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2015/11/01

  • 吉川一義『『失われた時を求めて』への招待』

    読後メモ 『失われた時を求めて』の入門書を書くというのは、想像以上に大変な仕事なのではないか。集英社版のほう(鈴木道彦著『プルーストを読む』)を読んだときにも同じことを感じた。すでに小説を読んでいる読者を想定するのであれば、詳しい考察をさまざま展開できそうだけど、まったく未読の人...

  • ユクスキュル/クリサート『生物から見た世界』

    読後メモ ユクスキュルの平明だけど温かみを感じさせる文章と、クリサートの味わい深い絵図に魅了された。 日頃の経験や観察から、動物はみな限られた感覚器官を駆使しながら、限られた環境で懸命ではあれ慎ましく生きているのだと漠然と考えていた。ところが「環世界」の観点でみると、そういう営み...

  • シムノン『ヴェネツィアからの列車』

    そのとき彼の目の前には現実の光の中で、この状況のグロテスクなこと、起こったばかりのことすべてがグロテスクで、ヴェネツィアから乗った列車以来起こったことも、要するに彼の人生も、そしておそらく他人の人生もグロテスクなことが明らかになった。  (小説のイントロダクション) ジュスタン・...

  • シムノンの「運命の小説」一覧

     シムノンは メグレ警視シリーズ 以外にも多くの小説を書いており、シリーズものではない一連の作品は「ロマン・デュール Les Romans durs」と呼ばれています。文字通りに言えば「硬い小説」ですが、«dur» は形容する言葉や文脈によって「厳しい」「難しい」「抵抗のある」「...

  • 『失われた時を求めて』の架空地名 バルベック編

    ( コンブレー編 からのつづき) バルベックとその周辺 バルベック Balbec (①36 (*) )は、青年になった「私」が夏の数ヶ月を過ごす保養地で、英仏海峡に臨むノルマンディー海岸に位置するという設定です。主要なモデルとなったのは、リゾート地として有名なカブール Cabo...

  • 『失われた時を求めて』の架空地名 コンブレー編

    プルーストの『失われた時を求めて』にはコンブレーやバルベックなど、架空の地名が多く出てきます。プルーストがこれらの地名をフランス語でどのように綴っているのか、翻訳で小説を読んでいると見過ごしがちなので、ここにまとめてみようと思います。 コンブレーとその周辺   コンブレー Com...

  • シムノン『万聖節の旅人』

    (小説のイントロダクション) 19歳の青年ジル・モーヴォワザンは、旅芸人の両親とともに各地を巡業していたが、ノルウェーに滞在中、不慮の事故によって両親をいっぺんになくす。万聖節 (*) の前夜、ジルは両親の故郷ラ・ロシェルに到着する。船から降りる際に抱き合っているカップルを目撃し...

  • フローベール『三つの物語』

    読後メモ 3つの物語いずれも素晴らしかった。それぞれ文体も時代設定も物語の雰囲気も全く異なるようで、やはり何か通ずるものがあるような気がする。あるいは、そう思わせるような読後感。『ボヴァリー夫人』の感動はさておき、フローベールには難解なイメージを抱いているのだが、本書の解説と訳者...

  • ラ・ボエシ『自発的隷従論』

    読後メモ もしくは「奴隷根性について」 (*) 。本編自体は100頁に満たないけれど、注釈などを通してモンテーニュや古代ギリシャ・ローマ文学にも触れることができる。 それにしても、自由とは、個人が好き勝手に振る舞えることではなく、まず第一に、国家政府といった公権力に縛られない・隷...

  • 笹澤 豊『〈権利〉の選択』

    読後メモ 人権を軽んじるような論調や「権利を主張する前に責任や義務を果たせ」のような言説を目にするたび、このような意見が日本では当然のようにまかり通る背景には、日本語としての「権利」という言葉に問題があるのではないかと日頃から思っていたのだが。本書を読んで、right などの訳語...

  • シムノン『メグレと消えたミニアチュア』(シャトーヌフから来た公証人)

    [メグレは]おもむろにパイプに新しい葉を詰め替え、火をつけた。それから開いていた窓へ歩み寄っていった。下方の小径に、小石が美しく光っているのが見えた。 「そうだ、あんないい小石をどこで手に入れたのか訊かなければ」 メグレ引退する 舞台はパリでもなければ殺人事件も起こらず、刑事連中...

