟いた。分かっている事でも、こうやって口に出してみると、心の中にぽっかりと穴が空く様だった。 「康介が此処に居てくれて、母さんは嬉しいけど...
卒業式当日。まだ少し肌寒い朝、着慣れた制服に袖を通すと、少しだけ感慨深い。この制服を着るのも今日で終わりだ。 卒業式を行う体育館に集まると、クラス別に椅子に座って前を向く。壇上では校長が卒業生に向けての言葉を手向けているが、黒田はそれを聞きながら特進科に居る岸の姿を探した。朝はクラスの連中と話していて、岸とは挨拶を交わしただけ。 ふたつ離れた列の少し前に居た岸の後ろ姿に、遠くから視線を送ると、ふ...
-----------------3月 予定通り、岸と西岡の合格発表があり、4人は互いの合格を祝い、そして明日の卒業式を迎える前にパーティーをしようと集まった。 場所は良く通ったカラオケボックス。それぞれに飲み物や料理を注文すると、沢口がひとりマイクを持って立ち上がった。「えーっと、ひとまずみんなお疲れ様!みんな進学出来て良かった!!って事で、カンパイしようぜ」 沢口に促されて、それぞれが椅子から...
怒涛の年末年始が過ぎると、すぐに岸や黒田たちは受験を迎えた。 結局、あの日以来黒田と岸が二人きりになる事はなく、互いを気に掛けつつも高校の3年間を終える日は迫っていた。既に進学が決まった者や就職の決まった生徒は、残った時間を楽しもうと旅行の計画を立てる者もいる。 黒田も専門学校への入学が決まり、バイトは少し日数を減らす様にしていた。「みんなバラバラになっちゃうの寂しいなぁ」 授業が終わりいつも...
3人掛けのソファーの上、いつしか黒田が岸の上に乗る形で抱き合うとキスを交わす。張りのある岸のすべすべの頬を愛しそうに撫でる黒田。こんな風に岸の肌に触れるのは初めての様な気がする。多分。いや、プールでふざけ合って触れてしまった事はあったか。 そんな事を考えながらも、黒田の手は頬を撫でたり首筋を這ったり。唇はゆっくりと感触を確かめるように重ね合わせた。 向きを変えようと、黒田が身体を捻った時に太腿が...
静かな空間で対峙するふたり。岸は少し泣きそうに眉根を下げている。「............なんでそういう事云うんだよ。オレの家が裕福だから自由だって云いたいのか?」「少なくとも、俺よりは。俺はバイトが無きゃ進学も出来ないし、遊びに付き合うのも金のかかる遊びは出来ない。今までは母さんが不自由のない様にと無理してくれてただけだ」 そう云うと、黒田は下を向いた。こんな話をするのは多分初めてだ。岸たちと遊ぶのは、バ...
突然の岸の言葉に、黒田は首を傾げる。「報告って?」「オレさ、東京に行くって決めて住む所とか検索してんだけど、なんか、そしたら急に黒田のいない生活が怖くなっちゃってさ」 そう云った岸の表情が、今まで見た事のない不安そうなもので。黒田は一瞬相槌をためらった。「なあ、黒田も東京の専門学校を受けない?受かったら一緒に住もうよ」 唐突な話に黒田の思考は停止する。「..............は?何云ってんだ?」「オレに...
久しぶりに岸と西岡、沢口が黒田のバイト先にやって来た。世間はクリスマスイベントに浮かれ、大学受験を控えた者たちは浮かれている場合ではない。が、息抜きの為か、沢口が岸と西岡を誘ったらしい。「学校で顔合わせてたのに、なんかすっごく久々に顔見た感じ」 沢口はテーブル席に腰を下ろし、黒田に向かうと云った。続いて西岡が、「黒田は岸とは会ってたんじゃないの?」と訊ねたが、岸も黒田も互いに首を振ると「休みに入...
