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香水ドラマストーリー http://doggyhonzawa.blog.fc2.com/

香水から連想するドラマをショートストーリーにしています。こだわりの香水レビューやランキングも紹介。

香りは記憶を呼び起こす。 香りは、深層心理に働きかける。 香りがテーマになったショートストーリーや香水のレビューを紹介しています。

ドギー本澤
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2013/07/06

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  • ヴィルジル シルヴェーヌ・ドゥラクルト

    香水のレビュー(満点は☆7)☆☆☆☆☆★★(5点)“春休みのロッカー室に 忘れたものをとりに行った ひっそりとした長い廊下を 歩いていたら泣きたくなった”シルヴェーヌ・ドゥラクルトのヴァニラコレクション香水の1つ、ヴィルジル(VIRGILE)の香りに包まれているとき、自分はいつも松任谷由美さんの「最後の春休み」のフレーズとメロディを思い出す。VIRGILEとは、共和政ローマ末から活躍した詩人、ウェルギリウスの仏語表記だ。...

  • Punks dead ~Room1015 チェリーパンク~

    ☆☆☆☆★★★(4点) 卒業式が始まろうとしていた。俺は右手を学ランのポケットにつっこんで、周囲のざわめきに吐き気を覚えながら、長い廊下で入場を待っている。みんなぶっ飛ばしてやりたい。黒い頭が一列に並んでいる。ニヤニヤしてる奴、前の背中をこづいてる奴、もう泣きそうになってる女、それをなだめてるフリの女。ミンナ ブットバシテ ヤリタイこの学校には差別と嘲笑と偽善と欺瞞しかなかった。それを学べたことは有...

  • ジョー・マローン ウォーターリリーコロン

    香水のレビュー(満点は☆7)☆☆☆☆★★★(4点)ウォーターリリー。スイレン。睡蓮といえば、印象派の画家クロード・モネの「白い睡蓮」を思い浮かべる。光まばゆい庭園の池。水面に広がる円い緑の葉、そこから白やピンクの花々が日の光に向かって咲いている風景。ジョー・マローンのウォーターリリー・コロンは、2020年春にリリースされたブロッサムコレクションの1本だ。同じく新発売されたユズコロンと、復刻したシルクブロッサム...

  • サノマ 4-10

     香水のレビュー(満点は☆7)☆☆☆☆☆★★(5点)恋心。罪びとのときめき。涙のインクでしたためた狂おしい思い。彼女はその手紙に封蝋をして、トランクの棺桶にそっと入れる。何通も書いては、それを白百合の花にはさんで。それは決して届かない愛の手紙。片恋の葬送のように。サノマの4-10は、ブランドを興した渡辺裕太氏がガルシア=マルケスの小説「百年の孤独」の1シーンから着想を得て創った香水だ。同じ男性を好きになっ...

  • ちょうちょ畑でつかまえて ~シャッセ オ パピヨン~

    ☆☆☆☆☆★★(5点)「ねえママ、リボンにママの香水つけてー。」「香水?あ、シャッセ・オ・パピヨン?」「うん。あの匂い、だーい好き。つけてつけてー!」ちょっと待ってね。そう言ってドレッサーから香水を取り出す。金色キャップのシャッセオパピヨン。そう言えば、最近つけてなかった。そう思いながらソファーに戻る。座った瞬間、娘がひざの上にドン!と座ってくる。重っ!!いつの間にこんなに重くなったの?こんなんで来月の...

  • フエギア1833 デュナス デ ウン クエルポ

    香水のレビュー(満点は☆7)☆☆☆☆★★★(4点) 夏の夜。女の息づかい。黒い闇を照らすオレンジの灯り。はぎとられたベール。エキゾティックな瞳。浅黒い肌に鼻を近づける。ウードを焚きしめた狭い部屋の中は、焦げた煙の波が漂っている。彼女の肌は汗ばみ、塩辛い海の味がする。日に灼けたアンバーの匂いとウードの紫煙の中で、灯りに照らされた琥珀色の肉体は砂丘のように稜線を描き、幾度もなめらかに波打ち、その姿を変えて...

  • ゲラン シャリマーフィルトル

     香水のレビュー(満点は☆7)☆☆☆☆☆☆☆(7点)参りました。素直に。これはすばらしい香り。誰もが是非一度は肌にのせてみてほしい香水。超お薦め。ゲランのシャリマー・フィルトル・ドゥ・パルファン。この見事なバランス感覚に脱帽。ゲラン5代目調香師ティエリー・ワッサーと彼の調香チームの真の実力を見た。もうワサ夫とか言わない。(←最初から言わないように)世界初のオリエンタル香水として今なお燦然と輝くゲランのシ...

  • バイレード ブラックサフラン

     香水のレビュー(満点は☆7)☆☆☆☆★★★(4点)お前は誰だ?どこから来た?どこに行くんだ?で、一体、何のために生きてるんだ?誰かの声が聞こえる。わからない。わからない。わからない。世界はあまりに広大で、残酷で、矛盾に満ちていて、常に混沌とした曖昧な色で自分の前に広がっているだけだ。はっきり分かること。それは孤独ということ。そしてあんたが満足するような答えなど、まだ何一つ持ちあわせちゃいないってこと...

  • ペンハリガン ローイングラドクリフ

      香水のレビュー(満点は☆7)☆☆☆☆☆★★(5点)「ちょっとマシュー。大変なことになったわよ!」フローラが言う。「何?今度は一体何だい?」双子のマシューがうんざりして返す。「ラドクリフが、遂にいなくなったわ。」「え?ラドクリフさんが??」「そうよ。いつかこうなるんじゃないかって思ってたあたし。しかもドロシア叔母様とボーレガードも、どこかに行ったっきり戻ってないわ!」双子の妹のドヤ顔を見ながら、...

  • フラッサイ ブロンディーヌ

     香水のレビュー(満点は☆7)☆☆☆☆☆☆★(6点)長い間、香水の旅をしてきた。そしてまた一つすばらしい香水と出会えた。フラッサイのブロンディーヌ。この香水を肌にのせたとき、一筋、迷いの森からの出口が見えたような気がした。フラッサイは、2013年にアルゼンチンのブエノスアイレスでブランディングされたジュエリー会社だ。しかしながら創業者のナタリア・オウテダ女史は、長年ニューヨークのクエスト、ジボダンで香水マ...

  • キリアン ローリングインラブ

     香水のレビュー(満点は☆7)☆☆☆☆☆★★(5点)キリアンのローリングインラブはとても危険な香りだ。深紅のボトルに秘められたジュース。そこにはどんなに濃厚でセクシーな香りが潜んでいるのかと想像すると、たいてい肩すかしをくう。このセンシュアルなレッドボトルに充填されているのは、意外にも、とても穏やかでしっとりとしたクリーミーな香りだ。ローリングインラブは、最初から最後まで、とてもマイルドなアーモンドミ...

