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  • 小説 死神 第十四章 もう一つの仕事

    第十四章もう一つの仕事台風の風は先ほどより収まってきたものの、雨は激しくなってきた。病院に姉夫婦が来た。自動車保険の会社との話も一段落し、私の事故の話を聞いて慌てて駆けつけてくれたので、身支度を整えるために一度会津に戻るようだ。私の様態も安定してきたらしい。良くない方向で。姉たちは私の軽のミニバンで会津に帰るのだろうか?毎日クルマに乗っている人たちなので大丈夫だろうけれど天気が気になった。懐かしい顔が来てくれた。同級生の星慎吾ちゃんだ。慎吾ちゃんはこちらで、鉄筋工の仕事をしている。私が建設会社に出向になった時にいろいろ力になってくれた同級生。今日はこの天気で仕事にならないのか?私の携帯電話の住所録に入っているので、姉が連絡してくれたのだろう。集中治療室の窓から私の姿を見るなり、慎吾ちゃんは腰を落として泣き崩れて...小説死神第十四章もう一つの仕事

  • 小説 死神 第十三章 往生とは

    第十三章往生とは私とヤヤさんが出てきた場所は渋谷と言っても、道玄坂を上って右に行った円山と呼ばれるかつての花街。もともとは料亭などが立ち並び、政界財界の二号さんやお妾さんが自分の住まいを逢引の場に貸したのが始まりと言われているが、今はラブホ街になっている。建設会社に出向していた時、この界隈のホテルの改装工事を受注したことがあり、その時にオーナーから街の謂れを伺った。霜枯れた人生だったので、結婚生活の中でもこうしたところに来たことは一度もなかった。昨夜の熱帯低気圧は、いつもとは逆に日本列島に近づくにつれて風速を増し台風となっていた。それでもこういうところに人々は来るのか?「満室」のランプが付き、通りの外ではタクシーが待機している。これだけ精を出して人口が増えないとは。なんと無駄な!私も子供作らなかったけど、霜枯れ...小説死神第十三章往生とは

  • 今年最後の旗日

    勤労感謝の日ですか。このところ天気がよくて、11月3日の休みから昨日まで休みなく山仕事でした。おかげさまで、あちこち筋肉痛も飛び越えて、ボルタレンでもボラギノールでもよくならないこり方をしています。夜は夜で小説の執筆活動なんですが、第一段はとうにできあがっているんです。厳しい校閲も終えまして、後はKindleにアップするだけになっております。ホラー小説なので、どう評価されるか?それはさておき、例年なら12月23日に祝日があったので、今年の旗日もまだ残っておりましたが、今年はこれで旗日がおしまいですね。なんだかねぇ、ここに来てまたニーハオウィルスが飛び交っているようで、予想はしていたんですけどね。それでもこの三連休は結構この界隈にも観光客がおりましたよ。それにしても慣れとは恐ろしいもので、春のロックダウンだかロッ...今年最後の旗日

  • 小説 死神 第十二章 深夜食堂

    第十二章深夜食堂バラックな建物が並ぶ繁華街の裏通りのような狭い路地に私たちは立っていた。新宿のゴールデン街?と錯覚しそうだったが、赤い暖簾に梵語の文字が書かれた間口二間ほどの細長い店に私たちは入っていった。「コ」の字型にせり出したカウンターの両側と正面に椅子が並ぶ店で、両側に五つ、正面に三つの椅子が並び、十三人ほどのキャパシティーの店だ。行員時代に改装資金の融資で伺ったラーメン屋さん。この際にもっと店舗を広く大きくしませんか?と勧めたら、職人堅気の親父さんは、一人ですべての客に目が行き届くのは十三人が限界だと断られたことがある。どれだけ多くの利益を上げるかよりも、どれだけ客に満足できるラーメンを提供するかに喜びを関している人だった。ラーメン一杯五百円として、百杯売って五万円。経費を引いて返済に回せる金額など、細...小説死神第十二章深夜食堂

