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  • 枕草子を読んできて(100)その3

    八七返る年の二月二十五日に(100)その32018.11.24暮れぬれば、まゐりぬ。御前に人々おほくつどひて、物語のよきあしき、にくき所などをぞ定め言ひしろひ、涼・仲忠が事など、御前にもおとりまさりたる事仰せされける。「まづこれいかにとことわれ。仲忠が童生ひのあやしさをせちに仰せらるるぞ」など言へば、「何かは。琴なども天人おるばかり弾きて、いとわろき人なり。御門の御むすめやは得たる」と言へば、仲忠が方人と心を得て、「さればよ」など言ふに、「この事もとよりは。昼忠信がまゐりたりつるを見ましかば、いかにめでまどはましとこそおぼゆれ」と仰せらるるに、人々「さてまことに、常よりもあらまほしうこそ」など言ふ。「まづその事こそ啓せむと思ひてまゐりはべりつるに、物語のことにまぎれて」とて、ありつる事を語りきこえさすれば、「た...枕草子を読んできて(100)その3

  • 枕草子を読んできて(100)その2

    八七返る年の二月二十五日に(100)その2桜の直衣、いみじくはなばなと、裏の色つやなど、えも言はずけうらなるに、葡萄染めのいと濃き指貫に、藤の折枝、ことごとしく織り乱れて、紅の色、打ち目などかがやくばかりぞ見ゆる。下に白き薄色など、あまた重なりたり。せばきままに、片つ方はしもながら、すこし簾のもと近く寄りゐたまへるぞ、まことに絵にかき、物語のめでたき事に言ひたる、これこそはと見えたる。◆◆桜の直衣は、とても華やかで、裏の色艶など、なんとも言えないほど清らかで美しいが、そのうえ、葡萄染めのとても濃い指貫に、藤の折枝の模様を、豪華に織り散らして、下着の紅の色や、砧で打った光沢などは輝くばかりに見える。その下には白いのや薄紫色などの下着が、たくさん重なっている。簀子が狭いので、片足は縁から下におろしながら、片足で座っ...枕草子を読んできて(100)その2

  • 枕草子を読んできて(100)その1

    八七返る年の二月二十五日に(100)その12018.11.12返る年の二月二十五日に、宮、の職の御曹司に出でさせたまひし御供にまゐらで、梅壺に残りゐたりしまたの日、頭中将の御消息とて、「昨日の夜、鞍馬へ詣でたりしに、今宵方のふたがれば、違へになむ行く。まだ明けざらむに、帰りぬべし。かならず言ふべき事あり。いたくたたかせで待て」とのりたまへりしかど、「局に人々はあるぞ。ここに寝よ」とて、御匣殿召したれば、まゐりぬ。◆◆あくる年の二月二十五日に、中宮様が、職の御曹司にお出ましあそばした御供に参上しないで、梅壺に居残っていた次の日、頭中将(斉信)のお手紙ということで、「昨日の夜、鞍馬へ参詣していたが、今晩方角が塞がるので、方違えによそへ行く。まだ夜が明けないうちにきっと京へ帰るだろう。是非話したいことがある。あまり局...枕草子を読んできて(100)その1

  • 枕草子を読んできて(99)その4

    八六頭中将のそぞろなるそら言にて(99)その42018.11.5修理亮則光、「いみじきよろこび申しに、うへにやとてまゐりたりつる」と言へば、「なぞ。司召ありとも聞こえぬに、何になりたまへるぞ」と言へば、「いで、まことにうれしき事昨夜侍りしを、心もとなく思ひ明かしてなむ。かばかり面目ある事なかりき」とて、はじめありける事ども、中将の語りつる同じ事どもを言ひて、「『この返事にしたがひて、さる者ありとだに思はじ』と、頭中将のたまひしに、ただに来たりしはなかなかよかりき。持て来たりしだびは、いかならむと胸つぶれて、まことにわろからむは、せうとのためもわろかるべしと思ひしに、なのめにだにあらず、そこらの人のほめ感じて、『せうとこそ。聞け』とのたまひしかば、下心にはいとうれしけれど、『さやうの方には、さらにえくふんすまじき...枕草子を読んできて(99)その4

  • 枕草子を読んできて(99)その3

    八六頭中将のそぞろなるそら言にて(99)その32018.11.1みな寝て、つとめていととく局におりたれば、源中将の声して、「草の庵やある。草の庵やある」と、おどろおどろしう問へば、「などてか、さ人げなきものはあらむ。『玉のうてな』もとめたまはしかば、いらへ聞こえてまし」と言ふ。◆◆みな寝て、翌朝たいへん早く自分の局に下がっていると、源中将の声で、「草の庵はいるか。草の庵はいるか」と、大げさな言い方でたずねるので、「まあ、どうしてそんな人間らしくない者がいましょうか。『玉の台(うてな)』をお探しなら、きっとお返事をもうしあげましょうに」と言う。◆◆■草の庵=寂しい草の庵にいる私を誰が訪れようか。■源中将(げんのちゅうじょう)=宣方(のぶかた)、正暦5年右中将。「あなうれし。しもにありけるよ。うへまでたづねむとしけ...枕草子を読んできて(99)その3

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