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  • 小説 死神 第八章 餓鬼

    第八章餓鬼練馬当たりの住宅地だろうか?窓の外には梅畑が見える。固定資産税を安くするために農地にしておきたいのだが、もはや農業をするには手間も暇もなくなった勤め人農家が、形の上での農地を維持するために梅畑を作った時期があった。しかしそれももはや手入れが行き届かず剪定をしていないから徒長枝伸び放題のジャングルのような梅畑になっている。部屋の入り口に車いすが置かれ、玄関の上がり框も部屋のふすまもバリアフリーようにスロープに改造され、手すりがつけられた車いす使用のアパートの一室。百キロを超える太った男が布団に横になっている。部屋に来た瞬間、異様な腐敗臭が気になった。まさか既に?ではなさそうだが障碍者の一人暮らし?誰かが来て面倒を見ているのだろうか?今まで感じたことがない気配に違和感を感じた。「それではこれより作業開始で...小説死神第八章餓鬼

  • 小説 死神 第七章 着物

    第七章着物夜明け間近、ひと仕事終えた村松管理官はマー君とジュンちゃんを連れておでん屋で一杯やるのだと姿を消した。私は集中治療室の廊下に戻り、ベンチに腰かけて、いまだ何の変化もない自分の姿を眺めていた。案外、今集中治療室で眠っている私が見ている夢が今の私なんじゃなかろうか?そうか、これは夢なのかもしれない。目が覚めたら、事故も何もなかったアパートの布団の上だったりして。そうに違いない。そうあってほしい。「いいえ、今まであなたがご覧になってきたのはまがいなき現実なんでございます。」隣に忍さんが座っていた。「あなた、管理官たちと打ち上げに行かないんですか?」「私はまだそのような身分ではございません。ここで次の仕事の指令を待っているのでございます。」「まさか、私が息を引き取るのを待っているわけではありませんよね。」「そ...小説死神第七章着物

  • 小説 死神 第六章 荒れる処置室

    第六章荒れる処置室救急車の音が病院の前で止まり、ナースと深夜当番医が駆けつける。処置室の明かりがつき、消防士の一人が医師に状況を報告する中、ストレッチャーに乗せられた七十代くらいの男性が運ばれていく。相当苦しいのだろう、その顔は苦痛に歪み、時折逆エビのように体をのけぞらす。救急車の中からは家族と思われる若ハゲの男性と、おかっぱ頭の小学生くらいの小さな子供が下りてきた。手には人形と待ち針を持っている小さな子供。目の周りが黒く霞んで眼球が見えない。疫病神だ!「ほ~、今回はマー君のお出ましか。」村松管理官は腕を組んで嬉しそうな顔つきで言った。「マー君って、あの疫病神のお子さんですか?あんなに小さな子供が?」「子供?おめぇさんにはそう見えるかい。マー君はこの道の大ベテランでな。これがまたいい仕事しやがるんだ!それよりお...小説死神第六章荒れる処置室

  • 小説 死神 第五章 集中治療室

    第五章集中治療室集中治療室の私は相変わらず眠ったままで、時折担当のナースが来て数値を記録していく。廊下側の窓に磯村さんの姿が見て、少し遅れて大森食堂の大森夫妻もやってきた。店の営業が終わったのだろうか?否、いつもならまだ閉店になっていない時間なので、早じまいしてきてくれたのだろうか?「まだ、誰も来ていないみたいですね。」磯村さんの問いかけに「佐々木さんは会津の出身だって聞いていたから、ご親族は今こちらに向かっているんだろうね。確か、ご両親は既に亡くなっておられて、お姉さんが一人だと聞いているよ。」大森食堂の店主の嘉寛さんが答えた。”ご親族”という言葉に何か違和感があったが、”ご遺族”ではなかったので、まぁ、そんなものかと思った。「こんないい人が手伝いに来てくれて、店がこれからというときに、不憫な人だわねぇ。」大...小説死神第五章集中治療室

  • 小説 死神 第四章 寿命の部屋

    第四章寿命の部屋瞬間移動とでもいうのだろうか?村松管理官の後ろについて壁を一つ越えたら、桜の木を板にして「寿命の部屋・四号室」と書かれた看板が壁に掛けられ、延々と燭台が並ぶ部屋にいた。天井も高いが、三メートルほどありそうな扉が開くと青鬼とその背中に隠れるようにもうひとまわり大きな赤鬼が入ってきた。でかい!二メートルはゆうに超えている巨人だ!村松管理官は青鬼の前に私を引っ張り出して紹介した。「おう!青柳君!君まで来てもらって悪かったな。この人があれだぁ、とばっちり食っちまった人間界の・・・誰だっけ?」「佐々木です。佐々木孝之です。」と名乗ると青鬼の青柳さんはこちらを鬼のような形相で睨みつけて「寿命の部屋・四号室の管理担当の青柳と申します。この度は私どもの不手際で、佐々木様には大層なご迷惑をおかけいたしまして、誠に...小説死神第四章寿命の部屋

  • 小説 死神 第三章 病院にて

    第三章病院にて病院の集中治療室に緊急手術を終えた私自身が眠っている。それを私がこうして眺めているということは、私自身の意識はないということなのか?倒れたときに頭を強く打ったのだろうか?頭にも包帯がまかれている。この包帯がなくなれば、意識が取り戻せるような気がして手を伸ばしてみるのだが?何度挑戦してもすり抜けてしまう。「だいぶ安定してきたようですね。」私の体から伸びた電線が集結した機械の数値を見てナースさんが独り言を言う。意識があれば、痛いのだろうか?苦しいのだろうか?とても心地よさそうな顔で眠っているので、苦しくはないのかもしれない。集中治療室から廊下に向かって、大きな窓の外に見覚えのある顔がいる。昨年秋からこの春まで派遣で勤めていたファミリーレストランの調理場の磯村さんだ。なぜ彼女がこんなところに来ているんだ...小説死神第三章病院にて

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