  • ゲラン ランスタンマジー

     香水のレビュー(満点は☆7)☆☆☆☆☆☆★(6点)女性は、ある日突然天使になる。美しく変貌する。それは緩やかな変化ではない。「キレイになりたい」本気でそう思った瞬間、願いはかなう。美の女神は突然、天空から舞い降りる。ゲランのランスタンマジーの香りを嗅いでいると、そんな戯れ言も信じたくなる。整形とか吸引とかそういうことだけではない。女性が本気で「美」を目指したとき、その心や体に起こる変化は本当に劇的だ...

  • セリーヌ パラード

     香水のレビュー(満点は☆7)☆☆☆☆☆☆★(6点)「本当にいい男」の香りを嗅ぎたいと思ったら、迷わずセリーヌのパラードをお勧めする。それは反逆のロックデザイナー、エディ・スリマンが、もてる力の全てを賭した新生セリーヌの看板的な香りだからだ。「2018年、エディ・スリマンがセリーヌの全デザインを統括する」このニュースがファッション界を駆け巡ったとき、世界はどよめいた。麗しきフレンチラグジュアリーを愛した女...

  • この身焦がして ~フレデリック マル ムスク ラバジュール~

     香水のレビュー(満点は☆7)☆☆☆☆☆☆☆(7点)あの人が好きでたまらない。毎日頭から離れない。気が付くとあまり息を吸ってない。吐息ばかり。苦しい。あの人が恋しい。自分にだけ笑っていてほしい。あの人の匂い。ムスクラバジュール。身をよじるほどの思い。それは突然。熱病のように来た。「ヤバい。好きになっちゃだめ。」そうアラートが鳴った瞬間。心のブレーカーはもう落ちていた。目と耳がレーダーのように。あの人だ...

  • トム・フォード ビターピーチ

     香水のレビュー(満点は☆7)☆☆☆☆☆★★(5点)ビターピーチはあざとい。あざとすぎる。その名を「苦い桃」と額面どおりに受け止めてはいけない。これは間違っても「ビターピーチ大好き!ビターピーチ最高!」などと人前で大声で連呼していい言葉ではない。特に英語圏では。2020年の発売以来「甘くて芳醇な桃の香りの可愛らしい香水」と巷で評判のビターピーチ。特に香水にあまり詳しくない方にも人気が高まっている。それはい...

  • ルイ・ヴィトン クールバタン

     香水のレビュー(満点は☆7)☆☆☆☆☆★★(5点)世界って、たった一人の人と出会うだけでこんなにもキレイに見えるんだ。西に傾いた太陽がキラキラと輝いている。予約してたホテルのシングルはキャンセルして、どこか今宵の宿を探そう。昨日までは自分一人だった。でもどうやら今夜は、そうならない。旅先で出会った二人。どちらも一人旅だった。出会った瞬間びっくりした。見つめ合ったまま、目が離せなくなった。「え?」「え...

  • エラケイ サガノの詩

     香水のレビュー(満点は☆7)☆☆☆☆★★★(4点)エラケイの「サガノの詩」は、京都の嵐山にある鬱蒼とした竹林のイメージから創られた香水だ。見渡す限り、青々とした数万本の竹。それらが天に向かって真っ直ぐにそそり立つ姿はどこか幻想的ですらある。その竹林の間を縫うように整備された遊歩道は「竹林の小径」と名付けられ、京都観光の中でもとりわけ人気のスポットとなっている。風情ある茶色の小柴垣が両側に並ぶ竹林の小...

  • フエギア1833 ムスカラアピス

     「あ、すごい。これハチミツの香りがする!」六本木。グランドハイアット内、フエギア1833。うす暗い店内にライトアップされた美しい香水ボトルたち。そこにかぶせられた逆さフラスコの球面が行儀よく並ぶ姿は、どこか非日常を思わせて心がときめく。と同時に「香水なんてよくわからない」と思っている方にしてみれば、興味はあってもかなり敷居が高く感じられるラグジュアリースペースかもしれない。だからだろうか。緊張し...

  • ミンニューヨーク シャーマン

     人には見えない物が見える。聞こえない音や声が聞こえる。そして、誰も気付かない匂いを嗅ぎとることができる。そういう人たちがこの世界にはいる。神のお告げを聞く者、精霊のメッセージを伝える者、そして死者の思いを語る者。彼らはときにシャーマンと呼ばれる。シャーマンは広義によると、自らがトランス状態になることで超自然的存在と交信する現象を起こす者のことを言う。超自然的存在とは、霊的存在(神霊、精霊、死...

  • セルジュ・ルタンス フュムリテュルク

     目を見張るまばゆい装飾に彩られたトプカプ宮殿。その一番奥に男子禁制の特別なエリアがある。そこはスルタン(王)に仕える女性達だけが千人以上暮らす禁断の地、ハレム。全盛期、東ヨーロッパから西アジアにかけて広大な地域を支配し、地中海沿岸のキリスト教国家を心底脅かした強大な存在、オスマン帝国。トプカプ宮殿は、そのオスマン帝国のスルタンが住んだ広大な居城だ。スルタンをはじめ、常時八千人の家来や商業者が...

  • オーケストラパルファム ピアノサンタル

     少し早く目覚めた朝、カーテンの隙間から外の様子をうかがう。重たげな空、ゆっくり流れている鉛色の雲。夜半から降り続いた雨はどうやら上がったようだ。コーヒーを淹れて窓の外を眺めながら口元に運ぶ。温かい湯気とともに立ち上る香ばしい香り。この気分に合うBGMは?と考える。選んだのはピアニスト中村由利子の「風の鏡」。曇り空の向こうに柔らかなピアノのメロディーが流れてゆく。ピアノ。ピアノの音。弦をたたくハ...

  • ピュアディスタンス ルビコナ

     あの人の心をどうしても惹きつけたい。誘いのポーズや言葉をあれこれ並べず、ただあの人の前で微笑むだけで抱きしめてもらえるようなワガママな魔法がほしい。そんなときに使ってみてほしい香水が世界同時発売された。香水はいつの時代も女性を魔法少女に変える。ターゲット特定済み。出会う状況確認OK。髪とメイクを決めて、服と靴を実装したら、あとは禁断魔法を詠唱するのみ。すれ違いざま空気のようにふんわりと相手を...

  • ルラボ アナザー13

     ルラボのアナザー13は、とても不思議な香りの香水だ。うすいミント水のようだなと思えば、冷たい金属の香りがするときもある。付けてしばらくすると乾いた木の香りもしてくるし、ときに酸味があるフルーティーなタッチが感じられることもある。とらえどころがなくて透明感がある香り、それがアナザー13だ。アナザー13は作られた経緯も異色だ。2010年、英国のファッション・アート・カルチャー雑誌“AnOther magazine(アナザ...

  • トウキョウミルク デッドセクシー

     暗い森。開けられた棺桶の蓋。焼けた古城。秘密の地下室。夜な夜な廃墟から聞こえるという伯爵令嬢の歌声。デッドセクシー。そんな世界観が妙に似つかわしいトウキョウミルクという香水ブランドがある。正確には「あった」になるだろうか。かつては輸入代理店があって日本でもよく見かけたが、代理店は撤退し、今や日本でトウキョウミルク系の香水は見かけることがなくなった。とても寂しい限りだ。トウキョウミルクの香水は...

