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2015/11/01

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  • シムノン『罰せられざる罪』

    オランダ語版の表紙(ディック・ブルーナによる装丁) (小説のイントロダクション) 1926年、日に日に寒さが厳しくなる時季のリエージュ。この町の大学に通う留学生エリ・ヴァスコヴは、ランジュ夫人の家に下宿している。ランジュ夫人は戦争で夫をなくし、娘のルイーズと二人きりだが、生活のた...

  • プイグ『ブエノスアイレス事件』

    小説の中でのブエノスの空は、どうもすっきりしない。明るいはずの空を、灰色の雲が薄い膜のように覆っている。今のところ雨の降る気配はないが、かといって晴れる見込みもない。このような日々が続くと、秋の長雨よりもよっぽど気が滅入る。 読むのにだいぶ苦労したのは、そんな天気のせいではないか...

  • いったい何時になったのだろう

    『失われた時を求めて』を読みながら  いったい何時になったのだろう、と私は考えるのであった。汽車の汽笛が聞こえ、それは遠く近く、森にさえずる一羽の小鳥の歌声のように、たがいを隔てる距離を浮き彫りにしながら、私の心のなかに、寂しい野原の広がりを描き出していた。その野原を一人の旅人が...

  • フランソワーズ・エリチエ『人生の塩』

    生涯かけて猛烈に集めた宝物、彼の人生の塩だったもの、すなわち書物とか道具とか絵画とか......(ヴェルコール)   あなたのおうちは、戸や窓が破れるほど「幸福」でいっぱいじゃありませんか。(メーテルリンク・堀口大學訳)  人生の塩。フランス語の「塩 sel 」には「ぴりっとした...

  • シムノン『妻は二度死ぬ』

    シムノンが最後に書いた「運命の小説」。 (小説のイントロダクション) 宝飾デザイナーのジョルジュ・セルランはアトリエで仕事をしているときに警察官の訪問を受ける。妻のアネットが交通事故に遭い亡くなったという報せであった。アネットと結婚してからの二十年間、好きな仕事で成功し愛する家族...

  • プイグ『蜘蛛女のキス』

    『蜘蛛女のキス』には語り手が存在しない、あるいはずっと遠いところでこちらを眺めている、と言える。基本的に主人公二人の対話のみで成り立っており、ところどころに別の文体──報告書、註記を装った長大な文章、別の会話など── が挿入される。 内的独白であれ会話であれ、徹底した話し言葉の使...

  • シムノン『ちびっこ三人のいる通り』

     «La Rue aux trois poussins» (ちびっこ三人のいる通り)はシムノンが書いた短篇の一つ。第2次世界大戦中の1941年に « Gringoire » という週刊新聞に掲載された後、1963年に同作を表題にした短篇集に収録、出版された。 物語の冒頭、陽の光が...

  • 福永武彦訳『今昔物語』

    古典作品であれ現代のミステリー小説であれ、作家が独自の文体を追求しながら工夫を凝らして編み上げた物語を読むというのはたいへん愉しいことではあるものの、ふと、昔話とか童話のような単純素朴な物語を無性に読みたくなることもあります。 その点で『今昔物語集』は、最適な書物ではないかと思い...

  • 山上浩嗣『モンテーニュ入門講義』

    有名な哲学者が世界や人間についてどのように考えをめぐらせたのか、それはとても興味深いことです。けれども、翻訳であれその著作を直接読んだみたところで難解な文章に面食らい、かえって理解が遠く及ばないことがよくあります。そのため私の場合は、つい入門書だとかダイジェストといったものを手に...

  • シムノン『新しい人生』

    ずっと前から、彼は何か破局が起こることを予想していた。それも、ちょうどこんな瞬間に生ずる破局を予想していた。 (小説のイントロダクション) モーリス・デュドンは長年同じアパルトマンの一室に独りで暮らしている。一人の友人もなく、今だかつて一人の恋人もなく、誰も彼の部屋に入ったことが...

  • ガルシア=マルケス『十二の遍歴の物語』

    長篇小説の傑作を書く作家が、短篇の名手とは限らない。その逆も然り。ガルシア=マルケスも、本人の言葉などからうかがうと、どちらかといえば長篇を得意とする人らしい。しかし、その力量はやはり超人的。短篇もすこぶる面白い。 マルケス的笑いといえばよいだろうか。鋭いユーモアと痛烈な皮肉に満...

  • 西 研『哲学的思考』

    読後メモ 久しぶりの「会心の一撃」、嬉しい邂逅。 メルロ=ポンティの文章に惹かれて選集をいくつか読んでいるうちに、やはり現象学、フッサールのことも知りたいと思い、入門書などを数冊ちょろちょろと読みつつ、デカルトの『省察』も読んでみた後に『デカルト的省察』などに手を出して、案の定「...

