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ittiのBL創作小部屋 http://itti57.blog.fc2.com/

R18有。切ないけど楽しい物語。同級生、リーマン、日常系のお話です。

オリジナル小説・イラスト・漫画など 何でも思うまま創作中

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2016/01/12

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  • ほどける指先 203

    千晶と正美が二階の自室に戻ると、拓真と京子はリビングで話し合いを始めた。流石に子供の前では離婚についての話し合いは出来ないだろう。互いに相手の事は認めつつも、夫婦としての生活を続けるには精神的な鍛錬が必要だった。家庭的な事よりも仕事重視のふたりにとって、家に帰る度に自己嫌悪に陥り、心の中では家族に申し訳ないと思いながら暮らしていく事は負担でしかなかった。 さて、離婚する事は決めたが、時期は決めか...

  • ほどける指先 202

    夕飯は気まずい雰囲気の中で摂ったが、京子は正美を追求する事もなく静かに過ぎていった。 寝る前に、それとなく千晶に訊いてきたが、千晶は「正美が殴るなんて、よほどの事があったんだろ。俺は正美を信じるよ」と云うと、京子も、そうね、と云って自分の部屋に戻って行った。 翌日からは、また日常の生活に戻り、千晶も塾に通うと勉強にも力を入れる様になる。岸の事は、なんとなく自分の中に仕舞い込んで、もし出会う事に...

  • ほどける指先 201

    リビングの空気は重いまま、黙っている正美に業を煮やしたのか、京子は立ち上がると部屋を出て行った。入口に立ったままの千晶は、ゆっくりソファーに近付くとテーブルの前に膝をついて正美を見る。視線はくれないが、ピクリと動く唇は千晶の言葉を警戒している様だった。「殴ったって、誰を?」「...................」 くちびるを結んだまま答えないのは、その相手が岸だと告げているも同然。どうしてそんな事になったのか分...

  • ほどける指先 200

    翌日、千晶は重い腰を庇う様にして学校に向かった。 母も、正美も、今朝はいつもと変わらずで、昨夜の事が母の耳には入っていない様で安心する。千晶もいつも通りの授業を受け、学校が終わると今日は家に戻る事にした。塾に行くのは気が進まなくて、岸に出会ったらどんな顔をすればいいのか分からなかった。 とぼとぼと家に辿り着いた時だ。珍しく車庫にある母の車を見て、今日はもう仕事を終えて帰って来たのかと、玄関のドア...

  • ほどける指先 199

    自分が声を上げて泣いていたのが分かったのは、浴室のドアがバタンと開いて正美の姿が目に入ったからだった。 正美は、シャワーを浴びながら座り込んで泣いている千晶を見ると、コックを捻ってお湯を止め千晶の横に屈んだ。「どうしたんだよ、千晶。何があった?」 濡れた頭に手を置いて、顔を覗き込んだ正美が訊ねるが、千晶は膝を抱えたまま首を振る。言葉には出来なかったし、自分でもどうして泣いてしまったのか分からなか...

  • ほどける指先 198 *

    怖がる千晶を余所に、白濁の滑りを伴った岸の指は狭い孔を押し広げて入っていった。千晶が途中で断念していた行為なのに、岸の指はヌルヌルと入っていき、やがて異物感はムズムズとした快感の様なものに変わっていった。「あ、.......変、......やぁぁ...............」と、身体をくねらせながら声をあげる千晶。自分でも分からないが、勝手に下腹部がジンジンとして来て、神経がそこに集中していくようだった。「気持ちぃでしょ...

  • ほどける指先 197

    岸の親指が千晶のくちびるを緩やかに撫でた時、千晶の中にはもう怖さや嫌悪感もなく、ただ癒されたいという気持ちだけだった。「キス、しちゃうよ」 小さく囁く岸の声に、千晶はうなずく。もう、正美に対する信頼とか愛情の様なものさえ曖昧に感じていた。 岸は、まるで花びらにでも触れる様な感じでキスをしてくる。触れた唇の熱が伝わらないので、千晶にとっては物足りなさも感じた。でも、一瞬気が抜けたその時、急に岸が千...

  • ほどける指先 196

    岸が戻って来ると、テーブルにジュースの入ったコップを置いてくれた。「オレはコンビニで買ったおにぎり食べるけど、千晶くんはお腹空いてない?」 テーブルの前に腰を下ろして訊いてくれる。「食事は済ませたので大丈夫です。......黒田さんは何時ごろ帰って来るんですか?」「大体9時頃かな?ファミレスのキッチンに入ってるって云ってた。アイツ料理作るの好きだからさ、結構楽しんでるんじゃない?」 黒田の事を話す岸は...

  • ほどける指先 195

    「サボっちゃいますか?」 ふいに千晶の口から出た言葉に、岸の身体が固まる。開けかけたコンビニの袋をそのままに、千晶の方に目をやったが、ふざけている訳でもなさそうで、じっと岸を見る視線は返事を待っている様だった。「......いいの?」「ええ、今日は勉強する気分じゃなくて、多分何も頭に入って来ないと思うし。......でも、岸さんは大切な時間ですもんね」「......いやいや、千晶くんがそう云うんならオレも。たまには...