  • モルトンブラウン ミルクムスク

     ミルクムスク。これはやられた。この名前を聞いただけで超絶嗅ぎたくなるすばらしいネーミング。もう名前で勝利確定系。閉塞感と孤立感、不安感が強い今の時代に、ミルクのように安らぎを与える香りだろうか?ミルクムスクは世界を救うだろうか?(←そこまで言うか)ミルクムスク。この単純にして今まで誰も思いつかなかった魅力的な名前の香水をリリースしたのはモルトンブラウン。英国のブランドで、どちらかというとトー...

  • ディオール ホーリーピオニー

     世に美しい人はいるもので、どんな所作をしても麗しい方をかつて日本では花にたとえてこう言った。「立てば芍薬(シャクヤク)、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」。ただここに使われている花の名を英語にすると、やや微妙だ。「立てばピオニー、座ればピオニー、歩く姿はリリーフラワー。」ルー大柴か?(←それも微妙なツッコミだな)そう。実は芍薬も牡丹も、英語ではまとめてピオニーとされている。芍薬と牡丹、この2つは...

  • ディメーター チェリークリーム

     「デート前夜のつめの色」「空いっぱい羽根を広げた火の鳥の夕焼け色」「虫かごを持って走った夏休みの野菜畑色」。なんて詩的なネーミングだろう。これらは日本の通販ブランド、フェリシモが出している高級色鉛筆「500色の色えんぴつ TOKYO SEEDS」の1本1本に付けられた名前だ。そのポエみさ全開のネーミングは、カタログで色と見比べているだけでとても楽しい。で、朝から久々にトムフォードのロストチェリーをつけよう...

  • ディオール ジャドール

     名香、ジャドール。2011年、フランスの香水年間売り上げ高で初めてシャネルのN°5を抜いて1位になった歴史的な香水。1999年の発売以来売れ続け、今やディオールパルファムの看板商品となっているジャドール、一体なぜそんなにジャドールは売れているのか?ジャドールを調香したジボダン社の女性調香師カリス・ベッカーは、この作品の成功について次のように語っている。「ジャドールはパーフェクトストーム。それは、香り、価...

  • レバンゲルボワ 2018ロソトニック

    レバンゲルボワは時の流れを刻む香水ブランドだ。和訳すると「ゲルボワ公衆浴場」。それはパリ文化の中心地として百年以上の歴史を重ねてきた特別な場所。19世紀末に作られたゲルボワ公衆浴場は、当時悪臭がひどかったパリ市民に受け入れられただけでなく、かつて哲学が語られたローマ風呂のごとく、時代を先取る芸術家が集うサロンとしても機能していた。マネ、ルノワール、プルーストらが顔をそろえていたという。その後、レバン...

  • エラケイ オカバンゴの水面

     ここに「オカバンゴの水面(みなも)」という名の香水がある。なんて詩的なネーミングだろう。オカバンゴとは、アフリカ南部にある内陸国ボツワナで一定期間だけ見られる「オカバンゴ・デルタ」という大湿原のことだ。日本の四国全体の面積以上に広いこの大湿地は、5月~9月までの間だけ砂漠に出現し、さまざまな野生動物や植物の命を支えるオアシスとなる。それは、雨季に降った大量の雨を集めたオカバンゴ川がカラハリ砂...

  • ニシャネ アニ

    どこまでも続く緑の平原。ホリゾントの青空。灼熱の太陽が露出した岩肌を熱し、四方から吹く風が入り乱れ、深い谷を渡ってゆく。その台地の上に小さな三角屋根の建物が建っている。千年以上前に建てられた教会の遺構だ。あたりには、同様に朽ちかけた教会が草原の中、点々と見え隠れしている。ここはトルコ共和国にあるアニ遺跡。かつて東西交易で栄えた古代都市のあった地。ニシャネのアニは、このアニ遺跡をテーマにした香水だ。...

  • カリフォルニアドリーム ルイ・ヴィトン

     夕暮れの海。日が沈もうとしている。落日の光が、水平線に近い空を黄金色に染めている。イヤホンからイーグルスの「ホテル・カリフォルニア」が流れてくる。「暗い砂漠のハイウェイ 涼しい風が髪をなびかせる コリタスの温かい匂いが あたりにたちこめる」コリタスは砂漠に咲く花だという。だが誰もその花を見たことがない。それはある葉っぱの隠語。メキシコ語のスラング。一日を終えてぐったりとした心と身体、夢を見さ...

  • エルメス オードゥシトロンノワール

     黒いレモン。黒い月。闇を彷徨う者。エルメスのオードゥシトロンノワールを初めてつけたとき、その印象から何の脈絡もなくそんな言葉が思い浮かんだ。エルメス専属調香師、クリスティーヌ・ナジェルが、多くの柑橘フルーツから香りのキー素材を探していたとき、一番強く心惹かれたのがこのシトロンノワールのインスピレーションの基になった「ブラックレモンの香り」だという。ブラックレモン、聞きなれない言葉だ。正確に言...

  • アールフレグランス ティーブレイク

     「あー、紅茶の香りがする!」アールフレグランスのティーブレイク、この香水をつけた瞬間、そんな感想をもらす方が後を絶たない。お茶の香りをモチーフにした香水は実はとても多い。緑茶、白茶、マテ茶、烏龍茶エトセトラ。そして紅茶をキーノートにしたフレグランスもたくさんある。だが、ティーブレイクの香りはその中でも群を抜いて「紅茶」だと思う。なぜならティーブレイクは、日本人に昔からなじみ深いあの黄色と赤の...

  • キリアン ムーンライトインヘヴン

     青い闇、白い月。秘密めいた南国の夜。男と女は今夜一つになる。血の色の夕日が海に沈む。リゾートホテルのガーデンバー。宵のぬるびた風。汗ばんだ2人の肌。男と女が傾けるカクテルグラス。遠く聞こえる民族音楽の音色。次第に濃くなってゆく闇。それらは濃密な夜の到来を告げる予兆。ここは楽園なのか?それとも冥府の入口?ムーンライト・イン・ヘヴン。この香水は、キリアンが自身のタイのハネムーンをモチーフに作った...

  • ナルシソロドリゲス フォーハー オードトワレ

     たとえあなたの前で下着を脱いでも、私の心は絶対に見せない。ナルシソロドリゲス・フォーハー・オードトワレ。この香水はそう語りかけているようだ。パウダーピンクのボックスから取り出すのは、ボトルの中身が見えない漆黒のボトル。ガラスボトルの内側を黒く塗装するという意匠の意味は「女性の秘密」「女性の心の闇」だろうか。ピンクの下着はあえて男の手に任せ、男の小さな征服欲を満たしてやる。だがその瞬間、本当に...

  • ハニーハントの思い出 ~ズーロジスト ビー~

     PCでテレワークしながら、時折、ビーの香りをそっと嗅いだ。付けてから4時間、ハチミツの香りは穏やかなスイートになって消えていくようだった。最後はインセンスのような煙たさをもったウッディな雰囲気だな。そう思ったとき、ラインが入った。娘からだった。「やった!再開したパークのチケット、とれた!!」「え?マジか?」そのまま返した。喜んでジャンプしてるキャラスタンプがすぐに送られてきた。「よかったな!」...