  • カミュ『最初の人間』

    カミュの「失われた時」 『失われた時を求めて』に心酔していると、自伝小説、自伝の要素が濃い小説などは、すべからく作家の(もしくは作家が自分自身を投影した主人公の)「失われた時」を探し求める旅であるべきとつい見なしてしまう。「失われた時」とは単なる想い出とか郷愁などではなく、回想し...

  • シムノン『メグレと首無し死体』

    メグレの宿敵 『 メグレと若い女の死 』と同様に、本作『メグレと首無し死体』もまた、メグレらしいメグレ作品の一つと言える。 サン=マルタン運河にかかる歩道橋 Passerelle des Douanes 舞台はパリ。今回はモンマルトルではなく、10区を流れるサン=マルタン運河で事...

  • ガルシア=マルケス『土曜日の次の日』

    読後メモ 語り口はまだ硬いけれど、『百年の孤独』のなかに挿まれてもよさそうなお話。レベッカという名の未亡人はホセ・アルカディオと結婚したあの人だろうか。アントニオ・イサベル神父の名も『百年の孤独』に出てきたような。青年が降り立った村には「ホテル・マコンド」という宿屋がある。 ガブ...

  • ガルシア=マルケス『大佐に手紙は来ない』

    ガルシア=マルケスの物語では、生死を左右する危機が迫っているときでさえ、悲しみに溺れることなく、どこかユーモラスな雰囲気に包まれることが多い。灼熱の地では、涙さえ流れ落ちぬうちに乾いてしまうのだろうか、と思うほど。 ところが『大佐に手紙は来ない』では、人々は雨と湿気に咽びかえって...

  • モンテイエ『かまきり』

    読後メモ 悪徳の書簡体小説という点では、ラクロの『 危険な関係 』の末裔であり、手紙だけでなく日記や調査報告書などを種々交えた創意工夫の点ではマヌエル・プイグの『赤い唇』などの先駆けのような。 なかなか凄い物語を書いたものだ。読み了えてみると、なるほど普通の小説形式、語り口では、...

  • シムノン『メグレと死体刑事』

    この男の名前はカーヴル、ジュスタン・カーヴルで、もちろん《 死体 カダーヴル 》などではない。だが、二十年前に《 死体 カダーヴル 》刑事という綽名がついてからは、それ以後司法警察局で彼のことを話すときはいつでもこの綽名によった。(...) ぎすぎすに痩せていて、顔色が蒼白く、目...

  • ガルシア=マルケス『百年の孤独』

    要約などは徒労としか思えない無数の挿話がからんでいるが、この小説は詰るところ、村から市へとふくらんで、やがて蜃気楼のごとく消えるマコンドを主たる舞台に、苦難の旅の果てにその建設にあたったホセ・アルカディオ・ブエンディーアとウルスラ・イグアラン夫妻に始まる一族の歴史を、いずれもガル...

  • ガルシア=マルケス『予告された殺人の記録』

    ガルシア=マルケスが亡くなる何年か前。実家の書棚を漁っていたら、ガルシア=マルケスの本が何冊か出てきた。埃をかぶり黄ばんでいる。子どもの頃に、おそらく同じものを目にした覚えがある。興味本位で本を開いてみたら小さい文字がぎっしりで挿絵が全くなく、そのことに驚いて本を閉じてしまった記...

  • (人物事典)ガブリエル・ガルシア=マルケス

    ガブリエル・ガルシア=マルケス Gabriel García Márquez, 1928-2014 コロンビアの小さな町アラカタカに生まれる。ボゴタ大学法学部中退。1954年自由派の新聞「エスベクタドール」の記者となり、1955年初めてヨーロッパを訪問、特派員としてジュネーブ、ロ...

  • 田中仁彦『ラ・ロシュフーコーと箴言』

    読後メモ 『マクシム』を読んだとき、辛辣な言葉の数々にラ・ロシュフーコーの人間味が垣間見えて面白かったのだが、本書を読んで、その人となりに一層魅力を感じた。 私が想像するフランソワ・ド・ラ・ロシュフコーは... 実直頑固で世渡りが下手な苦労人、「あー、この人狂ってる、しかも狂って...

  • シムノン『伯母のジャンヌ』

    「あんたは何をしようとしてたの?」 「何でもよ。わたしは自由な女になりたかった。自惚れてたのね」  (小説のイントロダクション) ジャンヌ・マルティノーは成人になった21歳 の誕生日に家を出て以来、生まれ故郷に戻ることがなかった。父親の葬式にも姿をみせず、彼女はフランソワ・ロエル...

  • 吉川一義『『失われた時を求めて』への招待』

    読後メモ 『失われた時を求めて』の入門書を書くというのは、想像以上に大変な仕事なのではないか。集英社版のほう(鈴木道彦著『プルーストを読む』)を読んだときにも同じことを感じた。すでに小説を読んでいる読者を想定するのであれば、詳しい考察をさまざま展開できそうだけど、まったく未読の人...