* * * 木枯らしが吹き荒ぶ季節。冬休みに入ると、いよいよ岸も受験を間近に控えて遊んではいられなくなった。 黒田は年末年始に向けてバイトも忙しくなり、前ほど岸たちとつるむ時間はない。ひたすら自分の時間はバイトに費やしていた。「黒田くん、大晦日もバイトに入れるかな?出来たらお願いしたいんだけど...」 申し訳なさそうに、店長がスタッフルームに入って来た黒田の顔を見る。「予定はないので、別に構わないで...
翌日、黒田と岸が登校すると、3年生の昇降口に正美の姿が見えて、一瞬岸の足が止まった。「......藤城?」と、黒田が岸に聞こえる声で云ったが、また歩き出した岸は真っすぐに正美の正面に進んで行った。「おはようございます」と、岸の顔を見て云った正美。何処か強張った表情ではあったが、眼差しは真剣だった。「おはよう」と答える岸に、正美が頭を深く下げると「昨日は殴ってすみませんでした」と謝る。素直に謝罪の言葉を...
翌朝、黒田は早めに起きると、岸の為に朝食を用意してやった。まだ鼻の辺りが痛そうで、あまり咀嚼しなくても良いものをと考えて、コーンスープとスクランブルエッグに小さめのパンケーキを焼く。 作りながら、昨夜の言葉を思い出していた。おもわず岸の事を好きだと言ってしまったが、その感情が普通なのかどうか、自分ではよく分からない。ただ、岸と離ればなれになるのが怖い様な気がした。異父兄弟で親友で、誰よりも岸を理...
ベッドの中で、岸は眠れずに携帯画面を眺めていた。色々な動画を目にすると、時間は知らず知らずのうちに流れていく。「痛むのか?」と、背中合わせになった黒田に訊かれ「少しだけ」と答える。 痛みは随分と引いた様に思うが、表情を変えると鈍い痛みが走る。ずっと冷やしていたから腫れは大分よくなったが、鏡を見るのがちょっと怖い岸だった。「どうして、わざわざ藤城に弟との事話したんだ?別に黙ってればよかったんじゃな...
鼻を押さえる岸は、バスの中で目立っていた。高校生が多く乗り込むバスの中で、チラチラと岸の方を見る視線が痛いのか、吊革につかまっている岸が黒田の背中に顔を隠す。 暫くして停留所に着くと、急いでバスを降りた。漸くホッとしたのか、岸は押さえていたタオルを離すと「タクシーで帰ればよかった」とふて腐れた様に呟く。 黒田の部屋に辿り着くと、早速着ていた制服とジャージを脱ぎ捨てて、前に自分が寝泊まりする時の為...
鼻を押さえながら、保健室に向かう岸と黒田。 正美は教師に連れられて職員室の方に向かって歩く。その姿を振り向きながら見る黒田は、隣の岸に「お前、藤城に話したのか?弟の事」と小声で訊ねた。「........うん、千晶くんの事ごめんねって云った。そんで、やっぱり女の子とは違うから、最後まではしてないよって云おうとしたんだけど、途端に殴られた」「...........そりゃあ、殴られるわ。.........藤城の顔見ただろ?鬼の形...
なんとなく浮かない顔のまま、翌日黒田は岸のクラスを訊ねた。特進科の生徒はいかにも勉強熱心な顔をした者ばかり。その中で、見た目派手な岸の姿は浮いていた。だからなのか、教室を覗けばすぐに岸の姿は見つけられる。「岸、帰ろうか」 黒田が教室に入って行けば、周りの生徒がチラチラと黒田に視線を向ける。岸とのバランスが悪いのは昔から。対照的な風貌のふたりが親友同士だとは思われないだろう。それでも、この3年目に...
夏休みも終わり、いよいよ大学受験を控えている岸や西岡たちは、勉強のために塾へ通う頻度が増えてきた。 黒田の部屋に集まってバカ騒ぎしたり、ナンパしてきた女の子と遊ぶ事も減って平和な毎日を過ごしていた黒田だったが、相変わらずバイトは続けていた。岸たちと遊ぶ時間が減れば、自ずと散財もしなくなる訳で、正直このままいけば学費の足しにはなると思っていた。 この日、黒田はいつもの様にバイトを終えて家に向かう途...
