清は帰りの電車に乗りながら、瀬奈との短いながらも濃密な日々を思い出していた。 何かメールするべきかとも考えたが、結局しないことにした。 そうこうして草加駅に着き、自宅へ歩き始めた頃には、清は解放感に溢れていた。 段々と罪悪感は薄れ、瀬奈との関係を終えることができた喜びが込み上げてきたのだ。 今後うまく友達としてやっていけるかは分からなかったが、今は考えないことにした。 帰宅し、さっさと…
清は必死に気持ちを落ち着かせようとした。 このタイミングでその話題を振ってくるとは、夢にも思わなかった。 そして同時に、強い怒りが込み上げてきた。 仮にも誕生日を祝っている場なのに、もしかしたら一気に2人の関係が壊れてしまうかもしれない話題を出すだろうか? 清にとってとてつもなく後味の悪い誕生会になってしまう可能性のある話題を出すだろうか? 清には全く理解できなかった。 今日は確かに楽しい時…
それから3週間程経った5月の中旬、清は大学から歩いて数分の所にあるカフェにいた。 図書館で借りた、『ビートルズ音楽論』という本を読んでいたがすぐに飽き、ぼーっとしていた。 (ビートルズは大好きだけど、そんなに難しい説明されてもなぁ・・)なんてぼんやり考えていると、急に女の声がした。 「清じゃん!偶然だね!何してんの?」 声の主は瀬奈だった。そういえば、このカフェにはよく来ると以前に言って…
清は40分ほど電車に揺られ、集合場所の池袋に到着した。 清の家は埼玉県の草加市にあるのだが、友人と会うときは都内が多いので、移動も一苦労だ。 そして、バンドメンバーの森田と広井と合流すると、スタジオへ向かった。 森田と広井は2人とも高校時代の先輩で、森田は19歳のベーシスト、広井は20歳のギタリストだ。清はドラムを担当している。 元々大の音楽好きだった清は、15の頃にクラスメートとバンドを始めてか…
次の日、清は昼過ぎになってようやく目を覚ました。 そして、もうすぐ五月だというのにまだコタツを置いたままのリビングへ行き、冷蔵庫を漁った。 まだ昨日の酒が抜けていなく、喉がカラカラだった。 そうこうしていると母の声がした。 「清、今日学校じゃないの?」 「あーーー・・今日は休講らしいよ・・」 恐らく休講ではないだろうが、清はぶっきらぼうにこう答えた。 「そう。昨日の残りでも適当に食べて…
「起きて!清!」 そんな大きな声で清は目を覚ました。 まだまだ眠かった清だが、瀬奈がしつこく揺さぶってきたために仕方なくベッドを出た。 「おはよう瀬奈・・もう起きんの?まだ8時じゃん・・」 「今日はちゃんと一限から学校行くっていったじゃん!清も一限でしょ!!」 「あーはいはい・・」 瀬奈は清と同じ大学に通う女で、清とはまだ出会ったばかりだが体の関係は持ってしまっている仲である。 …
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