  • ユクスキュル/クリサート『生物から見た世界』

    読後メモ ユクスキュルの平明だけど温かみを感じさせる文章と、クリサートの味わい深い絵図に魅了された。 日頃の経験や観察から、動物はみな限られた感覚器官を駆使しながら、限られた環境で懸命ではあれ慎ましく生きているのだと漠然と考えていた。ところが「環世界」の観点でみると、そういう営み...

  • シムノン『ヴェネツィアからの列車』

    そのとき彼の目の前には現実の光の中で、この状況のグロテスクなこと、起こったばかりのことすべてがグロテスクで、ヴェネツィアから乗った列車以来起こったことも、要するに彼の人生も、そしておそらく他人の人生もグロテスクなことが明らかになった。  (小説のイントロダクション) ジュスタン・...

  • シムノンの「運命の小説」一覧

     シムノンは メグレ警視シリーズ 以外にも多くの小説を書いており、シリーズものではない一連の作品は「ロマン・デュール Les Romans durs」と呼ばれています。文字通りに言えば「硬い小説」ですが、«dur» は形容する言葉や文脈によって「厳しい」「難しい」「抵抗のある」「...

  • 『失われた時を求めて』の架空地名 バルベック編

    ( コンブレー編 からのつづき) バルベックとその周辺 バルベック Balbec (①36 (*) )は、青年になった「私」が夏の数ヶ月を過ごす保養地で、英仏海峡に臨むノルマンディー海岸に位置するという設定です。主要なモデルとなったのは、リゾート地として有名なカブール Cabo...

  • 『失われた時を求めて』の架空地名 コンブレー編

    プルーストの『失われた時を求めて』にはコンブレーやバルベックなど、架空の地名が多く出てきます。プルーストがこれらの地名をフランス語でどのように綴っているのか、翻訳で小説を読んでいると見過ごしがちなので、ここにまとめてみようと思います。 コンブレーとその周辺   コンブレー Com...

  • シムノン『万聖節の旅人』

    (小説のイントロダクション) 19歳の青年ジル・モーヴォワザンは、旅芸人の両親とともに各地を巡業していたが、ノルウェーに滞在中、不慮の事故によって両親をいっぺんになくす。万聖節 (*) の前夜、ジルは両親の故郷ラ・ロシェルに到着する。船から降りる際に抱き合っているカップルを目撃し...

  • フローベール『三つの物語』

    読後メモ 3つの物語いずれも素晴らしかった。それぞれ文体も時代設定も物語の雰囲気も全く異なるようで、やはり何か通ずるものがあるような気がする。あるいは、そう思わせるような読後感。『ボヴァリー夫人』の感動はさておき、フローベールには難解なイメージを抱いているのだが、本書の解説と訳者...

  • ラ・ボエシ『自発的隷従論』

    読後メモ もしくは「奴隷根性について」 (*) 。本編自体は100頁に満たないけれど、注釈などを通してモンテーニュや古代ギリシャ・ローマ文学にも触れることができる。 それにしても、自由とは、個人が好き勝手に振る舞えることではなく、まず第一に、国家政府といった公権力に縛られない・隷...

  • 笹澤 豊『〈権利〉の選択』

    読後メモ 人権を軽んじるような論調や「権利を主張する前に責任や義務を果たせ」のような言説を目にするたび、このような意見が日本では当然のようにまかり通る背景には、日本語としての「権利」という言葉に問題があるのではないかと日頃から思っていたのだが。本書を読んで、right などの訳語...

  • シムノン『メグレと消えたミニアチュア』(シャトーヌフから来た公証人)

    [メグレは]おもむろにパイプに新しい葉を詰め替え、火をつけた。それから開いていた窓へ歩み寄っていった。下方の小径に、小石が美しく光っているのが見えた。 「そうだ、あんないい小石をどこで手に入れたのか訊かなければ」 メグレ引退する 舞台はパリでもなければ殺人事件も起こらず、刑事連中...

  • 清水 誠『モンテーニュの哲学研究』

    読後メモ   タイトルに惹かれて興味本位で読んでみた。主題は哲学なのだろうけど研究論文というよりは随筆の趣きがあり(大学の論叢にはよく、退職目前の教授の比較的自由な気分で執筆した論文がよく掲載されるよう)。気取った言い方をすれば、著者の最後のエセー、試みの集大成だったのかもしれな...

  • 野呂邦暢『愛についてのデッサン』

    読後メモ 収録篇はどれも面白かった。佐古啓介の旅、作品としては一区切りとなっているけれど、もし著者が急逝しなかったら、その旅はもう少し続いたかもしれない。もしかしたら、登場した女性たちの一人と、啓介は所帯を持ったかもしれない? あるいは若造から中年に、そして老境に至った啓介、阿佐...

  • シムノン『メグレと若い女の死』

    昨2022年、パトリス・ルコント監督の映画『メグレ Maigret 』が欧米で上映され、日本でも今春公開されます (*1) 。2019年3月の制作発表の際には、主演のメグレ警視役をダニエル・オートゥイユが演じ、翌年の公開を目指す予定とのことでしたが (*2) 、途中で主演はジェラ...