  • ケルゾン ケリバー

     「初めての夜明け」と聞いたら、あなたは何を思い浮かべるだろう?勉強や仕事で初めて徹夜してしまった日。初めて友達と朝まで遊んだ夜。そして大切な人と一緒に迎えた初めての朝。人それぞれに初めての夜明けがあるはず。そんな「初めての夜明け」と銘打った香水がある。ケルゾンからリリースされているベチバーの香水、ケリバー・オードパルファムだ。ケルゾンは2013年にブランディグされたフランスのアロマブランドだ。ポ...

  • フエギア1833 キロンボ

     フエギア1833のキロンボは、とてもヘヴィーな名前の香水だ。その名の表すもの。「逃亡奴隷社会」。かつて植民地時代のブラジルで、何百万人もの黒人たちがアフリカから連れてこられ、サトウキビプランテーションで過酷な労働を強いられた。彼らの多くは20歳になるまでに亡くなったという。そこで彼らは脱走し、北東部のジャングルに逃げ込み、先住民ナティーボらと共に密林の奥でひっそりと生きる道を選んだ。その集落や社会...

  • ロクシタン ヴェルドン

     「私に似合う香水を教えてください。」ときどきそう聞かれることがある。「この人、香水に詳しそう」という流れからくるのだろう。ただ、正直言ってこれほど難しい話はない。特にその方の顔も趣味も知らないまま、SNS上の文字のやりとりだけで聞かれるととても困惑する。それは、見も知らぬ方に「私に見合う恋人や親友はだれか教えてください。」と聞かれているようなものだからだ。そこで大概の場合は丁重にお断りするよう...

  • アムアージュ ゴールドマン

     「金は必要ならいくらでも出す。ただし、作ってもらいたいのは本当に最高の香水だ。」そんな注文をされたら、あなたならどうするだろう?かつて石油王国オマーン王家の長老からそんな命を受けて、世界最高の香水作りに挑んだ一人の名調香師がいた。彼の名はギ・ロベール。このオファーに対して、ギ・ロベールは世界中の高価な精油を集め、それらにオマーン名産のフランキンセンスをオーバードーズした超贅沢な香水を作ろうと...

  • ルイヴィトン アフタヌーンスイム

     「カリフォルニア!そりゃーもう何たって青い空!オレンジはうまいし、海はきれーだし、気候はいいし!」(イーヴ・ルチアーノ)漫画家、吉田秋生さんの初期の名作「カリフォルニア物語」の冒頭、西から東へ向かう主人公ヒースとめぐりあったイーヴは、彼がカリフォルニアから来たというだけで感激し、彼の後ろをついて歩く。そこから彼らの旅が始まる。憧れのカリフォルニア。そんなイメージを持つ人はイーヴ以外にも多い。...

  • パルファムドニコライ ローミクスト

     パルファム・ニコライのローミクストは、「ミックスした水」という名の爽やかな香りだ。2010年リリース。価格は30mlボトルで6600円(税込)。それを高いと思うかどうかは人それぞれだが、調香したパトリシア・ニコライは、あの香水帝国ゲラン家の血を受け継ぎ、フランスの香水歴史博物館とも言うべきオスモテックの二代目代表でもある確固たる人物で、時代が時代ならゲラン専属調香師になっていたかもしれない実力をもつ方だ...

  • バッジェリーミシュカ EDP

     伝説の香り、バッジェリーミシュカ。「世界香水ガイド2」でタニア・サンチェスが最高点をつけながら、なかなか世間に流通せず、多くの人が知らない香りとして有名だ。現在もほぼどこにも見あたらず、廃番になったのかどうかも定かでない作品。愛香家の方もいつか試したいと思いながら、なかなか出会えていないミステリアスな香り、バッジェリーミシュカEDP。その秘密に迫る。バッジェリーミシュカはブランドじたいを知らな...

  • パルルモアドゥパルファム ユヌトンドゥローズ

    甘く華やかなダマスクローズの香りは、人の心をしっとり落ち着かせる効果があるという。パルル・モア・ドゥ・パルファムのユヌ・トン・ドゥ・ローズは、そんなダマスクローズのふんわりフルーティーな香りがする穏やかなバラの香水だ。2018年、伊勢丹サロンドパルファンで日本初上陸したパルルモアドゥパルファムは、名調香師ミシェル・アルメラックを父にもつベンジャミン・アルメラックが、2016年にフランスで立ち上げた香水メゾ...

  • トバリ トワイライトロマンス

    日本人が挙げる「世界三大美女」の一人、小野小町をイメージしたとされる香り。平安時代の六歌仙にして、その出自、容姿ともいまだ謎に包まれており、ミステリアスな美女として古今東西さまざまな逸話が語り伝えられている小野小町。トバリはこのトワイライトロマンスを2019伊勢丹サロンドパルファムでデビューさせ、それ以後も伊勢丹新宿店限定にしている。50mlで13200円(税込)。まさに伊勢丹新宿シグネイチャーといった作品。...

  • ディオール ラッキー

    最初はたくさんいる友達の1人だった。特にめだつ人でもなかった。けれど、気がつくといつもそばにいて笑っていた。そしていつのまにか、かけがえのない人になっていた。そういう友達や恋人がいる人はとても幸せだ。そして、ディオールのラッキーは、どこかそんな大切な人を思わせる香水だ。メゾンクリスチャンディオールを訪れると、いつも気分が華やぐ。清潔感あふれる白い店内、そこには色とりどりの香水ジュースで満たされたシ...

  • ブルガリ ブループールオム

    家にいる時間が多くなった。世界は目に見えない物であっという間にブルーになる。そう思うことが多くなった。せっかく家にいるのだから、心安らかに過ごし、自分らしくありたいと強く思うようになった。だからできるだけ穏やかで、柔らかい香りをそばに置こうと思って、久しぶりにブルガリのブループールオムの香りを嗅いでみた。そして驚いた。そこには、湯上がりの赤ちゃんをそっと包みこむ柔らかなタオルやベビーパウダーのよう...

  • ジョーマローン バイオレット&アンバーアブソリュ

    紫は心が本当に落ちているときに選ぶ色。そんな話を聞いたことがある。カラー心理学の詳細は知らない。ただ自身の経験から言っても、そんな感じあるかもしれないなと思う。最近の世情を反映してか、ここのところ、気分をリフレッシュするためのライトなシトラス香か、紫色を思わせるバイオレットやアイリス香を選択することが多かった。そんな紫色の香りの中で、よく手を伸ばしていたのが、ジョー・マローンのバイオレット&アンバ...

  • セルジュルタンス グリクレール

    世界が闇に包まれている。人々は日々のニュースに怯え、不安は加速し、疑心暗鬼が世界をさらに暗くする。もしそう感じることがあったら、おだやかでライトな香りを探してつけてみるといい。よい香りは人の心を助ける。心が強くなれば身体も強度が上がる。免疫力は心が上げていくものだ。セルジュ・ルタンスのグリクレールは、そんなとき試してみてほしいラベンダーの香水だ。グリクレール、「淡い灰色」と名付けられた香り。グリク...