  • 清水 誠『モンテーニュの哲学研究』

    読後メモ   タイトルに惹かれて興味本位で読んでみた。主題は哲学なのだろうけど研究論文というよりは随筆の趣きがあり(大学の論叢にはよく、退職目前の教授の比較的自由な気分で執筆した論文がよく掲載されるよう)。気取った言い方をすれば、著者の最後のエセー、試みの集大成だったのかもしれな...

  • 野呂邦暢『愛についてのデッサン』

    読後メモ 収録篇はどれも面白かった。佐古啓介の旅、作品としては一区切りとなっているけれど、もし著者が急逝しなかったら、その旅はもう少し続いたかもしれない。もしかしたら、登場した女性たちの一人と、啓介は所帯を持ったかもしれない? あるいは若造から中年に、そして老境に至った啓介、阿佐...

  • シムノン『メグレと若い女の死』

    昨2022年、パトリス・ルコント監督の映画『メグレ Maigret 』が欧米で上映され、日本でも今春公開されます (*1) 。2019年3月の制作発表の際には、主演のメグレ警視役をダニエル・オートゥイユが演じ、翌年の公開を目指す予定とのことでしたが (*2) 、途中で主演はジェラ...

  • モンテスキュー『ペルシア人の手紙』

    読後メモ 購入してから2年間、積読途絶を繰り返しながらようやく読み終えた。同じ書簡体小説でも『 危険な関係 』とは違って、前の手紙の内容を踏まえないと次に進めないということがあまりないので、それが遅読の原因でもあったし、かえってそのおかげで、とりあえず最後まで目を通せることができ...

  • ゾラ『テレーズ・ラカン』

    私は『テレーズ・ラカン』で、性格ではなく、体質 tempéraments を研究しようとした。この本のすべては、この点にある。あくまで神経と血にもてあそばれる人物を選んだ。かれらには自由意志はない。その日その日の行為は、いつでも宿命的な肉体の本能に左右されている。テレーズとローラ...

  • ロブ=グリエ『消しゴム』

    物語の道筋がわかるようなわからないような割合に長いプロローグ(序幕)の後、「特別捜査官」だというヴァラスはどこへ行きたいのか、寒い朝に早くから街に出て、真っ直ぐに道を歩き始める。 ところが当てが外れたのかヴァラスは早々に道に迷ってしまう。一体どこに向かっているのか見当がつかない読...

  • ロラン・プティ『プルースト ─心の間歇』(バレエ)

    『プルースト ─心の間歇』は、ロラン・プティ Roland Petit, 1924-2011 が制作・振付したバレエ。プルーストの小説『失われた時を求めて』の中から、印象的な場面や叙述を13の場景(タブロー)にまとめたもので、そこではとくに、小説の重要なモチーフの一つである《愛》...

  • 謎のデポルシュヴィル嬢

    『失われた時を求めて』を読みながら  そこには、デポルシュヴィル嬢 Mlle Déporcheville と書いてあったが、私はそれを難なく d'Éporcheville と訂正することができた。 『失われた時を求めて』の第六篇《消え去ったアルベルチーヌ》(《逃げ去る女》)に、「...

  • 吉川一義『絵画で読む『失われた時を求めて』』

    『失われた時を求めて』における絵画の展開は、プルースト自身の「生来の偶像崇拝と模倣の悪癖」の提示にはじまり、それを「清算」する「隠された画」の制作過程をへて、独自の文学画面にいたる受容と創造の物語とも解釈できるのである。(p.181) 著者は、岩波文庫版『失われた時を求めて』(全...

  • 大西克智『『エセー』読解入門』

    わたしが書くのはわたしの挙動ではない。それはわたしであり、わたしの本質である。 (モンテーニュ『エセー』第2巻第6章より) 著作だけでなく、作者までも知っていただけるならば、わたしは完全に満足するであろう。(...) わたしは決して教えない。ただ物語るのである。 (『エセー』第3...