  • モンテスキュー『ペルシア人の手紙』

    読後メモ 購入してから2年間、積読途絶を繰り返しながらようやく読み終えた。同じ書簡体小説でも『 危険な関係 』とは違って、前の手紙の内容を踏まえないと次に進めないということがあまりないので、それが遅読の原因でもあったし、かえってそのおかげで、とりあえず最後まで目を通せることができ...

  • ゾラ『テレーズ・ラカン』

    私は『テレーズ・ラカン』で、性格ではなく、体質 tempéraments を研究しようとした。この本のすべては、この点にある。あくまで神経と血にもてあそばれる人物を選んだ。かれらには自由意志はない。その日その日の行為は、いつでも宿命的な肉体の本能に左右されている。テレーズとローラ...

  • ロブ=グリエ『消しゴム』

    物語の道筋がわかるようなわからないような割合に長いプロローグ(序幕)の後、「特別捜査官」だというヴァラスはどこへ行きたいのか、寒い朝に早くから街に出て、真っ直ぐに道を歩き始める。 ところが当てが外れたのかヴァラスは早々に道に迷ってしまう。一体どこに向かっているのか見当がつかない読...

  • ロラン・プティ『プルースト ─心の間歇』(バレエ)

    『プルースト ─心の間歇』は、ロラン・プティ Roland Petit, 1924-2011 が制作・振付したバレエ。プルーストの小説『失われた時を求めて』の中から、印象的な場面や叙述を13の場景(タブロー)にまとめたもので、そこではとくに、小説の重要なモチーフの一つである《愛》...

  • 謎のデポルシュヴィル嬢

    『失われた時を求めて』を読みながら  そこには、デポルシュヴィル嬢 Mlle Déporcheville と書いてあったが、私はそれを難なく d'Éporcheville と訂正することができた。 『失われた時を求めて』の第六篇《消え去ったアルベルチーヌ》(《逃げ去る女》)に、「...

  • 吉川一義『絵画で読む『失われた時を求めて』』

    『失われた時を求めて』における絵画の展開は、プルースト自身の「生来の偶像崇拝と模倣の悪癖」の提示にはじまり、それを「清算」する「隠された画」の制作過程をへて、独自の文学画面にいたる受容と創造の物語とも解釈できるのである。(p.181) 著者は、岩波文庫版『失われた時を求めて』(全...

  • 大西克智『『エセー』読解入門』

    わたしが書くのはわたしの挙動ではない。それはわたしであり、わたしの本質である。 (モンテーニュ『エセー』第2巻第6章より) 著作だけでなく、作者までも知っていただけるならば、わたしは完全に満足するであろう。(...) わたしは決して教えない。ただ物語るのである。 (『エセー』第3...

  • このブログについて

    このブログでは、読書をとおして感じたり考えたこと、面白いと思って調べてみたことなどを気の向くままに書いています。できるかぎり自分自身の言葉で書こうと心がけています。あらすじの紹介や要約に終始せず、翻訳書に付きものの「訳者あとがき」や「解題」をただなぞるようなことも極力さけて、自分...

  • マリヴォー『愛と偶然の戯れ』

    ドラント ぼくなんだ、ドラントは。 シルヴィア (傍白)ああ! やっぱり、心でははっきり分かってたんだわ。 (第2幕第12景より) 舞台はパリ。オルゴン氏は娘のシルヴィアに、親友の息子であるドラントと見合いをさせることにします。相手の人柄を見極めてから結婚するかしないかを自分...

  • デュラス『アンデスマ氏の午後』

    物語の日付は6月1日。陽射しに暑さを感じさせる頃。『ゴドーを待ちながら』を思わせる世界 (*) 。果たしてアンデスマ氏が待つのはミシェル・アルク氏なのか、それとも...... (*)『辻公園』という作品も、ほとんど二人の登場人物の対話だけで構成され、「ゴドー」的かも。 現前 初夏...

  • バシュラール『蝋燭の焔』

    焔の夢想家は容易に焔の思想家となる。彼は、彼の蝋燭という沈黙している存在が、なぜ突如として呻吟しはじめるのかを理解したいと望む。 バシュラールは晩年、これまでの心理学的なアプローチから現象学的方法に転回して、詩的イメージにもとづく想像力や夢想を考察する書物を出しています。本書はそ...

  • マリヴォー『贋の侍女』『愛の勝利』

    騎士 わたしの変身はあなたのやさしい愛情には向きませんね、いとしい伯爵夫人。(『贋の侍女』第3幕第9景より) 『贋の侍女』と『愛の勝利』は、ボーマルシェと並んで18世紀フランスを代表する劇作家マリヴォー Pierre Carlet de Chamblain de Mariva...

