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夢見月夜曲 http://yumemizukiyakyoku.blog.fc2.com/

日高千湖のオリジナルBL小説ブログです♪『薄き袂に宿る月影』はこちらへ移動しております。

日高千湖
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2014/02/17

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  • さよなら三角、また来て四角・14

    滝山と2人で窓枠を塗り、ペンキが乾くまで待つ。その間に滝山は、会社の倉庫に眠っていたというディスプレイ棚を組み立て始めた。よく見ると久木原が選んだウッドブラインドと木製の棚と、窓に取り付ける木枠に塗ったペンキの色がよく似ている。「もしかしてブラインドの色に合せてペンキの色を選んでくださったんですか?」久木原は滝山が棚を組み立てるのを手伝いながら聞いた。「はい」「ありがとうございます」「いえ。下手...

  • さよなら三角、また来て四角・13

    定休日の朝。いつもなら太陽が頂点に昇りきるまでベッドで過ごし、起きても一日中ジャージでダラダラと過ごすが、今朝は違う。午前6時にセットした目覚まし時計がジリジリと鳴ったと同時に止めた久木原は、勢い良く飛び起きた。 南出を送り出したのは午前3時頃だった。南出は改装の話を聞くと、「早めに仕事を切り上げて手伝う」と言ってくれた。頼もしい援軍を得た気分だった。睡眠不足は否めないが、身体は心と比例して軽か...

  • さよなら三角、また来て四角・12

    久木原は、ただひたすらに働いた。最初はスタッフの動きに付いていくのに必死だったが、自然と自分がそこに組み込まれていくのを感じながら久木原は働いた。 午前1時になると、橋本が「今日はお疲れさま」と言った。閉店時間になっても客は数人残っていたが、この後はスタッフだけで十分だと判断したようだ。「帰っていいよ」と言われたのが残念なくらい、久木原は仕事に没入していたのだ。名残惜しさを感じながら他の3人にも...

  • さよなら三角、また来て四角・11

    橋本に腕を引っぱられ《SUZAKU》に連れて行かれた久木原は、渡されたギャルソンエプロンを腰に巻きホールに立っていた。バイトは明日からだったのではないか、と言う間もなくホールに出されてしまったがここまで来て「帰ります」とは言えない。《SUZAKU》は広い。食事をした《ビストロ・325》の3倍はあるだろうか。だがスタッフは思ったより少なく、バーテンダーのカンタと、主に厨房を任されている鶴ちゃん、ホ...

  • さよなら三角、また来て四角・10

    オープンキッチンのガラス越しに調理中のシェフを見ながら、菜の花とベーコンのパスタを写真に収めた。白い皿に盛り付けられている菜の花の緑は春を感じる。菜の花の独特の苦味がアクセントになり、店長の志村が絶品ですよと勧めてくれたベーコンの凝縮された旨味もしっかりと感じられる。その味に感動しながらも、久木原は貪欲に全てを吸収しようとスタッフの動きや客の反応にも注意を払った。サラダとパスタを堪能しグラスワイ...

  • さよなら三角、また来て四角・9

    話しは纏まった、とばかりに橋本は立ち上がった。そして久木原に一旦店を閉めさせると、マンションでパン教室をしているという和田を紹介してくれた。 和田は70歳過ぎの上品な女性だった。

  • さよなら三角、また来て四角・8

    華恵は店の改装に必要経費は全て貸してくれる、と約束してくれた。それは大変ありがたい申し出ではあったが、久木原には返すあてなどない。「返せないかもしれません」と言ったが、華恵は「『S-five』が本気で何とかしてくれるんだから、絶対に回収出来るわよ」、と言ってくれた。結局、久木原への信用というよりも、昔からの付き合いのある『S-five』への信用貸しというわけだが、久木原は藁にも縋る思いだ。明後日の手伝い...

  • さよなら三角、また来て四角・7

    興奮気味の華恵から漸く解放された滝山は疲れた表情を見せた。はあはあ、と荒く息を継ぎながら胸を押さえる。そういえば、華恵は岩本にも同じように強烈なハグをしていた。その度に岩本が「助けてくれ!」と叫んでいたのを思い出す。それは午後3時過ぎの恒例行事だった。 あの頃は楽しかった。まだまだ初めてのカフェ経営を楽しむ余裕もあったし、店には夢も希望も充満していた。売り上げが少なくても、明日は、明後日こそは、...