岸が「千晶くん」と呼んだので、西岡たちも千晶の方に顔を向けた。 千晶に駈け寄って行った岸が、何やら話しているが、黒田から見るとあまり気乗りしていない様子で、岸が無理強いしているのでは、と思う。案の定、岸は千晶の肩に手を置くと、黒田たちに向かって「オレ、千晶くんと一緒に行くからー」と嬉しそうに声をあげた。 野次を飛ばす沢口や西岡たちを無視するように、千晶と連れだって神社に向かって歩く岸を黒田は少し...
ある日、沢口からメールを受け取った黒田。 暫く顔を見せていなかったので、てっきり彼女と上手くやっているのかと思えば、早々に別れたらしい。「なあ、黒田の家の近くに神社があるだろ?あそこで祭りをやってるらしいんだけどさ、遊びに行かないか?岸と西岡も誘ってさ」 メールの後に電話を貰うと、沢口は云った。いつもの様に軽い物言いで、またナンパ目的なのだろうとは思う。「俺のバイトが終わってからならいいけど」「...
なんとなく、ぎこちないままゲームを続けていると、西岡がリビングのドアを少しだけ開けて顔を出した。 ドアが開いたのでそちらに視線をやった黒田に、「悪ぃけど、ゴムある?」と小声で訊く西岡。岸もおもわず視線をやったが、黒田は平然とした顔で「ベッド横の引き出しの一番下」と云う。「悪ぃな。サンキュー、あと30分ガンバル」 西岡はニッコリと笑って扉を閉めた。 岸はゲームの手を止めると「黒田もゴムなんか用意して...
千晶の受験勉強は、京子が思う様に進んでいなかった。それが分かったのは、塾から保護者に宛てた試験結果。桐島高校に合格するには、塾で行なう試験があって、一定の成績をとらないと難しい。昨夜、その封筒に入った結果を見た京子は肩を落とした。「千晶はちゃんと勉強していると思ってた。夏休み中も休まず塾に通ってたし.....」 二階から、水を飲みに降りて来た千晶に封筒を見せながら京子は云った。表情は至って普通。悲し...
千晶の異変に気付いたのは、夏休みが終わり二学期が始まってすぐの事。正美の部屋にも時々来る事はあり、正美はあの夜の事がトラウマの様になっていて、千晶に触れる時は細心の注意を払っていた。でないと、容易に壊してしまいそうで怖かった。 その晩も、千晶は正美のベッドに潜り込んでくると、性急に身体を求めて来た。そして、いつもの様に優しく触れる正美に対して、急に上体を起こすと「正美は俺の事負担に思ってるんだ...
夏休みも終わりに近づくと、課題を仕上げる為に午前中は自室に籠っている千晶。父の言葉を聞いた次の日に、それとなく謝る様なメッセージをもらい、かえって煩わせてしまったと思う千晶だった。あれから夕飯は自分と正美の分しか作らなくなった。母の京子に至っては、父とのやり取りを知る術もなく、相変わらず仕事に没頭する毎日で、子供としては両親の仲が心配になる。「ねえ、最近お父さんと母さん、ちゃんと会話してるのかな...
どうしても、父拓真の云った言葉が気に入らない正美は、部屋のドアをノックすると「入るよ」と云ってドアを開けた。「どうかしたか?」と、風呂の準備をしていた拓真が、着替えを手にして正美を見たが、その表情はあからさまに不機嫌そうで、すぐに今しがた自分が云った言葉のせいだと分かる。「父さんさぁ、千晶がせっかく料理を頑張ってるのに、あんな言い方は酷いよ。二人が遅くなるのは承知で、ちゃんと保存できるようにして...
ご飯を食べな がらの会話はいつもと変わらない。千晶は勉強で難しいところを正美に訊くし、正美はバスケで練習試合をした事やポジションが変わった事を話す。変わり映えしない話でも、食べながらのものはそれだけで楽しいと思えるし、食も進んだ。「洗い物はオレがするから、千晶はリビングでゆっくりしな」 立ち上がると、正美がそういうので、ありがとう、と云って千晶は自分の皿を渡すとキッチンから出た。 本当は正美の方...