  • (人物事典)マリヴォー

    ピエール・カルレ・ド・シャブラン・ド・マリヴォー Pierre Carlet de Chamblain de Marivaux, 1688-1763 劇作家、小説家。パリ生まれ。1720年上演の『恋に磨かれたアルルカン』で成功し、以来『愛と偶然の戯れ』(1730)をはじめ多くの戯...

  • (人物事典)ジャン・ド・ラ・ブリュイエール

    ジャン・ド・ラ・ブリュイエール Jean de La Bruyère, 1645-1696 モラリスト(人間探究家)。パリ生まれ。法律を学んだ後叔父の遺産で細々と暮らしていたが、1684年に王家の傍系コンデ公ルイ2世の孫の家庭教師となる。1688年にギリシアの哲学者テオフラストス...

  • ラ・ブリュイエール『カラクテール』(人さまざま)

    ライプニッツは、すべてについて知ることができた最後の人間と言われた。たぶんラ・ブリュイエール自身もまた、人間全般について語ることのできた、一冊の本のなかに人間世界のすべての領域を含みこむことができた、最後のモラリストであった。 (ロラン・バルト、吉村和明訳) 文学史の本や百科事典...

  • イヨネスコ『物語番号 4』

    仏文科に入った最初の年に、フランス語の授業でこれを読んだ。「まだ三歳にならない子どもたちのために」書かれていて、確かに読むのはやさしい。女の子が朝はね起きて、大好きなパパに会うべく寝室に向かうのだけど、なぜかパパには会えない。パパは、娘の執拗な追跡からするりとのがれてしまう、そん...

  • ジュリアン・グリーン『真夜中』

    ジュリアン・グリーン Julien Green, 1900-1998 はアメリカ人の両親のあいだにパリで生まれた。ヴァージニア大学に通い、第二次世界大戦中にはアメリカの情報機関に勤務した経歴をもつ一方で、第一次世界大戦ではフランス軍に従軍している。作家としても主にフランス語を用い...

  • シムノンからブルーナへの手紙

    オランダのユトレヒトにある中央美術館 Centraal Museum には「スタジオ・ディック・ブルーナ」という常設展が置かれ、 ディック・ブルーナ が生前に使っていたアトリエを移設しているほか、ブルーナがデザインを手掛けた作品や、ファンからの贈り物まで展示されているそうです。(...

  • 『ブラック・ベア ─ディック・ブルーナ装丁の仕事』

    絵やイラストの好きな友人が「これいいよー」と勧めてくれたのが、Glyph.の『 Departure 』だった。それまで、グラフィックデザインというものには縁遠かったのだが、子どもの頃、旅客機が離発着する様子や航空会社のマークを眺めるのが大好きだったので、この本にはずいぶん夢中にな...

  • ディック・ブルーナ装丁のシムノン小説

    絵本シリーズ「ミッフィー(うさこちゃん)」や、ペーパーバックの商標から生まれた「ブラック・ベア」のイラストレーションなどで知られる ディック・ブルーナ は、父親の経営する出版社が展開するペーパーバックの表紙デザインを多く手掛けており、その数は2,000冊と言われています。約20年...

  • シムノン『メグレと超高級ホテルの地階』 (ホテル「マジェスティック」の地下室)

    まさに宮殿 palace のような超高級ホテルには、ヨーロッパ中の上層階級、金持ち連中がやってくる。当時はとくに、アメリカの金満家が幅を利かせていた。彼らが毎日当たり前のように豪奢に過ごせるのは、言うまでもなくホテルの従業員がせわしなく働き続けているおかげである。豪華な部屋々々、...

  • シムノン『死んだギャレ氏』(ガレ氏、死す)

    エミール・ガレ、外交販売員、セーヌ=エ=マルヌ県サン=ファルジョー在住の者、25日もしくは26日にサンセールのロワール川ホテルにて殺害される。不審な点多し。死体の身元確認のため遺族に知らせる旨願う。パリより捜査官を派遣されたし。 今年の東京は、7月に入る一週間くらい前から連日猛暑...

  • コルタサル『悪魔の涎』ほか

    現実=夢の往復運動 現実と夢とのあわいには明確な境界線がない。さも現実に生じうる出来事のように語られつつ、すべては現実に起こったことではなく(「起こること」と書いたほうがよいかもしれない)、そうかといって、ブルトンらに倣った夢の記述でもない。眠りの中で起こるような、まるであらゆる...

  • ブルトン『狂気の愛』

    一歩進むか、一歩退くか、わたしはその顔を二度と見られないのではないかと、気も狂わんばかりに恐れていた。しかし、その顔がびっくりしたようにわたしのほうに振り向けられ、それが非常に近かったので、この瞬間の彼女の微笑みから、緑色のはしばみの実を掴んでいるリス un écu reuil ...

  • バシュラール『夢想の詩学』

    「夢想」という語には、眠っているとき(無意識の状態)に見る夢のことと、目覚めているとき(意識のある状態)の空想のことの両方の意味を含むようだが、バシュラールは後者、私たちが気ままに思い描ける空想、絵空事のほうの意味で本書のなかで用いている。フランス語の «rêverie» も、辞...