  • さよなら三角、また来て四角・6

    『S-five』の橋本圭介が寄越した

  • さよなら三角、また来て四角・5

    久木原が落ち込もうが怒ろうが、夜は更け、朝はやってくる。立ち上がった久木原は、出入り口のオートロックの暗証番号を岩本が絶対に推測出来ない番号に変更した。もちろん鍵も替えるつもりだ。 一日1本と決めて楽しみにしていた発泡酒も冷蔵庫から消えていた。パンケーキを食べる気力もなく、たった1本残った発泡酒のプルトップを開けた瞬間、絶望が満ちてくる。1本だけ残しておくなんて、泥棒に情けを掛けられたようなもの...

  • さよなら三角、また来て四角・4

    橋本が手を付けなかったパンケーキは、夕飯にする為にラップをかけた。ピラフも勿体無いから、橋本がスプーンを入れた部分だけを捨ててラップをかける。皿に残ったサンドウィッチを頬張った瞬間、惨めな気分になって久木原はその場にしゃがみ込んだ。「これからどうなるんだろう。マグロ漁船は嫌だなあ・・・」一ヶ月の売上金は家賃と仕入れ先への支払いと光熱費に消える。久木原の人件費は全く出ない状態だった。それどころか赤...

  • さよなら三角、また来て四角・3

    ベルの音のおかげで冷静になれた。ここで岩本を起こそうが、蹴ろうが、《ケサランパサラン》の経営状態に変化はない。それよりも大切な客を逃がしてはならないのだ。パンッと頬を軽く叩き、乱れてもいないギャルソンエプロンの裾を直した久木原は店の方に向かって大きな声で言った。「いらっしゃいませ!」「こんにちは」「あっ。お久し振りです」ドアを開け、店に頭だけ突っ込んで微笑んでいたのは、ここを紹介してくれた『滝山...

  • さよなら三角、また来て四角・2

    ドアの向こうは風呂と洗面所とトイレとロッカー付きのスタッフルーム。それからキッチン付きの広い部屋があり、そこは男2人でも十分な広さの居住スペースになっている。華恵によれば、そこは以前は『S-five』が会社事務所として使っていた場所だという。しかも、ビルが古いからという理由で家賃は格安だ。店の立地もさることながら、この居住スペースの存在がここを借りる決め手でもあったわけだ。久木原と岩本はそれぞれが住...

  • さよなら三角、また来て四角・1

    九木原理季(くきはらまさとし)は眠気と戦っていた。2月というのは寒暖差の激しい時期ではあるが、先週と今週は地球はぶっ壊れたんじゃないかと思うくらいの異常気象だった。今年何度目かの雪が積もり、都内の交通機関を麻痺させたかと思えば、翌々日には冬物の分厚いコートが邪魔なくらいまで気温が上昇した。春の陽気に誘われて桜が咲いた、というニュースが世間を賑わせたかと思えば、気温は急降下し再び雪がちらついた。だ...

  • さよなら三角、また来て四角【目次と登場人物紹介】

    さよなら三角、また来て四角【目次】1、登場人物紹介九木原理季(くきはら まさとし)35歳岩本尋武(いわもと ひろむ)33歳南出幸成(みなみで ゆきなり)34歳藤田佳哉(ふじた よしや)37歳華恵 《スイートハニー》のオカマ...

  • 恋とは戦さのようなもの・65【最終回】

    「へえ!じゃあ、蔵野は河野組に引き渡したのか?」「そうですよ」俺が答えたくないのがわかっているから、代わりに秀人が答えた。 圭介くんはミーティングが終わると、すぐに昨日の一部始終を聞きたがった。忘れてしまえばいいとわかってはいるが、やはり後口の悪い物を飲んだ後のような不快感は残っている。石場の件はどうしようもないと理解しているが、他に打つ手はなかったか、とか。俺らには助けてやる義理もないし、その気...

  • 恋とは戦さのようなもの・64

    午前6時30分。アラームが鳴る。隣で寝ている秀人に手を伸ばしたが、秀人の腕の方が早く伸びてきてキュッと抱き締められた。「おはよう」少し擦れた声。耳元で響くから、ゾクリとした俺は昨夜の交わりを思い出してしまう。それを極力隅に追いやって秀人の背中に腕を回した。「おはよう」額にキス。そして頭頂部にキス。体力の限界まで抱き合ってしまった事を少々反省しながらも、秀人の匂いに敏感に反応してしまうのは正直者の...

  • 恋とは戦さのようなもの・63

    ★後半軽く大人向けな表現がございますのでご注意ください!!年齢に達しない方は回れ右でお願いします!! 玄関には、クロエとトラがちょこんと並んで俺たちの帰りを待っていた。「ニャーン」と甘えた声で身体を摺り寄せてくるトラと、控え目に「おかえり」と鳴くクロエ。どちらも愛おしい。「ただいま。良い子にしていたかい?」と言うと、トラは元気一杯にアタッシュケースに飛びついた。「こら、こら」秀人が横からトラを捉ま...

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