  • このブログについて

    このブログでは、読書をとおして感じたり考えたこと、面白いと思って調べてみたことなどを気の向くままに書いています。できるかぎり自分自身の言葉で書こうと心がけています。あらすじの紹介や要約に終始せず、翻訳書に付きものの「訳者あとがき」や「解題」をただなぞるようなことも極力さけて、自分...

  • マリヴォー『愛と偶然の戯れ』

    ドラント ぼくなんだ、ドラントは。 シルヴィア (傍白)ああ! やっぱり、心でははっきり分かってたんだわ。 (第2幕第12景より) 舞台はパリ。オルゴン氏は娘のシルヴィアに、親友の息子であるドラントと見合いをさせることにします。相手の人柄を見極めてから結婚するかしないかを自分...

  • デュラス『アンデスマ氏の午後』

    物語の日付は6月1日。陽射しに暑さを感じさせる頃。『ゴドーを待ちながら』を思わせる世界 (*) 。果たしてアンデスマ氏が待つのはミシェル・アルク氏なのか、それとも...... (*)『辻公園』という作品も、ほとんど二人の登場人物の対話だけで構成され、「ゴドー」的かも。 現前 初夏...

  • バシュラール『蝋燭の焔』

    焔の夢想家は容易に焔の思想家となる。彼は、彼の蝋燭という沈黙している存在が、なぜ突如として呻吟しはじめるのかを理解したいと望む。 バシュラールは晩年、これまでの心理学的なアプローチから現象学的方法に転回して、詩的イメージにもとづく想像力や夢想を考察する書物を出しています。本書はそ...

  • マリヴォー『贋の侍女』『愛の勝利』

    騎士 わたしの変身はあなたのやさしい愛情には向きませんね、いとしい伯爵夫人。(『贋の侍女』第3幕第9景より) 『贋の侍女』と『愛の勝利』は、ボーマルシェと並んで18世紀フランスを代表する劇作家マリヴォー Pierre Carlet de Chamblain de Mariva...

  • (人物事典)マリヴォー

    ピエール・カルレ・ド・シャブラン・ド・マリヴォー Pierre Carlet de Chamblain de Marivaux, 1688-1763 劇作家、小説家。パリ生まれ。1720年上演の『恋に磨かれたアルルカン』で成功し、以来『愛と偶然の戯れ』(1730)をはじめ多くの戯...

  • (人物事典)ジャン・ド・ラ・ブリュイエール

    ジャン・ド・ラ・ブリュイエール Jean de La Bruyère, 1645-1696 モラリスト(人間探究家)。パリ生まれ。法律を学んだ後叔父の遺産で細々と暮らしていたが、1684年に王家の傍系コンデ公ルイ2世の孫の家庭教師となる。1688年にギリシアの哲学者テオフラストス...

  • ラ・ブリュイエール『カラクテール』(人さまざま)

    ライプニッツは、すべてについて知ることができた最後の人間と言われた。たぶんラ・ブリュイエール自身もまた、人間全般について語ることのできた、一冊の本のなかに人間世界のすべての領域を含みこむことができた、最後のモラリストであった。 (ロラン・バルト、吉村和明訳) 文学史の本や百科事典...

  • イヨネスコ『物語番号 4』

    仏文科に入った最初の年に、フランス語の授業でこれを読んだ。「まだ三歳にならない子どもたちのために」書かれていて、確かに読むのはやさしい。女の子が朝はね起きて、大好きなパパに会うべく寝室に向かうのだけど、なぜかパパには会えない。パパは、娘の執拗な追跡からするりとのがれてしまう、そん...

  • ジュリアン・グリーン『真夜中』

    ジュリアン・グリーン Julien Green, 1900-1998 はアメリカ人の両親のあいだにパリで生まれた。ヴァージニア大学に通い、第二次世界大戦中にはアメリカの情報機関に勤務した経歴をもつ一方で、第一次世界大戦ではフランス軍に従軍している。作家としても主にフランス語を用い...

  • シムノンからブルーナへの手紙

    オランダのユトレヒトにある中央美術館 Centraal Museum には「スタジオ・ディック・ブルーナ」という常設展が置かれ、 ディック・ブルーナ が生前に使っていたアトリエを移設しているほか、ブルーナがデザインを手掛けた作品や、ファンからの贈り物まで展示されているそうです。(...