  • (人物事典)ガストン・バシュラール

    ガストン・バシュラール Gaston Bachlard, 1884-1962 フランスの哲学者、批評家。シャンパーニュ地方バール=シュル=オーブ生まれ。兵役や郵便局勤務を経た後に、35歳でソルボンヌ大学を卒業。1940年よりソルボンヌ大学教授(科学哲学・哲学史)となる。『新しい科...

  • 『失踪者捜索人マサントニオ』

     『失踪者捜索人マサントニオ Masantonio - Sezione scomparsi 』はイタリアのドラマ。先月(2022年5月)、 AXNミステリー で放映された。警察に協力して(*)、毎回失踪者を探し出すというストーリー。ジェノヴァとその近郊が舞台。 主人公のエリオ・マ...

  • シムノン『雪は汚れていた』

    主人公フランク・フリードマイヤーの暗いまなざしは、ドイツ軍占領下の青年の絶望的な状況を代表しているというより、むしろあらゆる時代の、青年の鬱屈した心情の表現とみるべきだろう。(訳者あとがきより) この小説を読んで、カミュの『異邦人』の主人公ムルソーのイメージが、フランクと重なり合...

  • サガン『悲しみよ こんにちは』

    フランソワーズ・サガンという作家はずっと以前から知っていたのに、ジーン・セバーグの出演した映画をテレビで観たこともあったというのに、ようやく『悲しみよ こんにちは』を読んだ。これまでどうして読まなかったのか、本屋や図書館の書棚から取り出すことも幾度かあったというのに。 今やアンヌ...

  • モンテーニュ «Les Essais» の訳題

    近頃はこの表題をそのまま『エセー』と片仮名に置き換える方式が好まれているが、日本語で読む読者のことを考えると、これは一考を要する訳題ではないかという気がしないでもない。   (菅野昭正)(*1) モンテーニュの «Les Essais» の全訳が『随想録』の題名で初めて出版された...

  • ピアス『まぼろしの小さい犬』

    ベン・ブリューイットは、ごく平凡な男の子で、その性質や才能に、とくべつ人の目をひくようなところはなかった──ただ、とても小さい犬を見ることができるという能力だけはべつだった。(p.141) 仕事がつらかったときに現れたのは... 動物を飼いたいと願ったことがあれば、誰でも一度はベ...

  • ヴァレリー『ムッシュー・テスト』(2)

    『ムッシュー・テスト』は、何遍も翻訳されている。図書館の蔵書を調べた限りで挙げてみると、以下のとおり。(長く『テスト氏』で親しまれてきた表題を『ムッシュー・テスト』と改めた経緯については、4.の解説(4-p.189)に詳しい。) 小林秀雄訳 『ヴァレリー全集2 テスト氏』(筑摩書...

  • 山内義雄『遠くにありて』

    山内義雄(やまのうち よしお、1894-1973)は、ロジェ・マルタン・デュ・ガールの『 チボー家の人々 』の翻訳者でも有名なフランス文学者。本書は没後に刊行された唯一のエッセイで、ポール・クローデルとの親交、愛読したフランスの作家たちの印象(プルーストも含まれる)、ゆかりの人々...

  • 井伏鱒二『荻窪風土記』

     昭和二年の五月、私はここの地所を探しに来たとき、天沼キリスト教会に沿うて弁天通りを通りぬけて来た。すると麦畑のなかに、鍬をつかっている男がいた。その辺には風よけの森に囲まれた農家一軒と、その隣に新しい平屋建ての家が一棟あるだけで、広々とした麦畑のなかに、人の姿といってはその野良...

  • シムノン『メグレと田舎教師』

    「牡蠣はあるかい?」 「今は小潮で、ないんです。」 「それは長く続くのかい?」 「あと五、六日はね。」(宿屋の女中と会話する場面) 「いや、牡蠣はない……。……がないのでね。いや……天気は素晴らしいよ……全然寒くはない」(メグレ夫人に電話する場面) フランス大西洋岸の港町近郊の小...

  • バタイユ『青空』

    バタイユの『青空』を読んでいるとき、学生時代の出来事を思い出した…… サークルの部室には、私と彼女の二人だけだった。ふだんはあまり話す機会のない先輩と後輩が偶然居合わせた格好だ。彼女は優しい笑顔をたたえていたが、芯の強さを秘めており、惹きつけられるところがあった。 ...

  • モーリヤック『夜の終り』

    愛のさなかに人がまとうあの輝きは、その人の生涯が汚れたものであっても、曇りはしない。 1927年に『 テレーズ・デスケルー 』を上梓した後も、自らが造形した人物に関心を抱き続けていたモーリヤックは、1933年から1934年にかけて、『医院でのテレーズ』『ホテルでのテレーズ』そして...