今夜の夕飯は、簡単に冷やし中華を作って食べる事にする。キュウリやトマト、ハムに玉子を刻んで用意しておくと、後は麺を茹でるだけ。冷蔵庫にしまって、正美が帰ってきたら準備すればいい。 取り敢えず、先にシャワーを浴びる為に浴室に向かう。身体を洗いながら、最近正美に触れられていないせいで、性欲が溜まりつつあるが、それを自分で処理する気にもなれなかった。 簡単に済ませると、浴室から出て髪も乾かさないままキ...
あの夜から一週間、正美が千晶に触れる事はなかった。部活が始まると、疲れを理由にひとりで眠りたいといい、正美は千晶を遠ざけた。二人の間には、なんとなく共通して戸惑いがある。一線を越えて、繋がりたいという気持ちと同じくらい、どうなってしまうんだろうかと、不安もあった。それを払拭できないまま、取り敢えず夜は離れて眠る事にした訳だ。 千晶は、塾の帰りにバス停で岸に出会うのではないかと、気まずさも抱えなが...
ベッドの淵に腰を掛けて、見下ろした先に千晶の揺れる頭部が見える。そして時折見え隠れする自分の硬芯が、千晶のくちびるに飲み込まれると、腰のあたりが疼いてしまい力が入った。「ぁあっっ、..........」と、低く呻いてしまえば、チラッと正美を見上げる千晶の眼差しが、胸を射貫くように熱い。正美が感じているのかを確かめるように、何度も見上げられて、遂に正美の手は千晶の頭を押さえつけた。 吸い付かれて、その度に力...
必死に抱きついてくる千晶が可愛くて。 正美は、指先を丁寧に蠢かせ、出来るだけ痛くない様に孔を刺激する。本当は、自分の滾ったものをそこに捻じ込みたくて、でも、傷付けてしまうのが怖くて、勢いに任せてし始めた事を少し後悔した。前を扱きながら孔に入った指を少しづつ奥に進めると、急に千晶の身体がビクンと跳ねた。同時に、ひぁぁっ、と変な声が耳元で聞こえて、驚いた。「ど、どうした?」と、千晶の顔を覗き込むと、...
正美にキスをされて、そのまま後ろを弄られて、前に自分で慣らそうとした時には、指一本の先っぽがせいぜい。それも異物感がハンパなくて、諦めてしまった。なのに、今はキスをされているせいか、興奮状態だからなのか、あまり不快感は感じなかった。むしろ、ちょっと気持ち良かったりして、頭の奥がぼんやりしてくる。「ぁ、.......まさみ、ぃ...............」 息継ぎをした時に、思わず声が漏れてしまい、それが正美を奮い立...
ベッドに横たわりながら、正美は帰りに出会った岸の姿を思い出していた。あの表情を思い出すと、胸のあたりが苦しくなり、益々千晶を閉じ込めておかなくては、と思ってしまった。閉じ込めるなんて出来る訳がないのに.....。 千晶に、岸と会うなと云うのは、底意地が悪いと思われてしまうかも。でも、云わなければ千晶は簡単に岸の手にかかってしまいそうで。それだけは回避したかった。 沸々と思いを巡らせていると、ドアが開...
その夜、両親の帰りはいつも通り遅くて、千晶は正美の後にシャワーを浴びようと、リビングで待っていた。 テレビの音声を聞きながら、視線は携帯の画面に向けられている。祭りで久々に出会った吉村からメールが来ていて、それに返信をするが、内容は今日紹介された年上のカレシの惚気に対してのもの。ボーイズラブの漫画を借りてから、何度か行き来はあった。その頃は、まだカレと出会っていなくて、何なら千晶に好意を寄せてい...
