森昌子私に故郷がふたつ出来ました生まれた町とあなたです好きだから好きだから今すぐ逢いたい帰りたい募るこの想い女のまごころを届けて欲しいのあなたにあなたに・・・望郷の詩句として名高い室生犀星(むろうさいせい)の「ふるさとは遠きにありて思ふものそして悲しくうたふもの」・・・。実はこれ、遠方にあって故郷を思う歌ではなく、犀星が郷里の金沢に帰郷したおりに作られた詩だそうです。東京で思うにまかせぬ暮らしを強いられ、懐かしい故郷に帰っても温かく受け入れてもらえない、その悲哀、郷里への愛憎半ばする思いが「遠きにありて……」の言葉となったとか。故郷とは時に複雑な思いを呼び起こす場所で、遠きにありて思うか、帰って父母や旧友と親しむか、思いは千々(ちぢ)に乱れるものかも知れません。故郷ごころ