  • ルドゥレダ『ダイヤモンド広場』

    もしも小説が書けるのなら、『ダイヤモンド広場』のような作品が作れたらと思う。読めるものなら、日本語でもなくスペイン語でもなく、カタルーニャ語で『ダイヤモンド広場』を味わえたらと思う。そして、小説の雰囲気とは全く異なって幻滅を味わうかもしれないが、いつかまたバルセローナを訪れたい。...

  • 小倉孝誠『『パリの秘密』の社会史』

    世間ではあまり知られていない(ということになっている)フランスの作家ユジェーヌ・シュー、あるいはウージェーヌ・シュー Eugène Sue, 1804-1857。本書は、作家と作品についてだけでなく、19世紀フランスの文芸シーンを知る上でも、たいへん意義深い一冊だ。 新聞小説とい...

  • シムノン『メグレとベンチの男』

    遁走する男たち 「おわかりでしょう、いちいち繰り返してはいられませんわ。男の人が家庭的に幸福ではなくて、打ち明け話をしはじめると……」 この小説の被害者ルイ・トゥーレのように、実際にはすでに職を失ったり離れたりしているのに、ふだんどおりに朝出勤し、夕方に家に帰ってく...

  • フランス心理小説の系譜

    【 心理小説 】 人間内部の心理の動きに焦点をあて、その分析、観察を主眼とする小説。社会の成員としての人間を外側から描写する写実小説と対比される。 フランスにおいて特に発達した小説の一ジャンルで、人間の心理、ことに恋愛心理の微妙なあやを克明に分析し、彫琢された簡潔な文体で記述する...

  • モーリヤック『テレーズ・デスケルー』

    われわれの行為、われわれの人生というのは、それを一つだけ切り離そうとすると、無数の根が絡み合って引き裂くこともできない樹木に似ているのだ。   家族のものは自分を怖ろしい女とみるだろうが、自分には家庭のものこそ怖ろしいと思う。外見には何も表れぬが、あの人たちは自分を次第に滅ぼして...

  • シムノン『フラマン人の家』

    〔小説の冒頭〕 「ジヴェの駅に着いて、メグレが列車から降りたとき、真っ先に目に入った人物は彼の居たコンパートメントの真正面にいた。それはアンナ・ペータスだった。プラットフォームのこの場所にメグレが紛うことなく降り立つことを予見していたかのように! だが、彼女はそのことに驚いたりも...

  • アガサ・クリスティを読みながら

    御多分に洩れず、私も中高生の頃からアガサ・クリスティを読み始めた。どの作品を読み、どのくらいの冊数を読んだのか、はっきりとは覚えていないが。 はじめにポワロありき... 始めはポワロばかり読んでいた。どちらかといえばドラマのほうが好きだったので(いまでもデヴィッド・スーシェ主演の...

  • モンテイエ『帰らざる肉体』

    信仰という便利なものを持たない人間にあっては、取り返しのつかない過ちをしたということは痛ましい事件です。ぼくたち無神論者には、赦しというものは考えられず、赦免も忘却もない......。われわれは囚人の足についた鉄丸のように自分の過失を引きずって歩き、われわれを迎え入れてくれる大地...

  • 2020年に読んだ小説など

    コロナ禍で家に居る時間が増え、読書量もこれに比例したかと思いきや、それほど本は読まなかった気がする。以前は、通勤の行き帰りにも本を開くことが多かったからだと思う。通勤の時間がなくなって余暇が増えたはずなのに…… あいかわらずのメグレ三昧のなか。ルドゥレダの『ダイヤモンド広場』は、...

  • シムノン『ブーベ氏の埋葬』

     ほんのわずかなことで、物事の様相は一変してしまうものだ。もしも偶然が、これこれの日と時間に、若いアメリカ人の学生を河岸に導くようなことをしなければ。さらには、もしも偶然が、学生がカメラを手にしていることを望まなければ、もしもエピナル版画がブーベ氏のまわりで散乱していなかったら、...

  • 『サン=サーンスの墓』について

    来年2021年は、フランスの音楽家カミーユ・サン=サーンスの没後100年にあたります(1921年12月16日、アルジェで逝去)。10年以上も前になりますが、サン=サーンスやフランス音楽をテーマに『サン=サーンスの墓』というウェブサイトを公開していました。この機会に、別のブログサイ...

  • ビゼー追悼コンサート

    「ピアノ協奏曲第4番」初演コンサート 1875年10月31日、パリのシャトレ座 Théâtre du Châtelet でコンセール・シャトレ芸術協会 Association Artistique des Concerts du Chatelet の演奏会が催された。協会を主宰す...

  • サン=サーンス再びライプツィヒに行く

    「ピアノ協奏曲第3番」初演コンサート 1869年の秋、サン=サーンスは再びライプツィヒを訪れた。 前回(1865年10月) に続き、今回もゲヴァントハウスの演奏会に出演するためである。 1869年11月25日、ゲヴァントハウスはシーズン7回目の定期演奏会を開催した。管弦楽団の楽長...

