森繁久彌1妻をめとらば才たけてみめ美わしく情けある友を選ばば書を読みて六分(りくぶ)の侠気四分(しぶ)の熱2恋の命をたずぬれば名を惜しむかな男(おのこ)ゆえ友の情けをたずぬれば義のあるところ火をも踏む3汲めや美酒(うまざけ)うたひめに乙女の知らぬ意気地(いきじ)あり簿記の筆とる若者にまことの男君を見る4ああわれダンテの奇才なくバイロンハイネの熱なきも石を抱(いだ)きて野にうたう芭蕉のさびをよろこばず5人やわらわん業平(なりひら)が小野の山ざと雪をわけ夢かと泣きて歯がみせしむかしを慕うむら心6見よ西北にバルカンのそれにも似たる国のさまあやうからずや雲裂けて天火(てんか)一度(ひとたび)降らんとき7妻子を忘れ家を捨て義のため恥を忍ぶとや遠くのがれて腕を摩(ま)すガリバルディや今いかに8玉をかざれる大官(たいか...人を戀ふる歌