  • ほどける指先 194

    学校に着いて、千晶の額に気付いたのは、幼馴染の松下だった。「おはよう」「おはよう、.....なんかあった?」と、松下はさりげなく千晶の横に来ると訊いて来た。多分、幼稚園の頃から千晶の癖は見抜いていたのだろう。困った事があると、よく額を掻いていたので、松下も傷を作る千晶を心配していた。それが未だに続いている事に、少し複雑な心境。「別に、.....また今度話すよ」 それだけ云った千晶は、自分の教室に入って行っ...

  • ほどける指先 193

    千晶が支度をしていると、ドアがノックされて「ちあき、入っていい?」と正美の声。「いいよ」と答えると、ドアがそっと開いて正美が入って来る。「おはよ」「おはよう」 千晶が背を向けたまま云うと、正美は近づいて来て顔を覗き込む。「あ、、、」と声が出ると、千晶の額に掛る前髪をそっと描き上げてため息をついた。「またやったな。.....傷になると痕が残っちゃうぞ」 そう云って髪を降ろすと千晶の頭をクシャッと撫でた...

  • ほどける指先 192

    翌朝、千晶はベッドの中でぼんやり目を開けて、窓のカーテン越しから入る陽射しを眺めていた。昨夜は結局夕飯も食べないまま、母も正美も自分の部屋から出ては来なかった様で、千晶もベッドに潜り込んで息を殺す様にしていた。 一旦状態を起こしてから、再びうつ伏せになった千晶は、額に痛みを感じて指の腹でそっと撫でてみる。と、掻きむしったところが傷になっていて、ヒリヒリと痛みを感じた。「こりゃあ酷いな.....」 枕...

  • ほどける指先 191

    誰の目からも、京子の表情は困惑で歪んでいるのが見て取れる。口は何かを言いたげに開いたままで、でも言葉にはならなくて。眼差しだけが強く正美を捉えているのが分かった。「オレが悪いんです、お母さん。千晶は何もわからなくて......オレが千晶を......」 そこまで云った正美だったが、「やめて!!」と怒鳴った京子に突き飛ばされてしまい、身体は後ろの壁に当たってドンと音をたてた。驚く千晶は二人の方に向くと、「母さ...

  • ほどける指先 190

    学校の中では、いつも通り過ごせていたと思う千晶だったが、授業が終わり家に帰宅して塾の支度をしていると、ふいに身体の力が抜けてくる。気を張っていたのだろうか、一旦腰を降ろしたら立ち上がるのが億劫になってしまった。 頭の中で色々な事がぐるぐると駆け巡るが、一向にまとまりはなくて、考えなくてもいい事まで浮かんでは消えた。 リビングのソファーに身体を預けて横たわれば、そのまま起き上がれなくなってしまう。...

  • ほどける指先 189

    眠れぬ夜を過ごし、それでも学校に行くためにベッドから起き上がった千晶は、重い足取りで部屋を出ると下の階に降りて行った。 キッチンでは、京子が珍しく朝食の用意を済ませていて、テーブルに並んだスクランブルエッグやベーコン、サラダなどが皿に盛られていた。コーヒーを淹れている母に、千晶が「おはよう」と声を掛ける。「あ、おはよう。......昨夜はごめんね、突然で驚いたよね。いまパンを用意するから座ってなさい」...

  • ほどける指先 188

    千晶の肩が震え、正美はそっと背中から覆いかぶさるように抱きしめる。「......ま、さみ......、俺、どうすれば......」 たどたどしく声を出せば、更に抱きしめる力は強くなった。その腕を掴んで握り締めると、千晶の眼から涙の粒が零れ落ちる。「ごめん、千晶、......父さんが......悪いんだ」 正美の声が震えて聞こえる。「ちが、.........」 違うと言いたかったが、言葉にならなかった。今はどちらが悪いとか、そんな事は...

  • ほどける指先 187

    ドアを開けると、飛び込む様に部屋に入って、着ていた制服を乱暴に脱ぎ捨てた。この気持ちをどう表せばいいのか、どこかでこんな日が来る予感もあった。でも、今じゃないと思った。 スウェット上下に着替えると、江本から借りた漫画をベッドの枕の下に隠す。それから布団に潜り込んで身体を丸めた。 悲しいのか辛いのか分からない。涙は出なかったが、腹の底から込み上がる物を吐き出したくて、枕を掴むと思い切り声をあげる。...

  • ほどける指先 186

    夕飯を食べ終わると、玄関の方で音がした。「あ、多分母親が帰って来たと思う」 そう云うと、江本は立ち上がってドアの所から廊下の方に顔を出す。パタパタとスリッパの音が近づいて、江本が「おかえり」と声を掛けると、「ただいま、誰か来てる?」と声がした。「うん、同じクラスの藤城くん」 その言葉が終わらないうちに、ドアと江本の隙間から覗く顔が見える。「あ、お邪魔してます。カレーもご馳走になって、すみません」...

  • ほどける指先 185

    「その漫画貸してあげるけど」 ふいに背後から声を掛けられて焦る千晶。片手にコップ、もう片手にコンビニで買ったものを袋ごと下げて立っている江本が入って来た。 千晶は焦って本を置くが、江本は机の上にコップを置いてジュースを注ぐと差し出す。「まだ買ってるんだ?」 コップを受け取って訊いた千晶に、江本はうっすらと笑みを浮かべて「もちろんだよ。だってさぁ、結構勉強になるじゃん」と云う。「勉強って、......祭り...

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