  • サン=サーンスの海外デビュー

    1865年の秋、サン=サーンスはドイツのライプツィヒを訪れた。サン=サーンスにとっては、8年前(1857年)にイタリアを訪問以来の二度目の海外旅行であるが、前回がプライベートでのいわば研修旅行であったのにたいして、今回はプロフェッショナルな芸術家として、バッハゆかりの地にやってき...

  • シムノン『オランダの犯罪』

    〔小説の冒頭〕 「五月のある午後、デルフゼイルに着いたとき、オランダ最北部に位置するこの小さな町に彼を呼び寄せた事件のことについて、メグレはごく最低限の知識しか持ち合わせていなかった。ジャン・デュクロなるナンシー大学の教授が、講演旅行で北方の国々を周遊していた。 デルフゼイルでは...

  • 村上光彦『イニシエーションの旅 マルセル・ブリヨンの幻想小説』

    マルセル・ブリヨンの一連の作品は、短編小説であれ長編小説であれ、 密儀参入 イニシエーション の旅を主題としている。それらの小説の主人公はすべて旅人である。彼らはときとして、それと知らぬまに、現実の時空から異界の時空に迷い込むこともある。 本書は、フランスの文人マルセル・ブ...

  • サン=サーンスにみちびかれ

    フォーレが描いたサン=サーンスの横顔 高校、大学ではオーケストラに所属していました。当然、実際に演奏する作品を聴く機会が多く、作曲家はチャイコフスキーやドヴォルザーク、ベートーヴェン、ブラームスなどが主流でした。ほかにも名曲、珍曲、演奏の難易度が高そうな曲などを仲間と競うように聴...

  • ジャン・ギャバン主演の『メグレ』

    ジャン・ギャバン Jean Gabin, 1904-1976 はフランス映画界で活躍した往年の大スター。『望郷』(1937)や『霧の波止場』(1938)で人気を不動のものとし、戦後は『現金に手を出すな』(1954)などに主演したほか、『地下室のメロディー』(1963)や『暗...

  • クリスティ『鏡は横にひび割れて』

    親切と思いやり  「でもね、あの妻は──そうねえ、思いやりのあるひとだったとは思えないわ。(she wasn't a considerate woman.) 親切なことは親切だったけど、思いやりは、なかったわ。(Kind, yes. Considerate - no.) ...

  • クリスティ『杉の柩』

     「ほかの人間を激しく慕うってことは、常に喜びよりも悲しみを意味するんだから。でもそれはともかく、そういう経験なしでは、人間は一人前じゃあない。本当に恋したことのない人間は、本当に人生を生きたとは言えないからね」 小説は短いプロローグに、大きく三部で構成されてい...

  • 角田喜久雄『高木家の惨劇』

    加賀美敬介登場 「庁の方においでがなかったんで随分方々探しました。事件です! 今、現場からおかけしているところです。殺人ですよ。どうも一寸妙な所のある事件なんで……被害者は資産家。拳銃でやられています。現場は 西武電車の鷺の宮駅から北へ十二三分 ……え? 兇行の時刻? 三時...

  • アルトー『ヴァン・ゴッホ』

    そして、黒い鴉の群れが、まるで洪水のように、彼の内なる樹木の繊維のなかに流れ込み、かくして、社会は、 最後に激しく沸き立って彼を押し流し、 彼にとってかわり、 彼を殺したのである。 『ヴァン・ゴッホ 社会によって自殺させられた者』は、アルトーが展...

  • ボルヘス『ブロディーの報告書』

    作者の短篇は『千一夜物語』とおなじく、説得することよりもむしろ、人々を楽しませ感動させることをねらったものである。(ボルヘス自身のまえがきより) ボルヘスの作品には深遠で難解なイメージがある気がする。「夢と現実のあわいに浮び上がる「迷宮」としての世界を描いて現代文学...

  • ボルヘス『伝奇集』

    まねごと ... パリの国立図書館の書庫から『失われた時を求めて』の新たな手稿が発見されて以来、人々は好奇心と無視の狭間で揺れ続けている。というのも、いくつかの疑問点をのぞけば、これまでに確認されている草稿と照らし合わせる限り、また厳密かつ精確な筆跡鑑定を行わない限り、 こ...

  • シムノン『メグレ間違う』

    《ルイーズ・フィロン(無職)がカルノー大通りのアパルトマンで、死んでいるところを、今朝、家政婦によって発見された。彼女は至近距離で発射された拳銃で、おそらく昨夜のうちに殺されたらしい。盗みが殺人の動機とは考えられない。メグレ警視がみずからこの捜査にあたっており、警視はすでに手が...

  • ポー『ユリイカ』

    科学に精通している人の目には、ポーの『ユリイカ』で展開される文章はどのように映るのだろう? 『ユリイカ』にはニュートンの万有引力に関する諸法則、ケプラーの惑星運動に関する三つの法則、あるいはラプラスが拡大した星雲説が登場する。しかも、ポーはこれらを取っ掛かりに、時に科学的根拠とし...

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