  • 花冷えの夜 ~ディオール サクラ~

    花冷えの夜だった。「一緒に夜桜が見たい」とサクラが言ったので、彼女の誘いにしぶしぶ応じて、深夜の公園に繰り出していた。それでも、にわかに冷え込んだ夜気にあてられ、ぼくは来たことを後悔し始めていた。そんな気持ちなどおかまいなしに、サクラは満開の桜を見上げながら、軽く鼻歌を口ずさんでいる。淡い光を放つ提灯が深夜の道行きをぼんやり照らし出している。「なあ、寒いからそろそろ…」そう言いかけたときだ。「ね、...

  • プラダ プラダオム

    「人の顔は、90%左顔の方が美しい」そんな研究データがある。それは大脳が2つに分かれていて、感情や感性を司る右脳と論理的思考を司る左脳が、左右に交差して体につながっていることに起因する。そのため、左右の顔にも脳の活動影響が出やすくなるからだ。つまり「顔の左側には感情が出やすく、顔の右側には思考が出やすい」ということだ。とすれば、冷静沈着な思考が表れやすい顔の右側は表情の変化が乏しくなり、喜びや楽しみ...

  • アニックグタール ケラムール

    今夜彼女が帰ってくる。この日をどんなに待ったことか。海外出張していた彼女と会うのは本当に久しぶりだ。どうやって迎えたらいいだろう?このあふれる胸の思いを、彼女にどう伝えよう?男は考えた。「お帰り、会いたかったよ」じゃ物たりない。自分の全ての思いを彼女に伝えたい。そして男は思いついた。そうだ。部屋の床一面に美しい花を敷き詰めよう!なんてロマンティックな思いつき。それでも結婚間近の2人だから間違いなく...

  • ズーロジスト ナイチンゲール

    「あなたは本当に遠くへ行ってしまう 私はずっと泣いています」もしこんな気持ちを相手に伝えるとき、あなたならどうするだろう?今から約千年前、平安時代には自分の気持ちをたった31音の和歌に託して送っていたという。「かはるらむ 衣の色を思ひやる 涙やうらの玉にまがはむ」枇杷皇太后宮(藤原妍子)訳「出家されて墨染の衣に変わられる貴女の心を思い、私は涙がこぼれます。その雫はお送りする数珠の玉にまぎれて、お気付...

  • フエギア1833 フエギエール

    何年も開けていない湿ったカビくさい地下室。ほこりをかぶったたくさんの書物が置かれている書庫の匂い。油絵の匂いがもれるアトリエ前の薄暗い廊下。そうしたものにメランコリーやノスタルジーを感じる方におすすめしたい香水。それがフエギア1833のフエギエールだ。フエギエールは、仏語のフィグ(イチジク)とブランド名フエギアをもじった造語。調香師ジュリアン・ベデルが2018年にリリースしたフエギアのリンネ・コレクション...

  • ジャン ポール ゴルチェ ルマル

    「その男がね、すごいきつい香水つけててさー」背後から聞こえたセリフに、思わず振り向きかける。週末の夜、狭くて騒がしい居酒屋でのこと。ついたてを隔てた後ろのグループは20代後半とおぼしき女性たち。自分は向かいの同僚の愚痴につきあいながら、背中ごしに聞こえる香水の話に聞き耳を立てた。「うちの会社来るたびに用もないのに受付に寄ってきてさ、いい店知ってるから行かないかとか、昼間から誘ってくるのね。で、そい...

  • モンタル アロマティックライム

    参った。ゲームオブスローンズにハマってしまって大変だった。1話50分強の物語全10話で1シーズンが構成されているエログロファンタジー国盗りドラマ。ファイナルシーズン8まで一気に73時間ぶっ通しで見てしまった。こんな経験は初めてだ。もしゲームオブスローンズ(以下GOT)がコスメだったら、☆100個つけるだろう。ただGOTは誰にでも勧められる作品ではない。R15指定であり、あまりの凄まじい展開は完全に見る人を選ぶ作品だ。...

  • ジャン・ポール・ゴルチェ クラシック

    世界の名香の中には、エポックメイキングなボトルデザインで爆発的にヒットした作品が少なからずある。80年代、モード界のアンファンテリブルとしてその名を全世界にとどろかせたジャン・ポール・ゴルチェ。彼が1993年に初めてリリースした香水。それは女性のボディをかたどった肉感的なボトルをアルミ缶に収めたスキャンダラスな作品だった。その名はクラシック。クラシックのボトルは女性のトルソー(胴体部分の人型)をデザインし...

  • フレデリック・マル アウトレイジャス

    かつて、街をゆくとかなりの頻度で同じ柔軟剤の強烈な匂いに出くわすことがあった。ダウニーのエイプリルフレッシュの香り。ダウニーの大ヒットは、良い悪いは別として「柔軟剤は香りで選ぶ」という流れを作った感がある。あの個性的な香りを作った調香師は、アメリカのIFFという香料会社の調香師だったソフィア・グロスマンだ。ソフィア・グロスマンといえば、男性ばかりのIFF調香師の中、その卓越した能力で名を挙げ、女性調香師...

  • ペンハリガン ザ ルースレス カウンテス ドロシア

    こぼれ落ちている。ティーポットから紅茶がカップに注がれる様子を見て、ドロシア伯爵夫人はそんなふうに感じた。彼女はティーを注ぐメイドの様子を冷ややかに見つめている。メイドは緊張した面持ちで夫人の前にカップを差し出す。その瞬間、夫人がメイドの横顔を見て言った。「貴女、昨夜ボーレガードとすれ違いざま、首筋にキスされていたメイドね?」婦人の突然の言葉に、メイドはビクリとして動きが止まる。紅茶がカップの中で...

  • ヴィクター&ロルフ スパイスボム

    人を非難するのは赤子の手をひねるより簡単だ。おちょくってバカにして、揚げ足をとってあざ笑うことは誰にでもできることだ。それを「いじる」などという言葉で擬態する醜悪な人間性を心から軽蔑する。そんな輩は心の中の爆弾で吹き飛ばしてやるといい。リングを引き抜いた手榴弾を放り投げて。木っ端みじんに跡形もなく。ここに黒い手榴弾の形をした武骨な香水がある。名をスパイスボムという。日本ではあまりなじみはないが、オ...

  • トム・フォード ヴァニラ ファタール

    運命の香り、それは一体どこにあるのだろう?もしもあなたが運命的なヴァニラを探しているなら、このヴァニラファタールを試してみるといい。ヴァニラファタールは、トム・フォードから2018年3月にリリースされたオードパルファムだ。調香はベルベットオーキッドやサンタルブラッシュを作ったヤン・ヴァスニエ。こちらは本来ベース香料としてオリエンタル系香水に使われるヴァニラをメインにすえた作品だ。ヴァニラ・ファタールを...

