春子さんの茶の間 その8
今夜は十六夜の月が春子さんの茶の間から庭に出るとよく見える。 風が少しあり薄雲が流れて時折その姿がぼやけて見える。それもなかなか風情があっていい。 春子さんは今日も住田夫人との電話のことを、花絵さんにどう告げればいいか朝から 家事をしながら考えていたのだけれど、まとまらぬまま夜になってしまった。 ありのままを言っても花絵さんが素直に受け取らないのでは.....とそんな気がして仕方がない。 それでもやっぱり事実をそのまま知らせるのが一番いいと思い至った。 何より彼が元気だったのが嬉しかったから万事OKだと。少し気が楽になった。 いつもメールをする時間の十一時過ぎ春子さんは電話をした。 「もしもし私よ。少し遅いけど時間大丈夫?」 「いいよお風呂も入ったし後は寝るだけ」 二人とも気楽な一人暮らしだ。 住田君元気だったよ生きていたよ。よかったね。一気に喋る..
2018/10/31 17:17