気だけは若い。 超純情小説や日々のさまざまなことを、ぼちぼちとつづっています。
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今夜は十六夜の月が春子さんの茶の間から庭に出るとよく見える。 風が少しあり薄雲が流れて時折その姿がぼやけて見える。それもなかなか風情があっていい。 春子さんは今日も住田夫人との電話のことを、花絵さんにどう告げればいいか朝から 家事をしながら考えていたのだけれど、まとまらぬまま夜になってしまった。 ありのままを言っても花絵さんが素直に受け取らないのでは.....とそんな気がして仕方がない。 それでもやっぱり事実をそのまま知らせるのが一番いいと思い至った。 何より彼が元気だったのが嬉しかったから万事OKだと。少し気が楽になった。 いつもメールをする時間の十一時過ぎ春子さんは電話をした。 「もしもし私よ。少し遅いけど時間大丈夫?」 「いいよお風呂も入ったし後は寝るだけ」 二人とも気楽な一人暮らしだ。 住田君元気だったよ生きていたよ。よかったね。一気に喋る..
二日続きの雨が上がり秋の気配が深まった感じの午後、一通りの家事を終えソファに座って 春子さんは、ずっと気にかかっていた花絵さんの彼のことを、もう一度考えた。 あれから毎日メールしているけれど、二人ともこのことには触れないで来た。 兎に角様子が知りたい。春子さんは考えていた通り意を決して彼の家に電話をかけた。 呼び出し音が六回、留守かな?と思った時 「はい住田でございます」 きれいな声の人が出てきた。 「奥様でしょうか」 春子さんは何回も考えていた通り、今日の用件について丁寧に説明した。 自分が住田さんの高校の同期生であること、ずっと前にもお世話になってお礼状を差し上げた ことがあったこと。先だっての同期会に欠席されていたので、どうしたのかと心配する人を代表 して電話したこと。 最後は勝手に考えた理由だったので、少し後ろめたい気持ちもしたが、平常心を..
春子さんの思い出はふと家事から解放されたときなど、つるつると繋がって出てくる。 今日は朝、東の窓を開けた時今年初めての金木犀の香りがした。もう秋が来たのだ。 それにしても花絵さんからの手紙は春子さんを驚かせたし、考えもさせられもした。 手紙によると、花絵さんの高校時代の恋が卒業と同時に終わったと思い込んでいたのは 春子さんの独りよがりだったようで恋は続いていたのだ。 でも彼が大学を卒業する少し前には花絵さんは結婚して東京に住んでいた。 彼からのプロポーズはなかったのだろうか。どうして結婚しなかったのだろう。 それでも彼が仕事で上京した時など、二人は喫茶店や公園で逢瀬を楽しんでいたというのだ。 これはもう恋というより大人の友情というものだと今だからこそ春子さんも妙に納得した。 当時このことをもし春子さんが知っていたらどうだろう。 「結婚..
彼岸花も色褪せて本格的な秋が来た。 窓を開け放ち風を入れる時、つい鼻歌でも歌いたい気分の春子さんだ。 待ちに待った短い秋、懐かしい思い出がいっぱいの秋。 昔ほど元気ではないけれど、この青い空を見ていると電車に乗りたいと思う。 と言っても今は「はいっ」と道連れになってくれる人もいない。友もみな老いた。 二時ごろ郵便が来た。その字に見覚えがあってつい嬉しくなって封を切るのももどかしい。 親友の花絵さん。美人で人柄もよくて中学時代からの友である。 性格そのままの優しいきれいな文字。二三日前にメールもしたのに手紙なんてどうしたの? 花絵さんは恋多き人で普段は静かで、どちらかと言えば引っ込み思案なのに恋をすると 元気になるのだ。それも自分から好きになるというのはなくて、いつも声をかけられる側。 だが彼女にとってはそれが当然と思っているようにも見える。 中..
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