  • 『ブラック・ベア ─ディック・ブルーナ装丁の仕事』

    絵やイラストの好きな友人が「これいいよー」と勧めてくれたのが、Glyph.の『 Departure 』だった。それまで、グラフィックデザインというものには縁遠かったのだが、子どもの頃、旅客機が離発着する様子や航空会社のマークを眺めるのが大好きだったので、この本にはずいぶん夢中にな...

  • ディック・ブルーナ装丁のシムノン小説

    絵本シリーズ「ミッフィー(うさこちゃん)」や、ペーパーバックの商標から生まれた「ブラック・ベア」のイラストレーションなどで知られる ディック・ブルーナ は、父親の経営する出版社が展開するペーパーバックの表紙デザインを多く手掛けており、その数は2,000冊と言われています。約20年...

  • シムノン『メグレと超高級ホテルの地階』 (ホテル「マジェスティック」の地下室)

    まさに宮殿 palace のような超高級ホテルには、ヨーロッパ中の上層階級、金持ち連中がやってくる。当時はとくに、アメリカの金満家が幅を利かせていた。彼らが毎日当たり前のように豪奢に過ごせるのは、言うまでもなくホテルの従業員がせわしなく働き続けているおかげである。豪華な部屋々々、...

  • シムノン『死んだギャレ氏』(ガレ氏、死す)

    エミール・ガレ、外交販売員、セーヌ=エ=マルヌ県サン=ファルジョー在住の者、25日もしくは26日にサンセールのロワール川ホテルにて殺害される。不審な点多し。死体の身元確認のため遺族に知らせる旨願う。パリより捜査官を派遣されたし。 今年の東京は、7月に入る一週間くらい前から連日猛暑...

  • コルタサル『悪魔の涎』ほか

    現実=夢の往復運動 現実と夢とのあわいには明確な境界線がない。さも現実に生じうる出来事のように語られつつ、すべては現実に起こったことではなく(「起こること」と書いたほうがよいかもしれない)、そうかといって、ブルトンらに倣った夢の記述でもない。眠りの中で起こるような、まるであらゆる...

  • ブルトン『狂気の愛』

    一歩進むか、一歩退くか、わたしはその顔を二度と見られないのではないかと、気も狂わんばかりに恐れていた。しかし、その顔がびっくりしたようにわたしのほうに振り向けられ、それが非常に近かったので、この瞬間の彼女の微笑みから、緑色のはしばみの実を掴んでいるリス un écu reuil ...

  • バシュラール『夢想の詩学』

    「夢想」という語には、眠っているとき(無意識の状態)に見る夢のことと、目覚めているとき(意識のある状態)の空想のことの両方の意味を含むようだが、バシュラールは後者、私たちが気ままに思い描ける空想、絵空事のほうの意味で本書のなかで用いている。フランス語の «rêverie» も、辞...

  • (人物事典)ガストン・バシュラール

    ガストン・バシュラール Gaston Bachlard, 1884-1962 フランスの哲学者、批評家。シャンパーニュ地方バール=シュル=オーブ生まれ。兵役や郵便局勤務を経た後に、35歳でソルボンヌ大学を卒業。1940年よりソルボンヌ大学教授(科学哲学・哲学史)となる。『新しい科...

  • 『失踪者捜索人マサントニオ』

     『失踪者捜索人マサントニオ Masantonio - Sezione scomparsi 』はイタリアのドラマ。先月(2022年5月)、 AXNミステリー で放映された。警察に協力して(*)、毎回失踪者を探し出すというストーリー。ジェノヴァとその近郊が舞台。 主人公のエリオ・マ...

  • シムノン『雪は汚れていた』

    主人公フランク・フリードマイヤーの暗いまなざしは、ドイツ軍占領下の青年の絶望的な状況を代表しているというより、むしろあらゆる時代の、青年の鬱屈した心情の表現とみるべきだろう。(訳者あとがきより) この小説を読んで、カミュの『異邦人』の主人公ムルソーのイメージが、フランクと重なり合...

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