  • ピュアディスタンス ホワイト

    ピュアディスタンスのホワイトを知らなければよかった。この香水に出会わなければ、今も目の色を変えて世界中の香水を集めまくり、あれこれ試してはあーだこーだとくだらない能書きを垂れることに夢中になっていただろう。でもこの香水と出会って変わった。もうそんなにあれこれ探さなくていいかもしれない。そう思うようになった。だからちょっとだけこの香水に対する思いは複雑だ。この香水はあまりに美しくて少し哀しい。ホワイ...

  • アベル ホワイトベチバー

    「旅に病んで 夢は枯れ野を かけめぐる」松尾芭蕉、辞世の句。アベルのホワイトベチバーの香りに包まれるたび、なぜか自分はこの句を思い浮かべる。その人生を俳句と旅に費やした人、芭蕉。彼が病床にあってなお求めた旅とは一体何だったのか?そしてなぜホワイトベチバーが芭蕉の句をイメージさせるのか?アベルは、2013年にオランダで設立された香水ブランドだ。目的は「世界最高の天然香水を創ること」。ワイン醸造家であ...

  • ペンハリガン クランデスティン クララ

    足りない。何かが足りない。そんな乾いた思いがいつも彼女の心の裡にある。もっと欲しいのか?そう言われるとピンとこない。一流の男をパトロンにし、お金も美味しいお酒も思うがままだ。美しいドレスも宝石も靴も数えきれないほどある。けれど自分には何かが足りない。いつもそう思う。彼女の名はクララ。ペンハリガンのポートレートシリーズ。それは香水で繰り広げられる英国社交界の光と影のドラマ。愛と憎しみ、虚飾に満ちた華...

  • キリアン ストレイト トゥ ヘブン

    「天国へ直行の香り」。キリアンのストレイト・トゥ・ヘブンという香水を直訳するとそんな言葉になる。この香りは2007年にキリアン・ヘネシーが自身の名を冠した香水メゾンをブランディングさせた際、一番最初にリリースされた6本の香水のうちの1つだ。「アートとしてのパルファム」をテーマに、彼が調香師と共に作り出すラグジュアリーで神秘的な香水たち。初期の作品には、彼が幼少期を過ごしたコニャック貯蔵庫の甘くかぐわし...

  • アゴニスト ソラリス

    アゴニストのソラリスの香りに包まれていると、夕暮れの海をずっと眺めていたい、そんな気分になる。夏じゃない。ほとんど人がいない季節はずれの海。晩秋の夕暮れなら、なおいい。澄み切った冷たい空気の中、残照が空を赤々と染め、遠くの半島が黒いシルエットに浮かび上がる。そんなトワイライトの中、ただ海を見ていたい。アゴニストは、2008年にスウェーデンで起業した香水メゾンだ。スウェーデンの香水といえばバイレードが有...

  • フエギア1833 フエムル

    フエギア1833のフエムルは、バターをたっぷり使って焼き上げた香ばしいクッキーのような香りがする。その香りを色に例えるならクッキーの色そのものだ。そしてそれは、この香水のイメージの元になったフエムルというアンデス山脈に生息する鹿の栗毛をも思わせる。「清らかなアンデス山脈の森林を力強く走り抜ける、美しいゲマルジカのように。静謐な印象を与えるムスクに、ジャスミンが優しく重なって」これがブランドから出されて...

  • ゲラン アンジェリークノアール

    この香りを嗅いだ瞬間、墜ちた。撃墜された。心が囚われてしばし真っ白になった。視線が虚空をさまよった。どこかで天使が笑っているような気がした。けれどそれは悪魔の嘲笑だったのかもしれない。ゲランのアンジェリーク・ノアール(黒のアンジェリク)を初めて嗅いだときのことだ。今もはっきりと覚えている。それは黒の衝撃だった。バランスのいいゲルリナーデベースの上に、甘くてクリーミーで、わずかに苦いグリーンな香りが...

  • ラボラトリオ・オルファティーボ

    コズメル。それはメキシコの東海上に浮かぶ小さな島の名前。どこまでも野性味あふれる手つかずの自然が織りなす美しい風景がコズメル島の魅力。ラボラトリオ・オルファティーボのコズメル・オードパルファムは、そんなワイルドアイランドの香りをイメージしたメンズ向けのフレグランスだ。「嗅覚の実験室」という名のラボラトリオ・オルファティーボが、ブランド創業時にリリースした最初のフレグランス4本のうちの1つ、コズメル...

  • リキッドイマジネ ブラディウッド

    ブラディウッド、「血濡れの木」とネーミングされた香水がある。「香りは神への供物」といういにしえのパフュームの由来を大切にする香水メゾン、リキッドイマジネから2013年にリリースされた美しいワインレッドのオーデパルファムだ。リキッドイマジネは2016年日本デビューを飾った。その際には3つのテーマををトリロジー(三部作)に位置づけている。このブラディウッドは「レ・ゾウ・サンギーヌ(血の水)」というトリロジーの...

  • キリアン プリンセス

    「あたしがプリンセスになるために隣に王子様はいらない。」とボトルに書いた香水がある。キリアンが2018年にリリースした”My kind of love”シリーズのうちの1本、プリンセスというオーデパルファムだ。キリアンがセフォラ系列で出したこの新しい「黒いたまボトル」シリーズは、10代~20代の若い女性をターゲットにした作品群で、これまでのメインシリーズより価格も抑えめになっている。本国では30mlボトルで75ドル。セフォラ系列...

  • トム・フォード ヴェールボエム

    季節の変わり目は、なぜか心がトーンダウンしやすいもの。トム・フォードのヴェール・ボエムは、そんなときに静かに心に寄り添ってくれそうなフローラル・グリーンのオーデパルファムだ。ヴェールボエム、直訳すると「緑のボヘミアン」。ボヘミアンと言えば、昨今クイーンブームリバイバルでよく聞いたワードだが、これは北インドからヨーロッパに向かって移動生活をしている者たちを若干揶揄した言い方だ。そういえば映画でも根底...

  • イヴ・サンローラン オピウム

    香水の歴史上、最も危険な作品といえばイヴサンローランのオピウムがまず挙げられるだろう。「阿片(アヘン)」というネーミングに絶対的にこだわったサンローラン。しかしその名前ゆえに各地でパニックや暴動に近い事件が多発したのも事実。それでも全世界で爆発的ヒットを記録し、1977年の発売以来、50年近くたってもいまだに売れ続けている伝説の名香オピウム。その官能的かつ退廃的なオリエンタルスパイシーな香りの中毒となっ...

  • キリアン ウーマンインゴールド

    彼女の名はアデーレ・ブロッホ=バウアー。19世紀ウィーン社交界で自由奔放に振る舞い、まるで女王のようであったとされる女性。そしてその名が今なお語り伝えられているのは、美術史に燦然と輝く分離派の巨匠、グスタフ・クリムトの有名な絵画「アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像」のモデルであったこと、さらにその肖像画の所有権を巡る裁判が国際的な話題となったことによる。この顛末は「ウーマンインゴールド」(邦題「黄金...