  • 小説 死神 第十一章 家族

    第十一章家族北病棟から病院玄関まで戻ると、送迎用の自動車に乗り降りする停車場に姉一家がいた。熱帯低気圧が近づいているので、甥の栄太郎が理恵と亮を連れ一足先に帰るようだ。帰る前に私の様子を見に来たのだろう。栄太郎は姉夫婦が大宮にいたころに生まれた子供なので、よく顔を出しては子守の真似事もした。いつの間にか立派な大人になって県庁勤めをしている。震災よりも人災ともいえる原発問題で騒がれる福島県だが、農学部を出て農政で技師をしている栄太郎は風評被害に苛まれながら、県産の作物の安全を訴えて飛び回っていると聞いた。私のイメージの中では哺乳瓶くわえてコロコロと太っていた頃の記憶がいまだに大きいのだが、それだけ歳をとったと言うことなんだろう。姪の理恵に抱かれた亮が車に乗り込むとき、私に向かって手を振った。幼い亮には私が見えてい...小説死神第十一章家族

  • 小説 死神 第十章 北病棟

    第十章北病棟病院の北病棟と呼ばれる隔離病棟にいた。一般的に知られてはいないし、一部の病院関係者でもなければこんな場所に立ち入ることはなかろう。心を病んだ人などが隔離されている病棟だ。村松管理官の姿はなく、私一人が人気のない廊下に立っていた。病室のドアは内からは開けられず、外からのみキーで開けられるドアで、人の目線の高さに分厚いアクリルの窓が付いていた。誰がどう見ても医師やナースとは思えないメイド姿の女の子が立っていた。患者が逃げ出したのでなければ赤い目を見なくても何者かがわかる。まともじゃないと。「いらっしゃいませご主人さま!」と、来るのかと思ったら、「あんた死にぞこないのおっちゃんやね!わてらの間じゃ話題になっとうねん。ようけこないなとこまで来てくれはったなぁ。」妙に気さくな死神だった。「あのう、村松管理官は...小説死神第十章北病棟

  • 小説 死神 第九章 迷い

    第九章迷い私は一人、病院の玄関の外に立っていた。送迎のクルマが横付けになり、診察を終えた患者が家族との運転するクルマに乗り込む。至極当たり前の光景だが、私にはあまりなじみのない光景に思えた。不用意だった。受付ロビーから出てきた律子と義母さんに出くわしてしまった。と言っても、彼女たちに私は見えないのだろうが、一番会いたくない人に会ってしまった気分だ。律子と義母さんは入り口前のベンチに腰かけた。「もっと吹っ掛けてやればよかったじゃないの。まだどこかに隠し持ってるんじゃないの?」義母さんが口を開いた。「それは無理よ。私はあの家と関りが切れただけでもいいの。負い目がなくなっただけでもいいの。」「だって非常識な一家じゃない。勝美の連帯保証の時だって、離婚の時に抜けるなんて言い出してさ、なんであの時あんたが折れて自分が引き...小説死神第九章迷い

  • たまには一言

    五日ごとに一章ずつ紹介している小説「死神」ですが、10月は大の月で1日あるので一日間が開いちゃいますね。お暇つぶしにちょいとお話でもしましょうか。WEB、と言ってもキンドルで出版しようかと思いましてブログ休んで小説書きしていたんです。紙媒体の本しか読んでこなかったのでモニターで見る小説と言うのになかなかなじめない。なんだかんだ言ってもまだ神の持つ情報量に液晶が追い付いていないだけのことなのですが、パッドで読むのは便利と言えば便利。でも深みがない。そんなジレンマを感じながら物語を書いております。今年はコロナ騒動で何かとあわただしく苦しい年になってしまいましたが、あまり情報に振り回されない山里の生活は、特にこの病気がなくても苦しいだけなのでさほど影響がなかったように思われます。写真のような雪深い山里を描こうと思って...たまには一言

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