夏の城 六

兵たちの列が割れた。背後から現れたのは、秀吉の近習の一人、戸田采女である。三成がうんざりした顔をする。采女は陰間かと思われるほどなよなよしている。青白い顔の中…

夏の城 伍

三成を見て門兵が一礼する。ここから先が天守閣の予定地らしい。入り口には竹矢来が組まれ、出入りする人足や荷駄が厳しく調べられていた。二人に気づき一礼した門兵は、…

夏の城 その四

「お待ちくだされ、左近殿」「うるさい」左近の足は止まらない。「最初にお主と約定を交わした時にも言ったが、わしは秀吉殿の家臣ではない。あくまで、石田三成の客分だ…

夏の城 参

大和の要、筒井の家中にあり、「鬼左近」の異名をとった男だった。「良いじゃないか、周りに人はいないんだし。それに昨日はほれ、お前さんの出世祝いだったんだから文句…

夏の城 弐

人影の一つは大きく、一つは小さかった。小さい方が一歩先を歩いている。小さい方は、せかせかと足を運んでいる。それに対して、大きい方はゆったりとした足取りである。…

夏の城-壱-

長い階段が続いていた。天にも届くか、と思われるような石段である。その石段を、砂糖を見つけた蟻の群れのように、絶え間無く人が行き来している。登る列。下る列。いず…

左近と三成

はじめまして、まさみつです。思うところあって、書き溜めた小説をupしていこうと思っています。よろしくお願いいたします。