  • bdkパルファム パスソワール

    女はその日の仕事を終えると、ふーと小さく息を吐いた。午前1時。オフィスの外は漆黒の闇だ。部下が帰るのを見届けてから手鏡を取り出し、メイクを直す。今日はハードだった。ボルドーじゃない。そう思って真っ赤なルージュを選ぶと、くすんだ色をした唇にひいた。とたんにそこだけがぬめりを帯びて、赤いベロアのように輝き出す。ブラシでさっと髪をとかし、白いシャツのボタンを外してネックレスをつけた。目尻に黒のアイライン...

  • ラルチザンパフューム プルミエフィグエ

    幼い頃、家の裏に1本のイチジクの木があった。人の手の平のように大きな葉。その間にたくさんついている緑色のたまごのような果実。その実をもぐと白い液がじわじわ出てきて、あたり一面に不思議な匂いをふりまいた。そのねばついた汁は手につくと簡単には取れず、家に帰ると強い匂いのせいで祖母にバレてよく注意されたものだ。かぶれるとか、かゆくなるとかエトセトラ。「あの木にはさわっちゃいけないよ」祖母のその言葉は幼な...

  • ヴァレンティノ ヴァレンティノ・ウォモ

    カルディの前を通ったら香ばしいローストコーヒーの香りがして釣られた。入口で「コーヒーをお飲みになりながらゆっくりごらんください。」と小さな紙コップをいただいたので、香り高いアイスコーヒーをすすりながら中に入った。世界各国の輸入食品やお酒がところ狭しと並べられている迷路のような狭い店内には、さまざまな匂いがしている。鼻に近づける小さなカップはフエギアのフラスコみたいなもので、濃いコーヒーの香りを一気...

  • 雨の香りと雨の街を ~ミラー・ハリス ラ・ブリュイ~

    また雨か。カーテンをめくって灰色の空を確かめ、女は一つため息をつく。テレビでは、天気予報士が得意げに低気圧と線状降水帯の関係についてまくしたてている。リモコンでテレビを消してソファーに放り投げる。雨の日は髪がハネるからやだなー。肩を落とすと同時にスリップの紐も片方ずり落ちた。雨なんかキライ、雨なんか大キライ…。鏡の中で口をへの字に曲げている顔をにらみながら洗顔する。顔を洗う一瞬だけ、子どもの頃を思...

  • キリアン グッドガールゴーンバッド

    香水界のロールスロイス、キリアン。その最高に贅沢な香水たちの中にあって、最も罪つくりな香りだと感じているのが、グッドガールゴーンバッド(「よい娘が悪くなった」以下略GGGB)だ。こちらは数あるキリアンの香水の中でも、世界中でベストセラーになっているといういわくつきの作品。白地に金色の蛇をあしらったドキリとするようなクラッチケース。その中に納まった白いボトルは、まるで宝石のようにキラキラと輝いて美しい。...

  • トムフォード ソレイユブラン

    ハワイに行きたい。亜熱帯化した高温多湿の日本を脱出して、真っ白な太陽が照りつけるワイキキビーチでのんびりしたい。パームツリーの木陰、ホテルのオープンテラスで、フルーツてんこもりの金魚鉢みたいな大きなグラスにストローを何本も差して、トロピカルカクテルをゴクゴク飲みたい。バンズではさめないダイナミックなハンバーガーに悪戦苦闘しながらむしゃぶりついて、口の周りについたパイナップル混じりのソースを指で無造...

  • ゲラン ジンジャーピカンテ

    長く続いた雨があがると、都会はギラギラ照りつける真夏の太陽にまばゆく塗りかえられた。ビルの壁一面に取りつけた室外機が音を立ててフル回転し、熱風をまき散らし始める。あんなに雨の街にうんざりしていたのに人は勝手なものだ。蒸し暑い炎天下の街を歩いたらこの暑さにもすぐ辟易して、どこかカフェに寄って冷たい飲み物で喉を潤したくなった。ゲランのジンジャーピカンテは、そんなときに飲みたいキリッとしたジンジャーエー...

  • 夏とサンダルとビーチウォーク ~メゾン・マルジェラ ビーチウォーク~

    Y美は悲しんだ。足の親指の爪を切っていたら途中で爪が割れた。これからサンダルのシーズンなのに。そう思って舌打ちした。同時に、30代半ばに差しかかって爪も硬くなってきたことを思い知らされ、はぁーとため息をついた。マンションの窓の外は今日も曇り。もう何日もこんな天気が続いている。せっかくきれいにペディキュアを塗って、今年の夏用サンダルを買いにいこうと思っていたのに。テレビの天気予報は南から太平洋高気圧が...

  • トム・フォード ロストチェリー

    秘密。だれにも言えない秘密。大人が教えてくれなかった事実。大人になるために最も知りたかった事実。快感。だれにも言えない快感。母のルージュをそっとひいた日の、何かいけないことをしてしているという甘美な記憶。あるいは女性の裸体に初めて硬直した少年の、絶対に親に知られてはいけないと感じた背徳の記憶。触れてはいけないところにさわったやましさ。トム・フォードのロストチェリーは、そんな香りがする。桜の香りがす...

  • ルイヴィトン カクタスガーデン

    夏が来る。旅に出たい。まだ見ぬすばらしい風景がどこかで自分を待っている。そんなふうに思うと、もう松尾芭蕉なみに落ち着かない。旅行雑誌やネットで絶景の観光地や泊まってみたいホテル、ショッピング穴場情報などを探しまくる。ルイ・ヴィトンのカクタスガーデンの香りを肌にのせていたら、カリフォルニアの青い風に吹かれたくてたまらなくなってしまった。カリフォルニア。夢のカリフォルニア。「パームツリーが揺れ、オレン...

  • ラボラトリオ・オルファティーボ ヌン

    「はじめこの世界には『原初の水』ヌン(Nun)しかなかった。やがてその水面に美しい太陽のような形のハスの花が咲き、そこからラーが誕生した。ラーはヌンより出でて他の神々を生み出し、自身は太陽神として世界を支配した。」古代エジプトにはさまざまな神話がある。中でもひときわ興味を惹くのがこの太陽神ラーの誕生に関する話だ。そこには原初の水と呼ばれるヌンが世界の最初にあったこと、そしてハスの花が咲き、世界を統べる...

  • 誘惑の香り ~フエギア1833 ムスカラフェロジェイ~

    「ねえ、なんか香水つけたでしょ?」「え?つけてないよ。今日はデートの約束だろ。君は香水いやがるじゃないか。」「そうよ。だってああいうの、頭が痛くなるのよ。」「うん、知ってる。あ!ちょっと!何するんだよ!?」「じっとして。何か匂うわ。あたしわかるのよ。ちょっと動かないで!」「そんなこと言ったって、何でシャツのボタンばずして顔をつっこむんだよ!」「くんくん…やっぱりなんかつけてる!うっすらとだけど、ミ...