人通りの少なくなった道で、腕を掴まれたままじっと黙っていると、そのうち家の方に向かって歩き出す正美に引っ張られる千晶。 肘の上あたりをグッと掴まれて、段々痛くなってきた。なのに、一向に掴んだ手を離さないので、千晶はとうとう声をあげると、離してよ、と云った。 フッと千晶に振り返り、漸く正美が手を離す。「痛いんだよ、力任せに掴んでさぁ。折れるかと思った」 そう云うと、腕を擦って見せる。「.....ごめん...
正美と岸の間に不穏な空気が漂い、千晶はおろおろとするばかり。 自分たちが血の繋がった兄弟でない事を岸が知っている。その事で、正美は千晶の顔を見ると、「お前が話したの?」と訊いた。「あ、......ごめ、......でも、別に隠す事じゃないし」 千晶は、正美に鋭い視線を向けられて、うわずった声で云った。別に、小学生の時からの友達や同級生には知られている事だ。頑なに隠す必要はないと思っていた。 岸は、尚も正美に...
正美の言葉に傷ついた千晶は、頬を膨らませたままどんどん先を歩いて行く。「ちょっと、千晶、、、、」と云いながら困り顔の正美。千晶の後を付いて行くが、その内諦めてゆっくり歩き出した。 千晶を弟と云ってしまった事で気を悪くしたのは分かっている。だが、事実だし、自分としては弟の千晶を好きになってしまったので、それは分かって欲しいと思う。 千晶の背中がどんどん遠ざかって、振り返りもせずに歩き続ける姿を見る...
雑踏へ戻って、飲み物の屋台を探す。プラスチックの容器に入った色とりどりのジュースが、南国を思わせるイラストの台の上に並んでいて、千晶はじっと物色しながら歩いた。可愛い形をしたストローが刺さっているのは、値段も高くてちょっと買うのをためらう。 少し歩いて他の屋台を探すが、ほとんど似たようなものばかり。かといって、自販機も近くには無い。仕方なく、戻りながら最初の店のジュースを買おうと、店の前に並んだ...
夏休み中、千晶たちの両親は何故か仕事に追い立てられている様で、相変わらず子供たちだけでの時間を過ごす事となった。 正美は、父と母が言い合いをしているのを聞いてしまって、それを千晶に云えないままいる事で、気持ちはとても複雑だった。「まあ、毎年こんな感じだよな」と、諦めた様な言い方の千晶に、正美も「そうだな」と同意するしかない。「おばあちゃんの家に行ってみる?」 正美がそう云ったが、千晶は祖母から旅...
塾の帰りに岸と出会う事が多かったせいで、千晶はバス停に着くと辺りを見回した。前回来た方向には見当たらなくて、少しだけ安堵する。 岸の事は別段嫌いではないし、センパイとして優しく接してくれるので、そこは有難いと思う。が、付き合うという事とは別だ。岸が、同性との付き合いを良しとする人種なのが分かって親近感を覚えたが、自分に矛先が向けられると曖昧な返事は出来ないと思う。それに、自分は正美以外の男を大事...
朝も早いというのに、セミの鳴く声で目覚めた千晶は、隣でうつ伏せのまま眠る正美の肩を揺する。「正美、起きなよ、部活行くんだろ?」 声だけ掛けると、自分は正美の身体を跨いでベッドから降りた。脱いで床に落ちたままのTシャツを被ると、ハーフパンツを穿いてもう一度正美の顔を見る。「おい、俺下に行くから、ちゃんと起きなよね」「.......う~ん、分かったぁ」 寝惚け眼を擦りながら、そう云って枕に突っ伏した正美。 ...
父の事が心配なのに、ふたりでベッドに入ってしまえば、火が付いた様に抱き合う千晶と正美。 互いにヌき合うと、大きく深呼吸をして正美は立ち上がった。「喉渇いたから水取って来る」 そう云って、Tシャツを着て、部屋から出て行く正美の背中を見送りながら、千晶は頭の片隅にしまった岸の言葉を思い出す。 階下に降りて行った正美は、リビングから両親の声が聞こえたので、声を掛けようと近寄って行ったが、なんだか声の調...