  • エルメス ローズイケバナ

    エルメスのローズイケバナは矛盾に満ちた香りだ。なぜなら「薔薇のいけばな」という名をもちながら、ほとんど薔薇の香りがしない香水だからだ。オクシモロンという修辞法がある。日本語では「撞着(どうちゃく)語法」といい、相反する矛盾した語句を並べて、表現に複雑な意味や深みを与える技法を言う。例えば「負けるが勝ち」「うれしい悲鳴」「嘘から出たまこと」などのオクシモロンが有名だ。ローズイケバナの香りは、まさにこ...

  • あなたのような誰か ~エタリーブルドオランジェ ユーオアサムワンライクユー~

    ある日K子は夫のクローゼットの棚の隅に、見慣れない箱を見つけた。初夏の午後のことである。開け放した窓辺、柔らかな風がカーテンを揺らしていたが、それを見つけた瞬間、背中が冷たく感じられた。白いボックスの角に青い目玉のような模様。K子はなぜかそのブルーアイに見つめられたような気がして一瞬息を飲んだ。そしてそっとその箱に手を伸ばした。箱の中にはスクウェアなガラスボトルが入っていた。エタリーブルドランジェ

  • パルファムドニコライ ネロリアンタンス

    オレンジの香りが恋しい。気温が高くなってくるとそう思うことがある。レモンは酸味が強すぎるし、ベルガモットほどパンチはいらない。スイートで心が浮き立つようななオレンジの香りがいい。そんな日がある。果実の香りならアトリエコロンのオレンジサングインがおすすめだ。まんまミカンの香りがする。けれどストレスや不安を抱えていて、ため息を「うっとり吐息」に変えたいなら、質のいいネロリの香りを探してみるといい。ネロ...

  • イッセイミヤケ ロードゥイッセイフローラル

    バラは早朝がいい。花が今まさに咲かんとするつぼみの奥、美しく高貴なバラの香りが静かにそのときを待っている。そんな早朝のバラのつぼみをイメージして作られた香水がある。イッセイミヤケパルファムから2011年にリリースされたロードゥイッセイ・フローラルだ。ロードゥイッセイ・フローラル、名前は凡庸だが調香師は折り紙つきだ。なぜならアクアティックノートを一躍世界に広めた天才ジャック・キャバリエの名作を、どんなク...

  • ランセ ルヴァンカー

    「征服者」という名の香水がある。ル・ヴァンカー・オードパルファム。1795年にフランスのグラースで創業された香水ハウス、ランセから2005年にリリースされた作品だ。もともとは今から200年以上前にフランス皇帝ナポレオン一世に捧げられた香水。フランス革命後にクーデターを起こし、フランス皇帝となったナポレオンは「戦争の天才」と呼ばれたが、同時に匂いマニアとしても有名だったという。彼に仕えていた調香師フランソワ・...

  • ピュアディスタンス Ⅰ

    本当に丁寧な姿勢で創られたすばらしい香水をつけてみたいと考えるなら、ピュアディスタンスの香水を試してみるといい。そこにはこれまで感じられなかった感動がきっと待っているはずだ。ピュアディスタンスは、ヤン・エワルト・フォス氏が2002年に立ち上げたオランダのパフューマリー。彼の理想とする香りを追求すべく、パルファム(エクストレ)濃度の香水だけをプロデュースしているこだわりのブランド。値段は17.5mlのボトルが...

  • ラルチザンパフューム メシャンルー

    メシャン・ルー。いじわるオオカミ。とてもポエティックなネーミングの香水だ。この香水はご存じグリム童話の「赤ずきん」の世界をイメージして創られたという。暗い森の中、おばあさんの家にお菓子を届けるおつかいに向かった赤ずきんはオオカミに出会って、というあれ。調香師ベルトラン・ドゥショフールは、赤ずきんのバスケットに入ったお菓子の香りからインスピレーションを広げた。そして森の香り。さらにはおばあさんを丸の...

  • リキッドイマジネ サルトゥース

    眠れない。何度寝返りをうっても。大きく深呼吸しても。暗闇の中、自分の息遣いだけが聞こえ、目を閉じていても瞳がせわしなく動いて。眠れない。人は不安や緊張で心が削られたり、嫉妬や怒りに心がとらわれたりすると、睡眠に大きな支障をきたす。ベッドに入っても神経が高ぶったまま眠れなくなる。これは本当につらい。眠れないとき、人は羊を数えたり玉ねぎを枕元に置いたり、あるいは睡眠サプリなどの力を借りて快適な睡眠を得...

  • ブラックチューリップ咲いた ~ネスト ブラックチューリップ~

    「ブラックチューリップが咲いたらまた会おう。」男はそう告げて女の前から去った。女のマンションのベランダに球根を2人で埋めたのが11月。あれからもう半年だ。男はシアトルへ旅立ち、女は一人になった。そして今、チューリップは大きなとがった葉の中に緑のつぼみをのぞかせている。離れて以来、男からの連絡は一度もない。それでも女は待っている。黒チューリップの花言葉は「劇的な再会」だ。女は荷物をスーツケースにまと...

  • エタリーブルドオランジェ コロン(ああ、いい香り)

    「香りなんて嗅ぎたくない。匂いなんてうんざり。世界が無臭ならいい。」もしそう感じているとしたら、申し訳ないが貴方の心は黄色信号かも知れない。なぜなら五感の中で嗅覚こそが最もダイレクトに本能や第一次欲求と結びついているからだ。香りや匂いを拒絶する状態は、自身の本能的な欲求「食事・睡眠・性欲」を面倒に感じ、心の抑圧状態が進んでいることを示唆するとも言われている。 人は本当につらくて悲しい時、身体の調子...

  • マドエレン レッドムスク

    年度の変わり目は心が落ちる。桜が咲いて、だれもがインスタ映えを狙ってシャッターを切って微笑んでいても、どこかで誰かの心は落ちている。ドーンと深く沈んでいる。なぜなら4月のカレンダーが強制的に心機一転させようとするからだ。落ちた時には2つの香りが心に効く。暗くて深くて自分の心の闇に寄り添ってくれる香りと、優しくてあたたかくてつい顔がほころぶ香りだ。そしてもしかしたらマドエレンのレッドムスクは、その2...

  • グッチ ブルーム

    春には美しいフローラルが必要だ。時代にあった花の香り。季節を越え、衣を替え、心を解き放つためのかぐわしい花の蜜の香は、貴方自身をさらに磨き上げるだろう。グッチのブルームは、2017年8月に発売されたグッチ渾身のオードパルファムだ。トム・フォード去りし後、再び低迷を続けたグッチ・グループの根幹を成すブランドにおいて、トム・フォード自身が才能を見い出して育てた忘れ形見、彼こそが2015年にクリエイティブ・ディ...

  • クリード スプリングフラワー

    クリードのスプリングフラワーは謎めいた香水だ。「春の花」という名のこの女性用EDPは、かのオードリー・ヘプバーンのために作られた香水とされているが、実際には詳細がよく分かっていない。この香りはヘプバーンが亡くなった3年後の1996年にリリースされた。このときクリードは「1951年に彼女のために作った作品。45年ぶりに公開。」としている。ただこれには1980年代中頃に製作されたという説もあるのだ。「どっちだっていい...

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